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2018年12月22日

Stroke誌:くも膜下出血の1年後を推定する方法


Home-Time as a Surrogate Marker for Functional Outcome After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
2018  12月  スイス

くも膜下出血の長期的な予後予測はむつかしく評価する者によっておおきくことなる。

いっぽう脳梗塞については 発症後一定期間内に自宅で過ごした時間がその後の回復度を反映し客観性のある評価を可能にするという報告がある。

これをくも膜下出血にたいしても応用してみたそうな。


スイス国内8病院のくも膜下出血患者1866人について、

発症後90日間に自宅で過ごした日数を調査し、退院時と1年後の生活自立度mRSスコアとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・自宅日数と退院時のmRSスコアは明らかな関連があり、特にmRSが0-4の範囲ではっきり区別ができた。

・同様に1年後のmRSスコアは0-3の範囲で自宅日数とあきらかに関連した。mRS4-5の範囲は区別はできなかった。

くも膜下出血のあと90日間に自宅で過ごした日数をみれば1年後の状態を、とくに回復良好者について簡単かつ正確に予測できた、


というおはなし。

図:自宅時間とくも膜下出血の1年後mRS


感想:

ようするに回復良いほど早く退院して家にもどるってことなんだけど、病院に残ってリハビリがんばる人もいれば病院にいても仕方がないので家に帰される人もいる。
だからこれで重症者をこまかく区別するのはむつかしい。

1年後mRSが2以下の回復良好者の条件は、上の図みると90日内の自宅日数がだいたい30日以上あることだから、入院後2ヶ月で退院できていないと望み薄いってこと。

2018年12月21日

昼寝リハビリの効果を検証


Can Daytime Napping Assist the Process of Skills Acquisition After Stroke?
2018  11月  ドイツ

脳卒中患者の運動学習は機能回復のための重要なテーマの1つである。

これまで夜間の睡眠のあとにつよい運動学習効果があらわれることがわかっている。日中の睡眠についても同様の効果が若年者や高齢者でも報告されている。

脳卒中患者についても日中の睡眠で運動学習がすすむものか、実験してみたそうな。


慢性期脳卒中患者30人について、
昼寝時間が a)なし、b)10-20分、c)50-80分 の3グループにわけた。

麻痺手をつかった視覚運動課題を計3セッションおこない、各前後でパフォーマンスを評価した。
セッション1と2の間に昼寝を、2と3の間に夜間睡眠をはさんだ。
睡眠状態は脳波をもって確認した。

その後、健常者30人の非利き手についても同様の実験をおこない比較した。


次のようになった。

・患者の運動パフォーマンスはセッションごとに向上したが、途中の睡眠による効果はまったくみられなかった。

・健常者との比較についても同様で、昼寝の効果はみられなかった。

運動課題のあとの1回の昼寝によるパフォーマンス向上効果は確認できなかった、


というおはなし。

図:昼寝の脳卒中リハビリ効果

感想:

実験室で「さぁ昼寝してください」って言われても眠れるかね? 脳波的には眠っていてもいつもの眠りではないわな。

これおもいだした。↓
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2018年12月20日

Stroke誌:デュアルタスクで転倒を防ぐ


Dual-Task Exercise Reduces Cognitive-Motor Interference in Walking and Falls After Stroke
2018  12月  香港

脳卒中経験者では運動と認知機能が同時要求される二重課題のパフォーマンスが低下することがわかっていて、転倒との関連も指摘されている。

つまり脳卒中経験者の転倒はバランス能力の問題ではなく二重課題下での注意リソースの配分に原因がある可能性がある。

二重課題訓練が歩行パフォーマンスを改善するとするこれまでの研究のおおくは運動機能に重点をおいたものがおおく、歩行バランス能力が向上したのか単に注意の優先度を変えたのか区別がつかないうえにサンプル数も少なかった。

そこで、二重課題訓練による歩行および認知機能の両方を評価して おおくの被験者でくらべてみたそうな。


軽中程度の運動麻痺のある慢性期の脳卒中経験者84人をつぎの3グループに分けた。

*単一課題訓練(通常の歩行リハビリ)
*二重課題訓練(注意配分しながらの歩行)
*比較グループ(上肢訓練)

