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2018年5月1日

日本のTIA発生率の長期傾向


Secular trends in the incidence, risk factors, and prognosis of transient ischemic attack in Japan: The Hisayama Study.
2018  4月  日本

一過性脳虚血発作 TIA はさらなる脳卒中の前触れと考えることができる。また この半世紀ほどで脳卒中の関連リスクの状況は劇的に変化してきた。

TIAの発生とその後を長期にフォローした研究はアジアではほとんどないので日本人についてしらべてみたそうな。


久山町研究から 1961年1621人、1988年2646人の2つの時期のデータを解析したところ、


次のことがわかった。

・TIAの発生率は年間1000人あたり 1.01 vs. 0.66人で 1988年のほうがあきらかに低かった。

・収縮期血圧は両時期のTIAリスクに関連し、耐糖能と脂質異常は1988年のほうにのみ関連がつよかった。

・いずれの時期でもTIAのあと10年間は脳梗塞の発生率が7-8倍高かった。

・これら脳梗塞のうちアテローム血栓性の比率がおおはばに増えた。

この半世紀でTIAの発生率はあきらかに低下した。しかしTIAのあと10年間は脳梗塞になるリスクが7-8倍高い状態がつづく点は変わらなかった、


というおはなし。
図:TIAのあとの脳梗塞リスク

感想:

CTやMRIが登場して症状のないちいさな梗塞がほとんど誰にでも見つかるようになった。だからすぐに症状が消えたからといってTIAとして患者をそのまま家に返すのはちょっと惜しい。

そこでTIAがきゅうきょ脳梗塞に昇格する機会がふえたため発生率は下がった、ってことじゃないのかな。

2018年4月30日

脳卒中後のソーシャルネットワーク


Social Network Trajectories in Myocardial Infarction Versus Ischemic Stroke.
2018  4月  アメリカ

心血管疾患のうち とくに脳卒中になったあとは社会とのつながりソーシャルネットワークが縮小するとかんがえられる。

しかし長期のくわしい研究がないのでしらべてみたそうな。


5888人を11年前後フォローした The Cardiovascular Health Study の結果から

患者平均年齢73.5、心筋梗塞395人 脳梗塞382人のデータを抽出した。

患者のソーシャルネットワークは 高齢者の家族と友人 社会サポートを評価する "Lubben Social Network Scale" スコア(LSNS)で表され 関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・心筋梗塞のあとソーシャルネットワークのスコアの傾向はそれ以前(-0.01/y)とほぼ変わらず(-0.06/y)安定していたが、

・脳卒中のあとはスコアがあきらかな減少傾向(-0.14/y)に転じた。

心血管疾患後のソーシャルネットワークは心筋梗塞では変化がなかったが、脳卒中ではわずかではあるがあきらかな減少傾向をしめした、


というおはなし。
図:脳卒中後のソーシャルネットワーク

感想:

うえのグラフみるとイベント直後のスコアの落ち込みとその後の減少傾向がおもったよりわずか。

LSNSは本人へのアンケートだから、認めたくないだけで実は友人関係が切れているケースがおおいと思うんだ。経験的に、、

2018年4月29日

脳内出血の肥満パラドックス


Racial differences in intracerebral haemorrhage outcomes in patients with obesity
2018  4月  アメリカ

肥満が脳卒中リスクであることは はっきりしている。いっぽう 肥満の脳卒中患者は予後が良いとする「肥満パラドックス」もいくつも報告されている。

肥満パラドックスについては 脳内出血や人種の違いでの研究が少ないので やってみたそうな。


脳内出血患者428人の記録を解析したところ、


次のようになった。

・BMIの肥満カテゴリに相当する患者は自宅へ退院できない率が高かったが、肥満は血腫増大には影響しなかった。

・人種別にみて、肥満は血腫増大に影響しなかったが非白人では自宅へ退院できない率が高かった。

今回の調査では脳内出血患者に肥満パラドックスはみられなかった。むしろ肥満で非白人だと予後不良になりやすかったが血腫増大はなかった、


というおはなし。
図:肥満度と脳内出血予後不良率

感想:

肥満は善みたいなはなしばかりだったから安心したよ。

[肥満パラドックス 脳内出血]の関連記事

2018年4月28日

脳卒中のあと10年でけいれん発作をおこす率


Population-Based Assessment of the Long-Term Risk of Seizures in Survivors of Stroke
2018  4月  アメリカ

脳卒中の急性期にけいれん発作がおきやすいことはよく知られているが、長期的にはよくわかっていない。

そこで脳卒中から退院したのちの 長期のけいれん発作の有無を脳卒中の種類別にしらべてみたそうな。


カルフォルニアとニューヨークの2005-2013の脳卒中患者777276人の医療記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者のけいれん発作率は年間1.68%で、8年間では9.27%だった。

