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2018年10月6日

脳卒中のあとの新たな痛みと部位


New-onset pain in the early phase and three months following stroke - data from a multicenter study
2018  9月  ノルウェー

脳卒中のあと何らかの痛みを訴える患者の割合は、測定方法や時期などによって11-54%の幅があるという。

脳卒中になってから「あらたに」発生した痛みの割合とその部位についてくわしくしらべてみたそうな。


ノルウェーの11の病院で発症から14日以内の脳卒中患者390について、
入院時と3ヶ月後に痛み調査をしたところ、


次のことがわかった。

・入院時、9.9%にあらたな痛みの報告があった。

・3ヶ月時点では、この割合は21.8%になった。

・痛みの部位は麻痺側の上肢または両下肢で、

・いずれも入院時よりも3ヶ月後におおかった。

・あらたな痛みは不安スコアと関連があり、半数が日常生活動作への影響を訴えていた。

脳卒中のあとすぐに10人に1人があらたな痛みを訴え、3ヶ月後にはこの割合は5人に1人になった。痛み症状は特に麻痺上肢と両下肢にみられた、


というおはなし。
図:脳卒中後の痛みと部位と時期

感想:

両下肢ってところが新鮮だった。
わからないでもないけど麻痺側の痛みが圧倒的で健常側のそれを同レベルにカウントできないとおもう。

2018年10月5日

睡眠時間と脳卒中リスク 人種と性別での違い


Sleep duration and risk of incident stroke by age, sex, and race
2018  10月  アメリカ

睡眠は脳卒中と関連すると考えられ、睡眠時間は短くても長くても脳卒中リスクが高くなるとするメタアナリシスもある。

これらの関連は性別や人種によっても異なるという報告がいくつかあるので、大規模調査REGARDSスタディのデータをつかってたしかめてみたそうな。


脳卒中歴や睡眠障害のない45歳以上の白人と黒人16733人について調査したところ、


次のことがわかった。

・全体の10.4%は睡眠時間が6時間未満で、6.8%は9時間以上だった。

・6.1年間のフォロー期間中に480件の脳卒中があった。

・睡眠時間と人種および性別と脳卒中リスクにあきらかな関連がみられた。

・特に黒人男性で、睡眠6時間未満は7-8.9時間にくらべ脳卒中リスクが80%低かった。

・いっぽう白人男性は9時間以上の睡眠で脳卒中リスクがほぼ倍になった。

・女性に関してはこれほどの差は生じなかった。

睡眠時間と脳卒中リスクは人種や性別によりおおきく異なり、短時間睡眠の黒人男性は脳卒中リスクが低く、長時間睡眠の白人男性は脳卒中リスクが高かった、


というおはなし。
図:睡眠時間と脳卒中リスクと人種

感想:

睡眠時間は自己申告なので、貧乏暇なしで身体をよくうごかす黒人が細切れになった睡眠時間の一部だけを上げているためではないか、、って言ってる。

2018年10月4日

早期リハビリを勧める理由


Behavioral Effect of Short- and Long-Term Exercise on Motor Functional Recovery after Intracerebral Hemorrhage in Rats
2018  9月  日本

脳卒中後のリハビリ効果には その開始する時期と期間が関係すると考えられる。

動物実験でこれをたしかめてみたそうな。


人為的に脳内出血にしたネズミをつぎの5グループに分けた。

1.脳内出血のみ(運動なし)
2.脳内出血の翌日から14日間運動
3.脳内出血の翌日から7日間運動
4.脳内出血の8日目から7日間運動
5.手術のみで脳内出血なし

運動は30分間のトレッドミル。

複数の行動検査をおこない比較したところ、


次のことがわかった。

・翌日から運動させたグループは、他のグループよりも回復があきらかにすぐれていた。

・8日目から運動させたグループは脳内出血のみのグループと同レベルの回復だった。

脳内出血のあと早くに運動を始めたグループは回復がよかった。この効果は運動させる期間によらなかった、


というおはなし。

図:脳内出血の早期リハビリ効果

感想:

アブストと本文中のこのあたり↓の記述、素人目にもおかしいと思う。
図:謎の記述

ネズミの歳も気になる。

いずれにしても早期リハビリを勧める根拠は いまだ動物実験しかない。

なぜなら人間では真逆の結論↓だから。
【やはり】亜急性期のリハビリは効果ないうえに危険

nature.com:脳卒中の超早期リハビリ やる意味ない

Stroke誌:早期リハビリがんばる意味ない

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない
ほかにも↓
失語症の早期リハビリ まったく効果ない

超早期リハビリをやってはいけない理由

超早期リハビリには脳の細胞死を促す効果があった!

