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2018年12月5日

若年患者の認知能力


Prevalence and short-term changes of cognitive dysfunction in young ischemic stroke patients
2018  11月  オーストリア

55歳未満の若年脳卒中患者は増加傾向にあり、脳卒中ぜんたいの18.6%をしめている。

かれらの回復は身体機能的には良好なものの、認知機能や神経心理的にはかならずしも順調とはいえない。

そこで若年脳卒中患者の認知障害の率とその後をくわしくしらべてみたそうな。


2016-2018に18-55歳で脳梗塞入院した患者114人について、

入院時(BaseLine)と3ヶ月後(FollowUp)での次の各検査をおこない比較した。

認知障害度 Montreal Cognitive Assessment (MoCA)
情報処理速度と注意力 Symbol Digit Modalities Test (SDMT)
遂行機能 Comprehensive Trail Making Test(CTMT)
言語流暢性 Regensburger Wortflüssigkeitstest(RWT)


次のようになった。

・入院時、半数前後が情報処理スピード、遂行機能、注意力、認知機能全般のあきらかな低下をしめした。

・3ヶ月後、言語流暢性を除く認知機能のおおくは改善した。

・しかし3分1のに相当する患者はいまだ認知障害レベルにあり、

・とくに遂行機能、情報処理スピード、注意力に障害が残った。

若年の脳卒中患者には認知機能の低下が高率にみられた、


というおはなし。

図:若年脳卒中の認知症者率
入院時と3ヶ月後の認知障害者率


感想:

でも本人には自覚がないからすぐに自動車運転をはじめる。しかも手足がよわったぶんを補うべく車格アップをこころみる。なんとおそろしいことか。

2018年12月4日

グーグル:8ミニッツ

いわゆるGoogle八分(はちぶ)を大好きな映画 ミッション:8ミニッツにかけてみた。この映画は列車爆破テロを防ぐために人生最後の8分間をくりかえし何度も経験するはなし。


今日は脳卒中記念日なので自分語りにつかう。

発症からまる10年経った。ブログは1年後に始めたので今日でちょうど9年間つづいたことになる。


忘れもしない昨年の12月6日、Googleがのちに「健康アップデート」と呼ばれる検索アルゴリズムの大幅な変更をおこなった。そして医療健康情報を発信する個人のサイトが検索順位の奥底に沈められた。

医療関連ワードのおおいこのブログもターゲットになり、たった一晩で来訪者の3分の2が消えた。

これは医療や健康にかんする検索結果の上位が広告収入を目的とするアフィリエイトサイトで独占されたことへの対策だった。

このアップデートにより医療キーワードの検索結果の上位には国の研究機関や製薬会社のページが優先的に表示されるようになった。


ここまでは世の流れとしてただしい。あるていどは予測できていたことでもあった。



ところがGoogleは息の根をとめにきているようなのである。

下のグラフはGoogleにインデックスされているこのブログのURLパターン数の最近1年間の推移である。

図:

12/6以降、数ヶ月間で100分の1になりさらにゼロを目指している様子がわかる。検索順位を下げるだけではなくその存在を抹消しようとしているとしか考えられない。


さすがにキーワード「ゼンデラ」で検索するとトップにはでるが、いまや「脳卒中関連」ワードでは検索結果の末尾にすら載ることはなくなった。

Yahooの検索エンジンもGoogleのそれと共通なので影響はおおきい。
まもなく検索経由で新たにこのブログと出会うひとはいなくなるだろう。


こういった状況に絶望した同様のニュースサイトを運営するおおくの個人やベンチャー企業がすでに更新をあきらめた。

アクセスがないから広告がつくはずもなく、自己承認欲求すら満たすことができないのだから無理もない。


脳がやられているせいかあまり気にもせずほぼ1年が経ってしまったが、いまさらながらに文章にして客観視するとかなり深刻な事態であることを実感する。


ここまでハブられるとは予想できなかった。気持ちが折れるのも時間の問題だろうか。



さきに紹介した映画はパラレルワールドがテーマ。

この状況をうまく乗り切れるじぶんがどこかの世界にいるはず。だから失敗してもつづきはそいつがやってくれると信じている。

2018年12月3日

JAMA Neurol.:小脳への磁気刺激で歩行リハビリ


Effect of Cerebellar Stimulation on Gait and Balance Recovery in Patients With Hemiparetic Stroke- A Randomized Clinical Trial
2018  11月  イタリア

