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2018年10月29日

つよい精神的ストレスと脳卒中の関係


Psychological Distress and Risk of Myocardial Infarction and Stroke in the 45 and Up Study
2018  9月  イギリス

いっぱんに精神的な苦痛は脳卒中リスクと関係すると考えられているものの、これまでの研究では結果がばらばらで一致した見解が得られていない。

そこで、精神的苦痛(Psychological Distress)を定量評価するケスラーK10スケール(Kessler Psychological Distress scale)をつかって大規模にしらべてみたそうな。


心血管疾患のない45歳以上の221677人について、
精神的苦痛アンケートをとり、
脳卒中の発生を4.7年間ほどフォローして関連を解析したところ、


次のようになった。

・この間に2421の脳卒中があった。

・脳卒中リスクは精神的苦痛スコアが高くなるほど上昇した。

・精神的苦痛スコアが高いグループでは脳卒中リスクは、男性で24%、女性で44%高かった。

精神的苦痛レベルは脳卒中リスクと強く用量関係にあった、


というおはなし。


図:ケスラーK10


感想:

うえの表、
脳卒中まえの状態がけっこうあてはまってた。

2018年10月28日

長く続く脳卒中後の頭痛


Persistent Poststroke Headache- Finding Its Place in Stroke Aftercare

A Narrative Review of Persistent Post-Stroke Headache - A New Entry in the International Classification of Headache Disorders, 3rd Edition
2018  10月  カナダ

脳卒中患者の5人に1人がなんらかの疼痛を経験するわりには、脳卒中後の長く続く頭痛についてはよく理解されていない。

脳卒中後の頭痛についてまとめてみたそうな。

・脳卒中に頭痛がともなうことはめずらしくなく、

・それら頭痛の60%は脳卒中の発症まえから始まり、25%は発症と同時という。

・急性脳卒中患者の頭痛の罹患率は28%で、

・頸動脈よりも椎骨脳底動脈の脳卒中におおい。

・脳卒中の重症度とは関連がなさそうである。

・これまでの研究では脳卒中に関連する頭痛の発生率は9.3%-38%の範囲にあり、

・さいきんになって、長期につづく脳卒中後の頭痛(Persistent PostStroke Headache:PPSH)が国際頭痛分類に新登録された。

・この分類によると急性脳卒中にともなう頭痛は脳卒中から最大7日以内におきるものを指し、

・いっぽうPPSHは脳梗塞や脳出血の12-23%にみられ、

・緊張性の痛みが3ヶ月-数年にわたり続くものをさす。

・患者は退院後時間が経っているため脳卒中の症状とはみなされないことがおおい。

というおはなし。

図:脳卒中後のながくつづく頭痛

感想:

そういえば頭痛のことはよく知らないな、、、と思ったので関心をもった。

2018年10月27日

脳卒中は遺伝とライフスタイルのどっちが影響大?


Genetic risk, incident stroke, and the benefits of adhering to a healthy lifestyle- cohort study of 306 473 UK Biobank participants - The BMJ
2018  10月  ドイツ

脳卒中の発症にはライフスタイルをふくむ環境要因と遺伝要因が関係する。

脳卒中の遺伝要因については大規模研究MEGASTROKEにより関連DNA領域の数がいっきに3倍にふえた。

これら遺伝要因と実際の脳卒中発症率への影響および、健康的なライフスタイルがおよぼす影響について大規模にしらべてみたそうな。


イギリス全土の40-73歳の男女306473人について、
遺伝子データからMEGASTROKE研究によるリスクスコアを算定し、
健康的な4つのライフスタイル(非喫煙、健康的な食事、BMI30未満、定期的な運動)の有無をしらべ、

脳卒中の発生を平均7.1年間フォローして関連を解析したところ、


次のようになった。

・この間に脳梗塞1541、脳内出血287、くも膜下出血249があった。

・遺伝子リスクスコアが高い上位グループは下位グループにくらべ脳卒中リスクが1.35倍だった。

・健康的なライフスタイルが0-1個しかあてはまらないグループは、3-4個が相当するグループにくらべ脳卒中リスクが1.66倍だった。

・ライフスタイルとの関連は遺伝子リスクの高低によらなかった。

脳卒中のライフスタイル要因と遺伝要因はたがいに独立していた。だから遺伝要因にかかわらず健康的なライフスタイルを維持することがたいせつ、


というおはなし。

図:ライフスタイルと脳卒中リスク


感想:

遺伝の影響はライフスタイルによっては相殺されるから
家系に脳卒中がおおくてもあきらめないで、ってこと。

2018年10月26日

こども脳卒中経験者は計算が苦手 その対策


Does stroke impair academic achievement in children- The role of metacognition in math and spelling outcomes following pediatric stroke
2018  10月  カナダ

