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2018年5月16日

外骨格のないウェアラブルロボットCuraraでの片麻痺歩行


Effect of the Synchronization-Based Control of a Wearable Robot Having a Non-Exoskeletal Structure on the Hemiplegic Gait of Stroke Patients
2018  5月  日本
脳卒中患者の歩行をアシストするウェアラブルロボットは数多く研究されていて、KAI-R, HAL, SMA, H2, GEAR といったものがある。

今回、外骨格を使用しない 軽量で装着のしやすいウェアラブルロボット curara(クララ)を開発したそうな。


脳卒中の片麻痺で自立歩行のできる患者15人にcuraraを装着して歩行速度、歩幅、歩調等について測定した。

curaraには脊髄動物に固有の「中枢パターン生成器」モデルにもとずいた患者の動きに自動的に同期する機能がそなわっている。


次のことがわかった。

・関節角度や歩行サイクルを固定した異なる条件下で、いずれも歩行速度が19-27%ほど向上した。

・どうように歩幅は11-14%,歩調は7-11%向上した。

curaraは脳卒中患者の歩行リハビリに使えそうである、


というおはなし。
図:curara クララ ロボットスーツ

感想:

アルプスの少女ハイジで「クララが立った!」をリアルタイムで観た経験がなかったら これスルーしてたとおもう。

脳卒中経験者の歩行がおぼつかないのは、脚にちからが入らないからではない。足の裏や足首の感覚麻痺のため重心がわからず ちからを込める位置とタイミングを逸してしまうからである。

だからこの種のアシスト装置は とてもまとはずれに見える。

にもかかわらず脳卒中リハへの応用が後を絶たないのは研究費が獲りやすいからなのかね。
慢性期の下肢感覚麻痺の割合と転倒

2018年5月15日

刺激豊富な環境と課題訓練の相乗効果


Synergistic Effects of Enriched Environment and Task-Specific Reach Training on Poststroke Recovery of Motor Function
2018  5月  カナダ

刺激豊富な環境や集中的なリーチ課題訓練は神経の可塑性をうながすと考えられている。これらを単体でおこなったときと組み合わせた時の効果を実験してみたそうな。

2018年5月14日

減塩が脳卒中的に危険はホント?


Longitudinal Change of Perceived Salt Intake and Stroke Risk in a Chinese Population
2018  5月  中国

食塩摂取量と脳卒中など心血管疾患リスクが正の相関をもつとする報告はおおい。
これを根拠に ひろく減塩が薦められてきた。

しかしさいきん 食塩摂取量が少ないとかえって有害である?とする報告がいくつも現れてきた。
それらの研究はある一時期での食塩摂取量をもって評価をおこなっているため途中 健康キャンペーン等の影響で摂取量が変化する可能性を考慮していない。

そこで、4年間の食塩摂取量の変化と脳卒中リスクへの影響を大規模にしらべてみたそうな。


中国人77605人について2006、2008、2010に食塩摂取量を調査し、脳卒中の発生を2015までフォローしたところ、


次のようになった。

・中国人の食生活から判断して 食塩摂取量が1日6g未満を「低」 6-10gを「中」 10gより多いを「高」とし、4年間に 中→中、中→低、中→高、低→中、高→中 と推移した5グループにわけた。

・フォロー期間中に1564人が脳卒中になった。

・中→中グループにくらべ 中→低グループは脳梗塞リスクがあきらかに低かったが、脳内出血はその限りではなかった。

フォロー期間中の食塩摂取量の変化で脳卒中リスクも変わった。その結果は「減塩」を支持していた、


というおはなし。
図:食塩摂取量の推移

感想:

うえの表みると食塩量変わらないひとが8割だから、今回の結果はむしろ例外的で、
これ↓が否定されたとは思えないな。
ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

2018年5月13日

リハビリ病院をはなれたら活動的になった!