2018年10月3日

腕の血流をとめるだけの脳卒中治療法とは


Upper Limb Ischemic Postconditioning as Adjunct Therapy in Acute Stroke Patients- A Randomized Pilot
2018  9月  中国

腕や脚の血液の流れを一時的に止めること(虚血コンディショニング)で脳の神経保護効果が得られるとする考え方がある。

虚血コンディショニングで血管内皮の一酸化窒素の放出が促されて血管が拡張し、死にかかっている脳組織の血流が回復するなどの反応が考えられている。

そこで脳卒中になった直後の患者への虚血コンディショニング効果を検証してみたそうな。


平均年齢65、発症から72時間以内の脳梗塞患者60人を2グループにわけた。

実験グループでは血圧計のカフを使って各人の収縮期血圧+20mmHgの圧で健常側の腕を5分間しめつけそのご5分間開放するサイクルを4回おこなった。

もう一方の比較グループには最大30mmHgの圧のみをかけ同様の操作をおこなった。

これを1日1回おこない14日間継続した。

90日後まで効果(NIHSS、梗塞体積、脳灌流MRI、mRS)をフォローしたところ、


次のようになった。

・実験グループでしめつけの痛みで1人がギブアップした。比較グループでのみ2件の再発があった。

・90日後、比較グループよりも実験グループであきらかな神経症状の改善があり、

・脳血流の平均通過時間の左右脳半球での差が小さくなり、

・生活自立度スコアの改善度が高くなり、

・梗塞体積は31.3%減少した。

急性脳卒中後の虚血コンディショニングは安全で、神経症状と脳血流 梗塞サイズを改善した、


というおはなし。
図:脳卒中の虚血ポストコンディショニングと梗塞体積

感想:

虚血コンディショニングには事前(pre)と事後(post)があって、preがもともとのアイデアで、徐々にpostでもいけるんじゃない?ってなってきた感がある。

お金かからないし簡単だからどんどんためしてほしい。

[虚血 コンディショニング]の関連記事

2018年10月2日

nature.com:血液のナトリウム濃度と脳卒中


The association between serum sodium concentration, hypertension and primary cardiovascular events- a retrospective cohort study
2018  9月  イギリス
食塩はおおく摂ると血圧があがり脳卒中などの心血管疾患のリスクになることがわかっている。

その背景メカニズムにあるであろう血中のナトリウム濃度と心血管疾患との関連はよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


40歳以上で心血管疾患歴や腎臓に異常のない231545人について、
血中ナトリウム濃度と、
5年間におきた脳卒中など心血管疾患の記録との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・血中ナトリウム濃度と心血管疾患リスクとの関連は Jカーブを描いていた。(下図)

・心血管疾患リスクがもっとも低くなるナトリウム濃度は 141-143mmol/l だった。

・ナトリウム濃度が高い者のうち、高血圧のグループで心血管疾患リスクが高く、正常血圧のグループではそうはならなかった。

・いっぽうナトリウム濃度が低いグループでは血圧の高低にかかわらず、すべての被験者で心血管疾患リスクが高かった。

血中のナトリウム濃度は高くても低くても心血管疾患リスクが上がった。とくに低い場合は正常血圧の者でも心血管疾患になりやすかった、


というおはなし。
図:血中ナトリウム濃度と脳卒中リスク

感想:

ようするに、高血圧でもないのに減塩すると危険ってこと。

これ↓に完全一致。
ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる


141mmolだと1リットルあたりナトリウム約3グラム、ひとの血液量は5リットルほどだからトータルで15g、食塩に換算すると40グラム。

毒のように扱われているけれど、体の中には常におおさじ3杯くらいの塩が流れているのね。

2018年10月1日

ランセット誌:乳製品の脳卒中予防効果


Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE)- a prospective cohort study
2018  9月  カナダ

乳製品はこれまで 飽和脂肪酸をおおく含むというそれだけの理由で摂取を最小限にするよう勧められてきた。

乳製品には他の不飽和脂肪酸や腸の働きを整えるプロバイオティクスもおおく含まれていて、そのトータルの働きを見直す研究成果がつぎつぎと得られている。

しかしこれら研究のおおくは欧米のものに偏っているので広く大規模にしらべてみたそうな。


5大陸21カ国の35-70歳の住民136384人を対象として、
食事アンケートを行い、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターの摂取頻度をしらべ、
心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全)の発生を9.1年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に5855件の心血管疾患があった。

