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2018年12月16日

慢性期脳卒中への幹細胞治療 その後


Two-year safety and clinical outcomes in chronic ischemic stroke patients after implantation of modified bone marrow–derived mesenchymal stem cells : a phase 1/2a study
2018  11月  アメリカ

日本企業が開発した幹細胞治療薬を患者に移植してから2年間が経ったそうな。


ドナーの骨髄から採取した幹細胞に遺伝子改変処理をして、慢性期の脳梗塞患者18人へ定位脳手術的に移植した。

このときの有害事象と機能改善効果を2年間フォローしたところ、

2018年12月15日

上肢麻痺へのミラー療法と振動療法


Mirror and Vibration Therapies Effects on the Upper Limbs of Hemiparetic Patients after Stroke- A Pilot Study
2018  11月  ブラジル

脳卒中患者の上肢麻痺の改善は日常生活上のもっともおおきなテーマである。その治療法としてミラー療法と振動療法がある。

おのおの治療メカニズムは異なると考えられるので、その効果をくらべてみたそうな。


脳卒中から12ヶ月未満で上肢麻痺のある21人について、

ミラー療法、振動療法(電動マッサージ器をつかう)、比較グループの3つにわけ、

1回15分間x週3回x4週間のセッションののち、
上肢の運動機能を3つの指標で評価 比較したところ、


次のようになった。

・3つの評価 Mobility Index Rivermead, Motor Function Wolf Test, Jebsen Taylor Test のいずれもミラー療法と振動療法でおおきくスコアが改善した。

ミラー療法と振動療法により脳卒中片麻痺患者の上肢運動機能がおおきく改善した、


というおはなし。

図:Wolf test MT VT 脳卒中


感想:

療法士さんが鏡に向かってブツブツ言ったり、電動マッサージ器をあちこちに当てたりすると「なにか特別なことをしてくれているんだなぁ」と察する。
そして機能テストを普段よりがんばってあげる。
だからスコアが伸びる。

治療に携わる方々は患者のやさしさに支えられていることを忘れないでほしい。

2018年12月14日

脳の損傷部位にあらたな神経細胞を誘導する方法


New neurons use Slit-Robo signaling to migrate through the glial meshwork and approach a lesion for functional regeneration
2018  12月  日本

動物にもとからそなわっている神経新生能力をもちいた脳損傷治療が注目されている。

成長がおわった動物でも脳室下帯ではあらたな神経細胞の産生がつづいていて、たとえば脳卒中がおきると脳室下帯から神経の前駆細胞(神経芽細胞)が脳の損傷箇所へ移動する。

このときグリア細胞であるアストロサイトが構成する細胞骨格がその移動を制限するためじゅうぶんな神経新生をおこなうことができていない。

これまで神経芽細胞がだすSlitタンパク質とアストロサイトのRobo受容体間のシグナル伝達で神経芽細胞の移動が誘導されると考えられてきた。

この神経芽細胞が移動しやすくなることで脳卒中の神経新生と機能回復をうながすことができるものか、実験してみたそうな。

2018年12月13日

施設送りにされないために必要な能力は


Executive function subdomains are associated with poststroke functional outcome and permanent institutionalization
2018  11月  フィンランド

脳卒中患者の認知機能の低下はじつにありふれていて、とくに実行機能(遂行機能)の障害は問題で、身体が順調に回復できた患者であっても34%が実行機能に障害を持つという報告がある。

実行機能はいくつもの認知機能が関わる前頭葉の高度なはたらきを指すと考えられていて、単一のテストでは評価することはできない。

たとえば、Trail making test は処理速度、Wisconsin card sorting test は注意切り替えと戦略立案、Stroop testは行動抑制、Verbal fluency test は想起検索、に関係するとされ実行機能の評価に用いられる。

そこで実行機能を構成するサブドメインのうち脳卒中患者の機能回復度と関係のふかい要素をみつけるべく くわしくしらべてみたそうな。


脳卒中患者62人について、
発症後3ヶ月と15ヶ月時点での実行機能に関連する7種類のテストをおこない、
生活自立度 mRS, IADLおよび その後の施設送りの有無との関連を解析して
健常者39人の結果と比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者は複数の認知機能テストで健常者よりもスコアが低かった。

・行動抑制、注意切り替え、想起検索、戦略立案、処理速度の各項目は患者の生活自立度スコアと相関があった。

・行動抑制、注意切り替え、処理速度は機能回復度と関連が強く、

・とくに 行動抑制力の低さは施設送りとの関連が強かった。

実行機能は脳卒中患者の機能障害と強く関連していた。とくに行動抑制力が低いばあい早くに施設送りになりやすかった、


というおはなし。

図:実行機能のサブドメインとテスト

感想:

行動抑制はストループテストで、たとえば ←の色を問われて「あお」と言いたいところをぐっとこらえて「あか」と答える能力。

これができないと 家族にうとまれ施設に入れられてしまうということか。

2018年12月12日

中低所得国で成果をあげている脳卒中リハビリとは


A systematic review of physical rehabilitation interventions for stroke in low and lower-middle income countries
2018  12月  アイルランド

脳卒中による障害や早死による世界全体の人的損失年数の78%は中低所得国で発生しているという。

これらの国々では脳卒中リハビリにあてられるあらゆるリソースが限定的であり高所得国の真似をすることができない。

そこで中低所得国で効果的とされる脳卒中の身体リハビリテーションの種類についてこれまでの成果をまとめてみたそうな。


中低所得国の成人脳卒中患者を対象とした身体リハビリテーションに関係する質の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2115人を含む62の研究がみつかった。大半はインドのものだった。

・内訳は、上肢関連が26件、下肢22件、その他14件だった。

・研究の質的には、強7件、中16件、弱39件と分類でき、

・全体として身体リハビリテーションにより患者の回復が促された。

・特にエビデンスレベルが高かったものは、CI療法とミラーセラピーによる上肢リハビリおよび、

・運動イメージ訓練による歩行リハビリだった。

・次いで、立ち上がり訓練(sit-to-stand training)でのバランス改善効果だった。

中低所得国の脳卒中リハビリ研究の結果、ミラーや運動イメージによる脳内トレーニングおよび上下肢の繰り返し運動が効果的でかつ低コスト シンプルな方法として評価されていた、


というおはなし。

図:中低所得国の脳卒中リハビリ


感想:

むしろこういう環境でこそ真の実力が試される。

CI療法(=課題指向型訓練)はナンセンスであることが最近あきらかになったので除外するとして、

ミラーセラピーの発案者はインド人だから一番人気は納得。

そして安定のメンタルプラクティス(運動イメージ訓練)か。

2018年12月11日

メンタルプラクティスの上肢リハビリ効果


Mental practice for upper limb motor restoration after stroke- an updated meta-analysis of randomized controlled trials
2018  12月  中国

脳卒中上肢麻痺のリハビリにはいくつもの方法がある。
しかしこれまでもっとも頼りにされてきた特定動作の繰り返し(課題指向型訓練)には効果がないことが最近わかってきた。

メンタルプラクティスは実際の動作を行う必要がないことから重症患者にも適用でき、安全かつ簡単で退院後も続けることのできるリハビリ方法として期待されている。

過去のメタアナリシスでは評価方法のばらつきがおおきくその効果をあきらかにできていなかった。

そこで最新の研究をふくめてメンタルプラクティスのメタアナリシスを再度こころみたそうな。


メンタルプラクティスによる脳卒中上肢リハビリの論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者268人を含む12の研究がみつかった。

・Egger's testでは出版バイアスは見られなかった。

・メンタルプラクティスにより上肢運動機能FMAスコアがあきらかに向上していた。

・同様に上肢機能ARATスコアもおおきな改善をしめした。

・これらの関連は任意の研究データを除外しても影響を受けず保たれていた。

メンタルプラクティスは脳卒中上肢麻痺のリハビリに有効である。ぜひ推奨したい、


というおはなし。

図:

感想:

メンタルプラクティスと運動イメージ訓練(motor imagery)は同じ。これに場の雰囲気やじぶんの気持ちを加えた脳内リハーサルを総称して「イメージトレーニング」とよぶ。


これまでも上肢リハビリがいろいろあるなかで唯一まともそうなのがメンタルプラクティスだった。↓
Stroke誌:上肢リハビリ 良い方法 & ダメな方法

2018年12月10日

禁煙効果があらわれるまでの年数


Association of smoking with risk of stroke in middle-aged and older Chinese- Evidence from the China National Stroke Prevention Project
2018  11月  中国

喫煙の健康への影響はよく研究されている。

しかし中高年の東アジア人についての喫煙と脳卒中との関連はほとんどわかっていないので、くわしくしらべてみたそうな。


2013-2015に中国の深セン市で40歳以上の男女12704人についてアンケート調査したところ、


次のことがわかった。

・85.08%は喫煙経験の無い者で、12.10%が現在喫煙者だった。

・524人が脳卒中経験者で、男性の4.06%、女性の2.95%に相当した。

・喫煙者の脳卒中リスクは非喫煙者の1.67-1.93倍で、

・一日の喫煙本数が10本以下→21本以上のとき、リスクは1.48→2.37となった。

・喫煙年数は、20年未満→40年以上のばあい、リスクは0.51→2.01となり、

・禁煙年数との関連は、5年未満→5-19年→20年以上のばあい、リスクは3.47→3.37→0.95となった。

喫煙による脳卒中リスクは本数に従い上昇した。禁煙期間が20年を超えるとそれまでの影響を相殺できた、


というおはなし。

図:喫煙と脳卒中


感想:

中国人はみなタバコ吸いまくってる印象があったけど喫煙率低くておどろいた。

いまや健康リスク承知のうえで吸っているってことだから、すきにさせてあげたらいいとおもう。

2018年12月9日

高齢の高血圧のうち薬の効かない患者の割合


Prevalence and characteristics of apparent treatment-resistant hypertension in older people in China- a cross-sectional study
2018  12月  中国

中国では18歳以上の高血圧は23.2%で、65-74歳の高齢者に限ると55.7%が相当する。

3種類以上の薬を飲んでも血圧をじゅうぶんに下げることのできない患者を治療抵抗性高血圧(treatment-resistant hypertension:TRH)とよぶ。

これまでの調査からTRHは、18歳以上では13-16%に見られる。しかし高齢者ではよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2012-2015の60-75歳の高血圧患者3774人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・彼らの75.1%は降圧治療を受けており、40.7%が降圧目標を達成できていた。

・TRHは5.97%だった。

・TRHで かつ降圧薬4種類以上は3.29%いた。

・TRH患者は、非TRHにくらべ 肥満(29.61% vs 20.53%)、高脂血症(26.03% vs 19.26%)、糖尿病(34.31% vs 25.64%)、脳卒中(26.03% vs 19.26%)がいずれもおおかった。

・とくに男性または糖尿病がTRHのリスク要因だった。

・定期的な運動をしている患者のTRHリスクは低かった。
高齢者の高血圧のうち、治療抵抗性のある者は5.97%いた。男性または糖尿病がそのリスク要因だった。彼らには定期的な運動がのぞましい、


というおはなし。

図:治療抵抗性高血圧のリスク

感想:

降圧薬を4種類も積まれて平気なのか? そのメンタルこそが要治療だとおもうぞ。

2018年12月8日

ランセット誌:脳卒中の抗うつ薬は役に立たない


Effects of fluoxetine on functional outcomes after acute stroke (FOCUS)- a pragmatic, double-blind, randomised, controlled trial
2018  12月  イギリス

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチンは脳卒中患者への抗うつ薬としてよく用いられている。

これまでのいくつかの研究で、フルオキセチンが患者の脳の可塑性を高め神経新生をうながし機能回復が進むとする報告がなされている。2011年には100人規模の臨床試験も行われていて期待できる結果が得られている。

脳卒中患者への抗うつ薬フルオキセチンがほんとうに機能回復に役立つものかどうか、大規模にしらべてみたそうな。


2012-2017の急性脳卒中患者1564人にフルオキセチン20mg/日を与え、同人数の偽薬グループと6ヶ月後の生活自立度mRSスコアを比較したところ、

2018年12月7日

後方循環系の脳梗塞の予後


Is Functional Outcome Different in Posterior and Anterior Circulation Stroke
2018  11月  オーストリア

後方循環系の脳卒中(posterior circulation stroke:PCS)は脳梗塞全体のおよそ20%をしめる。前方循環系のそれ(anterior circulation stroke:ACS)との予後比較の良し悪しは調査の規模や血栓溶解治療の有無によりことなる。

これを大規模にしらべてみたそうな。


オーストリアの脳卒中患者データベースからPCS4604人、ACS4604人を抽出して、3ヶ月後の回復度mRSを比べた。

各グループともに477人ずつr-tPA治療を受けた者を含めた。


次のことがわかった。

・3ヶ月後の回復度は 有意にACSグループが良かった。

・とくに発症時間不明または発症から入院まで4時間半以上経ったPCSグループの回復度は悪かった。

・しかしrt-PA治療に間に合った患者についてはACSとPCSで回復度に差はなかった。

後方循環系の脳卒中でrt-PA治療に間に合わなかったもしくは発症時間が不明の患者は前方循環系患者よりも回復がよくなかった、


というおはなし。

図:mRS PCS ACS

感想:

ほんのちょっとの違いだな。↑

2018年12月6日

Stroke誌:太い動脈がキッチリ詰まっているときの2症状


Large Vessel Occlusion in Acute Stroke - Stroke
2018  10月  ドイツ

主幹動脈の閉塞でアルテプラーゼをつかった血栓溶解治療をおこなったあと、残った血栓を掻き出す機械的血栓除去術をおこなうことがある。

しかし機械的血栓除去術ができる施設は限られているので、救急搬送まえにその必要の有無を判定できることが望ましい。

主幹動脈の閉塞と機械的血栓除去術の必要性を入院まえに判定する方法がいくつも提案されてきた。おおくは運動機能に着目したものであるがその精度は低い。

今回、運動機能によらず皮質症状である失語と空間無視からその判定ができるものかくわしくしらべてみたそうな。

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