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2019年1月26日

磁気刺激治療 30年間の論文傾向


Publication trends in transcranial magnetic stimulation- a 30-year panorama
2019  1月  ドイツ

TMS(経頭蓋磁気刺激)は非侵襲的に脳を刺激できる方法として1985年に考案された。当初は脳の運動野から末梢神経への皮質脊髄路の健全性を調べるための診断機器として使用された。

のちに疼痛や痙縮、脳卒中、パーキンソン病の治療に用いられるようになり、さらに最近ではうつやPTSDといった精神疾患にも応用されている。

TMSが世にでてからおよそ30年間の論文を書誌計量学的に解析してみたそうな。


引用文献データベースをつかって1988-2017までのTMS関連論文を抽出し、

もっとも論文数のおおい研究者、研究所、国、掲載誌、そして対象になる病気名、について調べたところ、


次のことがわかった。

・17492件の研究論文がみつかった。

・年間出版数の傾向は、他のテーマが横ばいなのに対し、TMSは劇的に増加していた。

・研究がもっともかっぱつな国はイギリス、アメリカ、カナダで、

・脳卒中、うつ、パーキンソン病についての研究がおおかった。

TMSの研究論文はこの30年間で激増しており、脳卒中、うつ、パーキンソン病への応用がおおい、


というおはなし。

図:TMS研究でおおい病気テーマ

感想:

論文の数ばかりおおくてあまり成果がでない分野でもある印象。
[結論] rTMSの上肢リハビリ効果について

その他 [磁気刺激]の関連記事

2019年1月25日

食塩代替塩味料の効果


Effect of low-sodium salt substitutes on blood pressure, detected hypertension, stroke and mortality
2019  1月  アメリカ

減塩には血圧を改善し脳卒中を防ぐ効果があるとされている。しかしWHOが推奨する基準は最適な量よりもかなり下回っているのではないか、という考え方もある。

減塩方法の1つとして食塩のナトリウムをカリウムなどに置き換えた「食塩代替塩味料」の使用が挙げられるが、効果はいまだあきらかになっていない。

そこでこれまでの研究成果についてメタアナリシスをこころみたそうな。


食塩代替塩味料と血圧、死亡率についての研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者7400人を含む21の研究成果がみつかった。

・食塩代替塩味料の成分にはいろいろ種類があった。

・食塩代替塩味料で収縮期および拡張期血圧があきらかに低下した。

・その効果は高血圧や正常血圧の者に同様にあらわれた。

・尿中のナトリウムは減少し、カリウムやカルシウムが増加した。

・高血圧と診断される者の数や死亡率 等にあきらかな変化はなかった。

・エビデンスの質としては低レベルの結果だった。

食塩代替塩味料の使用によって収縮期と拡張期血圧が低下した。しかし高血圧患者を減少させたり死亡率を低下させるほどの効果はなかった、


というおはなし。

図:食塩代替物


感想:

長年のくせで ついつい塩分を控えてしまうけど、いまや減塩は時代遅れだから。気をつけてな。↓
ランセット誌:食塩は13gまでオッケー 脳卒中的に

ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

JAMA誌:減塩に真面目な人ほど脳卒中で死亡する

JAMA誌:塩分を控えさせるほど脳卒中死亡者が増える

2019年1月24日

手段的日常生活動作と睡眠時間


The impact of short and long sleep duration on instrumental activities of daily living among stroke survivors
2019  1月  アメリカ

脳卒中による身体的 認知的 精神的障害はIADL(手段的日常生活動作)に影響する。

IADLは 食事の準備、雑用、入浴、お金の管理などの自立生活を送るうえで必要な能力を指す。

いっぽう脳卒中患者には睡眠障害がおおくみられ、これもまたIADLに影響すると考えられる。

そこで、脳卒中経験者の睡眠時間とIADLとの関連をくわしくしらべてみたそうな。


2000-2015に行われた健康調査のうち脳卒中歴のわかる486619人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者全体の平均年齢は46、87%の健康状態は良く、30%は睡眠6時間以下だった。

・全体の3%が脳卒中経験者だった。

・脳卒中経験者の30%にIADLの問題があった。

・IADLに問題のあったすべての被験者の34.4%は睡眠が6時間以下だった。

・脳卒中経験者のうち睡眠時間が9時間以上ある場合、平均的な7-8時間睡眠の者にくらべIADLに問題のある率が1.97倍だった。

・短時間睡眠の脳卒中経験者のIADL問題のリスクは平均睡眠と同レベルだった。

睡眠時間が平均よりも長い脳卒中経験者は、手段的日常生活動作(IADL)に問題を抱えていることがあきらかにおおい、


というおはなし。

図:睡眠

感想:

なぜ、7-8時間が正しいのかね? 短いのもいけないみたいだし。
脳卒中で眠れないと死ぬの?

2019年1月23日

便秘すると脳卒中で死ぬの?


