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2018年4月13日

脳卒中患者の前頭前野ががんばっている理由とは


Prefrontal over-activation during walking in people with mobility deficits: Interpretation and functional implications.
2018  3月  アメリカ

歩行機能を自動制御している中枢神経系に脳卒中などでダメージがおよんだ場合、足りなくなった注意や運動制御に要するリソースを他の領域に求め補うという考え方がある。

このあたりを確かめるべく歩行課題を複雑にしていったときの前頭前野の活動を 異なる被験者グループで測定してみたそうな。


若い健常者9人と
歩行困難のある高齢者15人、
片麻痺の脳卒中患者24人について

*通常歩行、
*障害物ありの歩行、
*言語課題(与えた文字で始まる単語を多く言わせる課題)中の歩行、

の各状況下での課題直後とさらに30秒後の前頭前野の酸化ヘモグロビンの量を近赤外線分光器で測定した。

また歩行スピードをもって歩行機能とした


次のようになった。

・通常歩行時とくらべたときの障害物歩行時の前頭前野の活動レベルはグループごとにあきらかに異なり、若者がもっとも低く 次いで高齢者<脳卒中患者 の順だった。

・同様に歩行スピードの低下度も 脳卒中患者>高齢者>若者 の順でおおきかった。

・若者の場合、通常歩行時の活動レベルが言語課題歩行時にくらべ非常に低いことから前頭前野の処理リソースがとてもおおきいことが伺える。

・高齢者と脳卒中患者では歩行課題の複雑さを上げると歩行機能が低下したことから、CRUNCH(Compensation-Related Utilization of Neural Circuits Hypothesis)仮説に則っていると考えられた。

高齢者や脳卒中患者の前頭前野は歩行の複雑さを増すと過活動になりその働きは限界に達し歩行機能が低下した、


というおはなし。
図:脳卒中患者の二重課題時の前頭前野の活動量

感想:

まだまだ若いとおもっていたけど、期せずして脳みそだけ高齢者の仲間入りをしてしまったようだ。

さいきん自動車運転中に同乗者と天気についての会話ができるようになってきたけど、記憶をたどる必要のあるやや複雑な話題になると とたんに返事ができなくなってしまう。

[二重課題]の関連記事

2018年4月12日

温鍼灸療法が痙縮に効くは本当か?


Warm-needle moxibustion for spasticity after stroke: A systematic review of randomized controlled trials.
2018  3月  中国

「温鍼灸療法」はツボに刺した針の末端にモグサを据えて燃やし 針をとおして熱を伝える治療法であり、近年とくに脳卒中の痙縮治療効果で注目があつまっている。

これを検証するべくこれまでの研究をシステマチックレビューしてみたそうな。


世界中のデータベースから関係する信頼度の高い研究を厳選し データを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者878人を含む12のランダム化比較試験がみつかった。

・痙縮をやわらげ運動機能の回復を促す点で温鍼灸療法は電気鍼や通常の鍼よりすぐれていた。

・日常生活動作への影響は 温鍼灸療法が電気鍼よりもすぐれていたが、

・通常の鍼との差はなかった。

温鍼灸療法は脳卒中患者の痙縮をやわらげ運動機能や日常生活動作を改善する点で他の鍼灸より期待できるかも、、


というおはなし。
図:温鍼灸療法

感想:

不用意に動くと針からモグサが落ちて とても熱い思いをすることになりそう、
とおもったけどこぼれないようになってるんだな。

2018年4月11日

脳梗塞が夏におおいは間違いだった 日本


Seasonal Variations in Neurological Severity and Outcomes of Ischemic Stroke - 5-Year Single-Center Observational Study.
2018  3月  日本

脳卒中と季節についての研究は数おおくおこなわれていて、脳内出血にかんしては冬におおいということで概ね一致している。

しかし脳梗塞については季節変動なしとするものも含め研究ごとでばらばらである。

結果の一致をみない理由として脳梗塞の種類を考慮していない点やサンプル数の少なさが考えられる。

そこで、国立循環器病センターの脳卒中データベースを用いて大規模に詳しくしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者2965人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・全体として脳梗塞の発生数に季節による違いはなかった。

