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2019年2月4日

電子タバコの脳卒中リスク


Stroke Risk Higher Among E-Cigarette Users, Study Finds - Shots - Health News - NPR
2019  1月  アメリカ

いっぱんに電子タバコは通常のタバコにくらべて害がとても少ないと考えられている。そのためかアメリカの高校生の間では2011-2015に電子タバコ使用者が900%増加した。

そこで電子タバコの害、とくに脳卒中と心臓発作について大規模にしらべてみたそうな。ホノルルでの国際脳卒中会議2019 カンザス大学の発表。


50州 18歳以上の40万人にアンケートしたところ、


次のことがわかった。

・66795人が少なくとも1回、電子タバコを使用していた。

・非使用者にくらべて彼らの脳卒中リスクは71%、心臓発作リスクは59%高かった。

・電子タバコ使用者は通常のタバコも使用していることがおおいので、電子タバコのみの使用者について解析したところ、

・脳卒中リスクは29%、心臓発作リスクは25%高かった。

・使用頻度についてはデータがなく用量関係は不明。

電子タバコはそれのみの使用であっても脳卒中や心臓発作のリスクがあきらかに高くなった。通常のタバコも併用した場合は、リスクがさらに高くなると考えられた、


というおはなし。

図:電子タバコと脳卒中

感想:

電子タバコ使ってるひとをみたことがない。

2019年2月3日

「他人の視線」で半側空間無視を治す


Direct Gaze Partially Overcomes Hemispatial Neglect and Captures Spatial Attention
2019  1月  ポルトガル

視線は他者との交流をはかる社会的な合図(social cue)の一つである。とくに自分と視線が合う場合(Direct gaze:直視)は、視線が逸れている場合(Averted gaze:逸視)にくらべて もたらされる注意の優先度が高い。このような傾向は出生時よりあらわれ、無意識下でも反応がみられることがわかっている。

そこで半側空間無視の患者についても 直視でより注意が喚起される可能性を検証してみたそうな。


右脳損傷で半側空間無視のある脳卒中患者8人について、
視覚探索課題をおこなった。

探索対象は目を閉じた写真に混ぜた 目を開けた写真で、
直視の写真または逸視の写真をもちいた。

それぞれのケースでのヒット率、空振り率を評価したところ、


次のようになった。

・被験者は直視の写真を使用したばあいに、あきらかに優れたパフォーマンスを発揮していた。

直視効果によって被験者の注意がうながされ半側空間無視の影響が弱まった、


というおはなし。

図:半側空間無視を直視効果で治す

感想:

ってことは、
左の頬に目立つシールでも貼っておけば左方からの好奇の視線を集めることができて、自然と意識がそちらへ誘導されるようになる。そして半側空間無視が治るんだな。

2019年2月2日

骨折と脳卒中経験で自殺リスクアップ


Fractures as a suicidal behavior risk factor- A nationwide population-based cohort study
2019  1月  台湾

65歳以上の高齢者で脊椎骨折の経験者はすくなくとも3年間 自殺リスクが高いとする報告がある。

もっと広い年齢範囲で骨折と自殺行動との関連をしらべてみたそうな。

2019年2月1日

がんばって手脚を動かしても効果がない理由


Frequency-specific functional connectivity related to the rehabilitation task of stroke patients
2019  1月  中国

脳卒中の片麻痺からの回復のためには手脚をうごかす訓練をおこなうことがもっとも効果的であると信じられている。

訓練と脳の可塑性により脳機能ネットワークが再編される。このとき脳皮質の各領域間で機能的に同期した低周期の活動パターンが観測できる。この同期の程度をもって「機能結合性」とし回復度が反映されると考えることができる。

