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2019年4月14日

難聴と脳卒中との関係


Hearing loss is associated with increased stroke risk in the Dongfeng-Tongji Cohort
2019  3月  中国

難聴は60歳以上の3分の2にみられるという。しかし難聴と脳卒中との関連についての調査はわずかである。

これまでの調査では サンプル数がすくなく、自己申告によっていたり、難聴の程度を評価していなかった。

そこで難聴と脳卒中との関連をくわしくしらべてみたそうな。



平均年齢65の19238人について、

難聴の程度を、正常、軽度、中度、重度、に分類した。

難聴検査は会話周波数(0.5,1,2kHz)および高周波数(4,8kHz)のビュアトーンを用いて、ギリギリ聴こえる音量(dB)で判定した。

その後の脳卒中との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・難聴レベルがひどくなるにしたがい、脳卒中の有病率も高まった。

・正常者にくらべ重症難聴者の脳卒中リスクは会話周波数のばあいで1.76倍、高周波数のばあい1.39倍で、

・脳梗塞に限定すると、それぞれ1.69倍、1.52倍、

・脳出血では それぞれ2.23倍、1.04倍だった。

難聴と脳卒中リスクは用量関係にあった、


というおはなし。
図:難聴度と脳卒中リスク


感想:

これまでの難聴関連記事を見返すとなぜか ぜんぶアジア由来で突発性だった。

突発性難聴と脳梗塞

突発性難聴と脳卒中との関連があきらかに

めまいや突発性難聴は脳卒中のサインなのか?

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2019年4月13日

コレステロールと中性脂肪を下げてはいけない理由


Lipid levels and the risk of hemorrhagic stroke among women
2019  4月  アメリカ

高コレステロール血症は脳梗塞のリスク要因の1つである。いっぽう総コレステロールやLDLコレステロールが低いと脳出血リスクが高まるとするメタアナリシスがある。

さらにスタチン研究のメタアナリシスではLDLコレステロールを1mmol/L 下げると脳出血リスクが15%上昇することが示されている。

しかしこれら研究のおおくでは女性や脂質レベルのことなるサンプルの数がすくないので、大規模にくわしくしらべてみたそうな。



Women’s Health Study から女性27937人について
血中脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)の量を測定し、

脳出血(脳内出血とくも膜下出血)の発生を20年間ほどフォローして関連を解析したところ、



次のようになった。

・この間に137人が脳出血を起こした。

・LDLコレステロールは、100-129.9 mg/dLにくらべ 70未満だと脳出血リスクが2.17倍だった。

・LDLコレステロールが130-159.9 mg/dL や70-99.9 mg/dL のグループでは脳出血のあきらかなリスク上昇はみられなかった。

・中性脂肪がもっとも低いグループはもっとも高いグループにくらべ脳出血リスクが2.00倍だった。

・総コレステロールやHDLコレステロールと脳出血との有意な関連はみられなかった。

LDLコレステロールが70mg/dL未満もしくは中性脂肪が低い者の脳出血リスクはあきらかに高かった、


というおはなし。
図:LDLコレステロールと中性脂肪と女性の脳出血


感想:

ちなみにLDLが160を超えるとくも膜下出血リスク0.66倍に下がるんだって。

じぶんの脳内出血も脂質の下げすぎが原因の1つと確信し 反省している。

2019年4月12日

nature.com:日本人の食物繊維と脳卒中


Relationship between carbohydrate and dietary fibre intake and the risk of cardiovascular disease mortality in Japanese- 24-year follow-up of NIPPON DATA80
2019  4月  日本

炭水化物はひとのおもなエネルギー源である。炭水化物のとりすぎは脂質や血糖の上昇をまねき脳卒中の原因となる。いっぽう炭水化物が少なすぎても総死亡率が高くなるという。

炭水化物をすすんで摂るべきか、制限するべきかについては その質もまた問題にするべきである。

炭水化物は食物繊維と糖質(デンプンや砂糖)から成る。食物繊維には動脈硬化や血糖 コレステロール 血圧を改善する効果が知られている。

そこで、炭水化物の成分ごとに心血管疾患(脳卒中、冠動脈疾患)死亡リスクとの関連を日本人についてくわしくしらべてみたそうな。



30-79歳の男女8925人を24年間フォローした国民栄養調査のデータを使用して解析したところ、



次のことがわかった。

・食物繊維をほとんど摂らないグループに比べもっとも多く摂るグループの心血管疾患死亡リスクは男性で0.64倍だった。女性で有意な関連は確認できなかった。

・脳卒中による死亡リスクに限定すると、食物繊維をほとんど摂らないグループに比べもっとも多く摂るグループの脳卒中死亡リスクは女性で0.61倍だった。男性で有意な関連は確認できなかった。