これを1回60分x週3回x8週間おこない、

この前後および8週間後に

歩行課題テスト:前方歩行、タイムアップアンドゴー、障害物ありの前方歩行および

認知課題テスト:言語流暢性テスト、連続引き算 、

の各組み合わせをおこなった。

歩行時間短縮効果と、単位時間あたりの正答率を評価 比較した。
その後6ヶ月間の転倒回数や社会参加、QoLも調査した。


次のようになった。

・二重課題訓練グループでのみ歩行タイムの短縮があった。とくに前方歩行+流暢性テストで9.5%、前方歩行+連続引き算で9.6%、TUG+流暢性テストで16.8% 改善した。

・この改善効果は8週間後も続いていた。

・認知機能テストは二重課題訓練による正答率のあきらかな変化はなかった。

・二重課題訓練により転倒数が22.2%減少し、25.0%の転倒リスク低下につながった。

・社会参加やQoLに変化はなかった。

歩行中の注意配分をうながす訓練により、二重課題時の移動能力および転倒数が減少した、


というおはなし。

図:転倒の原因
転倒の原因


感想:

すでにこの事実に気づいていたので、外出時には常にスマホONにしてポケモンを狩りながら歩くようにしている。そのおかげで現在トレーナーレベル32 まできた。
[二重課題]の関連記事

2018年12月19日

地域の緑と脳卒中メカニズム


Association Between Residential Greenness and Cardiovascular Disease Risk
2018  12月  アメリカ

脳卒中など心血管疾患は居住する地域の住民の質や道路との位置関係に影響をうけることがわかっている。

いっぽう居住地域の草木の緑の多さは心血管疾患や呼吸器死亡率をさげるとする報告がいくつかあるが関連は低くメカニズムもあきらかでない。

そこで、居住地域の緑の多さと心血管疾患との関連をくわしくしらべてみたそうな。


ケンタッキー州ルイビルの住民408人について、
血液と尿サンプルを採り心血管疾患関連のバイオマーカーをしらべた。

かれらの居住する地域250m四方の植生指標を衛星データから求め、関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・年齢、性別、喫煙、貧困度、スタチン、道路状況を考慮にいれてなお、居住地区の植生指標と尿中アドレナリンレベルと脂質酸化指標であるF2-isoprostaneは逆相関にあった。

・特に尿中アドレナリンレベルとの関連は女性に顕著だった。

・また血中の血管新生細胞の15種類中11種類で植生指標と逆相関にあった。

居住地域に緑がおおいと交感神経の活動や酸化ストレスがさがり、血管新生能力が高まる、


というおはなし。

図:衛星センシングによる植生調査

感想:

しばらく東京に住んで勤めていたことがあるけど いつも緑に「飢えていた」。近所のゴミだらけの狭く汚い公園であっても木や草を見るだけで癒やされる感覚があった。

2018年12月18日

脳内出血がとまりにくい血液型


ABO Blood Type and Hematoma Expansion After Intracerebral Hemorrhage- An Exploratory Analysis
2018  12月  アメリカ

脳内出血で血腫増大があると予後がよくない。その要因には抗凝固薬の使用や個人ごとの血液の凝固しやすさの違いが考えられる。

ABO式血液型と脳卒中との関連はいくつもの報告があり、フォン ヴィレブランド因子(vWF)と血液凝固Ⅷ因子との関連が指摘されている。

そうであるなら、O型患者は他の血液型(A,B,AB)にくらべvWFが少なく凝固しにくいので血腫増大リスクが高いことになる。

このあたりを確かめるべく 脳内出血患者の血液型と血腫増大との関連をくわしくしらべてみたそうな。


脳内出血患者272人の血液型を調べ、
CT画像から確認した血腫の33%以上の増大ケース
および3ヶ月後の回復度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者内訳は、O型54%、A型30%、B型13%、AB型3%で、

・B型のみ血腫増大リスクがあきらかに高く、関連要因を調整しても他の血液型のおよそ2.8倍だった。

・3ヶ月後の回復度や死亡リスクとの関連はみられなかった。

血液型Bの脳内出血患者はあきらかに血腫増大しやすかった、


というおはなし。

図:

感想:

どういうメカニズムかは不明だが、じぶんもB型の脳内出血経験者だから他人事ではない。

いっぽう脳梗塞はAB型?↓
[血液型]の関連記事

2018年12月17日

Stroke誌:右の脳卒中は車にはねられやすい


Increased Risk of Traffic Injury After a Cerebrovascular Event
2018  10月  カナダ

脳卒中経験者の交通事故の遭いやすさは脳の損傷位置と関連すると考えられるがよくわかっていない。

そこで、重大な交通事故への遭遇と左右脳半球の損傷との関連を大規模にしらべてみたそうな。


脳血管イベント(TIAまたは脳卒中)の経験者26144人について6年間ほどフォローして、

*自動車運転中の事故で救急救命要請が必要になったケース または
*歩行中に自動車に接触して救急搬送されたケース、もしくは
*道路で自然に転倒して骨折や捻挫するケースを抽出した。

これらと脳血管イベントによる左右の脳損傷との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・運転中の事故は377件あり、率は年間1000人あたり2.2人で(一般人は1.7人)、損傷脳半球の左右でのちがいはなかった。

・歩行中に自動車に接触する事故は327件あり、年間1000人あたり1.9人で(一般人は0.4人)、その率は右脳損傷者におおく 2.1 vs. 1.7人で、

・関連要因を調整したリスクは左脳損傷者の1.27倍だった。

・転倒骨折等での脳半球の差はなかった。
脳卒中経験者は歩行中に自動車にはねられやすく 特に右脳損傷で顕著だった。彼らには運転教習レベルの歩行指導が必要だろう、


というおはなし。

図:交通事故 右脳左脳の脳卒中


感想:

右脳損傷で とくに車にはねられやすいのは、都会に住む若年者で神経症状が軽く障害の残らなかった人なんだって。

認知やられてる自覚がないままに歩行を舐めてるんだとおもう。もっと緊張感を持て ということかな。

2018年12月16日

慢性期脳卒中への幹細胞治療 その後


Two-year safety and clinical outcomes in chronic ischemic stroke patients after implantation of modified bone marrow–derived mesenchymal stem cells : a phase 1/2a study
2018  11月  アメリカ

日本企業が開発した幹細胞治療薬を患者に移植してから2年間が経ったそうな。


ドナーの骨髄から採取した幹細胞に遺伝子改変処理をして、慢性期の脳梗塞患者18人へ定位脳手術的に移植した。

このときの有害事象と機能改善効果を2年間フォローしたところ、

2018年12月15日

上肢麻痺へのミラー療法と振動療法


Mirror and Vibration Therapies Effects on the Upper Limbs of Hemiparetic Patients after Stroke- A Pilot Study
2018  11月  ブラジル

脳卒中患者の上肢麻痺の改善は日常生活上のもっともおおきなテーマである。その治療法としてミラー療法と振動療法がある。

おのおの治療メカニズムは異なると考えられるので、その効果をくらべてみたそうな。


脳卒中から12ヶ月未満で上肢麻痺のある21人について、

ミラー療法、振動療法(電動マッサージ器をつかう)、比較グループの3つにわけ、

1回15分間x週3回x4週間のセッションののち、
上肢の運動機能を3つの指標で評価 比較したところ、


次のようになった。

・3つの評価 Mobility Index Rivermead, Motor Function Wolf Test, Jebsen Taylor Test のいずれもミラー療法と振動療法でおおきくスコアが改善した。

ミラー療法と振動療法により脳卒中片麻痺患者の上肢運動機能がおおきく改善した、


というおはなし。

図:Wolf test MT VT 脳卒中


感想:

療法士さんが鏡に向かってブツブツ言ったり、電動マッサージ器をあちこちに当てたりすると「なにか特別なことをしてくれているんだなぁ」と察する。
そして機能テストを普段よりがんばってあげる。
だからスコアが伸びる。

治療に携わる方々は患者のやさしさに支えられていることを忘れないでほしい。

2018年12月14日

脳の損傷部位にあらたな神経細胞を誘導する方法


New neurons use Slit-Robo signaling to migrate through the glial meshwork and approach a lesion for functional regeneration
2018  12月  日本

動物にもとからそなわっている神経新生能力をもちいた脳損傷治療が注目されている。

成長がおわった動物でも脳室下帯ではあらたな神経細胞の産生がつづいていて、たとえば脳卒中がおきると脳室下帯から神経の前駆細胞(神経芽細胞)が脳の損傷箇所へ移動する。

