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2018年5月8日

脳梗塞の血管内治療と喫煙パラドックス


Impact of smoking on stroke outcome after endovascular treatment.
2018  5月  スイス

喫煙習慣はあきらかに脳卒中のリスク要因の1つである。いっぽう喫煙習慣のある脳卒中患者への経静脈血栓溶解療法の効果が非常に高く回復が良いとする「喫煙パラドックス」についての報告も増えている。

この関連が血栓の機械的除去や動脈内血栓溶解療法(ウロキナーゼ)などの血管内治療についてもみられるものか詳しくしらべてみたそうな。


2003-2015に脳梗塞で血管内治療をうけた935人について調査したところ、


次のことがわかった。

・21.8%の患者に喫煙習慣があった。

・彼らは年齢が若く、男性がおおく、高血圧がすくなかった。

・また 治療から3ヶ月後の回復がきわめて良好(mRS1以下)の割合が 39.1%vs.23.1% で喫煙者におおく、動脈再開通率も高く 死亡率は低かった。

・脳内出血率に喫煙者と非喫煙者でちがいはなかった。

・関連要因を考慮にいれてもなお、喫煙習慣があるだけで3ヶ月後の回復がきわめて良かった。

脳梗塞患者に喫煙習慣があると血管内治療後の回復が非常によかった。だからといって喫煙が健康に良いわけではないので勘違いしないように、


というおはなし。
図:血管内治療の喫煙習慣パラドックス

感想:

どうやら虚血コンディショニング効果ではないか、、って言ってる。

[虚血 コンディショニング]の関連記事

2018年5月7日

nature.com:中国人が抗凝固薬を使わない理由


Survey of Antithrombotic Treatment in Rural Patients (>60 years) with Atrial Fibrillation in East China.
2018  5月  中国

心房細動は高齢者におおい不整脈であり、心房細動があると脳卒中リスクが4-5倍になるという。

抗凝固薬により脳卒中リスクを60%はさげられると考えられているが、2008年の調査では中国人心房細動の97%は抗凝固薬を使っていなかった。

そこで、さいきんの中国農村部での高齢者の心房細動有病率と抗凝固薬の使用率を詳しくしらべてみたそうな。


2015年に上海7箇所の農村部で60歳以上の36734人を調査した結果、


次のことがわかった。

・828人が心房細動で、有病率は2.3%だった。

・このうち38.9%が抗血栓療法をうけていて、ワルファリンは5.9%のみ、29.6%がアスピリン、2.7%がクロピドグレルを使っていた。

・心房細動患者の59.2%が CHA2DS2-VASc スコア2以上(ワルファリン推奨レベル)で、HAS-BLED スコア3未満(出血リスク低)だった。

・抗凝固薬が使われない理由として、1)早期発見の機会がない、2)症状がないので治療を希望しない、3)医師が薦めない、の3つが考えられた。

中国の心房細動患者は血栓症リスクが高く出血リスクは低かったにもかかわらず、そのおおくは抗凝固薬を使っていなかった、


というおはなし。
図:年齢 性別 心房細動の率

感想:

グラフみると歳とるとすごい勢いでふえるのな。

けど 老い先短いのに危険な薬をあたえるのはどうかと思うよ。

2018年5月6日

未破裂の脳動脈瘤を手術した直後に死ぬ率


Unruptured aneurysms in the elderly: perioperative outcomes and cost analysis of endovascular coiling and surgical clipping.
2018  5月  アメリカ

未破裂の脳動脈瘤が破裂する可能性は高齢者の平均余命が延びるにつれとうぜんおおきくなる。

高齢者の未破裂脳動脈瘤を治療するためには、クリッピングとコイリングがあるが手術の危険性やコストについての調査はほとんどないので詳しくしらべてみたそうな。


2002-2013に未破裂脳動脈瘤があり手術を受けた患者21595人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者内訳はクリッピングが9684人(65歳以上の高齢者2005人)、コイリングは11911人(高齢者3630人)だった。

・高齢者の平均入院日数はクリッピング8.0日、コイリング3.2日、

・費用はどちらも1000万円相当で高齢者のクリッピングがより高かった。

・術後死亡率はクリッピングでは 高齢者2.2% vs. 若年者0.8%、コイリングでは 高齢者0.9% vs. 若年者0.6% だった。

・手術をうけた高齢者が合併症を起こす率はクリッピングが10.3%で急性腎不全が最もおおく、コイリングは3.5%で深部静脈血栓症と肺塞栓症がおおかった。

未破裂脳動脈瘤の治療はクリッピングとコイリングともに高齢者にはハイリスクで、とくにクリッピングの術後死亡率は2.2%におよんだ、


というおはなし。
図:脳動脈瘤クリッピングの合併症

感想:

コイリングのほうが安全そうにみえるけど、術後死亡率はどちらもほぼ1%。

おそらくこういうこと。↓
なんの症状もないけれど健康のためと考えて近所の脳外クリニックでMRIを撮ってもらったら脳動脈瘤がみつかってしまう。そして「簡単な手術ですから、、」という医師の説明を信じた者のうち100人に1人はそのまま死亡する。

