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2018年10月9日

薬にたよらない脳卒中リハビリのおすすめは


Non-pharmacological interventions for the improvement of post-stroke activities of daily living and disability amongst older stroke survivors: A systematic review
2018  10月  イギリス

脳卒中のリハビリテーションでは薬を用いない方法が大勢をしめている。

しかし、これら非薬物的リハビリテーションの高齢患者での研究はおおくない。

そこで65歳以上の高齢脳卒中患者を対象とした非薬物的リハビリテーションについての、これまでの研究をまとめてシステマティックレビューを試みたそうな。


複数のレビュアーが関連する研究を厳選して、データの偏り、エビデンスの質(GRADE)を評価したところ、


次のことがわかった。

・14の非薬物的リハビリテーションについての計72の論文がみつかった。

・各方法と論文数の内訳は、鍼灸1、介護者トレーニング1、CI療法2、ロボット支援8、音楽療法1、神経刺激3、作業療法12、プリズムメガネ3、理学療法17、イメージ訓練6、自己管理教育6、ビデオゲーム1、自走車椅子1、だった。

・日常生活動作の改善が見られたのは、理学療法と作業療法のみだった。

・14あるいずれの方法も、身体障害の改善に効果的とするエビデンスはまったくなかった。

・すべてにおいてエビデンスレベルは低く、研究の数も少なかった。

高齢脳卒中患者への薬物を使わないリハビリテーション方法のうち、理学療法と作業療法のみで日常生活動作への改善効果が確認できた。全体的に報告数がすくないのでさらなる研究を期待する、


というおはなし。
図:DRADE英ビデンスレヴェル

感想:

理学療法と作業療法以外は、やっている内容をそれぞれ容易にイメージすることができる。

ところが理学療法や作業療法については漠然としすぎていて具体的にどんな介入内容を指すのかわからない。

だからこの2つを他と同列に比べるのはフェアでないとおもうんだ。

日本の理学療法士はどういう根拠に基づいて仕事をしているのか?

コクランレビュー:作業療法のエビデンス信用できない

2018年10月8日

なかなか回復できない脳梗塞の位置がわかった


Impact of Ischemic Lesion Location on the mRS Score in Patients with Ischemic Stroke- A Voxel-Based Approach
2018  10月  ドイツ

これまで脳梗塞の予後の良し悪しはCT画像上での梗塞のおおきさから推定されてきた。

とうぜん梗塞の位置も関係しているはずなので、最新の画像解析法である "ボクセル単位の病変と症状のマッピング" (Voxel-based lesion-symptom mapping:VLSM)をつかってくわしくしらべてみたそうな。

2018年10月7日

肩の痛みとの付き合い方


Pain management strategies among persons with long-term shoulder pain after stroke - a qualitative study
2018  9月  スウェーデン

脳卒中で上肢麻痺のある患者の50-80%は肩の痛みに悩まされる。

薬やアームスリング、ミラー療法、電気刺激などの治療法が提案されているがいずれもほとんど効果はなく、肩の痛みは長く続く。

肩の痛みに悩まされてきた脳卒中経験者がどのように適応してきたのかしらべてみたそうな。


発症から2年前後の脳卒中経験者で肩の痛みを訴える13人について個別に面談したところ、


次のことがわかった。

・彼らがとる対策には実践的なものと精神的なものがあって、

・実践的な方法として、家の中で高い棚のものを下に置く、1回の買い物の量をへらして軽くする、着替えしやすいようゆったりとした服を選ぶ、

・肩が痛くなりやすい動作方向や特定のタスクを避けるようにする。たとえば着替えの際に麻痺腕を先に袖に通すなど。

・痛みがひどいときには休憩を入れる、薬を使う、シャワーで温冷刺激を与える、散歩で痛みを紛らわす など。

・精神的な方法として、痛みを受け入れ、痛みに耐え、痛みを無視できるような認識をもつこと。たとえば もっとひどい状況の人がいる、チクチクする痛みよりはましだ、自分は強く楽観的である、などと考える。

脳卒中のあと長期に肩の痛みに悩まされてきた人は実践的かつ精神的な方法をくみあわせて痛みに対処していた、


というおはなし。

図:脳卒中のあとの肩の痛み


感想:

肩の痛いは周囲の人にまったく理解されない点がいちばんきつかった。

原因や理由を説明できないから病人のわがままな泣き言だと思われる。

2018年10月6日

脳卒中のあとの新たな痛みと部位


New-onset pain in the early phase and three months following stroke - data from a multicenter study
2018  9月  ノルウェー

脳卒中のあと何らかの痛みを訴える患者の割合は、測定方法や時期などによって11-54%の幅があるという。

脳卒中になってから「あらたに」発生した痛みの割合とその部位についてくわしくしらべてみたそうな。


ノルウェーの11の病院で発症から14日以内の脳卒中患者390について、
入院時と3ヶ月後に痛み調査をしたところ、


次のことがわかった。

・入院時、9.9%にあらたな痛みの報告があった。

・3ヶ月時点では、この割合は21.8%になった。

・痛みの部位は麻痺側の上肢または両下肢で、

・いずれも入院時よりも3ヶ月後におおかった。

・あらたな痛みは不安スコアと関連があり、半数が日常生活動作への影響を訴えていた。

脳卒中のあとすぐに10人に1人があらたな痛みを訴え、3ヶ月後にはこの割合は5人に1人になった。痛み症状は特に麻痺上肢と両下肢にみられた、


というおはなし。
図:脳卒中後の痛みと部位と時期

感想:

両下肢ってところが新鮮だった。
わからないでもないけど麻痺側の痛みが圧倒的で健常側のそれを同レベルにカウントできないとおもう。

2018年10月5日

睡眠時間と脳卒中リスク 人種と性別での違い


Sleep duration and risk of incident stroke by age, sex, and race
2018  10月  アメリカ

睡眠は脳卒中と関連すると考えられ、睡眠時間は短くても長くても脳卒中リスクが高くなるとするメタアナリシスもある。

これらの関連は性別や人種によっても異なるという報告がいくつかあるので、大規模調査REGARDSスタディのデータをつかってたしかめてみたそうな。


脳卒中歴や睡眠障害のない45歳以上の白人と黒人16733人について調査したところ、


次のことがわかった。

・全体の10.4%は睡眠時間が6時間未満で、6.8%は9時間以上だった。

・6.1年間のフォロー期間中に480件の脳卒中があった。

・睡眠時間と人種および性別と脳卒中リスクにあきらかな関連がみられた。

・特に黒人男性で、睡眠6時間未満は7-8.9時間にくらべ脳卒中リスクが80%低かった。

・いっぽう白人男性は9時間以上の睡眠で脳卒中リスクがほぼ倍になった。

・女性に関してはこれほどの差は生じなかった。

睡眠時間と脳卒中リスクは人種や性別によりおおきく異なり、短時間睡眠の黒人男性は脳卒中リスクが低く、長時間睡眠の白人男性は脳卒中リスクが高かった、


というおはなし。
図:睡眠時間と脳卒中リスクと人種

感想:

睡眠時間は自己申告なので、貧乏暇なしで身体をよくうごかす黒人が細切れになった睡眠時間の一部だけを上げているためではないか、、って言ってる。

2018年10月4日

早期リハビリを勧める理由


Behavioral Effect of Short- and Long-Term Exercise on Motor Functional Recovery after Intracerebral Hemorrhage in Rats
2018  9月  日本

脳卒中後のリハビリ効果には その開始する時期と期間が関係すると考えられる。

動物実験でこれをたしかめてみたそうな。


人為的に脳内出血にしたネズミをつぎの5グループに分けた。

1.脳内出血のみ(運動なし)
2.脳内出血の翌日から14日間運動
3.脳内出血の翌日から7日間運動
4.脳内出血の8日目から7日間運動
5.手術のみで脳内出血なし

運動は30分間のトレッドミル。

複数の行動検査をおこない比較したところ、


次のことがわかった。

・翌日から運動させたグループは、他のグループよりも回復があきらかにすぐれていた。

・8日目から運動させたグループは脳内出血のみのグループと同レベルの回復だった。

脳内出血のあと早くに運動を始めたグループは回復がよかった。この効果は運動させる期間によらなかった、


というおはなし。

図:脳内出血の早期リハビリ効果

感想:

アブストと本文中のこのあたり↓の記述、素人目にもおかしいと思う。
図:謎の記述

ネズミの歳も気になる。

いずれにしても早期リハビリを勧める根拠は いまだ動物実験しかない。

なぜなら人間では真逆の結論↓だから。
【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年10月3日

腕の血流をとめるだけの脳卒中治療法とは


Upper Limb Ischemic Postconditioning as Adjunct Therapy in Acute Stroke Patients- A Randomized Pilot
2018  9月  中国

