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2018年6月11日

rTMS治療中に居眠りしていた脳卒中患者の末路


Sleep during low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation is associated with functional improvement in upper limb hemiparesis after stroke
2018  6月  日本

経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)が脳卒中患者の運動機能の改善に期待できる、とする報告がおおくある。

経験的に rTMS治療中にウトウトと眠ってしまう患者ほど回復が良さそうだったので、眠気レベルの指標としての bispectral index (BIS)を測定して回復度との関連をくわしくしらべてみたそうな。


15日間のrTMS治療入院中、1日2回のrTMSセッションの直前と刺激中でのBISの低下度ΔBISを測定した。

この平均値が10以上を睡眠グループ、10未満を覚醒グループとして
Fugl-Meyer assessment (FMA)
Action Research Arm Test (ARAT)
との関連を解析した。

rTMSは対側の運動野に1ヘルツの刺激を20分間与えた。

BISは脳波の解析にもとずく簡便な睡眠深度測定法である。


次のようになった。

・睡眠グループ7人と覚醒グループ6人を対象とした。

・FMAスコアの改善度にグループ間のちがいはなかった。

・しかしARATスコアは睡眠グループがすぐれていて、

・ΔBISとARATスコアの改善度にあきらかな相関がみられ、ΔBISが15をこえるあたりからARATスコアが急激に向上した。

rTMS中の睡眠が上肢機能の改善を促すのかも、、、


というおはなし。
図:BIS変化分とARATスコアの相関

感想:

眠りは脳の可塑性をうながす。だから目をひんむいてリハビリがんばる人よりも眠ってばかりの怠け者のほうがじつは回復がいい。
ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2018年6月10日

脳内出血後の発熱と1年後の生活の質


Fever Burden and Health-Related Quality of Life After Intracerebral Hemorrhage.
2018  3月  アメリカ

脳内出血患者の20-40%は発熱を経験する。最初の72時間に37.5℃を超える状態がつづくと死亡や入院期間の延長、回復不良のリスクが非常に高まることが報告されている。

発熱と生活の質(QoL)との関連については報告がないのでしらべてみたそうな。


脳内出血患者106人について、
発症から14日間に38℃以上あった日数と、
28日後、3ヶ月後、1年後の健康関連の生活の質(HRQoL)との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・発熱した日数がふえるごとにHRQoLの移動および認知機能に関するスコアが低下した。

・この関連は重症度や年齢、フォロータイミングを考慮にいれても変わらなかった。

脳内出血のあと 発熱した日がふえるごとに1年後の移動 認知関連QoLが低下していた、


というおはなし。
図:脳内出血後の発熱日数とHRQoL

感想:

じぶんもしばらく熱がおさまらなかったので関心をもった。

2018年6月9日

脳卒中の二重課題干渉時の優先順位付け


Dual-Task Walking in Challenging Environments in People with Stroke: Cognitive-Motor Interference and Task Prioritization
2018  5月  オランダ

歩行は強く意識しなくてもできる運動であるが、これに別の認知課題が加わると歩行スピードが落ちたり認知課題スコアの低下を招く。

これを「二重課題干渉効果」と呼び、特に脳卒中患者で顕著であることがわかっている。

歩行課題に障害物を置き難度を高めた場合、認知課題よりも運動課題が優先されると考えられていて、これを 姿勢優先原理(posture-first principle)と呼ぶ。

そこで、歩行課題にバリエーションをもたせたときに 二重課題干渉効果と優先度に違いがでるものか実験してみたそうな。

2018年6月8日

性的にやる気がなくなる降圧薬の種類がわかった


Risk Factors, Depression, and Drugs Influencing Sexual Activity in Individuals With and Without Stroke
2018  5月  アメリカ

脳卒中患者のおおくは性的活動頻度の低下や性機能不全を経験するという。

アメリカ全国健康栄養調査をつかって心血管要因と性的活動レベルとの関連をくわしくしらべてみたそうな。


40-59歳の3649人について脳卒中経験の有無と使用薬、性的活動について調査し関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・使用する薬の種類がおおく喫煙習慣があると性的活動頻度が低かった。

・脳卒中経験のある者も性的活動頻度があきらかに低かった。

・特に アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害タイプの降圧薬やスタチンの使用者で性的活動頻度が低かった。

脳卒中経験者の性的活動頻度はあきらかに低く、とくにACE阻害薬やスタチン使用者で顕著だった、


というおはなし。
図:脳卒中経験と性的活動頻度

感想:

その種のもんだいがまったくないと謳われてきたARB(アンジオテンシンII受容体拮抗)タイプの降圧薬でもかなり性欲減退したんだって。

2018年6月7日

小児脳梗塞の5年後


Motor function daily living skills 5 years after paediatric arterial ischaemic stroke: a prospective longitudinal study
2018  5月  オーストラリア