子供時代の脳卒中が認知機能にあたえる影響のうち学力面についてはかならずしも一致した見解が得られていない。

そこで、算数、言語、遂行機能の点から脳卒中経験のあるこどもの学力を評価してみたそうな。


6-14歳で脳卒中になり半年以上経つ32人と同齢の健常者32人について、

算数能力、書字能力、遂行機能のうちメタ認知(自身の認知プロセスを認知する)や行動調整能力を測定して比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者は健常者にくらべ算数、書字、メタ認知、行動調整の能力があきらかに劣っていて、

・とくに紙と鉛筆を使った計算が困難で、40%は障害者レベルだった。

・学力の低下はメタ認知能力とつよく関連していた。

こどもの脳卒中経験者は算数がとくに弱かった。これにはメタ認知能力がつよく関わっていると考えられた、


というおはなし。

図:こども脳卒中の学力

感想:

思考プロセスのどこでつまずいているのかを振り返る能力の低下が すぐに反映されるのが計算問題。

もうすこし拡大解釈すると、意識が飛んで手足が動かなくなるほどの経験をしてなお「自分なら運転ができる」と確信できるのもメタ認知低下のなせる技。

だから自分の脳が多少なりとも馬鹿になってしまっていると素直に認めることが、対策の第一歩だとおもうよ。

2018年10月25日

Stroke誌:安静時fMRIの機能結合と脳卒中の予後予測


Resting-State Functional Connectivity Magnetic Resonance Imaging and Outcome After Acute Stroke
2018  10月  スペイン

脳卒中の予後は、神経症状の重さNIHSSスコアや梗塞の体積 位置を参照して予測されてきた。

近年、なんのタスクも課さずにただ寝ているだけの被験者のfMRIデータから脳活動のネットワーク的なつながりをみることができるようになった。

さらにこのネットワーク的つながりと実際のタスクパフォーマンスが関連することがわかってきた。

そこで脳卒中患者の予後を安静時fMRIのデータから予測できるものか実験してみたそうな。

2018年10月24日

感覚障害の機能的ネットワーク結合


Functional network connectivity is altered in patients with upper limb somatosensory impairments in the acute phase post stroke: A cross-sectional study.
2018  10月  ベルギー

脳は安静時であっても非常に低周期の活動をしている。これをMRIの信号強度の変化として観測することができ、部位ごとの周期活動への同期性からデフォルトモードネットワークや背側注意ネットワークなどが分類されている。

脳卒中患者の機能障害とこれらネットワーク的なつながりとの関連が報告されているが、体性感覚障害のそれについては報告がきわめて少ないのでくわしくしらべてみたそうな。


脳卒中の急性期で上肢に体性感覚障害のある患者19人について、
感覚障害を複数の指標、light touch, pressure, pinprick, sharp-dull discrimination, stereognosis, two point discrimination, perceptual thresh-hold of touch,
で測定した。

また、MRIで安静時のBOLDシグナル観測を行い、
脳半球間、脳半球内での機能的結合性との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・重度の体性感覚障害の患者は軽度患者にくらべ、脳半球間および損傷脳半球内での機能的結合性があきらかに低かった。

・特に触覚しきい値と軽い接触、立体認知との関連がつよかった。

感覚麻痺のつよい脳卒中患者ほど、脳半球間および損傷脳半球内での体性感覚関連の機能的結合性が低かった、


というおはなし。

図:脳の機能的結合性と感覚障害


感想:

fMRIのFunctional network connectivity は
データ取得がひじょうに簡単で、
職人的読影能力が必要とされないいっぽう、
AIと相性がよさそうな点でこんごに期待している。

2018年10月23日

深部感覚の障害と関係する脳の位置がわかった


Lesion locations associated with persistent proprioceptive impairment in the upper limbs after stroke
2018  10月  カナダ

脳卒中患者の64%が手足の位置や運動を知るための筋肉からのシグナル「深部感覚」に障害をもつという。

深部感覚の障害に影響する脳のエリアが体性感覚野以外にどこまで関係しているのかはほとんどわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


脳卒中患者136人について、
ロボット制御による上肢の位置感覚と運動感覚測定を6ヶ月後までフォローし、
断層画像上の脳損傷位置との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・縁上回、弓状束、横側頭回へのダメージが位置感覚と運動感覚の障害と関連していた。

上肢の位置感覚や運動感覚に影響する体性感覚野以外のエリア候補をみつけることができた、


というおはなし。

図:深部感覚障害の脳位置

感想:

上の図みると、どれも側頭部なんだよな。

たしかにじぶんもそれらしい位置をやられてたは。

2018年10月22日

あらたな脳動脈瘤ができる率と期間


Natural History of De Novo Aneurysm Formation in Patients with Treated Aneurysmatic Subarachnoid Hemorrhage- A Ten-year Followup
2018  10月  ドイツ

