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2019年4月29日

機械的血栓除去に適した患者の割合


How many stroke patients might be eligible for mechanical thrombectomy?
2016  12月  イギリス

脳の血管内の詰まりをステントリトリーバーで掻き出す(機械的血栓除去)が好成績を収め期待されているという。

この治療法の普及には病院間の連携や 患者の適合 除外を判断する基準をそろえる必要がある。

しかしこれまでおこなわれた7つの臨床試験では患者選別の基準が各々ことなっている。これらの基準を共通の患者に適用したばあい、いったいどれだけの患者が治療に適合するものか くわしくしらべてみたそうな。



脳卒中患者データベースから、
発症6時間以内でCTアンギオ、CTパーフュージョンのデータがとれている263人の患者記録を抽出して、

これまでおこなわれた機械的血栓除去の7つの臨床試験 (MR CLEAN, EXTEND–IA, ESCAPE, SWIFT-PRIME, REVASCAT, THERAPY, THRACE)の患者選別基準をそれぞれ適用したところ、



次のことがわかった。

・各基準ごとに適合する患者は53%-3%まで幅があった。

・たとえば4種類の臨床試験基準に適合した患者は17%で、すべての臨床試験基準に適合した患者は1%だった。

・もっとも影響のあった除外理由はCTアンギオで「主幹動脈の閉塞」が認められないケースだった。

・適合基準を「画像診断でASPECTスコアが6より大」としたときに患者の16%が残り、さらにこのうち40%はパーフュージョン条件で除外され、半数以上がNIHSSスコアで除かれた。

発症から6時間以内で画像診断基準を満たした患者はおよそ15%いて、機械的血栓除去術の可能性ありと考えられた。しかしこれまでの臨床試験基準をすべてあてはめると残った患者は 1%のみだった、


というおはなし。
図:機械的血栓除去術の除外要件


感想:

機械的血栓除去術はお医者さんの自慢ネタとして しばしばその成果が大きく誇張されている。↓
脳外科医のつぶやきはフェイクニュース
共通の基準がまとまらない理由はこのあたりにありそうだ。

2019年4月28日

自動車運転のハザード知覚


Hazard perception of stroke drivers in a video-based Japanese hazard perception task
2019  4月  日本

自動車運転中に危険な状況に気づく能力をハザード知覚(hazard perception:HP)と呼び、ビデオ映像を見せることでも評価できる。

脳卒中患者でのHP能力についてはよくわかっていないので実験してみたそうな。



平均年齢67、自動車運転歴があって、脳卒中から5ヶ月前後の患者63人と、年齢層のいっちする一般人67人についてHPテストをおこなった。

HPテストでは、被験者はドライブレコーダーの映像を見ながら危険箇所で再生をポーズして詳細を語り、その個数と反応速度を評価した。

HPの種類としてつぎの3つを用意した。

(1) behavioral prediction hazards (BP)
危険が生じるまえから見えているハザード

(2) environmental prediction hazards (EP)
周囲に隠れていて目には見えないハザード

(3) dividing and focusing attention hazards (DF)
上記複数ハザードの組み合わせ

さらに視覚情報処理スピードを評価するTMT(Trail Making Test)をおこなった。



次のことがわかった。

・脳卒中患者はすべてのハザードタイプで回答個数が一般人よりもあきらかにすくなかった。このちがいは損傷脳の左右によらなかった。

・脳卒中患者はBPタイプのハザードにたいして反応速度が遅く、これも損傷脳半球によらなかった。

・TMTでは一般人のタスク完了スピードが脳卒中患者よりもあきらかに速かった。これも損傷脳の左右によらなかった。

脳卒中患者のハザード知覚能力は一般人よりも低く、反応も遅かった。これらは損傷脳の側によらなかった、


というおはなし。

図:ハザード知覚 脳卒中の


感想:

Youtubeに交通事故のドラレコ映像が無数にあがっていて、観始めるととまらなくなる。

ドライバーの気持ちになって動画の先を予測してみる。しかしプリウスがでてくると結末が読める。

2019年4月27日

脳出血の上肢は1-3ヶ月にグイッと回復する


Upper extremity recovery after ischaemic and haemorrhagic stroke- Part of the SALGOT study
2016  12月  スウェーデン
脳卒中後の上肢麻痺はめずらしくなく、その回復はおもに最初の3ヶ月間に起きるとされている。