"Go home, sit less: The impact of home versus hospital rehabilitation environment on activity levels of stroke survivors"
2018  5月  オーストラリア

脳卒中リハビリをする場所が病院か自宅かでその活動内容と時間が変わるものか詳しくしらべてみたそうな。


リハビリ病院2施設にいる脳卒中患者34人に活動計を装着し、
退院直前の7日間と 退院して自宅へ帰った直後の7日間の活動内容と時間を計測し比較した。

2018年5月12日

Stroke誌:降圧薬のラクナ梗塞予防効果は


Effect of Antihypertensive Medication on Cerebral Small Vessel Disease
2018  5月  オランダ

脳小血管病(cerebral small vessel disease)はMRIでの白質高信号域、ラクナ梗塞、微小脳出血、血管周囲腔の拡大、微小皮質下梗塞、脳萎縮の総称である。
脳小血管病がひどくなると認知障害や歩行問題が生じる。

高血圧は脳小血管病のリスク因子である。
しかし降圧薬治療は太い脳動脈の疾患予防には有効であるが 脳小血管病への効果はいまだあきらかでない。

その関連をしらべるべくこれまでの研究のメタアナリシスをやってみたそうな。


降圧薬治療と脳小血管病に関する信頼性の高い研究を厳選して、データを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者1369人について28-47ヶ月間フォローした4つの研究がみつかった。

・降圧薬治療グループでは白質高信号域の拡大があきらかに小さかった。

・2つの研究は脳萎縮についても調べていたが全く逆の結論だった。

・他の脳小血管病との関連をしらべた研究はなかった。

降圧薬治療は白質高信号域の拡大を防ぐ効果があったが 脳萎縮には効果はなかった。ラクナ梗塞や微小脳出血 等への影響の研究はなかった、


というおはなし。
図:降圧薬と脳小血管病リスク

感想:

おどろいた
降圧薬でラクナ梗塞や微小脳出血を防げるというのはいまだ「信念」レベルってことか?

2018年5月11日

麻痺していない手を鍛える意義


Unilateral wrist extension training after stroke improves strength and neural plasticity in both arms
2018  5月  カナダ

片方の手や脚の筋肉を鍛えた効果が 鍛えていないもういっぽうの手や脚に伝達される「クロスエデュケーション」は重度の片麻痺で訓練のできない脳卒中患者への応用が期待されている。

下肢についての応用例はいくつかあるが上肢のそれはほとんどないので実験してみたそうな。


慢性期の脳卒中で片麻痺の患者24人について、麻痺していないほうの手関節の背屈筋を最大筋力で鍛える訓練を5週間継続した。


次のようになった。

・5週間後 20人が訓練を完遂した。

・非麻痺がわの手関節背屈筋力は42%、麻痺手のそれは35%増加した。

・さらに5週間後のフォローでもこの筋力増加量は維持されていた。

・4人の患者で臨床的に意義あるレベルでの手の機能改善があった。

・皮膚反射や皮質静止期間、脳梁抑制を測定することで脊髄路や皮質路の可塑的変化が生じたことがわかった。

非麻痺側の手を集中的に鍛えることで両手の筋力を改善でき、脊髄や皮質にも可塑的変化が生じた、


というおはなし。
図:脳卒中上肢筋力のクロスエデュケーション効果

感想:

筋繊維が強化されるわけではなくて抑制が外れるってことなんかね。
リハビリにクロスエデュケーションを使うべき理由

2018年5月10日

慢性期の下肢感覚麻痺の割合と転倒


The prevalence, distribution, and functional importance of lower limb somatosensory impairments in chronic stroke survivors: a cross sectional observational study
2018  5月  イギリス