・炭水化物、糖質、でんぷんと心血管疾患死亡リスクとの関連は確認できなかった。

炭水化物の構成成分の1つである食物繊維を多く摂ると、脳卒中など心血管疾患で死亡するリスクがあきらかに低下する、


というおはなし。
図:食物繊維と炭水化物


感想:

この調査結果から推奨される食物繊維量は1日に18-20g。

ちなみに日本人の平均摂取量は1952年が20.5gで、2015年は14.5g だったようだ。

2019年4月11日

頸動脈プラークとsdLDLコレステロール


Correlation between of small dense low-density lipoprotein cholesterol with acute cerebral infarction and carotid atherosclerotic plaque stability
2019  4月  中国

アテローム性の頸動脈硬化症は急性脳梗塞のおもな原因と考えられ、とくにプラークの安定性が鍵であるとされている。

これまで動脈硬化の数ある要因のうち、LDLコレステロールの影響がもっともおおきいと考えられてきたが、さいきんの研究ではかならずしもそうではないことがわかってきた。

LDLコレステロールは粒子の大きさや含有コレステロール量により さらに数種類に分けることができて、それらのうちとくに小粒子・高密度低比重リポ蛋白(small dense low‐density lipoprotein:sdLDL)コレステロールが いままでのLDLコレステロールよりも動脈硬化をおこす力が強いとする報告がつぎつぎとあがっている。

そこでsdLDLコレステロールと急性脳梗塞およびプラーク安定性との関連を大規模にしらべてみたそうな。



急性脳梗塞患者519人について頸動脈の造影超音波画像と狭窄度から次の3グループに分けた。

1)プラークなし:95人
2)狭窄50%未満+安定プラーク:108人
3)狭窄50%以上+不安定プラーク:316人

血液検査の結果(TC, TG, HDL-C, LDL-C, sdLDL-C)を健常者300人とくらべたところ、



次のことがわかった。

・急性脳梗塞のsdLDLコレステロールは、その量およびLDLコレステロールとの比においてあきらかに健常者よりも高く、独立したリスク要因と考えられた。

・sdLDLコレステロールの量は、不安定プラーク>安定プラーク>プラークなし、の順におおかった。

・sdLDLコレステロールを変数として不安定プラークを予測するROCカーブでは曲線下面積は0.695で、36.80 mg/dLを超えると不安定プラークと考えられた。

sdLDLコレステロールは急性脳梗塞の独立したリスク要因であり、頸動脈プラークの不安定性と正の相関があった、


というおはなし。
図:sdLDLコレステロールと急性脳梗塞


感想:

「sdLDLコレステロール」をはじめて知った。

2019年4月10日

ランセット誌:適量などない!酒は脳卒中のもと


Conventional and genetic evidence on alcohol and vascular disease aetiology : a prospective study of 500 000 men and women in China
2019  4月  中国

アルコールの危険性を示す多くの研究があるいっぽう、ほどほどに飲酒したほうが脳卒中予防に良いとする観察結果も数多く存在する。

これがなにかのバイアスや別の要因によるものではなく本当に因果関係によるものなのかを確かめる方法として、関係する遺伝子の変異(一塩基多型)を変数とするメンデルランダム化解析(mendelian randomization analysis)がある。

アルコールはその代謝過程でアセトアルデヒドに変換され、さらに分解される。
この過程に関与する遺伝子に変異があるとアルコールの代謝が進まず多くの酒を呑むことができない。

この遺伝子変異にはいくつかの種類があって、とくにアジア人におおい。そしてこれら遺伝子変異と実際の飲酒量との関連もあきらかになっている。

そこで アルコール摂取量と脳卒中リスクとの関連を、従来型の自己申告による飲酒量に基づく場合と、遺伝子変異から推定される飲酒量を使った場合とでくらべてみたそうな。



中国人男女50万人あまりが登録する カドーリバイオバンク(Kadoorie Biobank) のデータを用いた。
アルコール代謝に関連する遺伝子変異を2種類えらび、被験者を抽出した。

