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2018年12月11日

メンタルプラクティスの上肢リハビリ効果


Mental practice for upper limb motor restoration after stroke- an updated meta-analysis of randomized controlled trials
2018  12月  中国

脳卒中上肢麻痺のリハビリにはいくつもの方法がある。
しかしこれまでもっとも頼りにされてきた特定動作の繰り返し(課題指向型訓練)には効果がないことが最近わかってきた。

メンタルプラクティスは実際の動作を行う必要がないことから重症患者にも適用でき、安全かつ簡単で退院後も続けることのできるリハビリ方法として期待されている。

過去のメタアナリシスでは評価方法のばらつきがおおきくその効果をあきらかにできていなかった。

そこで最新の研究をふくめてメンタルプラクティスのメタアナリシスを再度こころみたそうな。


メンタルプラクティスによる脳卒中上肢リハビリの論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者268人を含む12の研究がみつかった。

・Egger's testでは出版バイアスは見られなかった。

・メンタルプラクティスにより上肢運動機能FMAスコアがあきらかに向上していた。

・同様に上肢機能ARATスコアもおおきな改善をしめした。

・これらの関連は任意の研究データを除外しても影響を受けず保たれていた。

メンタルプラクティスは脳卒中上肢麻痺のリハビリに有効である。ぜひ推奨したい、


というおはなし。

図:

感想:

メンタルプラクティスと運動イメージ訓練(motor imagery)は同じ。これに場の雰囲気やじぶんの気持ちを加えた脳内リハーサルを総称して「イメージトレーニング」とよぶ。


これまでも上肢リハビリがいろいろあるなかで唯一まともそうなのがメンタルプラクティスだった。↓
Stroke誌:上肢リハビリ 良い方法 & ダメな方法

2018年12月10日

禁煙効果があらわれるまでの年数


Association of smoking with risk of stroke in middle-aged and older Chinese- Evidence from the China National Stroke Prevention Project
2018  11月  中国

喫煙の健康への影響はよく研究されている。

しかし中高年の東アジア人についての喫煙と脳卒中との関連はほとんどわかっていないので、くわしくしらべてみたそうな。


2013-2015に中国の深セン市で40歳以上の男女12704人についてアンケート調査したところ、


次のことがわかった。

・85.08%は喫煙経験の無い者で、12.10%が現在喫煙者だった。

・524人が脳卒中経験者で、男性の4.06%、女性の2.95%に相当した。

・喫煙者の脳卒中リスクは非喫煙者の1.67-1.93倍で、

・一日の喫煙本数が10本以下→21本以上のとき、リスクは1.48→2.37となった。

・喫煙年数は、20年未満→40年以上のばあい、リスクは0.51→2.01となり、

・禁煙年数との関連は、5年未満→5-19年→20年以上のばあい、リスクは3.47→3.37→0.95となった。

喫煙による脳卒中リスクは本数に従い上昇した。禁煙期間が20年を超えるとそれまでの影響を相殺できた、


というおはなし。

図:喫煙と脳卒中


感想:

中国人はみなタバコ吸いまくってる印象があったけど喫煙率低くておどろいた。

いまや健康リスク承知のうえで吸っているってことだから、すきにさせてあげたらいいとおもう。

2018年12月9日

高齢の高血圧のうち薬の効かない患者の割合


Prevalence and characteristics of apparent treatment-resistant hypertension in older people in China- a cross-sectional study
2018  12月  中国

中国では18歳以上の高血圧は23.2%で、65-74歳の高齢者に限ると55.7%が相当する。

3種類以上の薬を飲んでも血圧をじゅうぶんに下げることのできない患者を治療抵抗性高血圧(treatment-resistant hypertension:TRH)とよぶ。

これまでの調査からTRHは、18歳以上では13-16%に見られる。しかし高齢者ではよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2012-2015の60-75歳の高血圧患者3774人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・彼らの75.1%は降圧治療を受けており、40.7%が降圧目標を達成できていた。