・一般人のけいれん発作率は年間0.15%で、8年間だと1.21%だった。

・脳卒中経験者のけいれん発作は、65歳未満、非白人、脳内出血やくも膜下出血でおおかった。

脳卒中患者はその後の10年でおよそ10%がけいれん発作をおこす。脳出血、非白人、若年が関連リスクだった、


というおはなし。
図:脳卒中の種類と長期けいれん発作リスク

感想:

けいれん発作がなんども繰り返されるようになるとてんかんに昇格する。

もっとおおいかとおもってた。

[けいれん発作]の関連記事

2018年4月27日

数日後、鼻にシュッとするだけで脳が再生する可能性


Delayed and repeated intranasal delivery of bone marrow stromal cells increases regeneration and functional recovery after ischemic stroke in mice.
2018  4月  アメリカ

脳梗塞のほぼ唯一の治療法であるtPAをつかった血栓溶解療法の条件はきわめてきびしく適する患者はまれである。

そのため再生医療に期待がかかっている。

骨髄由来の幹細胞を移植する実験はおおくおこなわれていて、鼻腔内の粘膜に投与する方法もある。

そこで 発症から時間が経った条件下での 鼻腔内へ繰り返し幹細胞を投与する効果をしらべてみたそうな。

2018年4月26日

砂場歩行のいいところ


Effects of gait training on sand on improving the walking ability of patients with chronic stroke:a randomized controlled trial.
2017  12月  韓国

脳卒中患者の歩行リハビリのために柔らかい床を用いることで足首まわりのおおくの筋肉と深部感覚の改善がきたいできる。

砂場での歩行訓練は前例がないのでやってみたそうな。


脳卒中のあと退院して自立歩行の可能な28人について、砂場歩行と床歩行グループにわけた。

1回30分間の歩行訓練を週5回x6週間 行い、

前後でのタイムアップアンドゴーテストと6分間歩行テストの結果をくらべたところ、


次のようになった。

・タイムアップアンドゴーの時間は両グループともにあきらかに短縮した。

・6分間歩行は砂場グループでのみ 距離のおおきな延びがあった。

・しかしグループ間の差は統計学的有意なほどではなかった。

歩く路面の状態にかかわらず訓練により歩行能力は改善した。しかし歩行耐久性の改善には砂場歩行が適していると考えられた、


というおはなし。
図:脳卒中 砂場歩行訓練の効果

感想:

そもそも 砂場あるけるようなひとをリハビリ対象とすることに強い違和感がある。

こんなことで療法士さんの手をわずらわしてはいけない。

2018年4月25日

みつかっていない心房細動患者の割合は


Estimated prevalence of undiagnosed atrial fibrillation in the United States.
2018  4月  アメリカ

心房細動は脳梗塞のおもな原因であるが、それ自体には症状がないため脳卒中をおこすまで見つからないことがおおい。

そこで診断できていない心房細動患者がどれくらいいるものなのか推定してみたそうな。


アメリカで2004-2010の保険請求データベースから、脳梗塞になったのちに心房細動が見つかったケースを抽出し、未診断だった心房細動患者数をAIDS調査に開発されたアルゴリズムを用いて逆算した。


次のようになった。

・心房細動患者の推定総数は、65歳以上の高齢グループで3873900人、18-64歳の労働年齢グループで1457100人だった。これはそれぞれの年齢人口の10.0%、0.92%に相当した。

・これらのうち698900人が診断未確定で、高齢グループが535400人 労働年齢グループ163500人だった。それぞれ各年齢層の1.3%、0.09%に相当した。

・診断未確定患者のうち脳卒中リスクが高いとされワルファリン推奨レベルに相当するCHADS2スコア=2以上の患者が56%いた。

心房細動患者のアメリカでの総数は5.3百万人と推定され、そのうち0.7百万人(全人口の0.31 %)が診断未確定だった。かれらの半数以上は脳卒中リスクが高かった、


というおはなし。
図:CHADS2スコア 未診断心房細動患者

感想:

みつかっていない心房細動患者ってもっと桁違いにおおくいるものだと思ってた。

2018年4月24日

ストレスで脳動脈瘤ができる条件とは


Stress in Patients With (Un)ruptured Intracranial Aneurysms vs Population-Based Controls.
2018  4月  オランダ

ストレスが脳卒中のリスク要因とする報告がいくつもある。

そこでストレスと脳動脈瘤の発生および破裂との関連を詳しくしらべてみたそうな。


未破裂動脈瘤患者227人と破裂脳動脈瘤患者490人、健常者775人について、

おおきなストレスイベントとして以下の4種類のテーマ
*お金、*家族との死別、*子供、*仕事
と、その時期、

継続的なストレスを自覚する場として、
自宅 または 職場
でのストレス頻度を聞き取りし、

関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・未破裂脳動脈瘤患者のほうが破裂患者よりも重大なストレスイベントの数がおおかった。