発症直後は脳梗塞よりも脳内出血で上肢麻痺が重いとするいっぽう、回復は脳出血のほうが脳梗塞よりも良いという報告もある。

そこで、上肢麻痺の1年間の回復パターンを脳梗塞と脳出血とでくわしくしらべてみたそうな。

2019年4月26日

Stroke誌:脳内出血のつぎに脳梗塞になる条件


Five-Year Risk of Major Ischemic and Hemorrhagic Events After Intracerebral Hemorrhage
2019  4月  フランス

脳内出血の再発率は年間1.3-7.4%で、深部出血よりも皮質出血での再発率が高いという。

脳内出血の再発として通常は出血イベントを想定するため、虚血イベントを防ぐための抗血栓療法の扱いに悩むことになる。

そこで、初回脳内出血患者がその後5年間にふたたび脳内出血または脳梗塞をおこす頻度をくわしくしらべてみたそうな。



2004-2009の脳内出血患者患者560人から3ヶ月間生き延びた313人を抽出し、
再発状況を6年間フォローしたところ、



次のようになった。

・この間に85人に再発があり内訳は、虚血イベント54人(脳梗塞33人+冠動脈疾患など)、出血イベント31人(脳内出血24人+消化管出血など)だった。

・5年後の累積再発率はおよそ20%だった。

・虚血イベントは出血イベントよりもおおかった。

・初回脳内出血の位置が深部の場合は虚血イベントの再発がおおく、皮質出血の場合は出血イベントがおおかった。

・初回が深部出血のばあい、5年時点での虚血イベント率は出血イベントの6倍だった。

脳内出血患者は脳の内外で血管イベントを起こすリスクが高かった。その種類は出血部位に影響され、とくに深部出血では虚血イベントとの関連がつよかった、


というおはなし。

図:脳内出血後の虚血、出血イベント率



感想:

データをみると、再発した85人のうち37人(44%)はもともと抗血栓療法をやっていて最初の脳内出血を起こしている。

ほかの論文でもたまに見かけるんだけど、どうやら脳内出血やる患者のはんぶんくらいがサラサラ系のお薬を飲んでいる。

これでおおくの脳梗塞を防いでいるのならまだしも、、、↓
NEJM誌:アスピリンは予防効果ないうえにとても危険

2019年4月25日

終末期にありがちな亡くなりかた


End of life after stroke- A nationwide study of 42,502 deaths occurring within a year after stroke
2018  3月  スウェーデン

自身の死に際しては 自宅で家族に囲まれて迎えたいとおおくのひとが考えている。

脳卒中患者の終末期についての科学論文には呼吸困難や疼痛の緩和 以外では報告がすくない。

経験的に、だれにも看取られずに亡くなる患者が少なくないと思えることから脳卒中患者の看取られ状況を大規模にくわしくしらべてみたそうな。



スウェーデンの3つの関連データベースから、
脳卒中の発症後3ヶ月から1年後までに亡くなった42502人を抽出した。

そのうち16408人については詳細な情報が得られたので解析したところ、



次のことがわかった。

・亡くなった場所は、46%が介護施設、37%が再入院した病院、10%が自宅だった。

・亡くなった者の11%は その死期を予測できていなかった。

・家族に看取られた者の率は49%だった。

・家族や医療スタッフにも看取られなかった(unattended)率は、自宅死の5%、病院死の25%だった。

脳卒中から退院したのに自宅で死を迎えられた者は10%に過ぎず、半数以上に家族は立ち会わなかった。およそ5人に1人はだれにも看取られず亡くなった、



というおはなし。

図:脳卒中の看取ら状況調査



感想:

ドラマのような盛り上がりがないから見守っているほうが疲れちゃうんだろな。

近い将来、病室にネットカメラが設置される。いよいよあぶないと判断したAIが関係者にメールを一斉配信する。
「まもなくライブ終了。いますぐアクセス!」って。

そしておおくの人に見守られて逝ける。

2019年4月24日

TIAから脳卒中になる原因


Long-Term Stroke Recurrence after Transient Ischemic Attack- Implications of Etiology
2019  4月  スペイン

