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2019年4月7日

Stroke誌:脳梗塞の感覚障害


Somatosensory Deficits After Ischemic Stroke
2019  4月  ドイツ

感覚障害は脳卒中患者の25-85%にみられるという。しかし臨床シーンでは運動機能の回復に重点がおかれるため感覚障害はみすごされることがおおい。

脳卒中後の感覚障害について、その種類、頻度、病変位置との関係、回復過程についての報告はすくないので大規模にくわしくしらべてみたそうな。



急性期の脳梗塞患者101人の両手について、
RASP(Rivermead Assessment of Somatosensory Performance)感覚評価をおこない12ヶ月後までフォローした。

MRIの病変位置との関連を解析した。

RASPでは、
tactile (触覚)と、
proprioceptive(固有感覚)であるpressure(圧力), light touch(軽い接触), sharp-dull discrimination(鋭鈍識別), temperature discrimination(温度識別), sensory extinction(感覚消失), 2-point discrimination(2点弁別), joint position(関節位置) and movement sense(移動感覚)についてテストした。



次のことがわかった。

・59.4%の麻痺側の手にすくなくとも1種類以上の感覚障害があった。

・軽い接触の障害は38.7%でもっとも頻度が高く、

・温度識別は21.8%でもっとも頻度が低かった。

・3ヶ月後、すべての評価項目であきらかな回復が進み、12ヶ月後ではつづく回復度はわずかだった。

・一次 二次体性感覚野および島皮質へのダメージと感覚障害にあきらかな関連があった。
脳梗塞患者のおよそ60%になんらかの感覚障害があった。この回復のだいぶぶんは3ヶ月間におきた。一次 二次体性感覚野と島皮質が感覚障害と強く関連していた、



というおはなし。
図:脳梗塞患者の感覚機能


感想:

いまなお手の触覚や温度感覚が非常に弱い。混んだバスで知らずのうちにどこかのおっさんの手にしっかりと自分の手を重ねていたことがあった。
とても気まずかったおもいで。

2019年4月6日

所得格差と脳卒中後の死亡


Social Inequality by Income in Short- and Long-Term Cause-Specific Mortality after Stroke
2019  3月  デンマーク

いっぱんに社会経済的地位が低いと死亡リスクが高い。しかし脳卒中患者については所得格差と死亡リスクとの関連について一致した見解が得られていない。

低所得の脳卒中患者は飲酒や喫煙習慣の率が高い。これらのライフスタイル要因を慣例にしたがい統計解析で調整してしまうと、低所得なのに酒もタバコもやらないグループを想定することになりリアリティに欠ける。

そこで年齢と性別のみを調整し、さらに脳卒中患者の死亡原因を脳卒中や総死亡だけでなくがんや心臓病 他もふくめて所得格差との関連を大規模にしらべてみたそうな。



デンマーク国民をカバーするデータベースを用いて、
2003-2012のすべての脳卒中患者60503人を抽出した。

最長9年間フォローして 5段階に分けた所得格差と死亡原因との関連を解析したところ、



次のようになった。

・フォロー中に34.6%が死亡した。

・内訳は脳卒中が13.2%、心臓病7.0%、がん5.0%、その他9.2%だった。

・長期の死亡率はすべての死亡原因で所得と逆相関にあった。

・5年後の低所得グループの死亡率は高所得グループよりも15.5%高かった。

・1年内の短期の死亡率と所得との関連は小さく有意なレベルではなかった。

所得格差の死亡率への影響は脳卒中患者が脳卒中で死亡するばあいのみならず他の疾患での死亡にも同様に反映されていた。特に長期の死亡率は低所得グループで15%高かった。いっぽう短期死亡率には所得格差の影響はみられなかった、


というおはなし。

図:収入と脳卒中患者の脳卒中による死亡の短長期トレンド


感想:

だとすると じぶんはとっくに死んでいてもおかしくないはず。

2019年4月5日

Stroke誌:脳動脈瘤の破裂を防ぐ刺激方法とは


Noninvasive Vagus Nerve Stimulation Prevents Ruptures and Improves Outcomes in a Model of Intracranial Aneurysm in Mice
2019  4月  日本

