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2018年12月26日

てんかんを防ぐ補陽還五湯(ほようかんごとう)


The effects of Bu Yang Huan Wu Tang on post-stroke epilepsy- a nationwide matched study
2018  12月  台湾

脳卒中のあとのてんかん発作は患者の6-12%に起こるという。

伝統中国医学のうち漢方薬は台湾ではよく用いられ、とくに「補陽還五湯(ほようかんごとう)」はもっともおおく処方されている。

補陽還五湯の抗てんかん効果についてはよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


台湾の健康保険記録から脳卒中のあとの補陽還五湯の使用者、非使用者について他の条件がそろうようにそれぞれ8971人ずつ抽出した。

てんかん発作の有無を5-9年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・補陽還五湯グループはてんかん発作リスクが0.69倍だった。

・この関連は、脳出血、脳梗塞、TIAなどで同様だった。

・補陽還五湯の使用量とてんかん発作リスクには用量関係があり、多く使用する者ほどリスクは低かった。

脳卒中のあと補陽還五湯を使うことでてんかん発作のリスクが長期にわたり低下した。この関連は脳卒中の種類によらなかった、


というおはなし。

図:補陽還五湯のてんかん予防効果

感想:

補陽還五湯はなんどかでてきた↓。検索すると通販サイトで買えるようだ。
脳卒中治療にもっともよく使われる漢方薬が明らかに

脳梗塞実績No.1漢方薬 → ほようかんごとう

2018年12月25日

生まれたときの体重と脳内出血&くも膜下出血


Early Life Body Size in Relation to First Intracerebral or Subarachnoid Hemorrhage
2018  12月  デンマーク

いっぱんに脳内出血は男性におおく、くも膜下出血は女性におおい。またいずれも脳梗塞にくらべると若年者におおい。

出生時体重および子供時代の体重と脳梗塞リスクとの関連が確認されている。しかし脳内出血やくも膜下出血についてのそれはよくわかっていないのでしらべてみたそうな。


1936-1989に生まれた240234人について、出生時体重と7-13歳のBMIおよびその後の脳内出血やくも膜下出血との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・出生時体重が500g増えると、女性のくも膜下出血リスクが10%低下し、男性の脳内出血リスクが10%低下した。女性の脳内出血と男性のくも膜下出血との関連はなかった。

・男性では子供時代のBMIが平均を下回っていると脳内出血リスクが高かった。これは7歳よりも13歳のときの影響がおおきかった。女性での関連はみられなかった。

・子供時代のBMIとくも膜下出血との関連は男女ともになかった。

出生時や子供時代のボディサイズはのちの脳内出血やくも膜下出血のなりやすさと関連があり、男女でことなっていた、


というおはなし。
図:脳内出血とくも膜下出血の男女差
脳内出血とくも膜下出血の年齢と男女別 発生率


感想:

上のグラフ(右)みるとくも膜下出血はぜんぜん高齢者の病気じゃないんだな。

ついでに脳内出血が男におおい(左)こともいまさらながらに知ったよ。

2018年12月24日

くも膜下出血で認知障害がおきる条件


Predictors of cognitive function in the acute phase after aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  12月  ノルウェー

くも膜下出血経験者の65%は認知機能の低下をしめすという。たとえ身体機能になんの障害も残らなかった者であっても慢性期には認知障害になることがある。

急性期での認知障害の予測因子についての研究はおおくないのでくわしくしらべてみたそうな。


脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で手術をした急性期患者51人について、

認知障害テスト(global cognitive impairment index)をおこない、認知機能が良好(スコア0.75未満)と不良の患者を分類した。

関係するパラメータおよび退院時の生活自立度mRSスコアとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・57%の患者が認知機能が不良だったが、そのおよそ半数はmRSまでが不良というわけではなかった。

・ほとんどの患者で遅延記憶(すこしまえの記憶)に影響があった。

・水頭症とあらたな脳梗塞が認知障害との関連がつよく、

・脳脊髄液の排出量が2000mlを超える場合はリスク6倍で、あらたな脳梗塞がおきた場合はリスク11倍だった。

急性期くも膜下出血患者の半数以上が認知障害を示した。これはかならずしも身体機能には反映しなかった。水頭症とあらたな脳梗塞が認知障害の予測因子と考えられた、


というおはなし。

図:認知障害テストとmRSスコア

感想:

くも膜下出血は脳梗塞とはちがって、頭痛や吐き気をがまんできるものならがまんして できるだけ病院にいかないほうがいいと考えている。

なぜなら治療と称しておこなわれる再出血予防のためのクリッピングやコイリング手術にはそのリスクに見合う効果があるとはとても思えないから。
※根拠↓

1) 再出血予防のクリッピング手術のRCTは存在しない。(by 治療ガイドライン(pdf))→60年代のCTもMRIもないころに得られた知見を検証しようともせずに盲信し続けているということ。

2) がまんして入院が遅れるほど死亡率は劇的に下がる。→手術を逃れて入院を2週間がまんした場合死亡率は 86→49%に、1ヶ月がまんで13%にまで下がる。

3) もっとも再出血しやすい24時間以内の手術にまったく効果がない。→「再出血が起きるから命が危険」理論はぜんぜんアテにならないってこと。


うかつに脳をいじらせないようにすれば水頭症やあらたな脳梗塞もおきず認知障害も減るんじゃないのかな。

2018年12月23日

NEJM誌:成人の4人に1人はいつか脳卒中 世界的に


Global, Regional, and Country-Specific Lifetime Risks of Stroke, 1990 and 2016
2018  12月  アメリカ
脳卒中による死亡や障害での全世界的負担の7-8割は中低所得国で発生しているという。これらの国々での脳卒中予防策は高所得国のそれとおおきくことなる。

ある年齢以上の成人が残りの人生で脳卒中になる確率を他の病気で死亡する可能性も考慮にいれて評価した「生涯リスク」がわかれば予防戦略の助けになる。

そこで195ヶ国で328の疾病について研究する「世界の疾病負担(Global Burden of Disease : GBD)スタディ2016」のデータを使って世界の脳卒中生涯リスクを評価してみたそうな。

2018年12月22日

Stroke誌:くも膜下出血の1年後を推定する方法


Home-Time as a Surrogate Marker for Functional Outcome After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
2018  12月  スイス

くも膜下出血の長期的な予後予測はむつかしく評価する者によっておおきくことなる。

いっぽう脳梗塞については 発症後一定期間内に自宅で過ごした時間がその後の回復度を反映し客観性のある評価を可能にするという報告がある。

これをくも膜下出血にたいしても応用してみたそうな。


スイス国内8病院のくも膜下出血患者1866人について、

発症後90日間に自宅で過ごした日数を調査し、退院時と1年後の生活自立度mRSスコアとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・自宅日数と退院時のmRSスコアは明らかな関連があり、特にmRSが0-4の範囲ではっきり区別ができた。

・同様に1年後のmRSスコアは0-3の範囲で自宅日数とあきらかに関連した。mRS4-5の範囲は区別はできなかった。

くも膜下出血のあと90日間に自宅で過ごした日数をみれば1年後の状態を、とくに回復良好者について簡単かつ正確に予測できた、


というおはなし。

図:自宅時間とくも膜下出血の1年後mRS


感想:

ようするに回復良いほど早く退院して家にもどるってことなんだけど、病院に残ってリハビリがんばる人もいれば病院にいても仕方がないので家に帰される人もいる。
だからこれで重症者をこまかく区別するのはむつかしい。

1年後mRSが2以下の回復良好者の条件は、上の図みると90日内の自宅日数がだいたい30日以上あることだから、入院後2ヶ月で退院できていないと望み薄いってこと。

2018年12月21日

昼寝リハビリの効果を検証


Can Daytime Napping Assist the Process of Skills Acquisition After Stroke?
2018  11月  ドイツ

脳卒中患者の運動学習は機能回復のための重要なテーマの1つである。

これまで夜間の睡眠のあとにつよい運動学習効果があらわれることがわかっている。日中の睡眠についても同様の効果が若年者や高齢者でも報告されている。

脳卒中患者についても日中の睡眠で運動学習がすすむものか、実験してみたそうな。


慢性期脳卒中患者30人について、
昼寝時間が a)なし、b)10-20分、c)50-80分 の3グループにわけた。

麻痺手をつかった視覚運動課題を計3セッションおこない、各前後でパフォーマンスを評価した。
セッション1と2の間に昼寝を、2と3の間に夜間睡眠をはさんだ。
睡眠状態は脳波をもって確認した。