・TRHは5.97%だった。

・TRHで かつ降圧薬4種類以上は3.29%いた。

・TRH患者は、非TRHにくらべ 肥満(29.61% vs 20.53%)、高脂血症(26.03% vs 19.26%)、糖尿病(34.31% vs 25.64%)、脳卒中(26.03% vs 19.26%)がいずれもおおかった。

・とくに男性または糖尿病がTRHのリスク要因だった。

・定期的な運動をしている患者のTRHリスクは低かった。
高齢者の高血圧のうち、治療抵抗性のある者は5.97%いた。男性または糖尿病がそのリスク要因だった。彼らには定期的な運動がのぞましい、


というおはなし。

図:治療抵抗性高血圧のリスク

感想:

降圧薬を4種類も積まれて平気なのか? そのメンタルこそが要治療だとおもうぞ。

2018年12月8日

ランセット誌:脳卒中の抗うつ薬は役に立たない


Effects of fluoxetine on functional outcomes after acute stroke (FOCUS)- a pragmatic, double-blind, randomised, controlled trial
2018  12月  イギリス

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチンは脳卒中患者への抗うつ薬としてよく用いられている。

これまでのいくつかの研究で、フルオキセチンが患者の脳の可塑性を高め神経新生をうながし機能回復が進むとする報告がなされている。2011年には100人規模の臨床試験も行われていて期待できる結果が得られている。

脳卒中患者への抗うつ薬フルオキセチンがほんとうに機能回復に役立つものかどうか、大規模にしらべてみたそうな。


2012-2017の急性脳卒中患者1564人にフルオキセチン20mg/日を与え、同人数の偽薬グループと6ヶ月後の生活自立度mRSスコアを比較したところ、

2018年12月7日

後方循環系の脳梗塞の予後


Is Functional Outcome Different in Posterior and Anterior Circulation Stroke
2018  11月  オーストリア

後方循環系の脳卒中(posterior circulation stroke:PCS)は脳梗塞全体のおよそ20%をしめる。前方循環系のそれ(anterior circulation stroke:ACS)との予後比較の良し悪しは調査の規模や血栓溶解治療の有無によりことなる。

これを大規模にしらべてみたそうな。


オーストリアの脳卒中患者データベースからPCS4604人、ACS4604人を抽出して、3ヶ月後の回復度mRSを比べた。

各グループともに477人ずつr-tPA治療を受けた者を含めた。


次のことがわかった。

・3ヶ月後の回復度は 有意にACSグループが良かった。

・とくに発症時間不明または発症から入院まで4時間半以上経ったPCSグループの回復度は悪かった。

・しかしrt-PA治療に間に合った患者についてはACSとPCSで回復度に差はなかった。

後方循環系の脳卒中でrt-PA治療に間に合わなかったもしくは発症時間が不明の患者は前方循環系患者よりも回復がよくなかった、


というおはなし。

図:mRS PCS ACS

感想:

ほんのちょっとの違いだな。↑

2018年12月6日

Stroke誌:太い動脈がキッチリ詰まっているときの2症状


Large Vessel Occlusion in Acute Stroke - Stroke
2018  10月  ドイツ

主幹動脈の閉塞でアルテプラーゼをつかった血栓溶解治療をおこなったあと、残った血栓を掻き出す機械的血栓除去術をおこなうことがある。

しかし機械的血栓除去術ができる施設は限られているので、救急搬送まえにその必要の有無を判定できることが望ましい。

主幹動脈の閉塞と機械的血栓除去術の必要性を入院まえに判定する方法がいくつも提案されてきた。おおくは運動機能に着目したものであるがその精度は低い。

今回、運動機能によらず皮質症状である失語と空間無視からその判定ができるものかくわしくしらべてみたそうな。

2018年12月5日

若年患者の認知能力


Prevalence and short-term changes of cognitive dysfunction in young ischemic stroke patients
2018  11月  オーストリア