家族には「ぐうぜん脳動脈瘤が破裂してお亡くなりになりました。もうすこし早く手術できたら間に合っていたかもしれません。」と説明がなされる。

2018年5月5日

急性期の脳卒中患者に望ましい環境とは


Enriched Environment Elicits Proangiogenic Mechanisms After Focal Cerebral Ischemia.
2018  4月  中国

脳卒中のあと刺激豊富な環境(Enriched Environment)におくと神経ダメージの回復がうながされることが知られている。しかしそのメカニズムはよくわかっていない。

そこで血管新生に着目して脳卒中後の刺激豊富な環境の効果をしらべてみたそうな。

2018年5月4日

Neurology誌:サウナが脳卒中予防によいはどの程度か


Sauna bathing reduces the risk of stroke in Finnish men and women
2018  5月  フィンランド

サウナ浴はもとはフィンランドの伝統文化である。

これまでサウナ浴には血圧や動脈の硬さ 末梢血管抵抗を改善する効果が報告されている。

しかし脳卒中との関連についての調査はないので長期に詳しくしらべてみたそうな。


平均年齢63のフィンランド男女1628人にサウナ浴の頻度を聞き取り、脳卒中の発生を15年間フォローした結果、


次のことがわかった。

・この間に155人の脳卒中があった。

・サウナ浴が週1回にくらべ4-7回だと脳卒中リスクが0.39倍だった。

・さらに身体活動や社会経済レベルを考慮にいれると0.38倍になった。

・この関連は年齢や性別によらなかった。

頻繁にサウナ浴をする中高年男女の脳卒中リスクはあきらかに低かった、


というおはなし。
図:サウナ頻度と脳卒中リスク

感想:

すごい効き目だ。ふつうの風呂でもいいのかな。

2018年5月3日

まいにち玉子を食べるアジア人の脳卒中リスクは


Egg consumption and the risk of cardiovascular disease and all-cause mortality: Guangzhou Biobank Cohort Study and meta-analyses.
2018  4月  中国

玉子は栄養ゆたかな食品であるが 長らくコレステロール含有率の高さが懸念されてきた。

2015年アメリカで 食品から摂るコレステロールの上限値がガイドラインから削除された。このあたらしいガイドラインで参照されている3つのメタアナリシスはいずれも欧米での調査で、しかも玉子でどれくらい摂ると健康によいのかについてはほとんど触れられていない。

そこでアジア人を対象に玉子と脳卒中など心血管疾患との関連をくわしくしらべてみたそうな。


28024人を約10年間フォローした「広州バイオバンクコホート研究」のデータを用いて解析したところ、


次のことがわかった。

・この間に総死亡者数2685人、心血管疾患での死亡873人があった。

・玉子をほとんど摂らないグループとくらべて週に7個以上摂るグループの総死亡率、心血管死亡率 に有意な差は無かった。

・さらに今回の調査結果を含めたメタアナリシスをおこなうと、週7個以上の玉子は総死亡率と虚血性心疾患には関連がなかったが、脳卒中のリスクは0.91倍だった。

1日1個の玉子は心血管疾患リスクや総死亡率の上昇にはつながらなかった。しかし脳卒中リスクはすこし低下した、


というおはなし。
図:玉子と脳卒中

感想:

玉子はつとめて食べるようにしている。今日は3個。

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2018年5月2日

ナッツと心房細動の関係があきらかに


Nut consumption and incidence of seven cardiovascular diseases.
2018  4月  スウェーデン

これまでの研究からナッツ摂取が心血管疾患死亡リスクと逆相関にあることがわかっている。

しかし心血管疾患の個々の種類(心筋梗塞、心不全、心房細動、腹部大動脈瘤、大動脈弁狭窄症、脳梗塞、脳内出血)との関連はよくわかっていないので大規模にしらべてみたそうな。


スウェーデンの食事頻度摂取調査を行った61364人を17年間フォローした結果、


次のことがわかった。

・ナッツ摂取は心筋梗塞、心不全、心房細動、腹部大動脈瘤リスクと逆相関にあったが、

・複数の関連要因で調整すると、心房細動との線形関係と 心不全との非線形関係のみがのこった。

・ナッツ摂取頻度が高くなるにしたがい心房細動リスクは0.97→0.82倍に低下した。いっぽう心不全リスクはナッツをほどほどに摂ったときにいちばん低かった。

ナッツ摂取もしくはその関連行動が 心房細動と心不全リスクの低下と相関していた、


というおはなし。
図:ナッツと心房細動リスク

感想:

ナッツを週3回以上食べると心房細動リスクが18%低下するんだって。

たぶんピーナッツでもいいとおもう。

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2018年5月1日

日本のTIA発生率の長期傾向


Secular trends in the incidence, risk factors, and prognosis of transient ischemic attack in Japan: The Hisayama Study.
2018  4月  日本