そこで、リハビリ訓練がダイレクトに機能結合性に反映されるものか、MRIよりも周波数分解能の高い近赤外線センサーでくわしくしらべてみたそうな。

2019年1月31日

脳卒中の体重減少 悪液質とは


Body weight changes and incidence of cachexia after stroke
2019  1月  ドイツ

脳卒中患者の体重や栄養状態と その後の回復や死亡率との関連をしめす報告がいくつもある。

脳卒中患者の体重減少はめずらしくない。がんや腎臓病などの慢性疾患では悪液質(Cachexia)とよばれる代謝異常をともなう体重減少が観察されている。

脳卒中患者についての悪液質の研究はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。


平均年齢69、軽中程度の脳梗塞患者67人について、
急性期と12ヶ月後の体重および体組成を二重X線吸収法で測定した。

悪液質の条件として1年間に5%以上の体重減少とした。


次のことがわかった。

・12ヶ月後、63%は体重が増加または変わらずで、16%がやや減少、21%が悪液質と分類できた。

・悪液質グループでは、麻痺の有無によらず脂肪組織の19%と除脂肪組織の6.5%の減少が見られた。他のグループには除脂肪組織の減少は見られなかった。

・悪液質グループのバーセルインデックスおよび握力は低く、

・関連要因を調整すると、除脂肪組織の消耗がみられる患者の身体パフォーマンスはあきらかに低かった。

・悪液質グループでは12ヶ月後にもC反応性蛋白による全身性の炎症との関連がみられた。

脳梗塞患者の5人に1人が悪液質をしめしていた。彼らの身体能力はよくなかった、


というおはなし。

図:脳梗塞の悪液質率


感想:

脳卒中を経験すると塩分へらせ、油へらせ、糖質減らせ、と極端な節制をもとめられる空気に包まれる。このあたりにも一因があるとおもう。

2019年1月30日

Neurology誌:若くても血圧がちょっと高いと脳が減る


Association of peripheral blood pressure with gray matter volume in 19- to 40-year-old adults
2019  1月  ドイツ

高血圧は認知機能の低下リスクのひとつであり、のちの認知症やアルツハイマー病にも関連してくる。

高血圧の高齢者では、とくに症状がなくても海馬や前頭葉の灰白質体積が減少しているとする報告がいくつかある。

あきらかな高血圧でない40歳未満の若年者についても同様な灰白質の体積減少がみられるものかはわかっていないので、大規模にしらべてみたそうな。


未発表の3つの研究で得られた19-40歳で健康な423人のMRIの全脳画像データについて、
メタアナリシス(image-based meta-analyses)を行い、
血圧と脳の各領域の灰白質体積との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・灰白質体積と血圧に関連があった。

・正常血圧域(120/80未満)にくらべ、境界域(120-139/80-89)にある者の灰白質体積はあきらかに少なかった。

・特に、海馬、扁桃体、視床、前頭葉、頭頂葉で体積低下がおおきかった。

高血圧(140/90以上)でなくても、たとえ若くても、正常域よりもやや血圧が高いだけで脳の灰白質の体積が減少しはじめていた、


というおはなし。

図:高血圧と灰白質体積


感想:

中学生のころから血圧高いと言われていた身としては認めたくない事実。

30年ほどまえ、仕事でけっこうな人数の脳のMRIを撮った。血圧はともかく 酒やたばこが好きな人の灰白質はとても色がうすく、不健康ぶりが素人目にもわかった。
だから見かけの体積減少はありそうなはなしとはおもう。

2019年1月29日

脳梗塞の頭痛の特徴


Headaches Attributed to Ischemic Stroke and Transient Ischemic Attack
2019  1月  ブラジル

脳梗塞の発生と時をほぼおなじくする頭痛については、これまで見過ごされ 過小評価されることがおおかった。

そこで、これまでの関連論文から総説をこころみたそうな。


次のことがわかった。

・脳梗塞に伴う頭痛は7.4-34%にみられた。TIAでは26-36%にみられた。

・頭痛は若年脳梗塞患者におおく、

・片頭痛経験者、後部循環梗塞、皮質梗塞の患者におおくみられ、

・ラクナ梗塞ではその頻度は少なかった。

・脳梗塞の頭痛のよくあるパターンは、軽中程度の両側の痛みで、吐き気や嘔吐はともなわず、

・局所神経症状があるものの、おおくは時間とともに消失する。

・頭痛があると予後が良いとする報告があるいっぽう、それを否定する報告もある。

・これら頭痛対策を目的とした臨床試験はおこなわれていない。

脳梗塞にともなう頭痛はよくあることで、おおくは両側の緊張性の頭痛だった。その頻度は脳梗塞の種類により異なった、


というおはなし。

図:脳梗塞の頭痛


感想:

まちかどの証明写真機なみの気軽さで、医師を介することなくMRIを撮れるようになると素敵だなぁ。

2019年1月28日

ケトン食が脳梗塞にタフな身体をつくる


Early Motor-Behavioral Outcome of Ischemic Stroke with Ketogenic Diet Preconditioning- Interventional Animal Study
2019  1月  イラン

脳卒中による虚血から脳をまもる方法が必要とされている。

平時の脳の主要エネルギー源はブドウ糖であるが、高血糖状態にあると脳梗塞がかえってひどくなることがわかっている。

いっぽうブドウ糖が欠乏状態のときにはケトン体(おもにβ-ヒドロキシ酪酸)が脳のエネルギー源となる。

ケトン食(高脂肪かつ低炭水化物の食事)はケトン体をふやすことができ、古来よりてんかん発作を防ぐとされ さいきんではパーキンソン病やアルツハイマー病にも応用されている。

さらにケトン食に中鎖脂肪酸(MCT : ココナッツオイルやパーム油)を加えることでケトン食による弊害(微量栄養素の不足、酸性血症、便秘、腎臓結石、低血糖、成長遅延)を最小限にすることができる。

そこで、ケトン食をあたえたネズミへの脳梗塞の影響を実験してみたそうな。


ネズミ24匹を人為的に梗塞にする3日まえに次の3グループにわけた。

Main:ケトン食 その後脳梗塞
Control:通常食 その後脳梗塞
Sham:通常食 その後手術のみで脳梗塞なし

ケトン食として、脂肪:タンパク質+炭水化物=4:1の食事 さらにMCTオイル を与えた。

その後、3種類の運動行動テストでフォローしたところ、


次のようになった。

・麻痺脚の歩数、棒渡りタイム、両手使用の対称性のいずれもがケトン食グループで Control よりも優れていた。

ケトン食をあたえたネズミでは脳梗塞後の運動行動がよりはやく回復した、


というおはなし。

図:ケトン食と脳梗塞

感想:

糖質制限ブームもあって、「MCTオイル」で検索すると通販サイトがいっぱいでてくる。
糖質制限ダイエットで脳梗塞に強くなる理由

2019年1月27日

日本だけ くも膜下出血が激増中! JAMA Neurol.


Worldwide Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage According to Region, Time Period, Blood Pressure, and Smoking Prevalence in the Population: A Systematic Review and Meta-analysis
2019  1月  ドイツ

くも膜下出血は脳卒中の5%を占め、半数は55歳未満、3分の1は数週間以内に死亡する。

くも膜下出血の発生率は年間10万人あたりおよそ9人で、これは地域や性別、年齢によっておおきくことなる。その理由がわかれば予防にも活かせる。

そこで、世界のくも膜下出血発生率のこれまでの推移をくわしくしらべてみたそうな。


関連する研究論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・32カ国の患者8176人を含む75の研究がみつかった。

・45-54歳の男性にくらべ、75歳以上の女性の相対リスクは日本人で2.5倍、ヨーロッパ人1.5倍だった。

・世界全体での発生率は1980年に10.2人(10万人年あたり)、2010年には6.1人であり、年間1.7%ペースで低下している。

・同じ期間の地域別での発生率の「低下ぶん」は、ヨーロッパ40.6%、アジア46.2%、北アメリカ14.0%に対し、

・日本だけ 発生率が59.1%「上昇」していた。

・全体的に、収縮期血圧が1mmHg低下すると発生率が7.1%低下し、喫煙率が1%低下すると発生率が2.4%低下した。

くも膜下出血の発生率は全体の血圧や喫煙率の低下に伴ってさがっている傾向にあり、その程度は地域によりおおきく異なった。日本だけ発生率が激しく上昇している理由は不明、