脳卒中の発生を10年間フォローした結果と、

アンケートによる飲酒量との関連を従来型解析し、
さらに遺伝子変異から推定した飲酒量との関連をメンデルランダム化解析したところ、



次のことがわかった。
・男性の33%、女性の2%が頻繁に飲酒していた。

・自己申告による飲酒量の場合、脳卒中発生率との関連はU字型をしめし、週に100g程度のアルコールを摂ったときにもっとも脳卒中リスクが低かった。

・遺伝子変異から推定した飲酒量のばあい、脳卒中発生率とは正の直線的関連になり U字型にはならず、

・とくに脳内出血との関連が強かった。

・心筋梗塞および女性ではサンプルが少なく、これらの関連は確認できなかった。

・いずれのモデル(自己申告と遺伝推定)でも飲酒量と血圧のつよい正の相関がみられた。

ほどほどの飲酒が脳卒中を防ぐかのように見える現象について、大規模な遺伝疫学的解析によると そこに因果関係はなかった。アルコール摂取による血圧上昇だけが認められた、


というおはなし。
図:飲酒量と脳卒中リスク


感想:

飲んだら飲んだぶんだけダメージになるってこと。

まったく酒をのまないグループには身体が弱く病気がちなひとが多かっただけだから(reverse causality)U字型にみえるのかもしれんね。

2019年4月9日

磁気刺激上肢リハビリに運動イメージ訓練を足してみた


The Effects of Combined Low Frequency Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation and Motor Imagery on Upper Extremity Motor Recovery Following Stroke
2019  2月  中国

脳卒中の上肢麻痺を改善する方法として、経頭蓋磁気刺激rTMSと運動イメージ訓練MIがある。

いずれも非侵襲的でかつ楽な姿勢でできるので重度の麻痺や慢性期であっても可能である。

これら手法を組み合わせたときの効果を検証してみたそうな。


慢性期脳卒中で上肢麻痺の患者42人をつぎの2グループに分けた。

実験グループ)rTMS+MI
コントロール)rTMS+環境音でリラックス

rTMSは病変と対側の運動野に1Hzの刺激。
MIは録音された指示にしたがって想像上で上肢を動かし日常生活動作の具体的動作を思い描くこと30分間。

これを2週間に合計10セッションおこなった。

上肢機能を4種類の指標(WMFT,UE FMA,BBT,MBI)で評価し、4週間後までフォロー比較したところ、



次のようになった。

・両グループともにすべての評価項目で改善した。

・改善効果は4週間後まで持続していた。

・とくに、運動イメージ訓練を加えた実験グループで改善著しかった。

低周波数の磁気刺激に運動イメージ訓練を加えたところ、磁気刺激のみよりもおおきく改善した、


というおはなし。

図:脳卒中の運動イメージ上肢訓練


感想:

高価な磁気刺激装置を買ったはいいが、ぜんぜん効果がないとわかり しかたなくMIと混ぜて結果をひねりだしたという感じ。

磁気刺激の上肢リハビリは根拠なしってことですでに↓結論でてる。
[結論] rTMSの上肢リハビリ効果について

数ある上肢リハビリのなかで↓ 運動イメージ訓練(メンタルプラクティス)だけが最後の希望。
Stroke誌:上肢リハビリ 良い方法 & ダメな方法

2019年4月8日

ヨーガのポーズで脳梗塞


Maryland woman suffers stroke after tearing artery during yoga pose - Fox News
2019  3月  アメリカ

SNSで自慢するためにヨーガのポーズをがんばったところ脳卒中になってしまった女性がいたそうな。

・メリーランド州の女性 レイ(Leigh)は2017の10月に ヨーガの “hollowback handstand”という逆立ちポーズのSNS投稿を試みた。

・ところがその直後、視界がぼやけ腕のコントロールがきかなくなった。

・これが5分間ほどつづいたあと、頭痛がはじまった。

・当初、椎間板を痛めたか いつもの偏頭痛とおもっていた。

・数日後、まぶたが垂れ下がり、瞳孔の左右サイズがことなっていることに気づいて病院へ行った。

・検査結果は脳卒中だった。CTアンギオによると右の頸動脈の一部が裂けていた。それが原因の血栓が脳に飛んだと考えられた。

・また血管が裂けたために小さな動脈瘤も発生したとのことだった。

・頸動脈の一部が裂けるきっかけとして、交通事故や頚椎操作、スケート、水泳、ダンス、くしゃみなどでも起きうるという。

・これら患者には通常抗血栓療法が行われる。

・レイは数週間にわたりベッドを離れられず、食事の介助も必要な状態がつづいた。

・若干の後遺症と再発のおそれはあるものの退院したのちは ストレッチ程度のむりのないポーズでヨーガを続けている、


というおはなし。
図:ホロウバックハンドスタンドhollowback handstand


感想:

自撮りに失敗して崖からおちたり交通事故にあったりというはなしをよく耳にする。ヨーガが、というよりはSNSに煽られる虚栄心の問題とおもう。

2019年4月7日

Stroke誌:脳梗塞の感覚障害


Somatosensory Deficits After Ischemic Stroke
2019  4月  ドイツ

感覚障害は脳卒中患者の25-85%にみられるという。しかし臨床シーンでは運動機能の回復に重点がおかれるため感覚障害はみすごされることがおおい。

脳卒中後の感覚障害について、その種類、頻度、病変位置との関係、回復過程についての報告はすくないので大規模にくわしくしらべてみたそうな。



急性期の脳梗塞患者101人の両手について、
RASP(Rivermead Assessment of Somatosensory Performance)感覚評価をおこない12ヶ月後までフォローした。

MRIの病変位置との関連を解析した。

RASPでは、
tactile (触覚)と、
proprioceptive(固有感覚)であるpressure(圧力), light touch(軽い接触), sharp-dull discrimination(鋭鈍識別), temperature discrimination(温度識別), sensory extinction(感覚消失), 2-point discrimination(2点弁別), joint position(関節位置) and movement sense(移動感覚)についてテストした。



次のことがわかった。

・59.4%の麻痺側の手にすくなくとも1種類以上の感覚障害があった。

・軽い接触の障害は38.7%でもっとも頻度が高く、

・温度識別は21.8%でもっとも頻度が低かった。

・3ヶ月後、すべての評価項目であきらかな回復が進み、12ヶ月後ではつづく回復度はわずかだった。

・一次 二次体性感覚野および島皮質へのダメージと感覚障害にあきらかな関連があった。
脳梗塞患者のおよそ60%になんらかの感覚障害があった。この回復のだいぶぶんは3ヶ月間におきた。一次 二次体性感覚野と島皮質が感覚障害と強く関連していた、



というおはなし。
図:脳梗塞患者の感覚機能


感想:

いまなお手の触覚や温度感覚が非常に弱い。混んだバスで知らずのうちにどこかのおっさんの手にしっかりと自分の手を重ねていたことがあった。
とても気まずかったおもいで。

2019年4月6日

所得格差と脳卒中後の死亡


Social Inequality by Income in Short- and Long-Term Cause-Specific Mortality after Stroke
2019  3月  デンマーク

いっぱんに社会経済的地位が低いと死亡リスクが高い。しかし脳卒中患者については所得格差と死亡リスクとの関連について一致した見解が得られていない。

低所得の脳卒中患者は飲酒や喫煙習慣の率が高い。これらのライフスタイル要因を慣例にしたがい統計解析で調整してしまうと、低所得なのに酒もタバコもやらないグループを想定することになりリアリティに欠ける。

そこで年齢と性別のみを調整し、さらに脳卒中患者の死亡原因を脳卒中や総死亡だけでなくがんや心臓病 他もふくめて所得格差との関連を大規模にしらべてみたそうな。



デンマーク国民をカバーするデータベースを用いて、
2003-2012のすべての脳卒中患者60503人を抽出した。

最長9年間フォローして 5段階に分けた所得格差と死亡原因との関連を解析したところ、



次のようになった。

・フォロー中に34.6%が死亡した。

・内訳は脳卒中が13.2%、心臓病7.0%、がん5.0%、その他9.2%だった。

・長期の死亡率はすべての死亡原因で所得と逆相関にあった。

・5年後の低所得グループの死亡率は高所得グループよりも15.5%高かった。

・1年内の短期の死亡率と所得との関連は小さく有意なレベルではなかった。

所得格差の死亡率への影響は脳卒中患者が脳卒中で死亡するばあいのみならず他の疾患での死亡にも同様に反映されていた。特に長期の死亡率は低所得グループで15%高かった。いっぽう短期死亡率には所得格差の影響はみられなかった、


というおはなし。

図:収入と脳卒中患者の脳卒中による死亡の短長期トレンド


感想:

だとすると じぶんはとっくに死んでいてもおかしくないはず。

2019年4月5日

Stroke誌:脳動脈瘤の破裂を防ぐ刺激方法とは


Noninvasive Vagus Nerve Stimulation Prevents Ruptures and Improves Outcomes in a Model of Intracranial Aneurysm in Mice
2019  4月  日本

