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2019年5月10日

同側への無視が起きる条件


Ipsilesional Impairments of Visual Awareness After Right-Hemispheric Stroke
2019  4月  イタリア

損傷をうけた脳半球と反対側に無視症状があらわれることがあり(半側空間無視)、認知負荷をかけることで見落とし率が増加し無視範囲が拡大することがわかっている。

いっぽう、損傷脳半球と同じ側については、より注意が高まるとする説、障害がおきているとする説、健常であるとする説がある。

そこで、半側空間無視のある脳卒中患者について、損傷脳半球と同側への視認精度を認知負荷をかけたときも含めくわしくしらべてみたそうな。



右脳損傷の慢性期脳卒中で 左方への半側空間無視のある患者12人について、

コンピュータスクリーンの右視野に短時間表示される1-2個の点を視認させる課題を繰り返させ精度を評価した。

このとき、ターゲット表示時に視野中心に図形を表示する(視覚負荷) または音を重ねた(音響不可)ばあいの影響をしらべた。



次のようになった。
・ターゲットが2個同時表示されたときと 視覚負荷または音響負荷をかさねたときに視認エラーがおおかった。

・とくに視覚負荷をあたえたときに右寄りのターゲットを見落とすことがおおかった。

右脳の脳卒中により同側への注意能力は高まるどころか障害をうけていた。とくに視覚負荷がかかっている状況で顕著だった、


というおはなし。
図:右脳卒中患者の同側無視の検査



感想:

右脳損傷やばい。なるほど世界がコマ落ちしてみえるときがあるよ。
刺激密度が高いときの半側空間無視

2019年5月9日

nature.com:手脚のリハビリで対側の前頭前野がんばる


Limb linkage rehabilitation training-related changes in cortical activation and effective connectivity after stroke- A functional near-infrared spectroscopy study
2019  4月  中国

脳卒中後のリハビリテーションで手脚の運動がもたらす脳皮質の回復メカニズムはよくわかっていない。脳の皮質活動はPETやMRIで観察することができるがこれら装置は患者のわずかな動きにも弱い。

近赤外線分光をつかった血流評価による脳皮質の機能測定は、高い時間分解能をもつため患者のうごきにつよく、運動課題をともなう測定が可能である。

得られたデータを解析する方法として「機能的結合:functional connectivity」がある。これは脳の異なる領域からの信号の同期の程度を評価するもので互いの結合の方向はわからない。

いっぽう「実効的結合:effective connectivity」では領域間の同期のみならず それらの方向や因果関係を推定することができる。

そこで脳卒中患者と健常者とで安静時および手脚の運動課題をあたえたときの脳皮質の活動を近赤外線分光で測定し、脳皮質間の実効的結合への影響をくわしくしらべてみたそうな。

2019年5月8日

Neurology誌:若年脳卒中 さいきんのトレンド


Stroke incidence in young adults according to age, subtype, sex, and time trends
2019  5月  オランダ

初回脳卒中の10-15%は18-50歳の若年者でおきている。高齢者の脳卒中発生率は減少傾向にあるいっぽう、若年者の脳卒中発生率は上昇傾向にあるという。

これら若年脳卒中患者を、年齢層別、男女別、脳卒中の種類別にさいきんのトレンドをオランダ人についてくわしくしらべてみたそうな。



オランダの患者データベースから1998-2010の18-50歳の脳卒中患者15257人を抽出して解析したところ、



次のことがわかった。

・患者の55.3%は脳梗塞、20.2%が脳内出血だった。

・脳卒中発生率は男女ともに年齢層が上がるにしたがい指数関数的に高くなった。女性のほうが脳卒中発生率は高く、とくに若い層18-44歳で顕著だった。

・脳梗塞の相対比率は年齢層が上がると増加するいっぽう、脳内出血の相対比率は減少した。

・若年脳卒中の発生率は年間10万人あたり、1998年には14.0人で2010年には17.2人とたかくなり、これらはおもに35歳以上の脳梗塞の46%増加によるもので、50歳以上では脳卒中発生率は329.1→292.2人に11%低下している。

若年者の脳卒中発生率は35歳以上で上昇しており、18-44歳では女性で発生率が高い。この10年で脳卒中発生率は23%増加し、おもに脳梗塞の増加によるものだった。脳内出血のそれは男女ともに同程度でおおきな変化はなかった、


というおはなし。
図:若年脳卒中のトレンド


感想:

脳梗塞だけふえている理由のひとつとしてMRIの普及をあげている。

脳内出血みるにはCTが適している。MRIはちいさな脳梗塞でもはっきり見える。さらにディフュージョン強調をとれば超急性期の梗塞までわかる。これらの普及時期とぴったり一致するからたぶんそれが正解。

これ↓のこたえがわかった。
若年者が脳卒中になる理由

2019年5月7日

脳梗塞患者は水を飲む量が少なかった in Japan


Daily Habit of Water Intake in Patients with Cerebral Infarction before its Onset; Comparison with a Healthy Population- A Cross-Sectional Study
2019  5月  日本

脳梗塞の予防にはひんぱんな水分摂取がいいとよくいわれるものの、これを調べた報告はすくない。

そこで日本人についてくわしくしらべてみたそうな。



3つの病院施設の脳梗塞患者274人と健常者1013人について、
現在の1日の水分摂取量を面談調査した。

この量が脳梗塞まえにくらべて、増えた(increased)、変わらず(unchanged)、減った(decreased)、
と答えた3つのグループに分類して、

「変わらず」と答えたグループの水分摂取量を脳梗塞まえの値とした。
これを健常者とくらべたところ、



次のようになった。

・患者の151人が「増えた」グループで、105人が「変わらず」、18人が「減った」だった。

・平均水分摂取量は、順に1702mL, 1494mL, 1268mLで、健常者は1720mLだった。

・関連要因で調整後、「変わらず」のグループと健常者とであきらかな差が確認され、

・カットオフ値1570mL/dayを下回ると脳梗塞のオッズ比は2.48倍だった。
脳梗塞患者が発症まえに摂っていた水分量は健常者のそれをあきらかに下回っていた。水分摂取をこころがけることで脳梗塞をふせげるかも、


というおはなし。
図:脳梗塞まえの水分摂取量 患者の健常者の比較


感想:

脱水がすすむ真夏には脳梗塞がふえるかというとぜんぜんそんなことはなくて脳梗塞はむしろ冬におおい↓。
脳梗塞が夏におおいは間違いだった

水飲めば脳梗塞を防げるとする考えは生物の「恒常性」にそぐわない。

水を摂る量が少ないのは身体の不活発さの反映と考えるほうが理解しやすい。

水分とる日本人は脳卒中で死なない

努めて水を飲んでいれば脳卒中で死なないのか?

水をたくさん飲むと脳卒中にならない、はホントだった

2019年5月6日

シータバーストで上肢リハビリ


Intermittent theta burst stimulation enhances upper limb motor function in patients with chronic stroke- a pilot randomized controlled trial
2019  4月  台湾
脳卒中を経験した50-60%はリハビリをおこなったとしても運動機能になんらかの麻痺がのこる。

rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)は非侵襲的に運動機能の回復をうながすことができると期待されてきたが、さいきんのメタアナリシスでは上肢機能の改善効果はなにもないことが示された。

いっぽうrTMSの別の一形態である iTBS(間欠的シータバースト磁気刺激)はその効果がより持続するとしてあらたに期待されている。

半球間競合モデルにもとずいて、損傷脳半球の運動野をiTBSで活性化する、または反対側の脳半球の運動野をcTBS(連続シータバースト磁気刺激)で抑制する使い方が考えられているが、いまだ結論に一致をみない。

そこで脳卒中後の上肢機能についてiTBSの効果をランダム化比較試験してみたそうな。



30-70歳で慢性期脳卒中で片麻痺の患者22人について、

損傷脳半球の運動野へのiTBSまたは偽刺激(コイルの向きを変える)を1日1セッションx週5回x2週間の計10セッションおこなった。

刺激強度は運動しきい値を超えないように設定し、被験者がどちらの刺激をうけているのかわからないようにした。

介入前後の
Modified Ashworth Scale (MAS),
Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity (FMA-UE),
Action Research Arm Test (ARAT),
Box and Block test (BBT),
Motor Activity Log (MAL) を評価したところ、



次のようになった。

・iTBSグループで痙縮度MASと上肢機能FMA-UE、上肢アクティビティのARAT、手の巧緻性BBTスコア が偽刺激グループよりもおおきくスコアをのばした。

・上肢使用頻度のMALはグループ間の差はみられなかった。

損傷脳半球への間欠的シータバースト磁気刺激は慢性期患者の上肢の痙縮をやわらげ、上肢運動機能の特に巧緻性を改善した。こんごに期待したい、



というおはなし。
図:iTBS刺激
Magstim Rapid stimulator



感想:

半球間競合モデルにはちょっと疑いがある↓。
半球間抑制のアンバランスは片麻痺の原因ではなかった
iTBSもこれ↓のなかまだから推して知るべしか。
[結論] rTMSの上肢リハビリ効果について

2019年5月5日

みんな抗凝固薬こわくないの?


