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2018年9月3日

低酸素コンディショニングの治療効果


Low Oxygen Post Conditioning as an Efficient Non-pharmacological Strategy to Promote Motor Function After Stroke
2018  8月  オーストラリア

ここ数年、低酸素状態におく(Low oxygen post conditioning)ことの心筋梗塞の再生効果や神経再生、血管再生、認知機能改善効果がつぎつぎと報告され、薬を必要としないシンプルな治療法として期待されている。

そこで脳梗塞にたいする低酸素コンディショニングの効果を動物でしらべてみたそうな。


ネズミを人為的に脳梗塞にした48時間後から1日8時間 酸素濃度11%の環境におき、これを2週間続けた。

運動機能と脳組織の状態を4週間後までフォローしたところ、


次のようになった。

・運動障害は低酸素コンディショニング2週間でほぼ元のレベルに戻った。

・この機能改善は脳の毛細血管密度の増加とBDNFレベルの上昇、脳実質欠損の低下およびミクログリア活動の低下と関連していた。

・これらの効果は低酸素コンディショニングのさらに2週間後も持続していた。
低酸素コンディショニングの脳卒中後の運動機能改善と神経保護効果を確認できた。臨床試験が待ち遠しい、


というおはなし。

図:低酸素療法の脳保護効果

感想:

虚血コンディショニングよりももっと直接的だな。

wikipediaみると↓ 11%って意識飛ぶ寸前でマフィアの拷問なみか。
* 酸素濃度16%: 呼吸脈拍増、頭痛悪心、はきけ、集中力の低下
* 酸素濃度12%: 筋力低下、めまい、はきけ、体温上昇
* 酸素濃度10%: 顔面蒼白、意識不明、嘔吐、チアノーゼ
* 酸素濃度 8%: 昏睡
* 酸素濃度 6%: けいれん、呼吸停止

2018年9月2日

脳梗塞のあと認知障害をふせぐ血圧がわかった


Effects of Blood Pressure in the Early Phase of Ischemic Stroke and Stroke Subtype on Poststroke Cognitive Impairment
2018  7月  中国

脳卒中患者の24-58%は3ヶ月時点で認知障害を示すという。そのリスク要因として高血圧がいちばんにあげられるいっぽう、低血圧も認知機能の低下に影響するとかんがえられている。

そこで、急性期の脳梗塞で認知障害予防にてきした血圧と脳梗塞の種類との関連をくわしくしらべてみたそうな。


発症から24時間以内の脳梗塞患者796人について血圧と認知機能を3ヶ月後までフォローしたところ、


次のことがわかった。

・収縮期血圧が143-158mmHgのグループにくらべて、低い102-127mmHg のグループと、高い171-215mmHgのグループで3ヶ月後の認知障害リスクはいずれも約2倍だった。

・同様の関連が拡張期血圧でもみられた。

・このリスクはアテローム血栓性梗塞と完全前循環梗塞でとくに高かった。

急性期脳梗塞の血圧は低くても高くても認知障害リスクが高かった。認知障害を防ぐには143-158/93-102mmHgが適していると考えられた。


図:脳梗塞早期の血圧と認知障害リスク


感想:

お医者さんにほめられるからもっとがんばって血圧を下げよう!と考えてしまうけれど、
120を下回ってはいかんと思うよ。
脳内出血で血圧を下げ過ぎてはいけない理由

2018年9月1日

やる気があるから回復するの?


Stroke Patients Motivation Influence on the Effectiveness of Occupational Therapy
2018  7月  リトアニア

脳卒中患者のおおくは無気力で無関心なアパシー状態になる。それはリハビリ結果にもおおきく影響することが予想される。

脳卒中患者の「回復への動機」の種類と関連要因についてしらべてみたそうな。

2018年8月31日

同名半盲のビデオ鑑賞能力


Measuring the Difficulty Watching Video With Hemianopia and an Initial Test of a Rehabilitation Approach
2018  8月  アメリカ

同名半盲では両目の視野の片側が欠ける。脳卒中患者の8-16%は同名半盲を経験するという。

同名半盲は読書や自動車運転などの日常生活動作におおきな影響があり、テレビやビデオの内容理解に困難をきたすとの報告もある。

そこでビデオ内容をどれくらい理解できないのか、またそれを矯正する方法について実験をしてみたそうな。


脳卒中などの脳損傷により同名半盲になった患者60人と健常者24人について、30秒のビデオを見せ内容を口述させ、その正答度を IA(Information Acquisition)スコアとして比較した。

また健常者の視線データをもとに注意を促すグラフィックガイドを重ねたときのIAスコアの改善度も別の患者21人で評価した。


次のようになった。

・IAスコアは2.8 vs. 4.3 で同名半盲グループがあきらかに低かった。

・ガイド表示があるとIAスコアが0.5ポイント改善した。

同名半盲患者はビデオを観て情報を取得する能力が劣っていた。ガイドになる表示を加えることで若干の改善がみられた、


というおはなし。
図:同名半盲のビデオ理解力

感想:

よく同名半盲と半側空間無視は異なるメカニズムとして説明されているけど、実際はごちゃまぜになっていて おそらく区別はできないとおもうよ。

2018年8月30日

上肢の運動イメージ訓練とネットワーク変化


Motor imagery training induces changes in brain neural networks in stroke patients
2018  8月  中国
運動イメージ訓練では実際の運動はせずに心の中だけで動作訓練をする。

脳卒中で上肢麻痺患者での運動イメージ訓練の効果と神経ネットワークのはたらきはよくわかっていないので実験してみたそうな。


脳卒中で上肢が中等度以上に麻痺した男女20人を2グループに分けた。

両グループとも通常のリハビリを行い、
そのあといっぽうのグループには運動イメージ訓練をほどこした。

運動イメージ訓練は、椅子にすわりテーブル上に両手を置いて目を閉じ、指示にしたがって指や手首を動かす様子を一人称視点でくりかえし心に思い描く。

1回45分間x4週間の訓練を続けたのち、
上肢機能(ARAT,FMA)と運動誘発電位、拡散テンソル画像(DTI)から背側腹側経路の異方性変化をくらべた。


次のようになった。

・運動イメージグループで上肢機能の回復があきらかにすぐれていて、

・短母指外転筋への運動誘発電位の強度はおおきくなり、

・背側経路の異方性がおおきくなっていた。

通常のリハビリに運動イメージ訓練を加えることで上肢機能が改善し、背側経路が強化された、


というおはなし。
図:運動イメージ訓練と背側経路

感想:

DTIは機能や働きを見ているわけではないのと、処理の仕方でどうとでも表現できることから刺身のツマのようなものとしての認識がじぶんの中にはある。

2018年8月29日

軽度なのに認知障害→睡眠が短かった


Cognitive impairment and sleep disturbances after minor ischemic stroke
2018  8月  中国

脳卒中患者の25-81%は たとえ軽症であったとしても認知障害を示すという。

また睡眠時無呼吸症は脳卒中の発生要因の1つと考えられているが、脳卒中後の認知障害との関連についてはほとんど知られていない。

そこで、軽症脳卒中患者の認知障害および睡眠パラメータとの関連をくわしくしらべてみたそうな。


軽症(NIHSS 5以下)の脳梗塞から14日後の患者84人と健常者36人について、

複数の認知機能検査と睡眠ポリグラフ検査を行い関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者の81.4%に認知障害、74.4%に睡眠時無呼吸症がみられた。

・脳卒中患者はとくに注意力、作業記憶、実行機能が劣っていた。

・睡眠時無呼吸症は 50.0 vs. 80.0% で認知障害のある患者におおかった。

・またトータルの睡眠時間は 435 vs. 347分 で認知障害患者が短かった。

・教育期間、睡眠時間、血中酸素飽和度の最低値 が認知障害のリスク要因だった。
軽症脳卒中患者の認知障害は珍しくなかった。おもに注意力、作業記憶、実行機能が低下した。そのリスク要因として短い睡眠時間と低酸素症の可能性が示された、


というおはなし。
図:軽症脳卒中の認知障害

感想:

今朝「理研が遺伝子操作でレム睡眠のないネズミを作ったら記憶力が悪かった」というニュースがあったので関心をもった。

2018年8月28日

アンフェタミンの脳卒中リハビリ効果


Effect of Dextroamphetamine on Poststroke Motor Recovery
2018  8月  アメリカ

動物実験では脳卒中のあと数週間以内のアンフェタミン投与と課題訓練により運動機能の回復が促されるとする報告がある。

しかし人に応用したいくつかの調査では相反する結果が得られている。

そこでくわしい臨床実験(The Amphetamine-Enhanced Stroke Recovery Trial)をやってみたそうな。


発症から10-30日以内の脳梗塞患者1665人から64人を厳選して2グループにわけた。

一方には10mgのアンフェタミンをあたえ、もう一方のグループには偽薬をあたえた。

その1時間後に理学療法をおこなった。これを6セッションつづけ、3ヶ月後の回復度を比較したところ、


次のようになった。

・運動機能評価(Fugl-Meyer motor assessment)および

・神経症状(NIHSS)、上肢機能( Action Research Arm Test)、機能障害度(modified Rankin Scale score)、機能的自立度(Functional Independence Measure)、歩行スピードと距離、認知機能 等 いずれも両グループ間で差はなかった。

通常のリハビリにアンフェタミンを加えても脳梗塞患者の運動機能に特別な変化はもたらさなかった、


というおはなし。
図:アンフェタミンと脳卒中機能回復

感想:

薬のんだ直後はとてもハッピーなはずで、きっと何度でも受けたくなるリハビリにちがいない。

[アンフェタミン]の関連記事

2018年8月27日

上肢麻痺でこの筋肉が短くなる


Motor Impairment-Related Alterations in Biceps and Triceps Brachii Fascicle Lengths in Chronic Hemiparetic Stroke
2018  8月  アメリカ