このときグリア細胞であるアストロサイトが構成する細胞骨格がその移動を制限するためじゅうぶんな神経新生をおこなうことができていない。

これまで神経芽細胞がだすSlitタンパク質とアストロサイトのRobo受容体間のシグナル伝達で神経芽細胞の移動が誘導されると考えられてきた。

この神経芽細胞が移動しやすくなることで脳卒中の神経新生と機能回復をうながすことができるものか、実験してみたそうな。

2018年12月13日

施設送りにされないために必要な能力は


Executive function subdomains are associated with poststroke functional outcome and permanent institutionalization
2018  11月  フィンランド

脳卒中患者の認知機能の低下はじつにありふれていて、とくに実行機能(遂行機能)の障害は問題で、身体が順調に回復できた患者であっても34%が実行機能に障害を持つという報告がある。

実行機能はいくつもの認知機能が関わる前頭葉の高度なはたらきを指すと考えられていて、単一のテストでは評価することはできない。

たとえば、Trail making test は処理速度、Wisconsin card sorting test は注意切り替えと戦略立案、Stroop testは行動抑制、Verbal fluency test は想起検索、に関係するとされ実行機能の評価に用いられる。

そこで実行機能を構成するサブドメインのうち脳卒中患者の機能回復度と関係のふかい要素をみつけるべく くわしくしらべてみたそうな。


脳卒中患者62人について、
発症後3ヶ月と15ヶ月時点での実行機能に関連する7種類のテストをおこない、
生活自立度 mRS, IADLおよび その後の施設送りの有無との関連を解析して
健常者39人の結果と比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者は複数の認知機能テストで健常者よりもスコアが低かった。

・行動抑制、注意切り替え、想起検索、戦略立案、処理速度の各項目は患者の生活自立度スコアと相関があった。

・行動抑制、注意切り替え、処理速度は機能回復度と関連が強く、

・とくに 行動抑制力の低さは施設送りとの関連が強かった。

実行機能は脳卒中患者の機能障害と強く関連していた。とくに行動抑制力が低いばあい早くに施設送りになりやすかった、


というおはなし。

図:実行機能のサブドメインとテスト

感想:

行動抑制はストループテストで、たとえば ←の色を問われて「あお」と言いたいところをぐっとこらえて「あか」と答える能力。

これができないと 家族にうとまれ施設に入れられてしまうということか。

2018年12月12日

中低所得国で成果をあげている脳卒中リハビリとは


A systematic review of physical rehabilitation interventions for stroke in low and lower-middle income countries
2018  12月  アイルランド

脳卒中による障害や早死による世界全体の人的損失年数の78%は中低所得国で発生しているという。

これらの国々では脳卒中リハビリにあてられるあらゆるリソースが限定的であり高所得国の真似をすることができない。

そこで中低所得国で効果的とされる脳卒中の身体リハビリテーションの種類についてこれまでの成果をまとめてみたそうな。


中低所得国の成人脳卒中患者を対象とした身体リハビリテーションに関係する質の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2115人を含む62の研究がみつかった。大半はインドのものだった。

・内訳は、上肢関連が26件、下肢22件、その他14件だった。

・研究の質的には、強7件、中16件、弱39件と分類でき、

・全体として身体リハビリテーションにより患者の回復が促された。

・特にエビデンスレベルが高かったものは、CI療法とミラーセラピーによる上肢リハビリおよび、

・運動イメージ訓練による歩行リハビリだった。

・次いで、立ち上がり訓練(sit-to-stand training)でのバランス改善効果だった。

中低所得国の脳卒中リハビリ研究の結果、ミラーや運動イメージによる脳内トレーニングおよび上下肢の繰り返し運動が効果的でかつ低コスト シンプルな方法として評価されていた、


というおはなし。

図:中低所得国の脳卒中リハビリ


感想:

むしろこういう環境でこそ真の実力が試される。

CI療法(=課題指向型訓練)はナンセンスであることが最近あきらかになったので除外するとして、

ミラーセラピーの発案者はインド人だから一番人気は納得。

そして安定のメンタルプラクティス(運動イメージ訓練)か。
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