TIA(一過性脳虚血発作)のあと脳卒中がすぐに再発したばあいは、TIAも脳卒中も共通の原因であろうことが容易に想像できる。

しかし年単位の長期の間をおいて脳卒中が再発したばあい、おなじ原因と考えてよいものか実はよくわかっていない。

そこでTIA後の長期の再発とその原因、位置、ダメージについて詳しくしらべてみたそうな。



2005-2016のTIA患者706人について、5年ほどフォローしたところ、



次のことがわかった。

・17.7%に再発がみられ、率は年間100人あたり3.6人だった。

・原因は、複数要因が絡むケースと主幹動脈のアテローム硬化(large-artery atherosclerosis:LAA)が主だった。

・再発の70.4%はTIAの原因と同じもので、LAAが83.9%を占めていた。

・原因不明のTIAのばあい、その再発の62.5%は心原性の塞栓症(cardioaortic embolism )だった。

・再発の59.2%はおなじ位置でおきていた。

・再発の65.6%は、mRSスコアが1以上増えるほどの障害を残すもので、原因によらなかった。

TIAのあとの脳卒中の再発はおもに同じ原因と同じ位置でおきた。しかし原因不明のTIAについては心原性の再発がおおかった。再発ケースの半数以上であらたになんらかの障害が残った、


というおはなし。

図:TIA再発原因の一致と再発率



感想:

どういうわけか日本人では↓小血管疾患がメインの再発原因。
日本人のTIA再発原因1位は

そもそもTIAは原因がわからないはず。だから原因推定は使用できる検査機器におおきく影響される。

高解像度のMRIやCTの台数が日本に突出しているアンバランスさが、より小さく細かいものに原因をもとめる背景になっているんじゃないかな。

2019年4月23日

くも膜下出血経験者の欲求と不満


The self-reported needs of patients following subarachnoid hemorrhage (SAH)
2019  4月  イギリス

イギリスではくも膜下出血は年間10万人あたり9.1人に起き、65%は最初の出血を生き残る。そして60%が回復良好として退院する。

しかし彼らの19%は生活上なんらかの介助を必要とする。さらに生活の質の低下や社会参加 復職上の困難を経験するという。

くも膜下出血経験者をサポートしようにも彼らの具体的な欲求内容とその満足度についての調査がこれまでほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。



くも膜下出血経験者403人(発症後1-2年260人、3-5年143人)にアンケート調査した結果、



次のことがわかった。

・51%から回答があった。平均年齢は55、63%が女性だった。

・86%に1つ以上の欲求(needs)があり、78%はすくなくとも1つの不満(unmet needs)があった。

・もっともおおい欲求項目は、疲労(66%)、記憶(60%)、集中力(59%)、頭痛(58%)、不安(57%)、、だった。

・これらのおもな欲求項目について80%以上が不満足状態にあると報告していた。

くも膜下出血経験者にはいくつかの欲求項目があり、疲労、記憶、集中力などで、それらの大部分は満たされていない状況だった、


というおはなし。

図:くも膜下出血患者の欲求と不満


感想:

疲労、記憶、集中力のもんだいはくも膜下出血にかぎったことではなくTIAをふくむ脳卒中ぜんぱんで言える。


不満といえば、、

ここ数年、ネットのスピードがおそくて夜の混む時間帯は1Mbpsを下回ることもありおおいに不満だった。

ところが先々週ocnから、「IPoEのIPv6が使えるようになりました無料です」とのメールがきたのでよくわからないままに設定したら、
いきなりこれ↓
図:OCNの速度

それいらい混雑時でも500Mbpsはでてる。

ママチャリからフェラーリに乗り換えたような改善で、とうぜん不満は解消した。
Youtubeの4K60fpsライブもとまらずに再生できるようになった。

2019年4月22日

レジリエンスと生活の質


Factors associated with quality of life early after ischemic stroke- the role of resilience
2019  3月  中国

レジリエンス(resilience)は逆境に対する精神的な対処能力を指す。レジリエンスが高いと重い病気にかかってもメンタルヘルスを維持できる能力も高いと考えられている。

しかし一部のがん患者ではレジリエンスとQoLとの関連が見られない、とする報告もある。

そこで脳卒中患者ではどうか、くわしくしらべてみたそうな。

2019年4月21日

片麻痺のライトタッチとバランス


Effects of Light Touch on Balance in Patients with Stroke
2019  4月  韓国

脳卒中患者は足裏の圧力や足首への深部感覚に障害を負うことで立位でのバランスがとても不安定になる。

このとき周囲の固定されたものに手の指先を軽く触れる(ライトタッチ)ことで、その感覚情報が姿勢制御ネットワークに代償的にフィードバックされて姿勢動揺が収まることが知られている。