その後、健常者30人の非利き手についても同様の実験をおこない比較した。


次のようになった。

・患者の運動パフォーマンスはセッションごとに向上したが、途中の睡眠による効果はまったくみられなかった。

・健常者との比較についても同様で、昼寝の効果はみられなかった。

運動課題のあとの1回の昼寝によるパフォーマンス向上効果は確認できなかった、


というおはなし。

図:昼寝の脳卒中リハビリ効果

感想:

実験室で「さぁ昼寝してください」って言われても眠れるかね? 脳波的には眠っていてもいつもの眠りではないわな。

これおもいだした。↓
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2018年12月20日

Stroke誌:デュアルタスクで転倒を防ぐ


Dual-Task Exercise Reduces Cognitive-Motor Interference in Walking and Falls After Stroke
2018  12月  香港

脳卒中経験者では運動と認知機能が同時要求される二重課題のパフォーマンスが低下することがわかっていて、転倒との関連も指摘されている。

つまり脳卒中経験者の転倒はバランス能力の問題ではなく二重課題下での注意リソースの配分に原因がある可能性がある。

二重課題訓練が歩行パフォーマンスを改善するとするこれまでの研究のおおくは運動機能に重点をおいたものがおおく、歩行バランス能力が向上したのか単に注意の優先度を変えたのか区別がつかないうえにサンプル数も少なかった。

そこで、二重課題訓練による歩行および認知機能の両方を評価して おおくの被験者でくらべてみたそうな。


軽中程度の運動麻痺のある慢性期の脳卒中経験者84人をつぎの3グループに分けた。

*単一課題訓練(通常の歩行リハビリ)
*二重課題訓練(注意配分しながらの歩行)
*比較グループ(上肢訓練)

これを1回60分x週3回x8週間おこない、

この前後および8週間後に

歩行課題テスト:前方歩行、タイムアップアンドゴー、障害物ありの前方歩行および

認知課題テスト:言語流暢性テスト、連続引き算 、

の各組み合わせをおこなった。

歩行時間短縮効果と、単位時間あたりの正答率を評価 比較した。
その後6ヶ月間の転倒回数や社会参加、QoLも調査した。


次のようになった。

・二重課題訓練グループでのみ歩行タイムの短縮があった。とくに前方歩行+流暢性テストで9.5%、前方歩行+連続引き算で9.6%、TUG+流暢性テストで16.8% 改善した。

・この改善効果は8週間後も続いていた。

・認知機能テストは二重課題訓練による正答率のあきらかな変化はなかった。

・二重課題訓練により転倒数が22.2%減少し、25.0%の転倒リスク低下につながった。

・社会参加やQoLに変化はなかった。

歩行中の注意配分をうながす訓練により、二重課題時の移動能力および転倒数が減少した、


というおはなし。

図:転倒の原因
転倒の原因


感想:

すでにこの事実に気づいていたので、外出時には常にスマホONにしてポケモンを狩りながら歩くようにしている。そのおかげで現在トレーナーレベル32 まできた。
[二重課題]の関連記事

2018年12月19日

地域の緑と脳卒中メカニズム


Association Between Residential Greenness and Cardiovascular Disease Risk
2018  12月  アメリカ

脳卒中など心血管疾患は居住する地域の住民の質や道路との位置関係に影響をうけることがわかっている。

いっぽう居住地域の草木の緑の多さは心血管疾患や呼吸器死亡率をさげるとする報告がいくつかあるが関連は低くメカニズムもあきらかでない。

そこで、居住地域の緑の多さと心血管疾患との関連をくわしくしらべてみたそうな。


ケンタッキー州ルイビルの住民408人について、
血液と尿サンプルを採り心血管疾患関連のバイオマーカーをしらべた。

かれらの居住する地域250m四方の植生指標を衛星データから求め、関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・年齢、性別、喫煙、貧困度、スタチン、道路状況を考慮にいれてなお、居住地区の植生指標と尿中アドレナリンレベルと脂質酸化指標であるF2-isoprostaneは逆相関にあった。