・しかし 75歳以上または中程度レベル以上の神経症状、心原性に限ると冬に有意におおかった。

・非心原性の患者1934人に限ると、脳卒中の発生数に季節変動はなく、

・中程度レベル以上の神経症状は冬と春におおく、

・寝たきりになるような患者に季節の違いはなかった。
脳梗塞は全体として季節ごとの変動はなかったが、心原性に限ると冬におおかった。非心原性の患者では中レベル以上の症状は冬と春におおかった。予後の悪い患者に季節の違いはなかった、


というおはなし。
図:脳梗塞の種類 季節ごとの内訳

感想:

意外性をあおるためか「脳梗塞は夏におおい」という記事ばかりがこれまでは目についていたよ。

上の図みるとぜんぜん夏おおくない。

2018年4月10日

脳内出血アジア人の心的外傷後ストレス障害PTSD


Posttraumatic stress disorder after a first-ever intracerebral hemorrhage in the Chinese population: A pilot study.
2018  4月  中国

これまでの研究から脳卒中やTIAのあと10-25%の患者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になることがわかっている。

またPTSDの有病率は西洋人で3-6%のいっぽう、アジア人では1%未満であるという。

そこで、中国人を対象に脳内出血患者に限定してPTSDの頻度と特徴をしらべてみたそうな。


脳内出血患者64人を12ヶ月後までフォローした結果、


次のことがわかった。

・3ヶ月後、23.4%の脳内出血患者がPTSDと診断された。

・PTSDになった患者は 67 vs. 29% で女性がおおく、

・47 vs. 18% でなんらかの手術を受けた患者がおおかった。

・PTSDになった患者は "改訂出来事インパクト尺度" IES-R (Impact of Event Scale-Revised)のスコアが高く、不安やうつが強く、不適応な対処行動をとりがちで、

・QoLが低く、脳卒中による障害が重かった。

・12ヶ月後、PTSDになった患者の43%が自然に回復していた。

脳内出血はアジア人患者のPTSDリスクを上げる要因だった。特に女性、手術あり、障害の重い患者で顕著だった、


というおはなし。
図:心的外傷後ストレス障害

感想:

重い障害が残っているときにPTSDと診断されたとして、なにか救いになるのかね?

[PTSD]の関連記事

2018年4月9日

退院のあと抗血栓薬で大出血の頻度と特徴


Serious hemorrhages after ischemic stroke or TIA - Incidence, mortality, and predictors.
2018  4月  スウェーデン

脳梗塞やTIAになるとほとんどの患者が退院時に再発予防のための抗血栓薬を処方される。

しかし抗血栓薬には出血の副作用があり、命にかかわるような重大な出血を起こす頻度は抗凝固薬で年間2-5%、抗血小板薬で1-2%とされている。

しかしこれら重大な出血による死亡率への影響や関連要因についてはよくわかっていないのでしらべてみたそうな。


2010-2013の脳梗塞やTIAの患者1528人(平均年齢75)を退院後フォローしたところ、


次のことがわかった。

・退院後、113人が重大な出血を起こした。これは年率2.48%に相当し、内訳は頭蓋内出血が45人、消化管出血が41人、27人は尿管出血など だった。

・重大な出血患者の30日死亡率は15.9%で、そのうち脳内出血が致命率42.1%でもっとも高かった。

・障害の重い(mRS3-5)患者の年間死亡率は31.0%、障害の軽い(mRS0-2)患者の年間死亡率は4.2%だった。

・重大な出血は障害の重い患者の死亡率に影響しなかった。

・しかし障害の軽い患者の死亡リスクを上げた。

・高血圧は重大な出血リスクと関連していた。
脳梗塞やTIAの患者は退院後 年率2.5%で命にかかわるような重大な出血をおこしていた。この重大な出血は障害が重い患者よりも軽かった患者の死亡率を上げた。高血圧治療が出血リスクを下げると考えられた、


というおはなし。
図:抗血栓薬のんで大出血した患者の生存率

感想:

「脳梗塞やったけど障害が残らなくてラッキー」と思っていたら抗血栓薬のおかげで大出血で死亡。しかし「脳梗塞は再発しなかったのだから治療は成功」ってことか。

2018年4月8日

脳卒中患者に楽器を演奏させてわかったこと


Music-supported therapy in the rehabilitation of subacute stroke patients: a randomized controlled trial.
2018  4月  スペイン

楽器の演奏訓練をとおして上肢リハビリをおこなう 音楽サポート療法 "music supported therapy" は脳卒中患者の運動機能の回復に期待できるとする報告がいつくかあるが、レベルの高い研究はほとんどない。

そこで、音楽サポート療法の効果を確かめるべくランダム化比較試験をおこなってみたそうな。


亜急性期の脳卒中患者を20人ずつ
音楽サポート療法(+従来型リハビリ)と
従来型リハビリのみのグループ、にわけた。

両グループともトータルの訓練時間が同じになるようにした。

4週間の訓練ののち、運動機能、認知機能、心理状態、QoLを 3ヶ月間フォローしたところ、


次のようになった。

・両グループともに運動機能があきらかに改善したが、

・グループ間の違いはまったく見られなかった。

・QoL評価の言語ドメインにのみ差がみられた。

・しかし 音楽にたいして喜びを感じる能力調査(Barcelona Music Reward Questionnair)の結果と3ヶ月後の運動機能との相関がみられた。

従来型リハビリに音楽サポート療法を付け加えても運動機能の回復にすぐれた効果はなかった。しかし音楽活動に喜びをみいだす患者は運動機能の回復もよかった、


というおはなし。

図:音楽サポート療法の効果

感想:

ようするに演奏させるかどうかにかかわらず、音楽センスのある患者ほど運動機能が回復しやすい、ってことなんだな。

2018年4月7日

リハビリ病院に入ってもちっとも良くならない理由


Excessive sedentary time during in-patient stroke rehabilitation.
2018  4月  カナダ

リハビリ病院に入院している脳卒中患者が ほとんどの時間を座って過ごしているという報告が相次いでいる。

そこで、この事実確認とセラピー中の活動状況および関連要因についてしらべてみたそうな。


第三次医療機関にリハビリ入院している脳卒中患者19人について、
心拍計と加速度計を装着して24時間x計2週間 測定をおこなった。

安静時代謝当量(MET)の1.5倍未満の運動強度のときを座位状態と判断した。
患者の障害度、精神状態、社会サポートもしらべ関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者は1日に10時間眠り4時間休憩し、目覚めている時間の86.9%は座っていた。

・平均して週に8.5回のセラピーセッションがあったが、週に15時間以上とするガイドラインレベルをおおきく下回っていた。

・理学療法時の61.6%および作業療法時の76.8%を座った状態で過ごしていた。

・心拍数は理学療法時に15ビート、作業療法時に8ビート上がった。

・患者の障害度や精神状態と座っている時間および活動時間との関連はなかった。

十分なリハビリ訓練量のニーズがあるにもかかわらず、患者はほとんどの時間を座ってすごし セラピー時間でさえなにもしていないも同然だった。これは患者要因によるものではなく 組織の問題だった、


というおはなし。
図:リハビリ病院での活動内容

感想:

リハビリ病院は、急な出来事で混乱している家族の気持ちが落ち着くまでのあいだ患者を預けておくための一時的な介護サービス施設なんだよ。

それ以上のことを期待しちゃダメ。
病院のリハビリで患者の訓練時間がとても短いわけ

リハビリ病院ってほとんど動く時間がなくて笑った

日本の理学療法士はどういう根拠に基づいて仕事をしているのか?