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は死亡率が非常に高く 重い障害を残す可能性がある。

脳動脈瘤の発生から成長、破裂その後の回復には炎症反応がおおきく関与していると考えられている。

薬物的に炎症を抑えて動脈瘤の生成を抑える動物実験はあるものの、臨床応用には至っていない。

いっぽうてんかんやうつの治療に用いられている迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation:VNS)療法には抗炎症効果が期待できることがわかっている。しかし刺激装置を体内に埋め込む必要があったため臨床応用の壁になってきた。

さいきんになって非侵襲的に皮膚のうえから頸部の迷走神経を刺激する装置が認可された。

そこでこの装置をつかってVNSが頭蓋内脳動脈瘤の破裂と予後におよぼす影響を動物でくわしく実験してみたそうな。



軽症高血圧と重症高血圧にしたネズミについて、
タンパク質分解酵素を脳脊髄液に注入して脳動脈瘤の発生をうながした。

並行して経皮的な頸部迷走神経への電気刺激VNSを20日間おこなった。

VNSは1日に2分間の刺激を5分あけて2回おこなった。
コントロールとして同様の刺激を大腿神経に対して行いFNSとした。

脳動脈瘤の破裂率、生存率、などをくらべたところ、



次のことがわかった。

・軽症高血圧では破裂率は29% vs. 80%でVNSが非常に低かった。

・くも膜下出血の重症度もまたVNSが低かった。

・重症高血圧では破裂率は77% vs. 85% でいずれも高かった。

・しかし生存日数の中央値は 13日 vs. 6日と、あきらかにVNSが長く、くも膜下出血の重症度によらなかった。

・VNSを継続することにより脳動脈瘤の発生要因の1つと考えられるタンパク質分解酵素MMP-9の発現がFNSよりも減少していた。

迷走神経刺激は脳動脈瘤の破裂率を低下させ 破裂後の生存率をも改善できる、


というおはなし。
図:迷走神経刺激と脳動脈瘤破裂


感想:

迷走神経刺激方法として、頸動脈洞マッサージ、ヴァルサルヴァ手技、冷たい水で顔を洗う、眼球を押す、などがある。

副交感神経を支配していることから、深呼吸や瞑想でリラックスしても似たような効果が得られるんじゃないかと思う。

もしくは今回使用した装置↓をつかう。
gammaCore device (electroCore, BaskingRidge, NJ).


これほどまでに破裂を防げるのなら、命がけでクリップやコイル手術を受ける必要ないね。
Stroke誌:高齢重症くも膜下出血を手術する理由?

Stroke誌:クモ膜下出血で手術をしなかったときの死亡率


[迷走神経刺激]の関連記事

2019年4月4日

リハビリをうながすための睡眠介入方法


Systematic Review Investigating the Effects of Nonpharmacological Interventions During Sleep to Enhance Physical Rehabilitation Outcomes in People With Neurological Diagnoses
2019  4月  アメリカ

脳卒中後のリハビリ訓練で学習した運動感覚は数時間から数週間かけて記憶として固定される。

この記憶固定に睡眠が重要な役割をはたしていると考えられるいっぽう、脳卒中患者のおおくは睡眠障害を経験する。

睡眠中にはたらきかけ運動感覚の記憶固定をうながす有効な方法がみつかればそれはリハビリ法としても期待できるはずである。

そこで、これまでの研究から非薬物的に脳損傷患者の睡眠に介入する呼吸療法や脳刺激療法についてシステマティックレビューをこころみたそうな。



関連する論文タイトル2287件を厳選して101件についてフルテキストを精査し 9件の研究に絞った。



次のことがわかった。
・脳卒中患者等を対象とした 持続陽圧呼吸療法:CPAP(continuous positive airway pressure )に関するRCT論文のみがみつかった。

・長期に外来患者をフォローしたものもあったが、

・効果測定の方法が障害、身体活動、社会参加など研究ごとにおおきくことなっていた。

・しかし早期の脳卒中の回復に有効であるとする研究も複数みられた。

・具体的リハビリ方法やCPAPの順守率についての情報が欠けていた。

脳卒中患者の睡眠に介入できる非薬物療法としてCPAPのみがリハビリをうながす効果をしめしていた。今後きたいできる方法として睡眠中のTMS、tDCS、リズム聴覚刺激や、嗅覚刺激で記憶固定をはかるTMR(Targeted Memory Reactivation)のエビデンスが散見される、