・乳製品をまったく摂らない場合と比べて1日2回以上摂る場合の心血管疾患リスクは0.78倍で、とくに脳卒中では0.66倍だった。

・心筋梗塞とのあきらかな関連は見られなかった。

・乳製品の種類別ではチーズとバターとの関連が弱かった。

・地域によらずこれら同様の関連がみられた。

乳製品をおおく摂ると心血管疾患リスクが低下した。とくに脳卒中リスクがおおきく下がった、


というおはなし。
図:乳製品摂取頻度 地域 心血管疾患リスク

感想:

これ↓思い出した。
高血圧のヨーグルト脳卒中予防効果は

脳卒中になりやすいミルク なりにくいミルク

脳卒中を防ぐヨーグルトの量がわかった

乳製品は脳卒中的にアジア人にもいいの?

脳卒中を防ぐミルクとチーズの量が明らかに

2018年9月30日

異常な笑いを脳卒中と見抜けなかった例


Pathological Laughter as a Symptom of Middle Cerebral Artery Stroke
2018  9月  フランス

可笑しくもないのに笑いが止まらなくなる状態は 脳に病気がある可能性をしめす。

脳卒中がわかるまえに異常な笑いで入院してきた男性がいたそうな。


・57歳の男性がまったく嬉しくもないのに突然大笑いが始まった。10分間以上も笑いを止められなくなり、その2時間後にかれの妻が病院へ連れてきた。

・彼自身もその状態が異常と認識できていた。泣く症状はなかった。

・病院到着時、彼は非常によくしゃべり、動作が大げさで陽気にみえた。

・診察で左側にわずかな運動機能の低下がみられた。感覚や視野は正常だった。

・さらに造影CTで右の内頚動脈に重度の狭窄がみつかった。

・それにもかかわらず原因を薬物中毒とかんがえ血栓溶解療法をしなかった。

・数時間後、構音障害と感覚麻痺が現れたので脳梗塞をうたがいはじめた。

・2日後にようやくMRIを撮り右脳に梗塞を認めた。

・心理テストで気分障害はなかった。

・3週間後、笑い症状は完全に回復し、3ヶ月後に頸動脈の血栓除去術をうけた。

脳卒中の初期症状は多様なので、こんかいのような病的な笑いも有りうることを救急医は知っておくべき、


というおはなし。
図:脳梗塞で大笑い

感想:

じぶんたちの判断ミスを論文にまとめるところがえらい。

こういう症状を "Pseudobulbar Affect"(スードバルバー アフェクト)と言うのは何度かみた。 

どうやら同じ状況を "Fou rire prodromique"(フー ライア プロドロミク) とも言うようだ。

2018年9月29日

数年後、植物状態から回復する脳内出血患者


Long-term recovery profile of patients with severe disability or in vegetative states following severe primary intracerebral hemorrhage
2018  9月  シンガポール

脳内出血は脳梗塞にくらべると回復がわるい。シンガポールでは脳卒中の20%が脳内出血で、7日死亡率は17.3%、30日では22.9%という。

回復が良い患者には、若い、血腫が小さい、神経症状が軽い、脳室内出血がない、女性である、といった特徴が知られている。

しかし退院時に状態が悪かった患者がその後数年間にわたり回復できる可能性についてはほとんどわかっていない。

そこで重度障害または植物状態だった脳内出血患者を長期にフォローしてみたそうな。


2009-2013に脳内出血になり退院時に回復度の指標GOS(Glasgow Outcome Scale)スコアが2(植物状態)または3(重度障害)の患者の3年後までの医療記録を解析した。


次のことがわかった。

・特徴が近く3年間フォローできた患者のうち、退院時に91人が植物状態(VS)で、278人が重度障害(SD)だった。

・3年間にVSグループの69%、SDグループの29%が亡くなった。

・GOSスコアが1ポイント以上あがる「改善」を示した患者は、VSグループの10%、SDグループの33%にのぼった。

・生存と改善に関連するあきらかな要因は「年齢」だった。

脳内出血で退院時に不良な状態にあっても必ずしもそれが何年も続くわけではなかった。植物状態や重度障害であっても長期的には回復できる可能性がある、


というおはなし。
図:植物状態と重度障害の脳内出血患者の3年間の回復可能性

感想:

上のグラフみると2-3年経っても回復する重症患者がいる。

若いとは?