Constipation and risk of death and cardiovascular events
2019  1月  アメリカ

近年、腸内環境の急激な変化が免疫機能をつうじて動脈硬化を引き起こすとする考えかたが注目されている。

そこで便秘によって脳卒中など心血管疾患および死亡率に影響があるものか大規模にしらべてみたそうな。

2019年1月22日

復職率が倍になる従業員規模


Work-related predictors for return to work after stroke
2019  1月  スウェーデン

脳卒中患者の20%は労働可能年齢といわれている。彼らがふたたび職に就くことのできる率は国によってもおおきくことなる。

これまでの調査から復職に影響する要因として、要介助度、社会経済的地位、移民、合併症、高齢、女性、専門資格、組織規模、などがあげられている。

そこでスウェーデンでの脳卒中患者の復職状況と関連要因をしらべてみたそうな。


2009-2010の脳卒中患者で発症前に職に就いていた204人について6年間フォローしたところ、


次のことがわかった。

・早くに復職できる要因として、専門資格を持っている、組織の従業員規模がおおきい、ことがあげられた。

・専門資格で復職が早くなるのは男性だけであって女性には影響はなかった。

・女性の復職には退院時の要介助度のみが影響していた。

脳卒中患者の復職には組織の従業員規模と仕事の専門性が影響していた。男女での差がなぜ生じるのかは不明、


というおはなし。

図:脳卒中後の復職可能性と従業員規模

感想:

上の表みると従業員規模が2000人を超えると復職率が倍になる。さらに増えても大きくはかわらない。

それだけ人員空間があると障害があってもできるニッチな仕事を創り出しやすいってことなんだろか。

2019年1月21日

2週間の加圧トレーニングで歩行速度up


Two Weeks of Ischemic Conditioning Improves Walking Speed and Reduces Neuromuscular Fatigability in Chronic Stroke Survivors
2019  1月  アメリカ

脳卒中患者の20-25%は介助なしには歩くことができない。リハビリをおこなっても歩行速度がほんの少しあがる程度である。

この状況を改善する方法として「虚血コンディショニング」が話題にのぼるようになった。

虚血コンディショニングは1986年に虚血臓器の保護目的で考え出されたもので、のちに心血管保護効果があきらかになり、さらに手脚の筋肉パフォーマンスを改善する効果が「加圧トレーニング」として注目された。

そのメカニズムはよくわかっておらず、脳卒中の手脚の麻痺への応用はまだほとんどない。

また心血管への虚血コンディショニングの経験から、有効なタイムウィンドウに短期(-12時間)と長期(24-72時間)があることがわかっている。

そこで脳卒中の麻痺脚への虚血コンディショニングを、短期効果はすでに確認済みなので、長期におこなったときに歩行能力が改善するものか実験してみたそうな。

2019年1月20日

脳卒中で眠れないと死ぬの?


Insomnia is associated with increased mortality in patients with first-ever stroke- a 6-year follow-up in a Chinese cohort study
2019  1月  中国

睡眠時間がみじかいと脳卒中死亡リスクが高いことがわかっている。いっぽう脳卒中後の不眠は12-57%に見られ、かれらの回復はよくないとされている。

脳卒中後の不眠と死亡率との関連についてはほとんど報告がないのでくわしくしらべてみたそうな。


56病院の初回脳卒中患者1273人について、

さいしょの1年間に4回面談して、なかなか眠れない、眠りが持続しない、早くに目が覚めるなどを複数回うったえた患者を「不眠」とした。

死亡を6年後までフォローして関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・38.4%が不眠だった。

・不眠があると調整後の死亡リスクが1.66倍だった。

・死亡リスクが高いほかの要因は、高齢で1.08倍、再発2.53倍、高血圧1.62倍だった。

再発についで不眠と高血圧が脳卒中後の死亡リスクが高い要因の上位を占めていた、


というおはなし。

図:脳卒中後の不眠と生存率


感想:

最初のころは眠ってばかりいたね。
慢性期脳卒中での日中の眠気の正体 Sci Rep.

若い脳卒中患者の不眠状況を1年間フォローした

2019年1月19日

沖縄のやさいが脳卒中を防ぐ?


Association of vegetable, fruit, and Okinawan vegetable consumption with incident stroke and coronary heart disease
2019  1月  日本

沖縄での心血管疾患による年齢調整死亡率は日本の他の地域よりも低い。その理由はわかっていないが、沖縄の野菜や果物が要因の1つかもしれない。

沖縄野菜(青梗菜、からし菜、ゴーヤー、フダンソウ、ヘチマ、よもぎ)には葉酸が豊富で、葉酸は動脈硬化の原因になるホモシステインの代謝に必要である。

またゴーヤー(bitter gourd)には抗酸化物質が多く含まれ、パパイヤには抗炎症作用のあるファイトケミカルがふくまれる。

そこで、これら沖縄の野菜やくだものと脳卒中など心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


1995-1998に45-74歳の沖縄2地域の住民16498人に食事アンケートをとり、その後の心血管疾患の発生を2012までフォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に839の脳卒中および197の冠動脈疾患があった。

・沖縄野菜のトータル摂取量と脳卒中 冠動脈疾患リスクとのあきらかな関連はなかった。

・個々の野菜やくだものと心血管疾患リスクとの関連も確認できなかった。

沖縄の野菜 果物と脳卒中や冠動脈疾患リスクとの関連はなかった、


というおはなし。

図:沖縄野菜といえばゴーヤ


感想:

ゴーヤーががんばってくれると思ったがだめだった。

近いところで鹿児島には有望なやつがあるんだよ。↓
桜島大根が脳卒中を予防する?