腕や脚の血液の流れを一時的に止めること(虚血コンディショニング)で脳の神経保護効果が得られるとする考え方がある。

虚血コンディショニングで血管内皮の一酸化窒素の放出が促されて血管が拡張し、死にかかっている脳組織の血流が回復するなどの反応が考えられている。

そこで脳卒中になった直後の患者への虚血コンディショニング効果を検証してみたそうな。


平均年齢65、発症から72時間以内の脳梗塞患者60人を2グループにわけた。

実験グループでは血圧計のカフを使って各人の収縮期血圧+20mmHgの圧で健常側の腕を5分間しめつけそのご5分間開放するサイクルを4回おこなった。

もう一方の比較グループには最大30mmHgの圧のみをかけ同様の操作をおこなった。

これを1日1回おこない14日間継続した。

90日後まで効果(NIHSS、梗塞体積、脳灌流MRI、mRS)をフォローしたところ、


次のようになった。

・実験グループでしめつけの痛みで1人がギブアップした。比較グループでのみ2件の再発があった。

・90日後、比較グループよりも実験グループであきらかな神経症状の改善があり、

・脳血流の平均通過時間の左右脳半球での差が小さくなり、

・生活自立度スコアの改善度が高くなり、

・梗塞体積は31.3%減少した。

急性脳卒中後の虚血コンディショニングは安全で、神経症状と脳血流 梗塞サイズを改善した、


というおはなし。
図:脳卒中の虚血ポストコンディショニングと梗塞体積

感想:

虚血コンディショニングには事前(pre)と事後(post)があって、preがもともとのアイデアで、徐々にpostでもいけるんじゃない?ってなってきた感がある。

お金かからないし簡単だからどんどんためしてほしい。

[虚血 コンディショニング]の関連記事

2018年10月2日

nature.com:血液のナトリウム濃度と脳卒中


The association between serum sodium concentration, hypertension and primary cardiovascular events- a retrospective cohort study
2018  9月  イギリス
食塩はおおく摂ると血圧があがり脳卒中などの心血管疾患のリスクになることがわかっている。

その背景メカニズムにあるであろう血中のナトリウム濃度と心血管疾患との関連はよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


40歳以上で心血管疾患歴や腎臓に異常のない231545人について、
血中ナトリウム濃度と、
5年間におきた脳卒中など心血管疾患の記録との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・血中ナトリウム濃度と心血管疾患リスクとの関連は Jカーブを描いていた。(下図)

・心血管疾患リスクがもっとも低くなるナトリウム濃度は 141-143mmol/l だった。

・ナトリウム濃度が高い者のうち、高血圧のグループで心血管疾患リスクが高く、正常血圧のグループではそうはならなかった。

・いっぽうナトリウム濃度が低いグループでは血圧の高低にかかわらず、すべての被験者で心血管疾患リスクが高かった。

血中のナトリウム濃度は高くても低くても心血管疾患リスクが上がった。とくに低い場合は正常血圧の者でも心血管疾患になりやすかった、


というおはなし。
図:血中ナトリウム濃度と脳卒中リスク

感想:

ようするに、高血圧でもないのに減塩すると危険ってこと。

これ↓に完全一致。
ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる


141mmolだと1リットルあたりナトリウム約3グラム、ひとの血液量は5リットルほどだからトータルで15g、食塩に換算すると40グラム。

毒のように扱われているけれど、体の中には常におおさじ3杯くらいの塩が流れているのね。

2018年10月1日

ランセット誌:乳製品の脳卒中予防効果


Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE)- a prospective cohort study
2018  9月  カナダ

乳製品はこれまで 飽和脂肪酸をおおく含むというそれだけの理由で摂取を最小限にするよう勧められてきた。

乳製品には他の不飽和脂肪酸や腸の働きを整えるプロバイオティクスもおおく含まれていて、そのトータルの働きを見直す研究成果がつぎつぎと得られている。

しかしこれら研究のおおくは欧米のものに偏っているので広く大規模にしらべてみたそうな。


5大陸21カ国の35-70歳の住民136384人を対象として、
食事アンケートを行い、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターの摂取頻度をしらべ、
心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全)の発生を9.1年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に5855件の心血管疾患があった。