というおはなし。

図:収縮期血圧とくも膜下出血


感想:

日本だけ増えている理由は、たぶんこう↓。

脳卒中の早期受診をうながすキャンペーンと、日本の突出したCT設置数、および皆保険制度によって、見逃されていた軽度のくも膜下出血が容易に見つかり治療(手術)対象とされるようになったってこと。

Stroke誌:くも膜下出血発生率 じつは10倍以上?


2019年1月26日

磁気刺激治療 30年間の論文傾向


Publication trends in transcranial magnetic stimulation- a 30-year panorama
2019  1月  ドイツ

TMS(経頭蓋磁気刺激)は非侵襲的に脳を刺激できる方法として1985年に考案された。当初は脳の運動野から末梢神経への皮質脊髄路の健全性を調べるための診断機器として使用された。

のちに疼痛や痙縮、脳卒中、パーキンソン病の治療に用いられるようになり、さらに最近ではうつやPTSDといった精神疾患にも応用されている。

TMSが世にでてからおよそ30年間の論文を書誌計量学的に解析してみたそうな。


引用文献データベースをつかって1988-2017までのTMS関連論文を抽出し、

もっとも論文数のおおい研究者、研究所、国、掲載誌、そして対象になる病気名、について調べたところ、


次のことがわかった。

・17492件の研究論文がみつかった。

・年間出版数の傾向は、他のテーマが横ばいなのに対し、TMSは劇的に増加していた。

・研究がもっともかっぱつな国はイギリス、アメリカ、カナダで、

・脳卒中、うつ、パーキンソン病についての研究がおおかった。

TMSの研究論文はこの30年間で激増しており、脳卒中、うつ、パーキンソン病への応用がおおい、


というおはなし。

図:TMS研究でおおい病気テーマ

感想:

論文の数ばかりおおくてあまり成果がでない分野でもある印象。
[結論] rTMSの上肢リハビリ効果について

その他 [磁気刺激]の関連記事

2019年1月25日

食塩代替塩味料の効果


Effect of low-sodium salt substitutes on blood pressure, detected hypertension, stroke and mortality
2019  1月  アメリカ

減塩には血圧を改善し脳卒中を防ぐ効果があるとされている。しかしWHOが推奨する基準は最適な量よりもかなり下回っているのではないか、という考え方もある。

減塩方法の1つとして食塩のナトリウムをカリウムなどに置き換えた「食塩代替塩味料」の使用が挙げられるが、効果はいまだあきらかになっていない。

そこでこれまでの研究成果についてメタアナリシスをこころみたそうな。


食塩代替塩味料と血圧、死亡率についての研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者7400人を含む21の研究成果がみつかった。

・食塩代替塩味料の成分にはいろいろ種類があった。

・食塩代替塩味料で収縮期および拡張期血圧があきらかに低下した。

・その効果は高血圧や正常血圧の者に同様にあらわれた。

・尿中のナトリウムは減少し、カリウムやカルシウムが増加した。

・高血圧と診断される者の数や死亡率 等にあきらかな変化はなかった。

・エビデンスの質としては低レベルの結果だった。

食塩代替塩味料の使用によって収縮期と拡張期血圧が低下した。しかし高血圧患者を減少させたり死亡率を低下させるほどの効果はなかった、


というおはなし。

図:食塩代替物


感想:

長年のくせで ついつい塩分を控えてしまうけど、いまや減塩は時代遅れだから。気をつけてな。↓
ランセット誌:食塩は13gまでオッケー 脳卒中的に

ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

JAMA誌:減塩に真面目な人ほど脳卒中で死亡する

JAMA誌:塩分を控えさせるほど脳卒中死亡者が増える
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