・特に尿中アドレナリンレベルとの関連は女性に顕著だった。

・また血中の血管新生細胞の15種類中11種類で植生指標と逆相関にあった。

居住地域に緑がおおいと交感神経の活動や酸化ストレスがさがり、血管新生能力が高まる、


というおはなし。

図:衛星センシングによる植生調査

感想:

しばらく東京に住んで勤めていたことがあるけど いつも緑に「飢えていた」。近所のゴミだらけの狭く汚い公園であっても木や草を見るだけで癒やされる感覚があった。

2018年12月18日

脳内出血がとまりにくい血液型


ABO Blood Type and Hematoma Expansion After Intracerebral Hemorrhage- An Exploratory Analysis
2018  12月  アメリカ

脳内出血で血腫増大があると予後がよくない。その要因には抗凝固薬の使用や個人ごとの血液の凝固しやすさの違いが考えられる。

ABO式血液型と脳卒中との関連はいくつもの報告があり、フォン ヴィレブランド因子(vWF)と血液凝固Ⅷ因子との関連が指摘されている。

そうであるなら、O型患者は他の血液型(A,B,AB)にくらべvWFが少なく凝固しにくいので血腫増大リスクが高いことになる。

このあたりを確かめるべく 脳内出血患者の血液型と血腫増大との関連をくわしくしらべてみたそうな。


脳内出血患者272人の血液型を調べ、
CT画像から確認した血腫の33%以上の増大ケース
および3ヶ月後の回復度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者内訳は、O型54%、A型30%、B型13%、AB型3%で、

・B型のみ血腫増大リスクがあきらかに高く、関連要因を調整しても他の血液型のおよそ2.8倍だった。

・3ヶ月後の回復度や死亡リスクとの関連はみられなかった。

血液型Bの脳内出血患者はあきらかに血腫増大しやすかった、


というおはなし。

図:

感想:

どういうメカニズムかは不明だが、じぶんもB型の脳内出血経験者だから他人事ではない。

いっぽう脳梗塞はAB型?↓
[血液型]の関連記事

2018年12月17日

Stroke誌:右の脳卒中は車にはねられやすい


Increased Risk of Traffic Injury After a Cerebrovascular Event
2018  10月  カナダ

脳卒中経験者の交通事故の遭いやすさは脳の損傷位置と関連すると考えられるがよくわかっていない。

そこで、重大な交通事故への遭遇と左右脳半球の損傷との関連を大規模にしらべてみたそうな。


脳血管イベント(TIAまたは脳卒中)の経験者26144人について6年間ほどフォローして、

*自動車運転中の事故で救急救命要請が必要になったケース または
*歩行中に自動車に接触して救急搬送されたケース、もしくは
*道路で自然に転倒して骨折や捻挫するケースを抽出した。

これらと脳血管イベントによる左右の脳損傷との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・運転中の事故は377件あり、率は年間1000人あたり2.2人で(一般人は1.7人)、損傷脳半球の左右でのちがいはなかった。

・歩行中に自動車に接触する事故は327件あり、年間1000人あたり1.9人で(一般人は0.4人)、その率は右脳損傷者におおく 2.1 vs. 1.7人で、

・関連要因を調整したリスクは左脳損傷者の1.27倍だった。

・転倒骨折等での脳半球の差はなかった。
脳卒中経験者は歩行中に自動車にはねられやすく 特に右脳損傷で顕著だった。彼らには運転教習レベルの歩行指導が必要だろう、


というおはなし。

図:交通事故 右脳左脳の脳卒中


感想:

右脳損傷で とくに車にはねられやすいのは、都会に住む若年者で神経症状が軽く障害の残らなかった人なんだって。

認知やられてる自覚がないままに歩行を舐めてるんだとおもう。もっと緊張感を持て ということかな。

2018年12月16日

慢性期脳卒中への幹細胞治療 その後


Two-year safety and clinical outcomes in chronic ischemic stroke patients after implantation of modified bone marrow–derived mesenchymal stem cells : a phase 1/2a study
2018  11月  アメリカ

日本企業が開発した幹細胞治療薬を患者に移植してから2年間が経ったそうな。


ドナーの骨髄から採取した幹細胞に遺伝子改変処理をして、慢性期の脳梗塞患者18人へ定位脳手術的に移植した。

このときの有害事象と機能改善効果を2年間フォローしたところ、

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