というおはなし。
図:CPAP



感想:

睡眠はだいじなんよ。
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2019年4月3日

Stroke誌:睡眠呼吸障害と脳梗塞の再発


Sleep-Disordered Breathing Is Associated With Recurrent Ischemic Stroke - Stroke
2019  2月  アメリカ

睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing:SDB)は脳卒中患者に高率でみられ、中枢性の無呼吸症よりも閉塞性のものがおおい。

また睡眠呼吸障害は脳卒中のリスク要因としておおくの報告があり、死亡リスクや人種とも関連があるといわれている。
しかし脳卒中の再発リスクとの関連については報告がすくない。

そこで睡眠呼吸障害と脳卒中の再発、死亡、人種との関連を大規模にしらべてみたそうな。


平均年齢65の脳梗塞患者842人について
自宅で睡眠呼吸障害の測定ができる装置(ApneaLink Plus)をあたえた。

1時間あたりの無呼吸または低呼吸イベント数を、respiratory event index (REI)スコアとし、10以上を睡眠呼吸障害とした。

590日前後のフォロー期間中に発生した脳卒中の再発 死亡との関連を解析したところ、



次のようになった。

・REIスコアの中央値は14で、63%が睡眠呼吸障害SDBだった。

・SDBは男性、白人よりもメキシコ系アメリカ人、非喫煙、糖尿病、高血圧、肥満におおかった。

・この間に11%が脳卒中を再発し、13%が死亡した。

・REIスコアが1つ増えると再発リスクは1.02倍になったが、

・死亡リスクと関連はなかった。

脳卒中患者の睡眠呼吸障害は再発と関連していたが死亡との関連はなかった、


というおはなし。

図:睡眠呼吸障害


感想:

睡眠中の呼吸改善で再発予防になるかは不明だそう。

2019年4月2日

日本人のTIA再発原因1位は


Small vessel occlusion is a high-risk etiology for early recurrent stroke after transient ischemic attack
2019  3月  日本

この10年でTIAはこれまで考えられていたよりも脳卒中リスクが高いことがわかってきた。

TIAの原因について 欧米の調査ではアテローム血栓性(large artery atherosclerosis:LAA)がもっともおおい。いっぽう東アジアの調査はすくなく、ラクナ梗塞でもある小血管疾患(Small vessel occlusion:SVO)のそれがおおいとする報告がある。

そこで、SVOタイプのTIAが つづく脳卒中の再発原因としてどの位置にいるものかくわしくしらべてみたそうな。




一過性脳虚血発作の国内多施設共同前向き観察研究 PROspective Multicenter registry to Identify Subsequent cardiovascular Events after TIA (PROMISE-TIA) の1320人のTIA患者の記録から

30日以内に脳卒中を起こした患者を抽出して解析したところ、



次のことがわかった。

・TIA 1320人の原因として、SVOが322人、LAA 259人、CE(cardioembolism:心原性脳塞栓)231人、その他 508人と推定された。

・そして61人(4.6%)が30日以内に再発し脳卒中になった。

・その再発率は、SVOタイプが7.8%ともっとも高く、ついでLAA 5.4%だった。

・再発脳卒中にあきらかに関連する要因として、SVOタイプのTIAの経験、収縮期血圧、3時間以内の入院、が確認でき、

・とくに脳の深部にラクナ梗塞がある場合に再発リスクが非常に高かった。
ラクナ梗塞タイプのTIA患者で脳の深部にそれがあるばあい、まもなく脳卒中を起こすリスクが他のTIAよりも高かった、



というおはなし。

図:再発するTIAの原因別


感想:

なぜかTIAから3時間以内に入院してきた患者の再発リスクが2.21倍も高かった。たぶんこういうこと。↓

すぐに救急車よぶようなひとはこの方面への意識がとても高い。とうぜん退院後も再発を待ち構えているはずで、
わずかな違和感でも「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」とばかりに119するから。

もしくはうっかりt-PAを喰らって脳出血になるパターン。
急いで病院に行くと脳卒中でもないのに血栓溶解治療されてしまう危険性について

2019年4月1日

抗凝固薬の中断から脳梗塞になるまでの日数


Ischemic stroke during anticoagulant interruption by healthcare professionals in stroke patients with atrial fibrillation
2019  3月  日本