くも膜下出血で脳動脈瘤をクリップやコイルで塞いだ何年かあとに別の脳動脈瘤ができることがある。

あらたな脳動脈瘤が見つかる率と時期についてくわしくしらべてみたそうな。


くも膜下出血の手術をした患者130人(女性63%)を2年毎に画像検査でフォローしたところ、


次のことがわかった。

・10年前後フォローした結果、10人(7.7%)にあらたな脳動脈瘤がみつかった。

・発見までの平均期間は7.9年で、

・2人は2-5年、7人は5-10年、1人は10年以上経ってみつかった。

・あらたな脳動脈瘤の発生と、最初の脳動脈瘤の位置、喫煙、高血圧、年齢、性別に関連はみられなかった。

・この10人のうち2人は脳動脈瘤が破裂して再びくも膜下出血になった。

くも膜下出血のあとあらたに別の脳動脈瘤が見つかる率は7.6%で、その平均期間は7.9年だった。患者は長くフォローする必要がありそうだ、


といいうおはなし。

図:くも膜下出血

感想:

コブができやすい人っているんだな。

つぎの脳動脈瘤がみつかってしまったら

脳に動脈瘤がいくつもできる人の特徴

2018年10月21日

コクランレビュー:超早期リハビリは効果ないし危ない


Very early versus delayed mobilisation after stroke
2018  10月  イギリス

入院してまもない脳卒中患者の離床をうながして座位 立位 歩行訓練などを始める「超早期リハビリテーション」をすすめる臨床ガイドラインが世に存在しているが、その効果については結論がでていない。

これまでの研究をまとめてみたそうな。


19の医学データベースから信頼性の高い研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者2958人を含む9の臨床試験がみつかった。

・超早期リハビリの平均開始時期は入院後18.5時間以内で、通常ケアでは33.3時間後だった。

・超早期リハビリグループではセラピー時間と活動量が通常ケアよりもおおかった。

・回復不良率 51% vs. 49%、死亡率 8.5% vs. 7% でいずれも超早期リハビリで高かった。

・超早期リハビリの入院期間は通常ケアよりも1日短かったが、エビデンスレベルは低かった。

入院した脳卒中患者に24時間以内の離床を勧める「超早期リハビリテーション」により死亡者と回復不良者はむしろ増えた。入院日数の短縮効果はせいぜい1日であり、そのエビデンスレベルは低かった、


というおはなし。
図:早期離床


感想:

いったん信じ込んでしまったことをくつがえすのは大変なんだね。

【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年10月20日

下肢動作観察のミラーニューロンシステム


Activation of mirror neuron system during gait observation in sub-acute stroke patients and healthy persons
2018  10月  日本

歩行訓練と動作観察の組み合わせが慢性期脳卒中の歩行リハビリをうながすとする報告がいくつかある。

これにはミラーニューロンシステム(下頭頂小葉-上側頭溝-下前頭回)が関与していると考えられている。

亜急性期の脳卒中患者でも動作観察でミラーニューロンシステムが活性化するのか については報告がないので、実験してみたそうな。


入院していて歩行リハビリ中の神経症状の軽い脳卒中患者5人と健常者9人について、

健常者の歩行ビデオを30秒おきに見せながらのfMRIをトータル6分間撮影した。


次のようになった。

・動作観察中、脳卒中患者の左側の下頭頂小葉と左右の下前頭回の活動があきらかに高くなった。

・健常者では、左側の下頭頂小葉と下前頭回 中前頭回 上側頭葉および左右の中側頭回で活動が高くなった。

亜急性期の脳卒中患者でも動作観察によりミラーニューロンシステムが活性化することが確認できた、


というおはなし。

図:動作観察とミラーニューロンシステム


感想:

ミラーニューロンシステムが活性化したから脳卒中患者の歩行が改善したとは思わない。

なぜなら運動神経の経路にダメージがなければ、なにもしなくても勝手に治るものだから。↓
Stroke誌:下肢運動機能の比例回復則からわかること

2018年10月19日

こども脳の可塑性が言語回復をさまたげる


Atypical language representation is unfavorable for language abilities following childhood stroke
2018  9月  オーストリア

子供の脳卒中の予後は成人にくらべ良いと考えられているが、言語能力についてはかならずしもあてはまらない。

子供は脳の可塑性が高い。たしかに周産期(妊娠20週-出生後28日)に脳卒中を経験した子供の言語獲得能力は高い。

しかし子供時代(1ヶ月-18歳)に脳卒中を経験した者の、言語機能を司るエリアが左脳から右脳へ可塑的にシフトすることの影響について一致した見解は得られていない。

そこで、子供脳卒中経験者の言語能力と脳機能分布との関連をくわしくしらべてみたそうな。

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