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は死亡率が非常に高く 重い障害を残す可能性がある。

脳動脈瘤の発生から成長、破裂その後の回復には炎症反応がおおきく関与していると考えられている。

薬物的に炎症を抑えて動脈瘤の生成を抑える動物実験はあるものの、臨床応用には至っていない。

いっぽうてんかんやうつの治療に用いられている迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation:VNS)療法には抗炎症効果が期待できることがわかっている。しかし刺激装置を体内に埋め込む必要があったため臨床応用の壁になってきた。

さいきんになって非侵襲的に皮膚のうえから頸部の迷走神経を刺激する装置が認可された。

そこでこの装置をつかってVNSが頭蓋内脳動脈瘤の破裂と予後におよぼす影響を動物でくわしく実験してみたそうな。



軽症高血圧と重症高血圧にしたネズミについて、
タンパク質分解酵素を脳脊髄液に注入して脳動脈瘤の発生をうながした。

並行して経皮的な頸部迷走神経への電気刺激VNSを20日間おこなった。

VNSは1日に2分間の刺激を5分あけて2回おこなった。
コントロールとして同様の刺激を大腿神経に対して行いFNSとした。

脳動脈瘤の破裂率、生存率、などをくらべたところ、



次のことがわかった。

・軽症高血圧では破裂率は29% vs. 80%でVNSが非常に低かった。

・くも膜下出血の重症度もまたVNSが低かった。

・重症高血圧では破裂率は77% vs. 85% でいずれも高かった。

・しかし生存日数の中央値は 13日 vs. 6日と、あきらかにVNSが長く、くも膜下出血の重症度によらなかった。

・VNSを継続することにより脳動脈瘤の発生要因の1つと考えられるタンパク質分解酵素MMP-9の発現がFNSよりも減少していた。

迷走神経刺激は脳動脈瘤の破裂率を低下させ 破裂後の生存率をも改善できる、


というおはなし。
図:迷走神経刺激と脳動脈瘤破裂


感想:

迷走神経刺激方法として、頸動脈洞マッサージ、ヴァルサルヴァ手技、冷たい水で顔を洗う、眼球を押す、などがある。

副交感神経を支配していることから、深呼吸や瞑想でリラックスしても似たような効果が得られるんじゃないかと思う。

もしくは今回使用した装置↓をつかう。
gammaCore device (electroCore, BaskingRidge, NJ).


これほどまでに破裂を防げるのなら、命がけでクリップやコイル手術を受ける必要ないね。
Stroke誌:高齢重症くも膜下出血を手術する理由?

Stroke誌:クモ膜下出血で手術をしなかったときの死亡率


[迷走神経刺激]の関連記事

2019年4月4日

リハビリをうながすための睡眠介入方法


Systematic Review Investigating the Effects of Nonpharmacological Interventions During Sleep to Enhance Physical Rehabilitation Outcomes in People With Neurological Diagnoses
2019  4月  アメリカ

脳卒中後のリハビリ訓練で学習した運動感覚は数時間から数週間かけて記憶として固定される。

この記憶固定に睡眠が重要な役割をはたしていると考えられるいっぽう、脳卒中患者のおおくは睡眠障害を経験する。

睡眠中にはたらきかけ運動感覚の記憶固定をうながす有効な方法がみつかればそれはリハビリ法としても期待できるはずである。

そこで、これまでの研究から非薬物的に脳損傷患者の睡眠に介入する呼吸療法や脳刺激療法についてシステマティックレビューをこころみたそうな。



関連する論文タイトル2287件を厳選して101件についてフルテキストを精査し 9件の研究に絞った。



次のことがわかった。
・脳卒中患者等を対象とした 持続陽圧呼吸療法:CPAP(continuous positive airway pressure )に関するRCT論文のみがみつかった。

・長期に外来患者をフォローしたものもあったが、

・効果測定の方法が障害、身体活動、社会参加など研究ごとにおおきくことなっていた。

・しかし早期の脳卒中の回復に有効であるとする研究も複数みられた。

・具体的リハビリ方法やCPAPの順守率についての情報が欠けていた。

脳卒中患者の睡眠に介入できる非薬物療法としてCPAPのみがリハビリをうながす効果をしめしていた。今後きたいできる方法として睡眠中のTMS、tDCS、リズム聴覚刺激や、嗅覚刺激で記憶固定をはかるTMR(Targeted Memory Reactivation)のエビデンスが散見される、


というおはなし。
図:CPAP



感想:

睡眠はだいじなんよ。
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ
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