脳卒中後の下肢の感覚麻痺の影響については急性期患者の調査がおおく、慢性期患者のそれはよくわかっていない。

そこで慢性期患者について下肢感覚麻痺の種類と割合、歩行能力や転倒との関連について詳しくしらべてみたそうな。


平均年齢67、自立歩行のできる慢性期脳卒中患者163人について下肢の複数の感覚テストおよび歩行能力テスト、転倒体験との関連を解析したところ、


次のようになった。

・56%が下肢になんらかの感覚障害があった。

・内訳は、全体の18%が触覚や圧覚 痛覚、55%がシャープさ(sharp-blunt)の識別能力、19%が身体の位置や動きを知る深部感覚、に障害があった。

・スネやももよりも遠位の足やつま先の感覚障害がおおかった。

・足や足首の深部感覚の障害があきらかに転倒事例と関連していた。

慢性期脳卒中患者の下肢感覚障害は半数以上にみられ、いろいろなパターンがあった。とくに足や足首の深部感覚の低下が転倒と相関していた、


というおはなし。
図:脳卒中後の下肢感覚障害の種類

感想:

まさにコレ。
足の裏と足首の感覚麻痺が歩行問題の最大の理由。

だからスネに電気流したりももをパワーアシストするはちょと違うと思う。

2018年5月9日

脳卒中リスニング療法の効果


Participants' experiences of music, mindful music, and audiobook listening interventions for people recovering from stroke.
2018  5月  イギリス

脳卒中患者の50%ほどは認知障害やうつ不安といった感情面での問題をかかえる。

いっぽう好きな音楽を聴くことで脳卒中患者の注意力や言語記憶 気分がおおきく改善することが報告されている。

また最近ではマインドフルネス瞑想によりどうようの効果が得られることが注目されている。

そこで音楽とマインドフルネスを組み合わせた時の影響を実験してみたそうな。


脳梗塞患者58人について、つぎの3グループにわけた。

*好きな音楽を聴く
*マインドフルネスのあと好きな音楽を聴く
*興味のあるオーディオブックを聴く

マインドフルネスは身体の各部位または呼吸に意識をフォーカスする5分間のエクササイズを選ばせた。

音楽やオーディオブックは iPod nano で毎日1時間 聴かせた。

これを8週間継続したのち、感想を聞き取り調査したところ、、


次のようになった。

・いずれのグループも雑念や心配ごとが減る効果があり、とくにマインドフルネス+音楽グループではリラクゼーションと集中力、注意力や感情の制御の改善がおおきかった。

・音楽のみのグループではなんらかの身体活動が増え、記憶の回想や気分の改善がおおきかった。

これらリスニングベースの介入は脳卒中患者にとって楽しい体験であり、とくにマインドフルネスをとりいれることで注意力のコントロールが促された、


というおはなし。
図:音楽マインドフルネスオーディオブックと脳卒中患者

感想:

はやくキンドルの自動読み上げがふつうにできるようになってほしいよ。

2018年5月8日

脳梗塞の血管内治療と喫煙パラドックス


Impact of smoking on stroke outcome after endovascular treatment.
2018  5月  スイス

喫煙習慣はあきらかに脳卒中のリスク要因の1つである。いっぽう喫煙習慣のある脳卒中患者への経静脈血栓溶解療法の効果が非常に高く回復が良いとする「喫煙パラドックス」についての報告も増えている。

この関連が血栓の機械的除去や動脈内血栓溶解療法(ウロキナーゼ)などの血管内治療についてもみられるものか詳しくしらべてみたそうな。


2003-2015に脳梗塞で血管内治療をうけた935人について調査したところ、


次のことがわかった。

・21.8%の患者に喫煙習慣があった。

・彼らは年齢が若く、男性がおおく、高血圧がすくなかった。

・また 治療から3ヶ月後の回復がきわめて良好(mRS1以下)の割合が 39.1%vs.23.1% で喫煙者におおく、動脈再開通率も高く 死亡率は低かった。

・脳内出血率に喫煙者と非喫煙者でちがいはなかった。

・関連要因を考慮にいれてもなお、喫煙習慣があるだけで3ヶ月後の回復がきわめて良かった。

脳梗塞患者に喫煙習慣があると血管内治療後の回復が非常によかった。だからといって喫煙が健康に良いわけではないので勘違いしないように、


というおはなし。
図:血管内治療の喫煙習慣パラドックス

感想:

どうやら虚血コンディショニング効果ではないか、、って言ってる。

[虚血 コンディショニング]の関連記事

2018年5月7日

nature.com:中国人が抗凝固薬を使わない理由


Survey of Antithrombotic Treatment in Rural Patients (>60 years) with Atrial Fibrillation in East China.
2018  5月  中国

心房細動は高齢者におおい不整脈であり、心房細動があると脳卒中リスクが4-5倍になるという。

抗凝固薬により脳卒中リスクを60%はさげられると考えられているが、2008年の調査では中国人心房細動の97%は抗凝固薬を使っていなかった。

そこで、さいきんの中国農村部での高齢者の心房細動有病率と抗凝固薬の使用率を詳しくしらべてみたそうな。


2015年に上海7箇所の農村部で60歳以上の36734人を調査した結果、


次のことがわかった。

・828人が心房細動で、有病率は2.3%だった。

・このうち38.9%が抗血栓療法をうけていて、ワルファリンは5.9%のみ、29.6%がアスピリン、2.7%がクロピドグレルを使っていた。

・心房細動患者の59.2%が CHA2DS2-VASc スコア2以上(ワルファリン推奨レベル)で、HAS-BLED スコア3未満(出血リスク低)だった。

・抗凝固薬が使われない理由として、1)早期発見の機会がない、2)症状がないので治療を希望しない、3)医師が薦めない、の3つが考えられた。

中国の心房細動患者は血栓症リスクが高く出血リスクは低かったにもかかわらず、そのおおくは抗凝固薬を使っていなかった、


というおはなし。
図:年齢 性別 心房細動の率

感想:

グラフみると歳とるとすごい勢いでふえるのな。

けど 老い先短いのに危険な薬をあたえるのはどうかと思うよ。

2018年5月6日

未破裂の脳動脈瘤を手術した直後に死ぬ率


Unruptured aneurysms in the elderly: perioperative outcomes and cost analysis of endovascular coiling and surgical clipping.
2018  5月  アメリカ

未破裂の脳動脈瘤が破裂する可能性は高齢者の平均余命が延びるにつれとうぜんおおきくなる。

高齢者の未破裂脳動脈瘤を治療するためには、クリッピングとコイリングがあるが手術の危険性やコストについての調査はほとんどないので詳しくしらべてみたそうな。


2002-2013に未破裂脳動脈瘤があり手術を受けた患者21595人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者内訳はクリッピングが9684人(65歳以上の高齢者2005人)、コイリングは11911人(高齢者3630人)だった。

・高齢者の平均入院日数はクリッピング8.0日、コイリング3.2日、

・費用はどちらも1000万円相当で高齢者のクリッピングがより高かった。

・術後死亡率はクリッピングでは 高齢者2.2% vs. 若年者0.8%、コイリングでは 高齢者0.9% vs. 若年者0.6% だった。

・手術をうけた高齢者が合併症を起こす率はクリッピングが10.3%で急性腎不全が最もおおく、コイリングは3.5%で深部静脈血栓症と肺塞栓症がおおかった。

未破裂脳動脈瘤の治療はクリッピングとコイリングともに高齢者にはハイリスクで、とくにクリッピングの術後死亡率は2.2%におよんだ、


というおはなし。
図:脳動脈瘤クリッピングの合併症

感想:

コイリングのほうが安全そうにみえるけど、術後死亡率はどちらもほぼ1%。

おそらくこういうこと。↓
なんの症状もないけれど健康のためと考えて近所の脳外クリニックでMRIを撮ってもらったら脳動脈瘤がみつかってしまう。そして「簡単な手術ですから、、」という医師の説明を信じた者のうち100人に1人はそのまま死亡する。

家族には「ぐうぜん脳動脈瘤が破裂してお亡くなりになりました。もうすこし早く手術できたら間に合っていたかもしれません。」と説明がなされる。
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