Perception of the Risk of Stroke and the Risks and Benefits of Oral Anticoagulation for Stroke Prevention in Patients With Atrial Fibrillation- A Cross-Sectional Study
2019  4月  アメリカ

心房細動の患者にとって脳卒中予防はおおきなテーマで、ガイドラインでは CHA2DS2-VAScスコアが2以上のばあい生涯にわたる抗凝固薬の使用をすすめている。

しかし抗凝固薬には出血のリスクがともなう。抗凝固薬をながねん使用している者であってもリスクと効用の理解におおきなギャップがあるという。

そこで、かれらが抗凝固薬にたいして漠然と感じているリスクと 現実との関係をくわしくしらべてみたそうな。



心房細動で通院している患者227人について、

抗凝固薬をつかわなかった場合の脳卒中リスクと抗凝固薬使用による出血リスクについて推定させた。

これらをCHA2DS2-VAScスコアによる脳卒中予測およびHAS-BLEDスコアによる出血予測とで比較したところ、



次のことがわかった。

・CHA2DS2-VAScの平均スコアは4.3、HAS-BLEDスコアは2.3だった。

・心房細動は発作性が53.3%、持続性が46.7%だった。

・ほとんどの患者が脳卒中と出血のリスクを過大評価していて、

・52.9%が脳卒中リスクを年間20%以上とし、(現実はほとんどが10%以下)

・53.5%が抗凝固薬による出血リスクを年間10%以上と考えていた。(現実はほとんどが6%以下)

・90%の患者は抗凝固薬が脳卒中リスクを50%以上低下させるものと考えていた。(おおむね正しいという)

心房細動のほとんどの患者は脳卒中と抗凝固薬による出血のリスクをかなり過大に評価していた、


というおはなし。
図:出血リスクの評価HAS-BLEDスコア


感想:

HAS-BLEDスコアには抗血小板薬の有無が変数としてふくまれている。

しかし抗血小板薬の出血リスクは過小評価↓状態なのでこのスコアはあてにならない。
NEJM誌:アスピリンは予防効果ないうえにとても危険

だから抗凝固薬の出血への怖れは過大とはいえないと思うんだ。

2019年5月4日

ゴルフスイングで解離しやすい頸の動脈は


Cervical artery dissection after sports - An analytical evaluation of 190 published cases
2017  4月  ドイツ

頚部の動脈解離による脳卒中はまれで年間10万人あたり2.5-3人におきる。若年者におおく、15-45歳の脳梗塞の原因のうち20%をしめる。

症状がでる1ヶ月以内に自動車事故などなんらかの頸部外傷を経験している者が41%をしめ、6%はスポーツ由来という。

いずれの外傷も程度は軽く 因果関係を判定することはむつかしいことがおおい。

スポーツが原因と推定された頸部動脈解離の脳卒中事例報告を可能な限りあつめ特徴をしらべてみたそうな。



次のことがわかった。

・患者190人をふくむ115の事例報告がみつかった。45種類のスポーツが関係していた。

・患者の平均年齢は35で、26%が女性だった。

・影響した血流域は、前方(内外頸動脈、中前大脳動脈)後方(椎骨動脈、後下小脳動脈、後大脳動脈)、および左右ともに同頻度だった。

・スポーツカテゴリにより年齢や性別がおおきくことなり、影響する血流域(前方後方)も変わった。

・後方循環系の頸部動脈解離の割合は、ゴルフプレーヤーの88%でもっとも高く、エクササイズは23%、スキューバダイバーは29%と低かった。

・影響血流域の左右、死亡率はスポーツごとでおおきな差はなかった。

頸部の動脈解離による脳卒中はひろい範囲のスポーツで報告されていた。影響する神経血管域はスポーツの種類でことなった。スポーツごとの発生率は今後の調査に期待する、


というおはなし。
図:後方循環系の頸動脈解離の脳卒中


感想:

ゴルフで後方解離がおおいのは、
ゴルフが金銭に余裕ある者のスポーツで若者はやらないことと、椎骨動脈は内頚動脈よりも加齢にともなうスイング動作への脆弱性がたかいからではないか、、、と言ってる。

うえのグラフみるとテニスも後方割合がたかい。にたような理屈なのかな。

2019年5月3日

くも膜下出血後の頭痛に効くツボ


Treating Therapy-Resistant Headache After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage with Acupuncture
2019  4月  ドイツ
くも膜下出血患者の90%以上は突然の激しい頭痛を経験する。鎮痛薬を使用したとしてもその痛みはとてもつよい。