小児の脳梗塞では運動機能に障害が生じることがすくなくない。これを長期に詳しくフォローした報告はすくないのでしらべてみたそうな。


急性脳梗塞の小児33人について、発症タイミングの出生からの時期別に、
新生児:~30日、
幼児:30日~5年、
学童:5年~、
のグループにわけて、
発症から5年後の運動機能、神経症状等を複数の評価基準で測定したところ、


次のことがわかった。

・5年後の 運動機能、生活の質、疲労、適応行動、日常生活動作、書字スピードが同年齢の一般人とくらべて、あきらかに劣っていた。

・就学まえの幼児期に発症したグループで運動機能の細かな動作と全体的な動作のいずれもが おおきく低下していた。

・細かい動作の障害は皮質下のおおきな脳損傷に関連し、

・全体動作の障害は幼児期の発症で両側の損傷と関連があった。

小児の急性脳梗塞では運動機能に障害が残るリスクが高く、特に就学前の幼児期での発症で顕著だった、


というおはなし。
図:子供の脳卒中後の機能評価

感想:

言語をあっという間に習得してしまうほどに脳が柔らかい子供ですら麻痺が治らないのだから、おとながトレーニング繰り返して良くならないのは無理もない。
課題指向型訓練 いくらやっても役には立たない

2018年6月6日

微小脳出血と軽度認知障害


Cerebral Microbleeds Are Associated With Mild Cognitive Impairment in Patients With Hypertension
2018  6月  中国

微小脳出血は脳小血管病を反映していると考えられMRIで確認できる。いっぽう脳小血管病はアルツハイマー病など認知症の要因の1つでもある。

そこで、微小脳出血と 軽度認知障害との関連をくわしくしらべてみたそうな。


50歳以上、高血圧症で脳卒中歴のない983人について、

微小脳出血の数と位置 および認知機能検査の結果との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・164人が軽度認知障害と診断された。

・軽度認知障害の者ほど微小脳出血がおおかった。

・微小脳出血の位置(皮質や深部)によらずその存在自体が軽度認知障害と関連し、

・年齢、性別、教育歴、他の心血管要因 等を考慮にいれてもこの関連は変わらなかった。

・特に微小脳出血が5個以上あると認知機能スコアがあきらかに低く、情報処理スピードなどのパフォーマンスが悪かった。

微小脳出血の存在およびその個数が高血圧患者の軽度認知障害とあきらかに関連していた、


というおはなし。
図:微小脳出血 皮質と深部

感想:

こういうものが見つかるのが怖くて ずっとMRI撮ってないんよ。

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2018年6月5日

近所にファーストフード店があると脳卒中になるの?


Association of Fast‐Food and Full‐Service Restaurant Densities With Mortality From Cardiovascular Disease and Stroke, and the Prevalence of Diabetes Mellitus
2018  5月  アメリカ

ファーストフードは高カロリーで 脂肪 砂糖 塩がおおく含まれ、ビタミンやミネラルといった栄養素に乏しい。

頻繁なファーストフード店の利用が肥満をもたらし やがて脳卒中などの心血管疾患を招くというシナリオが考えられるが、これまでの研究結果はかならずしもそれと一致しない。

そこで、地域の人口あたりのファーストフード店密度と脳卒中など心血管疾患死亡率との関連を詳しくしらべてみたそうな。


アメリカのCDCと農務省が公開しているデータをもちいて解析したところ、


次のことがわかった。

・ファーストフード店密度は脳卒中や心血管疾患の死亡率とあきらかな正の相関があった。

・これが因果関係にあるとしてもその影響はわずかなもので、地域でファーストフード店があらたに10店舗開業したとき55年間に1人の脳卒中死亡者が増えるという程度だった。

地域のファーストフード店密度が高くなると脳卒中死亡リスクは上昇した。しかしその影響はごくわずかなものだった、


というおはなし。
図:ファーストフード店密度と脳卒中死亡リスク

感想:

ファーストフードがすべて劣悪ではないし、たくさん店があったからといって全店巡るわけでもない。

日本の誇るファーストフード店「立ち食いそば屋」を近所につくってほしい。コストとクオリティのバランスがどの側面からみても絶妙だと思うんだ。
日本人の脳卒中死はラーメン屋のせい

2018年6月4日

コイル塞栓術が安全 はホントか


Outcome After Clipping and Coiling for Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage in Clinical Practice in Europe, USA, and Australia
2018  5月  フィンランド

くも膜下出血の再出血を防ぐための手術としてクリッピングとコイリングがある。

コイリングのほうが患者の予後が良いとするシステマチックレビューがでて以来、コイリングの比率が徐々に高まってきている。

この流行によりおおくの経験の浅い医師が参入するようになり またコイリングをアシストするあらたな器具も次々と投入されてきている。

そこで過去10年間のクリッピングとコイリングの現場状況を大規模にくらべてみたそうな。


ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの22サイトが参加する行政管理データベースから患者7658人と、