心房細動患者のおおくには抗凝固療法がすすめられている。そして抗凝固薬使用者のおよそ30%が 手術や検査、出血事象などにより薬の服用を一時的に中断する経験をしている。

しかし抗凝固薬をどのタイミングでどういう手順で中断し、代替薬を与えるべきか など実はよくわかっていない。

そこで抗凝固薬を中断したのち脳梗塞を起こす頻度や日数をくわしくしらべてみたそうな。



心房細動で抗凝固療法をうけていて急性脳梗塞になった患者561人について、

抗凝固薬を中断したのち30日以内に脳梗塞になった者を抽出して特徴をしらべたところ、




次のことがわかった。

・21人(3.7%)が薬の中断中に脳梗塞になった。このうち12人はワルファリンなどのビタミンK拮抗型の抗凝固薬(VKA)を、9人がダビガトランなどの直接経口抗凝固薬(DOAC)を使用していた。

・かれらの重症度や機能回復度は抗凝固療法を受けていないグループとあきらかな差はなかった。

・薬を中断してから脳梗塞になるまでの日数は、VKAグループが10日前後に対し DOAC使用者は3日と短かった。

・薬を中断する主な理由は手術や検査などだった。

・82%にガイドラインの逸脱が疑われた。

心房細動で脳梗塞になった患者のうち、抗凝固療法を中断したがゆえの脳梗塞は3.7%だった。脳梗塞は薬の中断後はやくに起き、とくに直接経口抗凝固薬の中断ではやかった。たしかなガイドラインがもとめられている、


というおはなし。

図:抗凝固療法の中断から脳梗塞までの日数


感想:

抗凝固薬ってこわいイメージがあったけど、さいきんは抗血小板薬のほうが危険なことがわかってきたので「ふーん」って感じ。
NEJM誌:アスピリンは予防効果ないうえにとても危険


メモ:

「令和」ときいてレイア姫を連想し ワクワクがとまらない。

2019年3月31日

脳梗塞で失われる年数


Estimating Years of Life Lost Due to Cardiovascular Disease in Japan
2019  3月  日本
日本では心血管疾患が全死亡原因の28%を占める。

このうちアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)である心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患の患者に要するコストは1人あたり7000ドルに達するという。

これら社会コストを評価する別の指標として、死亡が早まることにより損失する年数 YLL(years of life lost)がある。

そこでASCVDのYLLを推定してみたそうな。


世界の疾病負担研究(Global Disease Burden study)についての保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation:IHME)のデータベースおよび、
厚生労働省の背景死亡データをもちいて解析したところ、



次のことがわかった。

・心筋梗塞と脳梗塞の患者平均年齢はそれぞれ74、70で、

・ASCVD(心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患)での2017年の日本のYLLは2703711年であり、

・個人レベルでの損失生存年数 PYLLは、心筋梗塞が11.99年、脳梗塞は9.39年だった。

・ちなみに がんの2017年のYLLは58740502年で、PYLLは14.88年だった。

脳梗塞により患者が早くに死亡することで失われる年数は約9年と推定された、


というおはなし。
図:損失生存年数


感想:

がんは15年 早くに死ぬけど、脳梗塞は9年なので障害を抱えて生きる年数がより長い、という解釈はできるだろうか?

2019年3月30日

心房細動で認知症はほんとうか?


Atrial fibrillation increases the risk of dementia among older adults even in the absence of stroke
2019  3月  スウェーデン

認知症の有病率は年齢にしたがって高くなり、85歳では25%におよぶという。

いっぽう心房細動も高齢者におおく80歳以上では10-17%にみられ、脳卒中のリスク要因の1つと考えられている。

これまで心房細動と認知症との関連をしめす報告がいくつかあり、脳卒中をおこさなくても認知症リスクが高まるとする報告もある。

そこで心房細動と認知症との関連について、フォロー期間中の脳卒中の有無 さらに認知症のリスク遺伝子APOEε4の有無も含めてくわしくしらべてみたそうな。



70歳の561人について、
心房細動検査、神経心理検査と遺伝子検査をおこない、
75歳と79歳時点でも脳卒中と認知症の有無をしらべ12年間フォローして関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・心房細動があると認知症リスクは2.8倍だった。脳卒中経験のある者やフォロー中に脳卒中になった者を除いてもこの関連は変わらなかった。