2018年4月6日

サイエンス誌:脳卒中リハによく効く薬を日本が開発


CRMP2-binding compound, edonerpic maleate, accelerates motor function recovery from brain damage
2018  4月  日本

脳卒中からのリハビリ訓練による回復過程で シナプス変化の中心的役割を司るAMPA受容体の一連のプロセスにCRPM2というタンパク質が関わっている。

日本企業が開発したアルツハイマー病治療に期待のかかる "edonerpic maleate" という化合物がCRPM2に作用することから脳卒中リハビリにも役立つものか動物実験してみたそうな。

2018年4月5日

両手が一緒にうごいちゃう患者は遂行機能が弱い


Mirror movements are linked to executive control in healthy and brain-injured adults.
2018  3月  フランス

いっぽうの上肢の動きにつられて反対側の上肢が対称的に動いてしまうことを 鏡像運動 (mirror movement)という。

鏡像運動は幼少期によく現れ、成長にしたがい消える。しかし脳卒中の片麻痺患者で起きやすく、健康な者でも特定の条件下で発生させることができる。

脳損傷患者の鏡像運動には注意 抑制機能の問題がかかわっているという報告がいくつかあるので、その関連を詳しくしらべてみたそうな。


健常者24人と脳損傷患者8人について、鏡像運動の頻度と強度、および注意 抑制機能をそれぞれ複数のテストで評価したところ、


次のことがわかった。

・健常者とくらべて脳損傷患者では鏡像運動の頻度と強度がおおきく、注意力に欠陥がみられた。

・さらにすべての被験者で、Trail Making Test に反映される「遂行機能」から鏡像運動の頻度と強度を予測することができた。

鏡像運動と被験者の遂行機能に関連がみられた。脳損傷患者については 注意欠陥のリハビリで鏡像運動を減らすことができるかも、、


というおはなし。

←鏡像運動ビデオ

感想:

鏡像運動は記憶にないけど、手と脚が一緒に動くことはよくあった。

遂行機能」をさいきんよく目にするので関心をもった。

2018年4月4日

「心房細動?なにそれ」率日本一は○○県民


Awareness of atrial fibrillation in Japan: A large-scale, nationwide Internet survey of 50 000 Japanese adults.
2018  3月  日本

心房細動は心原性の脳塞栓症の原因の1つであり、症状はなく脳卒中をおこすまで気づかないことがおおい。

早期発見のため、まずは日本人の心房細動にたいする認識レベルを確認してみたそうな。


調査会社にモニター登録している17万人の日本人から、
50歳以上の医療関係者でない人物にインターネット経由でアンケート調査し、
さらに回答者から関連病歴のある者も除去して解析した結果、


次のことがわかった。

・50万人あまりの回答が集まった。

・27.5%は心房細動について何も知識がなかった。

・3.8%のみがよく理解しており、57.3%は名称だけ知っていた。

・まったく知識のない人は高知県でおおく(36%)、理解者は京都府におおかった(5.1%)。

・若年、男性、田舎住まい、が知識のない者の特徴だった。

日本の成人の3.8%のみが心房細動についてよく理解できていた。この数字はかなり低いと考えられる、


というおはなし。
図:心房細動に無知ナンバーワンは高知県民

感想:

数週間まえに ためしてガッテンで心房細動の恐怖を煽りまくっていたのを観て「これはたいした問題じゃぁないな」、と確信した。

2018年4月3日

脳卒中後の肩の痛み患者が減少している理由


Post-stroke spasticity and shoulder pain prevalence decrease over the last 15 years.
2018  3月  フランス

さいきんひどい痙縮や肩の痛みを訴える脳卒中患者が減少してきているように見えるので、きっちりとしらべてみたそうな。


フランスのフェルナンデ・ヴィダル病院のリハビリ部 2000-2015の患者記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・平均年齢58、786人(脳梗塞68%、脳出血32%)の記録がみつかった。

・関節可動域に影響するようなひどい痙縮の患者は2006まで増えたのち減少に転じた。

・肩の痛みの患者は13%→8%に減少した。

・ひどい痙縮患者の26%は肩の痛みもあった。

・歩ける入院患者や退院時に手が動く患者が増えていた。

・認知障害は24%→63%に増えていた。

この15年間でひどい痙縮や肩の痛みを訴える脳卒中患者の割合が低下してきている。マルチセンタースタディを期待する、


というおはなし。
図:脳卒中後の肩の痛みのトレンド

感想:

よく読むと患者の重症度が載っていない。

なにか治療上の進歩があったのかとおもったけど、どうやら軽症のお客様の獲得に成功するようになっただけのようだ。

これ↓思い出したよ。
Stroke誌:これ エビデンス? 早期リハビリの...
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