55歳未満の若年脳卒中患者は増加傾向にあり、脳卒中ぜんたいの18.6%をしめている。

かれらの回復は身体機能的には良好なものの、認知機能や神経心理的にはかならずしも順調とはいえない。

そこで若年脳卒中患者の認知障害の率とその後をくわしくしらべてみたそうな。


2016-2018に18-55歳で脳梗塞入院した患者114人について、

入院時(BaseLine)と3ヶ月後(FollowUp)での次の各検査をおこない比較した。

認知障害度 Montreal Cognitive Assessment (MoCA)
情報処理速度と注意力 Symbol Digit Modalities Test (SDMT)
遂行機能 Comprehensive Trail Making Test(CTMT)
言語流暢性 Regensburger Wortflüssigkeitstest(RWT)


次のようになった。

・入院時、半数前後が情報処理スピード、遂行機能、注意力、認知機能全般のあきらかな低下をしめした。

・3ヶ月後、言語流暢性を除く認知機能のおおくは改善した。

・しかし3分1のに相当する患者はいまだ認知障害レベルにあり、

・とくに遂行機能、情報処理スピード、注意力に障害が残った。

若年の脳卒中患者には認知機能の低下が高率にみられた、


というおはなし。

図:若年脳卒中の認知症者率
入院時と3ヶ月後の認知障害者率


感想:

でも本人には自覚がないからすぐに自動車運転をはじめる。しかも手足がよわったぶんを補うべく車格アップをこころみる。なんとおそろしいことか。

2018年12月4日

グーグル:8ミニッツ

いわゆるGoogle八分(はちぶ)を大好きな映画 ミッション:8ミニッツにかけてみた。この映画は列車爆破テロを防ぐために人生最後の8分間をくりかえし何度も経験するはなし。


今日は脳卒中記念日なので自分語りにつかう。

発症からまる10年経った。ブログは1年後に始めたので今日でちょうど9年間つづいたことになる。


忘れもしない昨年の12月6日、Googleがのちに「健康アップデート」と呼ばれる検索アルゴリズムの大幅な変更をおこなった。そして医療健康情報を発信する個人のサイトが検索順位の奥底に沈められた。

医療関連ワードのおおいこのブログもターゲットになり、たった一晩で来訪者の3分の2が消えた。

これは医療や健康にかんする検索結果の上位が広告収入を目的とするアフィリエイトサイトで独占されたことへの対策だった。

このアップデートにより医療キーワードの検索結果の上位には国の研究機関や製薬会社のページが優先的に表示されるようになった。


ここまでは世の流れとしてただしい。あるていどは予測できていたことでもあった。



ところがGoogleは息の根をとめにきているようなのである。

下のグラフはGoogleにインデックスされているこのブログのURLパターン数の最近1年間の推移である。

図:

12/6以降、数ヶ月間で100分の1になりさらにゼロを目指している様子がわかる。検索順位を下げるだけではなくその存在を抹消しようとしているとしか考えられない。


さすがにキーワード「ゼンデラ」で検索するとトップにはでるが、いまや「脳卒中関連」ワードでは検索結果の末尾にすら載ることはなくなった。

Yahooの検索エンジンもGoogleのそれと共通なので影響はおおきい。
まもなく検索経由で新たにこのブログと出会うひとはいなくなるだろう。


こういった状況に絶望した同様のニュースサイトを運営するおおくの個人やベンチャー企業がすでに更新をあきらめた。

アクセスがないから広告がつくはずもなく、自己承認欲求すら満たすことができないのだから無理もない。


脳がやられているせいかあまり気にもせずほぼ1年が経ってしまったが、いまさらながらに文章にして客観視するとかなり深刻な事態であることを実感する。


ここまでハブられるとは予想できなかった。気持ちが折れるのも時間の問題だろうか。



さきに紹介した映画はパラレルワールドがテーマ。

この状況をうまく乗り切れるじぶんがどこかの世界にいるはず。だから失敗してもつづきはそいつがやってくれると信じている。

2018年12月3日

JAMA Neurol.:小脳への磁気刺激で歩行リハビリ


Effect of Cerebellar Stimulation on Gait and Balance Recovery in Patients With Hemiparetic Stroke- A Randomized Clinical Trial
2018  11月  イタリア