この効果は閉眼時によりおおきく現れるという報告がある。そこで、床の材質の硬軟でも違いがでるものか実験してみたそうな。



脳卒中患者15人と年齢のマッチする健常者15人について、

圧力センサープレートに立たせて、中心圧力(center of pressure:COP)の動揺面積と前後、左右への速度を測定した。

ライトタッチの有無と、開眼と閉眼、硬い床とスポンジの床 の各々の条件で比較した。



次のようになった。

・両グループともに視覚や床の条件にかかわらずライトタッチによりCOPの動揺面積と速度が低下した。

・ライトタッチの効果のおおきさもグループ間で同じだった。

・姿勢動揺を収める効果はスポンジ床のときによりおおきく観測された。

脳卒中の片麻痺患者にとって周囲の物へのライトタッチは、視覚や床の状況によらず姿勢コントロールに効果的と考えられる、


というおはなし。
図:ライトタッチの効果



感想:

こっちの↓ほうが役にたつひともいる。
片麻痺患者の身体の揺れを簡単に抑えるコツ

2019年4月20日

喫煙やめないひとの再発率


Impact of Smoking Status on Stroke Recurrence
2019  4月  中国

喫煙が脳卒中のリスク要因であることははっきりしている。

脳卒中後の喫煙と再発との関連についてはじつはよくわかっていない。

その理由として喫煙者の分類が調査ごとに統一されていないことが考えられる。

たとえば喫煙経験のある者(former smoker)や脳卒中をきっかけにやめた者(quitter)を非喫煙者(non smoker)としてよいのかという問題がある。

いっぽう中国人の脳卒中の1年後再発率は17.7%、男性の喫煙率は52.9%で非常に高い。

そこで中国での脳卒中後の喫煙状況と再発リスクについてくわしくしらべてみたそうな。



脳卒中患者3069人について、
喫煙状況および再発を平均2.4年間フォローして関連を解析した。

最初の脳卒中の直前に30日以上喫煙をやめていた者をformer smokerとし、

脳卒中後に1ヶ月以上喫煙をやめ、最初のフォローまで禁煙できていた者をquitterとした。

また脳卒中後さいしょのフォローまで喫煙をつづけ、その後禁煙したとしても1ヶ月間続かなかった者を継続喫煙者(persistent smoker)とした。


次のことがわかった。

・この間に9.5%が再発した。

・非喫煙者にくらべ、喫煙経験者(former)の再発リスクは1.16倍で、

・禁煙者(quitter)のそれは1.31倍、

・継続喫煙者(persistent)は1.93倍だった。

・とくに継続喫煙者のうち1日の本数が1-20の場合、再発リスクは1.68倍で、40本以上では2.72倍におよんだ。

最初の脳卒中のあと 喫煙をやめない者の再発リスクは非喫煙者の約2倍で、喫煙本数と用量関係にあった、


というおはなし。
図:喫煙ステータス


感想:

脳卒中ごときにビビらず己の生き方をつらぬく剛の者。こうありたいものだ。

ちなみに上の表みると、脳卒中をきっかけに喫煙を始めるようなひねくれ者(new smoker)はゼロだった。

2019年4月19日

Stroke誌:脳のここをやられるとラテロパルジョン


Lesion Localization of Poststroke Lateropulsion
2019  4月  アメリカ

脳半球が損傷を受けると身体がその反対側に傾きやすくなる。この傾向を lateropulsion(ラテロパルジョン)と言い、特に脳卒中での場合をPusher Syndrome(プッシャー症候群)と呼び、10-60%の脳卒中患者で起きるという。

ラテロパルジョンがあると機能回復がおくれるとされる。経頭蓋磁気刺激などで回復を促すにしても脳のどの位置がラテロパルジョンともっとも関連が強いのか、いまだあきらかでない。

そこで、これまでの研究にない規模で脳の損傷位置とラテロパルジョンとの関連をくわしくしらべてみたそうな。



脳卒中でラテロパルジョンを示す患者50人と、
年齢、性別、発症からの期間、身体能力のいっちするラテロパルジョンのない別の50人の脳卒中患者について、

脳の損傷位置をすべて右の脳半球にマッピングしてラテロパルジョンともっとも関連の強い部位を解析した。

ラテロパルジョンの評価は "Burke Lateropulsion Scale"を使用した。



次のことがわかった。

・ラテロパルジョンともっとも関連のつよい部位は下頭頂小葉で、中心後回のブロードマン領野2から40にかけての範囲だった。

・ラテロパルジョンの患者は脳の損傷ボリュームが大きかった。

ラテロパルジョンと関連のつよい脳卒中の損傷部位は、体性感覚-視覚-前庭感覚の統合を司るとされる「下頭頂小葉」だった。ラテロパルジョンの患者は損傷体積もおおきかった、


というおはなし。
図:ラテロパルジョンが起きる脳の位置


感想:

プッシャーだとふなっしーみたい。ラテロパルジョンのほうが響きがいい。

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