脳卒中患者の歩行リハビリを促すあきらかに有効な方法はいまだ存在していない。

近年、動物実験で小脳への刺激が歩行能力の改善につながることが示されている。
また人のfMRIで麻痺側の小脳の活動と歩行の改善度が正の相関をもつことがわかってきた。

そこで脳卒中患者の小脳に、rTMSの一種でシナプスの長期増強をもたらすとされる間欠的シータバースト磁気刺激(iTBS)を与えたときの歩行能力の変化をくわしくしらべてみたそうな。


中大脳動脈域の脳卒中で慢性期の片麻痺患者34人について、
損傷脳半球と対側の小脳へiTBSを3週間継続した。

偽刺激グループにはコイルを90度傾けて対応した。

さらに3週間後までバランスや歩行能力、皮質活動をフォローしたところ、


次のようになった。

・リアル刺激グループで、バランス能力を示すBBSスコアが 34.5→43.4→47.5とおおきく改善した。

・運動機能(FMA)や生活自立度(BI)には変化はなかった。

・麻痺していない足の横方向への歩幅があきらかに減少した。

・後頭葉の活動が高くなった。

小脳への間欠的シータバースト磁気刺激で脳卒中片麻痺患者のバランス能力と歩行パラメータが改善した、


というおはなし。

図:小脳 間欠的シータバーストTMS

感想:

15年ほど前に じぶんの右手の指をうごかしたときのfMRI(←動画)。右の小脳がおおきく反応していて「こういうものなのか、、」とおもった。

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2018年12月2日

脳卒中のあとの3つの精神症状


Association Between Anxiety, Depression, and Post-traumatic Stress Disorder and Outcomes After Ischemic Stroke
2018  11月  アメリカ

脳卒中患者の精神症状については数多くの報告がある。うつや不安 PTSDの症状は4分の1~3分の1の患者が示すという。

これら3つの症状のうちうつに限定した報告はおおいが、3つすべてを扱ったものはすくないのでくわしくしらべてみたそうな。

2018年12月1日

コーヒーやお茶とくも膜下出血


Coffee and tea consumption and the risk for subarachnoid hemorrhage- A meta-analysis
2018  7月  中国

コーヒーには血圧や不整脈に影響するカフェインと抗酸化物質がふくまれていて、お茶にはさまざまなポリフェノール類が含まれていて降圧作用や抗血栓作用が期待されている。

コーヒーやお茶の摂取とくも膜下出血との関係についていくつもの研究があるものの、それらの結論はおおきく異なっているのでメタアナリシスをこころみたそうな。


これまでの関係する論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・コーヒーについて7件、お茶について5件の研究成果がみつかった。

・摂取量のもっとも少ないグループに対するもっとも多いグループのくも膜下出血リスクの比は、コーヒー1.31、お茶0.83 だった。

・エビデンスの異質性はコーヒーの研究に大きかった。

・用量反応解析では1カップ増えるごとにくも膜下出血リスクがコーヒー1.00、お茶0.97倍になった。

コーヒーやお茶とくも膜下出血との関連はみられなかった、


というおはなし。

図:コーヒー

感想:

いっぽう緑茶と脳内出血はポジティブな報告がおおい。だから毎日抹茶飲んでる。
緑茶を飲まないと脳内出血リスク1.24倍

毎日4杯以上の緑茶で脳内出血の予防になることが判明

緑茶とコーヒーを飲むと相互作用で脳出血リスクが3割減ることが判明

2018年11月30日

脳卒中後うつで抗うつ薬飲んでいる割合


Depression treatment use among stroke individuals with depression- A cross-sectional analysis of the Medical Expenditure Panel Survey
2018  11月  アメリカ

脳卒中患者のおよそ3分の1はうつ症状をしめし、うつがあると死亡率が50%高くなるという。

この対策として抗うつ薬や認知行動療法が適用されることがあるが その頻度はよくわかっていないのでしらべてみたそうな。

2018年11月29日

HIV感染者の脳卒中リスク


Cardiovascular disease and diabetes in HIV-positive and HIV-negative gay and bisexual men over the age of 55 years in Australia: insights from the Australian Positive & Peers Longevity Evaluation Study
2018  11月  オーストラリア

HIVの流行から時間がたち、感染者の40%以上が高齢化している。HIV感染者のおおくはゲイやバイセクシャルの男性(Gay and Bisexual Men : GBM)である。

また、抗レトロウイルス治療が脳卒中など心血管疾患や糖尿病リスクを上げるという報告もある。

そこで、HIVに感染した高齢GBMの心血管疾患リスクをくわしくしらべてみたそうな。


55歳以上のGBMで、HIV感染のある228人と、非感染の218人について病歴を調査したところ、


次のことがわかった。

・合併症の割合はいずれもHIV感染者におおく、心臓病(19.5 vs. 12.2%)、脳卒中(5.5 vs. 4.2%)、血栓症(10.5 vs. 4.2%)、糖尿病(15.0 vs. 9.0%)だった。

・このなかでも特に、心臓病と血栓症のリスクがあきらかに高かった。

高齢のHIV感染者は脳卒中や糖尿病との関連は見られなかったが、心臓病や血栓症リスクの上昇が確認できた、


というおはなし。

図:エイズウイルス

感想:

中国で受精卵にゲノム編集を施してHIV耐性のある双子を作ったというニュースがあったので関心をもった。

これ↓おもいだした。
性的少数者の脳卒中リスク

レズ、ゲイ、バイセクシャルは脳卒中になりやすいの?

2018年11月28日

家族歴 父 母 兄弟 リスク最強は?


Different Types of Family History of Stroke and Stroke Risk- Results Based on 655,552 Individuals
2018  11月  中国

家族歴は脳卒中リスクのおおきな要因の1つである。2004年のメタアナリシスでは家族歴があると脳卒中リスクが30%高くなることはあきらかになった。

その家族の内訳が父方、母方、兄弟でどれがいちばんハイリスクなのかについては調査により結論がことなっている。

そこでこれまでの研究をまとめてみたそうな。


1990-2017の関係する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者655552人を含む16の研究がみつかった。

・年齢、性別、他の関連要因で調整した脳卒中相対リスクは、父方で1.40、母方が1.36、兄弟1.44だった。

・コホート研究に限定して解析すると、相対リスクはそれぞれ、1.33、1.28、1.24で、

・サンプル数のおおきな研究に限定すると、それぞれ、1.30、1.30、1.26となった。
父方、母方、兄弟の脳卒中歴があるといずれも脳卒中リスクは高くなりそれぞれのあきらかな差は認められなかった、


というおはなし。

図:脳卒中の家族歴と相対リスク

感想:

じぶんは maternal history が豊富。

2018年11月27日

運動イメージ訓練に適した時間の長さ


Does the duration of motor imagery affect the excitability of spinal anterior horn cells?
2018  11月  日本

実際の運動をしなくても頭のなかで動作を思い描くだけで脳の関連領域が活性化し、神経伝達路の興奮性がたかまることが報告されている。これは運動イメージ訓練とも呼ばれ脳卒中患者のリハビリにも用いられている。