ヨーロッパ2サイトの臨床データベースの1501人ぶんを別々に解析したところ、


次のことがわかった。

・行政データベースでは14日後の致命率は クリッピング6.4%、コイリング8.2% だった。

・臨床データベースでは14日後の致命率は クリッピング5.7%、コイリング9.0% だった。90日後の致命率もコイリングが高く、

・90日後の機能的回復不良率はコイリングのほうが低かった。

ワールドワイドな大規模調査ではくも膜下出血のコイリングは致命率が高くクリッピングよりすぐれているとは言えなかった、


というおはなし。
図:脳動脈瘤の位置とコイル クリップの棲み分け

感想:

うえのグラフみると、手の届きにくい場所ではほとんどコイルしか選択の余地がなく棲み分けができているようにも見える。

けどそれ以前に、再出血予防手術の必要性がいまだ理解できない、、、↓
くも膜下出血の超早期手術はじっさいどうなの?

2018年6月3日

マグネシウムが少ないと脳動脈瘤が破裂する?


Low Serum Calcium and Magnesium Levels and Rupture of Intracranial Aneurysms
2018  5月  アメリカ

さいきん低カルシウム血症や低マグネシウム血症が脳内出血の拡大と関連しているという報告がなされるようになった。

これはカルシムやマグネシウムが血小板機能や凝固カスケードに関与していることが理由と考えられている。

脳動脈瘤の破裂との関連についての報告はないのでしらべてみたそうな。


脳動脈瘤患者1275人の医療記録から、血清カルシウム マグネシウム アルブミン濃度と破裂の有無との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・このうち70.6%の患者の脳動脈瘤が破裂していた。

・血清カルシウムとマグネシウム濃度は脳動脈瘤の破裂とあきらかな逆相関にあり、オッズ比はそれぞれ0.33, 0.40 だった。

血清カルシウム マグネシウム濃度が低いとあきらかに脳動脈瘤が破裂しやすかった、


というおはなし。
図:カルシウム マグネシウムと脳動脈瘤破裂

感想:

カルシウムはともかくマグネシウムってどう摂ればいいかわかりにくい。

そこで「まぐねしお」↓ ツカッタコトナイケド
脳卒中が回復する食塩の条件がわかった!

2018年6月2日

慢性期脳卒中での日中の眠気の正体 Sci Rep.


Post-stroke insomnia in community-dwelling patients with chronic motor stroke: Physiological evidence and implications for stroke care
2018  5月  ドイツ

脳卒中患者の睡眠呼吸障害についての報告はおおい。しかし慢性期の脳卒中経験者について1日をとおした睡眠の質を測定した研究はとてもすくない。

そこで夜間の睡眠ポリグラフィー検査と日中の眠気をしらべる睡眠潜時反復検査(Multiple Sleep Latency Test)でくわしくしらべてみたそうな。


発症から1年以上経つ脳卒中経験者22人と年齢性別などが一致する一般の22人について調査したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者は夜 眠りにつくまでの時間が長く、ベッドの中で眠っている時間の比率(睡眠効率)も低かった。

・日中は脳卒中経験者のほうが覚醒効率は高く、夜間の睡眠不足を取り戻そうとする傾向はみられなかったが、

・代わりに日中の注意力スコアがあきらかに低かった。

慢性期の脳卒中経験者は睡眠効率がひくく不眠傾向がみられた。日中の覚醒効率は高いいっぽう注意力は低かった、


というおはなし。
図:脳卒中患者の日中の覚醒効率

感想:

日中ウトウトとしているのではなく、ボーッとしているってこと。

2018年6月1日

復職後 なん年間仕事を続けられるのか 日本で


Employment sustainability after return to work among Japanese stroke survivors
2018  5月  日本

生存率の改善と高齢化から こんご日本では労働可能な脳卒中経験者が増加すると考えられる。

彼らが職場復帰したのち どれくらいのあいだ仕事を継続していられるものか よくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


大企業勤務で2000-2011に復職をはたした脳卒中経験者284人をフォローしたところ、


次のことがわかった。

・仕事継続率は復職後1年時点で78.8%、5年では59.0% だった。

・復職後、平均7.0年間 仕事を続けていた。

・また 30.3%は復職後に医師の診断つきのなんらかの病気休業を経験していた。

・病気休業の原因は、脳卒中の再発が57.0%、精神障害が20.9%、骨折が10.5% だった。

・21人は復職してから自主的に退職した。退職率は1年で4.9%、5年で7.6%だった。

・年齢が50以上だと仕事が継続できなくなるリスクが2倍以上だった。

復職後の脳卒中経験者には労働衛生の専門家のサポートが求められている。特に脳卒中の再発や精神障害 骨折には注意が必要である、


というおはなし。
図:脳卒中からの復職後の仕事継続率

感想:

大企業でこの数字だからな、、、
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