2019年1月18日

じつは脳卒中でなかった割合 in Japan


Stroke Mimics and Accuracy of Referrals Made by Emergency Department Doctors in Japan for Patients with Suspected Stroke
2019  1月  日本

救急医療の現場では脳卒中ではない患者を脳卒中と診断してしまいのちに脳卒中類似症状(Stroke mimics)だったとわかるケースが発生する。
その結果、必要としない患者に血栓溶解治療が施されるなどの問題が生じている。

診断をミスする背景として、日本ではCTやMRIの情報量が非常におおいこと、皆保険制度で個人の負担が少ないこと、医師の数が足りていないこと、ガイドラインで治療をせかされていること、などが考えられる。

日本での脳卒中類似症状についての規模のおおきい報告はほとんどないので、しっかりとしらべてみたそうな。


救急救命部で脳卒中と診断された患者226人について、のちに神経外科医によって下された診断結果とを比べたところ、


次のようになった。

・71.7%については診断は正しかった。

・残り28.3%の脳卒中類似症状のうち75%はただの精神症状やめまいなど脳の損傷とは関係のないものだった。

・診断ミスの直接の理由として、思い込みがもっともおおく43.8%、問診不十分32.8%、読影知識の不足、検査結果の見落とし、これらの組み合わせ が挙げられた。

救急救命医による脳卒中診断の3分の1は正しくなかった、


というおはなし。

図:脳卒中類似症状を見誤る理由

感想:

みんなが急げ急げって言うから誤診が増えるようだ。↓
急いで病院に行くと脳卒中でもないのに血栓溶解治療されてしまう危険性について

2019年1月17日

QoLが低いと脳卒中になる?


Using health-related quality of life to predict cardiovascular disease events
2019  1月  アメリカ

脳卒中など心血管疾患のリスク要因として主観的な健康度はこれまでほとんど考慮されてこなかった。

いっぽう主観的健康度と死亡率との関連はすでにあきらかになっている。そこで、健康関連QoLと心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


45歳以上の3万人あまりを10年間フォローしたREGARDS研究のデータをもちいた。

健康関連QoLはSF(Short Form)-12に従い、身体的サマリー(PCS)と精神的サマリー(MCS)にわけた。
健康度の高さでそれぞれ0-100点を与え、一般人のスコアを50点として調整した。

心筋梗塞、冠動脈疾患、脳卒中の有無との関連を解析したところ、


次のようになった。

・心血管疾患歴のない2229人を8.4年間フォローした記録から、1766件の心血管疾患がみつかった。

・PCS および MCSが50以上にくらべて、いずれも50をしたまわる場合の心血管疾患リスクはあきらかに高く、

・年齢、性別、人種等を調整したリスクは1.46倍で、

・種類別では冠動脈疾患リスク1.54倍、脳卒中リスク1.35倍だった。

健康関連QoLの低さと心血管疾患の発生はあきらかな関連があった。主観的な健康度は心血管疾患のリスク要因とみなしうる、


というおはなし。

図:生活の質スコアと脳卒中リスク


感想:

交通事故のように偶発的におきる脳卒中もあるけど、おおくはそのまえに「なんか調子わるいな、、」という自覚がある、ってことなんだな。

たしかにそのとおりで、1年くらいまえから左手の指の振るえを抑えられなかったおもいで。

2019年1月16日

Neurology誌:かかりつけ医がいれば再発しないの?


Recurrent stroke in midlife is associated with not having a primary care physician
2019  1月  アメリカ

脳卒中患者にとってかかりつけ医(primary care physician)は再発予防のために高血圧やコレステロール、心房細動を管理し、喫煙 アルコールなどの生活習慣を長期に指導してくれるそんざいである。

そこで脳卒中になった時点でかかりつけ医をもっていた中高年患者の再発率についてくわしくしらべてみたそうな。


45-64歳で脳梗塞になった663人について、

かかりつけ医の有無を確認し、
再発と死亡を5年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・最初の脳梗塞時点で、77%にはすでにかかりつけ医がいた。

・全体の5年再発率は14.6%、死亡率は19.2%で、

・かかりつけ医がいなかった者の再発リスクは1.75倍だった。

・死亡リスクとは関連がなかった。

・他の関連要因で調整しても同様だった。

脳梗塞発症時点でかかりつけ医がいた患者の再発リスクはあきらかに低かった、


というおはなし。

図:かかりつけ医と脳卒中の再発


感想:

はたらきざかりで忙しいはずなのに 2時間まち15秒診察の医者のもとへ足繁く通うようなひとは、自身の将来を気遣う意識の高さが尋常ではない。

だから再発率がひくいのはかかりつけ医のおかげではないとおもう。たぶん まいとし初詣を欠かさない人たちについても同様の関連がみられるはず。

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