・男女別では、この関連は男性でのみ見られリスク4.6倍で、

・とくにAPOEε4遺伝子をもっていない者で顕著(リスク4.2倍)だった。

・認知症にしめる心房細動の人口寄与リスク率は13%と考えられた。
心房細動は脳卒中の有無に関係なく認知症のリスク要因だった。この関連は男性およびAPOEε4遺伝子をもたない者で顕著だった、


というおはなし。
図:心房細動と認知症 脳卒中経験の有無


感想:

かならずしも脳卒中やるとボケに向かうわけじゃぁないんだな。
心房細動だけで認知症になることがあきらかに

2019年3月29日

病院へ急がなくてもよいことになった


New Study Supports Extended Time for tPA in Ischemic Stroke to 9hours - Neurology Today
2019  3月  オーストラリア

t-PAをつかった血栓溶解療法はこれまで 脳梗塞が発症してから4.5時間を超えると適用できないとされてきた。

しかし画像診断技術の進歩により24時間までは回復可能な脳組織を確認しうることがわかってきた。

そして t-PAの適用時間を延長することの臨床試験
EXTEND (Extending the Time for Thrombolysis in Emergency Neurological Deficits) トライアルの成果がえられたそうな。
先月の国際脳卒中会議でオーストラリアのモナシュ大学の報告。



脳梗塞患者225人を2グループにわけて、いっぽうにはt-PAのタイムウィンドウを9時間を上限に設定した。他方にはプラセボを与えた。

患者選別に際して断層画像から虚血で死にかかっている組織(ペナンブラ)を自動識別するアルゴリズムを使用した。


次のようになった。

・患者内訳は、10%が発症から4.5-6時間で、25%が6-9時間、65%は起床時に脳卒中に気づいたケース(Wake up stroke)だった。

・発症から治療までの時間中央値は7.2時間だった。

・90日後のmRSスコア0-1(障害なし相当)は37% vs. 29%でt-PAグループにおおかった。

・90日後の死亡者率は10% vs. 9.5% でt-PAグループがわずかに高かった。

・症状をともなう頭蓋内出血の発生率は 6% vs. 1% でt-PAグループで非常に高かった。

t-PAのタイムウィンドウを9時間に拡大することで死亡者を大幅にふやすことなくおおくの患者の回復をうながすことができそうである、


というおはなし。
図:EXTENDトライアルの成果


感想:

t-PAはもともと3時間までといわれていて、それゆえに早くに救急車を呼ぶ必要がありFASTキャンペーンの根拠になっていた。

それがいつのまにか4.5時間になり、こんかい9時間でもOKとなった。

日本はもっと先進的で、時間の上限をはずしてしまったようである。↓
脳梗塞 “血栓溶かす治療をより多くの患者に” 治療指針変更
(3月22日 NHK news)

こうなるともう「いそいで病院にゆく必要ないじゃん」とふつうは思う。
\(^o^)/

2019年3月28日

Stroke誌:脳内出血の肥満パラドックス


Obesity Paradox in Intracerebral Hemorrhage
2019  3月  アメリカ

脳内出血は脳卒中の10-15%をしめる。いっぽう肥満は 糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、脳卒中のあきらかなリスク要因である。

肺高血圧や肝臓病、冠動脈疾患では肥満の患者ほど生存可能性が高いという「肥満パラドックス」が数多く報告されている。

脳内出血の肥満パラドックスについては報告がすくないので、きっちりとしらべてみたそうな。



データベース Nationwide Inpatient Sampleから 2007-2014の脳内出血患者99212人の記録について、

院内死亡率、退院先、入院期間、気管切開、胃ろう、脳室シャントとの関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・肥満と病的な肥満では、肥満でない(BMI<30)患者にくらべ院内死亡率があきらかに低かった。

・ただし病的な肥満患者では気管切開や胃ろうになる率がたかく、

・ふつうに自宅へ退院できる可能性も低かった。

脳内出血患者のうち、肥満や病的肥満には院内死亡への保護効果がみられた。しかし病的肥満は気管切開や胃ろうになりがちで自宅に退院できないことがおおかった、


というおはなし。

図:肥満パラドックス


感想:

これまで↓よりもサンプル数が桁違いだ。
脳内出血の肥満パラドックス

脳内出血の肥満パラドックスがあきらかに
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