一過性脳虚血発作 TIA はさらなる脳卒中の前触れと考えることができる。また この半世紀ほどで脳卒中の関連リスクの状況は劇的に変化してきた。

TIAの発生とその後を長期にフォローした研究はアジアではほとんどないので日本人についてしらべてみたそうな。


久山町研究から 1961年1621人、1988年2646人の2つの時期のデータを解析したところ、


次のことがわかった。

・TIAの発生率は年間1000人あたり 1.01 vs. 0.66人で 1988年のほうがあきらかに低かった。

・収縮期血圧は両時期のTIAリスクに関連し、耐糖能と脂質異常は1988年のほうにのみ関連がつよかった。

・いずれの時期でもTIAのあと10年間は脳梗塞の発生率が7-8倍高かった。

・これら脳梗塞のうちアテローム血栓性の比率がおおはばに増えた。

この半世紀でTIAの発生率はあきらかに低下した。しかしTIAのあと10年間は脳梗塞になるリスクが7-8倍高い状態がつづく点は変わらなかった、


というおはなし。
図:TIAのあとの脳梗塞リスク

感想:

CTやMRIが登場して症状のないちいさな梗塞がほとんど誰にでも見つかるようになった。だからすぐに症状が消えたからといってTIAとして患者をそのまま家に返すのはちょっと惜しい。

そこでTIAがきゅうきょ脳梗塞に昇格する機会がふえたため発生率は下がった、ってことじゃないのかな。

2018年4月30日

脳卒中後のソーシャルネットワーク


Social Network Trajectories in Myocardial Infarction Versus Ischemic Stroke.
2018  4月  アメリカ

心血管疾患のうち とくに脳卒中になったあとは社会とのつながりソーシャルネットワークが縮小するとかんがえられる。

しかし長期のくわしい研究がないのでしらべてみたそうな。


5888人を11年前後フォローした The Cardiovascular Health Study の結果から

患者平均年齢73.5、心筋梗塞395人 脳梗塞382人のデータを抽出した。

患者のソーシャルネットワークは 高齢者の家族と友人 社会サポートを評価する "Lubben Social Network Scale" スコア(LSNS)で表され 関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・心筋梗塞のあとソーシャルネットワークのスコアの傾向はそれ以前(-0.01/y)とほぼ変わらず(-0.06/y)安定していたが、

・脳卒中のあとはスコアがあきらかな減少傾向(-0.14/y)に転じた。

心血管疾患後のソーシャルネットワークは心筋梗塞では変化がなかったが、脳卒中ではわずかではあるがあきらかな減少傾向をしめした、


というおはなし。
図:脳卒中後のソーシャルネットワーク

感想:

うえのグラフみるとイベント直後のスコアの落ち込みとその後の減少傾向がおもったよりわずか。

LSNSは本人へのアンケートだから、認めたくないだけで実は友人関係が切れているケースがおおいと思うんだ。経験的に、、

2018年4月29日

脳内出血の肥満パラドックス


Racial differences in intracerebral haemorrhage outcomes in patients with obesity
2018  4月  アメリカ

肥満が脳卒中リスクであることは はっきりしている。いっぽう 肥満の脳卒中患者は予後が良いとする「肥満パラドックス」もいくつも報告されている。

肥満パラドックスについては 脳内出血や人種の違いでの研究が少ないので やってみたそうな。


脳内出血患者428人の記録を解析したところ、


次のようになった。

・BMIの肥満カテゴリに相当する患者は自宅へ退院できない率が高かったが、肥満は血腫増大には影響しなかった。

・人種別にみて、肥満は血腫増大に影響しなかったが非白人では自宅へ退院できない率が高かった。

今回の調査では脳内出血患者に肥満パラドックスはみられなかった。むしろ肥満で非白人だと予後不良になりやすかったが血腫増大はなかった、


というおはなし。
図:肥満度と脳内出血予後不良率

感想:

肥満は善みたいなはなしばかりだったから安心したよ。

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2018年4月28日

脳卒中のあと10年でけいれん発作をおこす率


Population-Based Assessment of the Long-Term Risk of Seizures in Survivors of Stroke
2018  4月  アメリカ

脳卒中の急性期にけいれん発作がおきやすいことはよく知られているが、長期的にはよくわかっていない。

そこで脳卒中から退院したのちの 長期のけいれん発作の有無を脳卒中の種類別にしらべてみたそうな。


カルフォルニアとニューヨークの2005-2013の脳卒中患者777276人の医療記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者のけいれん発作率は年間1.68%で、8年間では9.27%だった。

・一般人のけいれん発作率は年間0.15%で、8年間だと1.21%だった。

・脳卒中経験者のけいれん発作は、65歳未満、非白人、脳内出血やくも膜下出血でおおかった。

脳卒中患者はその後の10年でおよそ10%がけいれん発作をおこす。脳出血、非白人、若年が関連リスクだった、


というおはなし。
図:脳卒中の種類と長期けいれん発作リスク

感想:

けいれん発作がなんども繰り返されるようになるとてんかんに昇格する。

もっとおおいかとおもってた。

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