・乳製品をまったく摂らない場合と比べて1日2回以上摂る場合の心血管疾患リスクは0.78倍で、とくに脳卒中では0.66倍だった。

・心筋梗塞とのあきらかな関連は見られなかった。

・乳製品の種類別ではチーズとバターとの関連が弱かった。

・地域によらずこれら同様の関連がみられた。

乳製品をおおく摂ると心血管疾患リスクが低下した。とくに脳卒中リスクがおおきく下がった、


というおはなし。
図:乳製品摂取頻度 地域 心血管疾患リスク

感想:

これ↓思い出した。
高血圧のヨーグルト脳卒中予防効果は

脳卒中になりやすいミルク なりにくいミルク

脳卒中を防ぐヨーグルトの量がわかった

乳製品は脳卒中的にアジア人にもいいの?

脳卒中を防ぐミルクとチーズの量が明らかに

2018年9月30日

異常な笑いを脳卒中と見抜けなかった例


Pathological Laughter as a Symptom of Middle Cerebral Artery Stroke
2018  9月  フランス

可笑しくもないのに笑いが止まらなくなる状態は 脳に病気がある可能性をしめす。

脳卒中がわかるまえに異常な笑いで入院してきた男性がいたそうな。


・57歳の男性がまったく嬉しくもないのに突然大笑いが始まった。10分間以上も笑いを止められなくなり、その2時間後にかれの妻が病院へ連れてきた。

・彼自身もその状態が異常と認識できていた。泣く症状はなかった。

・病院到着時、彼は非常によくしゃべり、動作が大げさで陽気にみえた。

・診察で左側にわずかな運動機能の低下がみられた。感覚や視野は正常だった。

・さらに造影CTで右の内頚動脈に重度の狭窄がみつかった。

・それにもかかわらず原因を薬物中毒とかんがえ血栓溶解療法をしなかった。

・数時間後、構音障害と感覚麻痺が現れたので脳梗塞をうたがいはじめた。

・2日後にようやくMRIを撮り右脳に梗塞を認めた。

・心理テストで気分障害はなかった。

・3週間後、笑い症状は完全に回復し、3ヶ月後に頸動脈の血栓除去術をうけた。

脳卒中の初期症状は多様なので、こんかいのような病的な笑いも有りうることを救急医は知っておくべき、


というおはなし。
図:脳梗塞で大笑い

感想:

じぶんたちの判断ミスを論文にまとめるところがえらい。

こういう症状を "Pseudobulbar Affect"(スードバルバー アフェクト)と言うのは何度かみた。 

どうやら同じ状況を "Fou rire prodromique"(フー ライア プロドロミク) とも言うようだ。

2018年9月29日

数年後、植物状態から回復する脳内出血患者


Long-term recovery profile of patients with severe disability or in vegetative states following severe primary intracerebral hemorrhage
2018  9月  シンガポール

脳内出血は脳梗塞にくらべると回復がわるい。シンガポールでは脳卒中の20%が脳内出血で、7日死亡率は17.3%、30日では22.9%という。

回復が良い患者には、若い、血腫が小さい、神経症状が軽い、脳室内出血がない、女性である、といった特徴が知られている。

しかし退院時に状態が悪かった患者がその後数年間にわたり回復できる可能性についてはほとんどわかっていない。

そこで重度障害または植物状態だった脳内出血患者を長期にフォローしてみたそうな。


2009-2013に脳内出血になり退院時に回復度の指標GOS(Glasgow Outcome Scale)スコアが2(植物状態)または3(重度障害)の患者の3年後までの医療記録を解析した。


次のことがわかった。

・特徴が近く3年間フォローできた患者のうち、退院時に91人が植物状態(VS)で、278人が重度障害(SD)だった。

・3年間にVSグループの69%、SDグループの29%が亡くなった。

・GOSスコアが1ポイント以上あがる「改善」を示した患者は、VSグループの10%、SDグループの33%にのぼった。

・生存と改善に関連するあきらかな要因は「年齢」だった。

脳内出血で退院時に不良な状態にあっても必ずしもそれが何年も続くわけではなかった。植物状態や重度障害であっても長期的には回復できる可能性がある、


というおはなし。
図:植物状態と重度障害の脳内出血患者の3年間の回復可能性

感想:

上のグラフみると2-3年経っても回復する重症患者がいる。

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