・ストレスイベントとしてはお金にまつわるものが未破裂脳動脈瘤とのみ関連が強く、子供関連ストレスや家族の死別と脳動脈瘤との関連はなかった。

・ストレスイベントの時期と脳動脈瘤との関連はなかった。

・自宅で受ける継続的なストレスの頻度は 破裂および未破裂脳動脈瘤と用量関係にあり、生涯をとおして受けるとさらに関連はつよかった。

・職場での継続的ストレスと脳動脈瘤との関連はほとんどなかった。

自宅で受けるストレスの総量が脳動脈瘤と関連していた。どういうメカニズムなのかはさらなる調査が必要、


というおはなし。
図:ストレスと脳動脈瘤

感想:

社会からの避難所であるべき自宅がストレスフルな環境の場合、もはや「あの世」を目指すしか逃げ場がないという意味の生体反応じゃないかな。

2018年4月23日

ランセット誌:脳卒中予防に適したアルコール量は


Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies
2018  4月  イギリス

アルコール摂取ガイドラインは国ごとにおおきく異なっていて、アメリカではその上限が男性196g/週 女性98g/週で、スペインはこの1.5倍、イギリスは半分である。

このような違いが生じる理由として アルコール摂取量と死亡率、心血管疾患との関係がわかっていないことが考えられる。

それをあきらかにするべく大規模な調査をおこなってみたそうな。


19の高所得国で飲酒習慣のある599912人について脳卒中などの心血管疾患、死亡の有無を長期にフォローしたところ、


次のことがわかった。

・長期フォロー中に、40310の死亡と39018の心血管疾患があった。

・総死亡率はアルコール摂取量が100g/週 で最低になった。

・脳卒中リスクはアルコール摂取量と線形関係にあった。

・心筋梗塞だけはアルコール摂取が増えるとリスクが低下した。

・100g/週にくらべ、100-200、200-350、>350g/週 の40歳時点での余命短縮度はそれぞれ、6ヶ月、1-2年、4-5年となった。

総死亡率をもっとも低くするアルコール摂取量は100g/週だった。心血管疾患についてはその種類ごとに用量関係がことなりリスク最低しきい値は決められなかった、


というおはなし。
図:アルコールと脳卒中リスク

感想:

うえのグラフから、脳卒中的にはアルコールに適量はなく 摂取量ゼロが望ましいってことと理解。


追記:
ランセット誌:適量などない!酒は脳卒中のもと

2018年4月22日

くも膜下出血のあと太らせるべき根拠


Increased Body Mass Index Associated With Reduced Risk of Delayed Cerebral Ischemia and Subsequent Infarction After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
2018  4月  アメリカ

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血では遅発性脳虚血がおきやすい。遅発性脳虚血は可逆的ではあるもののさらに進んで梗塞になる患者もいる。

高BMI(ボディマス指数)で脳卒中の予後が良いとする肥満パラドックスはくも膜下出血でも報告されているが、BMIと遅発性脳虚血からの梗塞 との関連についての研究はないのでしらべてみたそうな。


くも膜下出血患者161人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・平均BMIは28.9、遅発性脳虚血は31.1%で起き、つづいて梗塞が9.3%で起きた。

・BMIが29.4以上だとあきらかに遅発性脳虚血と梗塞が少なかった。

・BMIが29.4以上でも生活自立度が不良(mRS>2)というわけではなかった。

・超音波装置で測定した最大脳血流速が高いほど遅発性脳虚血と梗塞が起きやすかったがBMIとの関連は確認できなかった。

BMIが高いくも膜下出血患者には遅発性脳虚血や梗塞がおきにくかった。積極的に患者を太らせたほうがいいのかも、


というおはなし。
図:BMIと脳内血流速

感想:

BMIが29.4っていったら じぶんはあと30キロ以上体重ふやさないといかん。

2018年4月21日

若い男性の喫煙本数と脳梗塞の関係


Smoking and Risk of Ischemic Stroke in Young Men
2018  4月  アメリカ

喫煙本数と脳梗塞リスクは、中高年では弱い関連があって 若年成人女性では強い関連があることがわかっている。

若年成人男性についてはわかっていないので、喫煙量と脳梗塞リスクについて詳しくしらべてみたそうな。


2003-2007の15-49歳の男性脳梗塞患者615人と同じ地域に住む同年齢の健常者530人について喫煙調査をおこなった。

生涯喫煙本数が100本未満を「非喫煙者」
生涯100本以上で発症30日以内の非喫煙者を「喫煙経験者」
発症30日以内の喫煙者を「現在喫煙者」とした。


次のようになった。

・非喫煙者に対する現在喫煙者の脳梗塞のオッズ比は1.88、

・本数別では1日11本未満はオッズ比 1.46、

・40本以上だとオッズ比 5.66になった。

若年成人男性の1日の喫煙本数と脳梗塞のなりやすさには強い用量関係が確認できた。だから本数をへらすだけでも脳梗塞リスクを下げられるだろう、


というおはなし。
図:喫煙本数と脳梗塞リスク

感想:

すこしまえのメタアナリシスで、「1本でも吸ったら20本時の半分近い脳卒中リスクあり」って話があったのを思い出した。↓
Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies in 55 study reports
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