運動イメージ訓練のもっとも効果てきな時間については報告によりことなる。20年前のメタアナリシスによると、長ければ良いというわけでもなく20分程度が適当と結論している。

そこで、末梢神経を電気刺激したときに脊髄前角で返ってくるF波の観点から運動イメージ訓練に適した時間をしらべてみたそうな。


健常者11人について、左腕の正中神経を刺激して運動イメージ中のF波を測定した。

この間、母指球筋に力を込めるイメージを5分間継続した。


次のことがわかった。

・運動イメージ開始1分から3分後のF波はあきらかに増強していた。

・5分後にはそのレベルは低下し、主観的なイメージの質も大きく低下した。

運動イメージ訓練の継続時間は1-3分が適当であろう、


というおはなし。

図:

感想:

これは同感。具体的にイメージするほど頭がハンパなく疲れる。

2018年11月26日

日本人の脳梗塞とむずむず脚症候群


Restless legs syndrome and its variants in acute ischemic stroke
2018  11月  日本

日本でのむずむず脚症候群の有病率は1.8%で欧米の7-10%にくらべ低い。また、むずむず脚症候群は脳卒中との関連が疑われてもいる。

そこで日本人の脳梗塞患者についてむずむず脚症候群との関連をくわしくしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者104人について、

むずむず脚症候群とその変異型(脚以外の部位のむずむず)の有無と脳の損傷位置を確認したところ、


次のようになった。

・計8人(7.7%)が該当した。(2人は変異型)

・脳卒中のあとに発症した者は3人で、脳卒中の2日以内に症状がでていた。

・脳卒中まえから症状がでていた者の40%は脳卒中後に症状が悪化していた。

・むずむず脚症候群では寝付きが悪かったが、日中の眠気、合併症や回復度に差はなかった。

・脳の損傷部位は延髄(25%)、橋(15.4%)、放射冠(14.8%)、基底核(3.8%)の順におおかった。

むずむず脚症候群は急性脳梗塞患者の8%にみられた、


というおはなし。

図:むずむず脚症候群


感想:

名前のひびきがおもしろいだけでチヤホヤされている病気。深刻さがまったく感じられない。

[むずむず脚症候群]の関連記事

2018年11月25日

マグネシウムと脳卒中後の認知障害


Low levels of serum magnesium are associated with poststroke cognitive impairment in ischemic stroke patients
2018  11月  中国

脳卒中後の認知障害はリスク要因として年齢や性別が挙げられるがこれらは対策のしようがない。

いっぽう急性脳梗塞患者では血中のマグネシウム濃度のあきらかな低下と回復不良との関連が報告されている。

動物実験でマグネシウムが学習や記憶力の改善効果をしめすことから脳卒中患者の認知機能にも関係していることが推測できる。

そこで、脳卒中後の認知障害と血中マグネシウム濃度との関連をくわしくしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者327人の入院時の血中マグネシウム濃度と、1ヶ月後の認知症検査(MMSE)スコアとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・1ヶ月後32.1%の患者が認知障害と診断された。

・認知障害グループも非認知障害グループいずれも健常者よりもマグネシウム濃度があきらかに低かった。

・さらに認知障害グループは非認知障害グループよりもマグネシウム濃度がひくかった。

・マグネシウム濃度が0.82mmol/L以下だと認知障害になるリスクが高齢者と同様に高かった。
脳梗塞患者のうち入院時の血中マグネシウム濃度が低い者は1ヶ月後に認知障害になりやすかった、


というおはなし。

図:マグネシウムと脳卒中後の認知障害


感想:

マグネシウムは葉緑素を多く含むほうれん草などに多く、スパイスやナッツ、豆、ココア、全粒穀物にも含まれる。

これ↓おもいだした。
マグネシウムが少ないと脳動脈瘤が破裂する?

マグネシウムと脳卒中後うつ

食事から摂るマグネシウムの脳卒中予防効果
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