2018年9月28日

脳卒中のあとの呼吸困難


Prevalence of dyspnea after stroke- a telephone-based survey
2018  9月  ブラジル

脳卒中の影響は上下肢の麻痺以外に呼吸器系にもおよぶと考えられる。換気機能、呼吸筋、横隔膜の活動低下は呼吸困難(dyspnea)を生じることがある。

そこで、脳卒中患者で呼吸困難がどのていどおきているものか、くわしくしらべてみたそうな。


脳卒中を経験した285人に電話インタビューしたところ、


次のことがわかった。

・124人(44%)が脳卒中後に呼吸困難を経験した。

・そのうちの半数は重度の呼吸困難だった。

・呼吸困難はそのおよそ半数の社会参加をさまたげていた。

脳卒中後の呼吸困難体験はめずらしくなく、患者の社会参加におおきく影響していた、


というおはなし。
図:脳卒中の呼吸困難

感想:

まったく実感ないけど、ときどき耳にするので関心をもった。

2018年9月27日

減塩すると脳卒中になるという噂(うわさ)の真相


Association of Low Urinary Sodium Excretion With Increased Risk of Stroke
2018  9月  オランダ

ナトリウム摂取量がふえると血圧は高くなる。とくに1日8g以上のナトリウム(食塩20g相当)では心血管疾患および死亡率があきらかに高い。

それゆえに減塩によって心血管疾患リスクを下げることができると考えられてきた。

しかしナトリウムが1日3g(食塩7.6g相当)を下回るとかえって心血管疾患リスクが高くなるとする報告がさいきんあとを絶たない。

それらの調査では食塩摂取量を食事アンケートや一時的な尿サンプルから推定しているケースが少なくない。

そこで "正確な" 食塩摂取量を得るための複数回の24時間蓄尿測定と、脳卒中との関連に限定して大規模にしらべてみたそうな。


心血管疾患のない25-75歳の7330人について、
計3回ぶんの24時間の蓄尿サンプルをとり1日のナトリウム摂取量を推定し、
脳卒中の発生を12.5年間フォローして関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・調査開始時の1日のナトリウム摂取量の中央値は137mmol(食塩8g相当)だった。

・この間に183件の脳卒中がおきた。

・1日に尿中へ排泄される全ナトリウム量と脳卒中リスクは逆相関にあった。(下図)

・年齢、性別、体重、血圧、ライフスタイルなどで調整してもこの関連は変わらなかった。

食塩摂取量が少ない人の脳卒中リスクは非常に高かった、


というおはなし。
図:食塩摂取量と脳卒中リスク


感想:

薄味の料理を我慢して減塩に努めてきた結果が「効果なし」ならまだしも、「かえって危険だった」というのだから目も当てられない。

ふつうな食事なら減塩する必要はまったくないってこと。

うわさではなくすでにエビデンスが↓多数
ランセット誌:食塩は13gまでオッケー 脳卒中的に

ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

JAMA誌:減塩に真面目な人ほど脳卒中で死亡する

JAMA誌:塩分を控えさせるほど脳卒中死亡者が増える

2018年9月26日

成長ホルモンの欠乏と脳卒中の回復


Growth Hormone Deficiency Is Frequent After Recent Stroke
2018  9月  オーストラリア

脳卒中からの回復に影響しそうな要素として脳下垂体機能の1つである成長ホルモンの分泌があげられる。

成長ホルモンが少なくなると 注意、記憶、認知、筋肉や骨密度の減少など脳卒中患者と同様の障害が生じる。じっさい外傷性の脳損傷では成長ホルモンが少なくなっていることがわかっている。

そこで脳卒中患者でも成長ホルモンの分泌低下がおきているものかたしかめてみたそうな。


発症から1週間以内の重症脳梗塞患者13人についてアルギニンや成長ホルモン放出ホルモンを与えたときの成長ホルモン分泌反応を測定したところ、


次のようになった。

・69%の患者で成長ホルモン分泌反応が悪く、54%が成長ホルモン欠乏症と診断された。

・他の脳下垂体機能(インスリン様成長因子、コルチゾール、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなど)は正常範囲にあった。

脳梗塞患者の成長ホルモンレベルの低下は珍しくなかった。脳卒中の回復に関係しているかも、、


というおはなし。

図:脳卒中後の成長ホルモン欠乏症

感想:

「成長ホルモン」がテーマの報告はいままで記憶にない。おもしろみが少ないのか。
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