脳卒中の上肢麻痺がながく続くことにより骨格筋に変化が生じうる。これまで上腕筋肉の長さを評価した調査は非常にすくないのでくわしくしらべてみたそうな。


慢性期脳卒中で上肢が中等度以上に麻痺した患者11人と健常者11人について

肘を曲げる上腕二頭筋と肘を伸ばす上腕三頭筋の長さを超音波断層画像上で測定し比較した。

2018年8月26日

母乳栄養した母親は晩年脳卒中になりにくい


Breastfeeding History and Risk of Stroke Among Parous Postmenopausal Women in the Women's Health Initiative
2018  8月  アメリカ

母乳でこどもを育てた(母乳栄養)経験があると乳がんや卵巣がん、高血圧 高脂血症 糖尿病になりにくいことがわかっている。

母乳栄養と脳卒中との関連についての調査はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。


女性の健康イニシアティブ観察的研究(Women's Health Initiative Observational Study)のデータをもちいて、

平均年齢64、出産経験のある80191人について脳卒中の発生を12.6年間フォローし 授乳期間や人種との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・3.4%に脳卒中がおきた。58%に母乳栄養の経験があった。

・母乳栄養経験のない者にくらべると、母乳栄養経験により脳卒中リスクは0.77倍になった。

・この関連は黒人で強く、脳卒中リスクは0.52倍だった。

・母乳による授乳期間が長いほど脳卒中リスクは低かった。

母乳栄養の経験が長いほど晩年の脳卒中リスクは低かった、


というおはなし。
図:授乳の脳卒中予防効果


感想:

母乳栄養をえらぶ女性のヘルシーライフスタイルを考慮にいれても同じ結果なんだって。

いっぽう人種の差は、黒人で母乳栄養できる女性は生活に余裕があるからではないかって言ってる。

2018年8月25日

BEFAST vs. FAST の脳卒中判定力


Prognostic Value of BEFAST vs. FAST to Identify Stroke in a Prehospital Setting
2018  8月  アメリカ

難しい訓練を経ずとも脳卒中を判定できる方法として Face-Arms-Speech-Time のFASTスケールがある。

しかしこの方法では5人に1人以上の脳卒中を見逃してしまう。さらに後方循環系の脳卒中の場合には その見逃し率は38%に達するという。

そこでFASTに 共調運動(Balance)と複視(Eyes)を加えた 「BEFASTスケール」が提唱されているのでその脳卒中判定能をFASTスケールとくらべてみたそうな。


2015年のカルフォルニア サンタクララの救急救命センターに運び込まれた発症から6時間以内の脳卒中を疑われる患者359人について、

BEFASTスケールを適用してスコアリングを行い最終診断結果との関連を解析したところ、


次のようになった。

・159人が脳卒中で、200人は脳卒中でなかった。

・脳卒中患者と非脳卒中患者のNIHSSスコアの比は 7 vs. 2、BEFASTでは 3 vs. 1、FASTでは 2 vs. 1 だった。

・顔の垂れ下がり率が 52% vs. 24%、腕の脱力率が 55% vs. 20% であきらかに脳卒中患者に顕著で、BEFASTのBalanceとEyesによってもたらされる違いをおおきくうわまわっていた。

・BEFASTとFASTのROC曲線下の面積はそれぞれ0.70, 0.69で脳卒中検出精度に差はみられなかった。

FASTスケールにBalanceとEyesを加えても脳卒中判定能は改善しなかった、



というおはなし。
図:BEFAST NIHSS

感想:

当日をおもいだすに、最初に脚にきてフラついていた。けど気合が足りないだけだとおもっていた。
脳卒中を見逃さない BE-FAST とは

2018年8月24日

失語症のtDCS JAMA Neurology


Transcranial Direct Current Stimulation vs Sham Stimulation to Treat Aphasia After Stroke- A Randomized Clinical Trial
2018  8月  アメリカ

この10年間、脳卒中後の失語症治療にtDCS(経頭蓋直流電気刺激)が有望であるとする報告がいくつもあがってきている。

この効果をたしかめるべく(二重盲検の)ランダム化比較試験をおこなってみたそうな。


脳卒中でブローカ失語になって数年経つ患者74人についてリアルtCDSと偽tDCSの2グループに分けた。

1回45分間の失語症訓練セッションの最初の20分間を通電した状態でおこなった。

各人fMRIで確認した側頭部の言語中枢位置にプラス電極を貼った。

偽刺激では20分間のうちの最初の30秒間だけ通電した。

これを3週間、計15セッション繰り返したのち、呼称テストで効果を評価 比較した。


次のようになった。

・呼称テストの正答数は、リアルtDCSで13.9、偽tDCSは8.2、

・その差5.7は70%の改善を示しており、すくなくともtDCSが「無効」ではないことを示していた。

・有害事象はなかった。
脳卒中で失語症患者へのtDCSに可能性を感じる、さらなる研究をすすめるべき、


というおはなし。
図:tDCSで失語症治療

感想:

tDCSは通電中に電極部位がチクチクする。ということは
リアル刺激は20分間チクチクするいっぽう、偽刺激は最初の30秒だけしかチクチクしない。
これではとても盲検とはいえない。

この疑問にたいする答えが「チクチク感は はじめの数十秒で麻痺するから大丈夫なんです!」とのこと。 ほんとかよ?

Stroke誌:tDCSは失語症治療に効果なし
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