脳卒中患者の歩行リハビリを促すあきらかに有効な方法はいまだ存在していない。

近年、動物実験で小脳への刺激が歩行能力の改善につながることが示されている。
また人のfMRIで麻痺側の小脳の活動と歩行の改善度が正の相関をもつことがわかってきた。

そこで脳卒中患者の小脳に、rTMSの一種でシナプスの長期増強をもたらすとされる間欠的シータバースト磁気刺激(iTBS)を与えたときの歩行能力の変化をくわしくしらべてみたそうな。


中大脳動脈域の脳卒中で慢性期の片麻痺患者34人について、
損傷脳半球と対側の小脳へiTBSを3週間継続した。

偽刺激グループにはコイルを90度傾けて対応した。

さらに3週間後までバランスや歩行能力、皮質活動をフォローしたところ、


次のようになった。

・リアル刺激グループで、バランス能力を示すBBSスコアが 34.5→43.4→47.5とおおきく改善した。

・運動機能(FMA)や生活自立度(BI)には変化はなかった。

・麻痺していない足の横方向への歩幅があきらかに減少した。

・後頭葉の活動が高くなった。

小脳への間欠的シータバースト磁気刺激で脳卒中片麻痺患者のバランス能力と歩行パラメータが改善した、


というおはなし。

図:小脳 間欠的シータバーストTMS

感想:

15年ほど前に じぶんの右手の指をうごかしたときのfMRI(←動画)。右の小脳がおおきく反応していて「こういうものなのか、、」とおもった。

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2018年12月2日

脳卒中のあとの3つの精神症状


Association Between Anxiety, Depression, and Post-traumatic Stress Disorder and Outcomes After Ischemic Stroke
2018  11月  アメリカ

脳卒中患者の精神症状については数多くの報告がある。うつや不安 PTSDの症状は4分の1~3分の1の患者が示すという。

これら3つの症状のうちうつに限定した報告はおおいが、3つすべてを扱ったものはすくないのでくわしくしらべてみたそうな。

2018年12月1日

コーヒーやお茶とくも膜下出血


Coffee and tea consumption and the risk for subarachnoid hemorrhage- A meta-analysis
2018  7月  中国

コーヒーには血圧や不整脈に影響するカフェインと抗酸化物質がふくまれていて、お茶にはさまざまなポリフェノール類が含まれていて降圧作用や抗血栓作用が期待されている。

コーヒーやお茶の摂取とくも膜下出血との関係についていくつもの研究があるものの、それらの結論はおおきく異なっているのでメタアナリシスをこころみたそうな。


これまでの関係する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・コーヒーについて7件、お茶について5件の研究成果がみつかった。

・摂取量のもっとも少ないグループに対するもっとも多いグループのくも膜下出血リスクの比は、コーヒー1.31、お茶0.83 だった。

・エビデンスの異質性はコーヒーの研究に大きかった。

・用量反応解析では1カップ増えるごとにくも膜下出血リスクがコーヒー1.00、お茶0.97倍になった。

コーヒーやお茶とくも膜下出血との関連はみられなかった、


というおはなし。

図:コーヒー

感想:

いっぽう緑茶と脳内出血はポジティブな報告がおおい。だから毎日抹茶飲んでる。
緑茶を飲まないと脳内出血リスク1.24倍

毎日4杯以上の緑茶で脳内出血の予防になることが判明

緑茶とコーヒーを飲むと相互作用で脳出血リスクが3割減ることが判明
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