退院後30日以内の再入院の理由の2位もまた頭痛であり、その後何年間にもわたって頭痛が続くこともあるという。

オピオイド系の鎮痛薬は眠気や呼吸抑制の問題がある。非ステロイド性消炎鎮痛薬は血小板凝集をさまたげるためくも膜下出血をひどくする可能性がある。

そこで、代替医療としての鍼をくも膜下出血後の頭痛に応用してみたそうな。



くも膜下出血のあと複数種類の鎮痛薬使用にもかかわらず非常に強い頭痛が続いている女性3人について3日間の鍼治療をほどこした。

鍼刺激した位置は下図のとおり。



次のようになった。

・すべての患者で痛みがすくなくとも50%以上和らぎ、

・鎮痛薬の使用量を減らすことができた。

・副作用もなかった。

くも膜下出血後の頭痛には鍼治療を加えることが有効かも、


というおはなし。
図:くも膜下出血の頭痛に効くツボの位置


感想:

うえの図をみて 有名どころの風池、合谷、足三里はすぐにわかった。

2019年5月2日

若年脳梗塞の25年間再発率


The very long-term risk and predictors of recurrent ischaemic events after a stroke at a young age- The FUTURE study
2016  12月  オランダ

脳卒中の再発リスクは最初の1ヶ月間のみならずその後10年以上にわたって高い状態がつづくという。

比較的若くして脳卒中を経験した者はその後も数十年にわたる生活が期待される。しかし再発を長期フォローした研究のおおくはせいぜい5年間ていどである。

そこで若年脳卒中経験者の再発をさらに長期フォローして25年先まで予測してみたそうな。


18-50歳で脳梗塞を発症した656人について、
脳梗塞の再発(TIAをふくむ)、動脈イベント(心筋梗塞、冠動脈疾患など)、←これらいずれかの虚血イベントの発生を平均12.4年間フォローした結果、



次のことがわかった。

・25年間の累積の予測再発率は、なんらかの虚血イベントが45.4%、脳梗塞やTIAが30.1%、動脈イベント27.0%だった。

・関連するリスク要因は、喫煙、腎機能低下、末梢動脈疾患、心臓病 だった。

若年脳梗塞経験者の再発リスクは長期にわたり高く、25年間でおよそ半数がなんらかの虚血イベントを、3分の1が脳梗塞やTIAを経験すると考えられた。腎機能低下や喫煙、末梢動脈疾患、心臓病があきらかなリスク要因だった、



というおはなし。

図:若年脳梗塞 長期再発率



感想:

腎機能低下とか末梢動脈疾患は糖尿病が原因なんだって。

2019年5月1日

抗血小板薬は日本人にも効果ないし非常に危険


Influence of blood pressure on the effects of low-dose asprin in elderly patients with multiple atherosclerotic risks
2019  4月  日本

低用量のアスピリン(抗血小板薬)が日本人の高血圧高齢者の脳卒中予防に効くものか、くわしくしらべてみたそうな。

2019年4月30日

ボバースコンセプトのリハビリ効果


Effectiveness of the Bobath concept in the treatment of stroke- a systematic review
2019  4月  スペイン

ボバースコンセプトは1940年代に登場し、中枢神経系や感覚運動制御と筋肉構造の3つの可塑的変化をうながす神経発達学的治療法とされている。

ボバースコンセプトは脳卒中リハビリテーションでもっともおおく採用されてきたアプローチのひとつではあるものの、これまでのシステマティックレビューでは目立った成果は確認されていない。

最新のシステマティックレビューは10年前のものなので、こんかいあらためてレビューしてみたそうな。



2018年1月までの関連論文を複数のレビュワーが厳選し、そのエビデンスレベルをPDroスケールで評価したところ、



次のことがわかった。

・15の臨床試験がみつかった。

・ボバースコンセプトは他のアプローチにくらべ、下肢の運動機能、バランス、日常生活動作 の点でなんら優れた点はなかった。

・上肢について CI療法よりはやや効果的だった。

ボバースコンセプトの脳卒中リハビリテーションは下肢で優れた点はなく、上肢でやや効果がある程度だった、


というおはなし。

図:ボバースコンセプト研究


感想:

CI療法はいまやこの状況↓なのでボバースも推して知るべし。
課題指向型訓練 いくらやっても役には立たない

治療法に人のなまえがついたままであることそれ自体が、手法の一般化ができずに限られた信者だけのものになっているあかしと考える。
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