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2018年4月5日

両手が一緒にうごいちゃう患者は遂行機能が弱い


Mirror movements are linked to executive control in healthy and brain-injured adults.
2018  3月  フランス

いっぽうの上肢の動きにつられて反対側の上肢が対称的に動いてしまうことを 鏡像運動 (mirror movement)という。

鏡像運動は幼少期によく現れ、成長にしたがい消える。しかし脳卒中の片麻痺患者で起きやすく、健康な者でも特定の条件下で発生させることができる。

脳損傷患者の鏡像運動には注意 抑制機能の問題がかかわっているという報告がいくつかあるので、その関連を詳しくしらべてみたそうな。


健常者24人と脳損傷患者8人について、鏡像運動の頻度と強度、および注意 抑制機能をそれぞれ複数のテストで評価したところ、


次のことがわかった。

・健常者とくらべて脳損傷患者では鏡像運動の頻度と強度がおおきく、注意力に欠陥がみられた。

・さらにすべての被験者で、Trail Making Test に反映される「遂行機能」から鏡像運動の頻度と強度を予測することができた。

鏡像運動と被験者の遂行機能に関連がみられた。脳損傷患者については 注意欠陥のリハビリで鏡像運動を減らすことができるかも、、


というおはなし。

←鏡像運動ビデオ

感想:

鏡像運動は記憶にないけど、手と脚が一緒に動くことはよくあった。

遂行機能」をさいきんよく目にするので関心をもった。

2018年4月4日

「心房細動?なにそれ」率日本一は○○県民


Awareness of atrial fibrillation in Japan: A large-scale, nationwide Internet survey of 50 000 Japanese adults.
2018  3月  日本

心房細動は心原性の脳塞栓症の原因の1つであり、症状はなく脳卒中をおこすまで気づかないことがおおい。

早期発見のため、まずは日本人の心房細動にたいする認識レベルを確認してみたそうな。


調査会社にモニター登録している17万人の日本人から、
50歳以上の医療関係者でない人物にインターネット経由でアンケート調査し、
さらに回答者から関連病歴のある者も除去して解析した結果、


次のことがわかった。

・50万人あまりの回答が集まった。

・27.5%は心房細動について何も知識がなかった。

・3.8%のみがよく理解しており、57.3%は名称だけ知っていた。

・まったく知識のない人は高知県でおおく(36%)、理解者は京都府におおかった(5.1%)。

・若年、男性、田舎住まい、が知識のない者の特徴だった。

日本の成人の3.8%のみが心房細動についてよく理解できていた。この数字はかなり低いと考えられる、


というおはなし。
図:心房細動に無知ナンバーワンは高知県民

感想:

数週間まえに ためしてガッテンで心房細動の恐怖を煽りまくっていたのを観て「これはたいした問題じゃぁないな」、と確信した。

2018年4月3日

脳卒中後の肩の痛み患者が減少している理由


Post-stroke spasticity and shoulder pain prevalence decrease over the last 15 years.
2018  3月  フランス

さいきんひどい痙縮や肩の痛みを訴える脳卒中患者が減少してきているように見えるので、きっちりとしらべてみたそうな。


フランスのフェルナンデ・ヴィダル病院のリハビリ部 2000-2015の患者記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・平均年齢58、786人(脳梗塞68%、脳出血32%)の記録がみつかった。

・関節可動域に影響するようなひどい痙縮の患者は2006まで増えたのち減少に転じた。

・肩の痛みの患者は13%→8%に減少した。

・ひどい痙縮患者の26%は肩の痛みもあった。

・歩ける入院患者や退院時に手が動く患者が増えていた。

・認知障害は24%→63%に増えていた。

この15年間でひどい痙縮や肩の痛みを訴える脳卒中患者の割合が低下してきている。マルチセンタースタディを期待する、


というおはなし。
図:脳卒中後の肩の痛みのトレンド

感想:

よく読むと患者の重症度が載っていない。

なにか治療上の進歩があったのかとおもったけど、どうやら軽症のお客様の獲得に成功するようになっただけのようだ。

これ↓思い出したよ。
Stroke誌:これ エビデンス? 早期リハビリの...

2018年4月2日

抜けた歯の本数と脳卒中リスクの関係


Tooth loss and risk of cardiovascular disease and stroke: A dose-response meta analysis of prospective cohort studies.
2018  3月  中国

歯周病と歯の脱落は口腔衛生の指標としてよく用いられており、脳卒中など心血管疾患との関連もおおく報告されている。

しかし歯の脱落本数との用量関係についての研究はほとんどないのでしらべてみたそうな。


関係するこれまでの研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者879084 心血管疾患43750を含む17の研究が見つかった。

・歯の脱落本数と心血管疾患リスクとはあきらかな用量関係があり、

・特に歯が2本抜けるごとに冠動脈疾患と脳卒中のリスクは3%上昇した。

歯の脱落本数と脳卒中など心血管疾患リスクはあきらかな用量関係があった、


というおはなし。
図:歯が抜けた本数と脳卒中リスク

感想:

脳卒中は老化病みたいなものだから相関するのは不思議じゃないんだけど、抜けた本数すくなくてもきっちりリスク上がるんだね。

[歯 本数]の関連記事

2018年4月1日

孤独感と社会的孤立、脳卒中で死ぬのはどっちだ


Social isolation and loneliness as risk factors for myocardial infarction, stroke and mortality: UK Biobank cohort study of 479 054 men and women.
2018  3月  フィンランド

孤独感や社会的孤立にさらされていると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなるとする報告がおおくある。

しかしこれらの調査はいずれもサンプル数がすくなく、心筋梗塞や脳卒中のあとの死亡率までしらべていない。

そこで、孤独感や社会的孤立が心筋梗塞や脳卒中、その後の死亡率にたいして独立したリスク要因であるのかを大規模に調べてみたそうな。


イギリスのBiobank研究の47万人あまりの調査データを使用して解析した。

「孤独感」は 頻繁な主観的孤独 と親しい人に悩みを打ち明ける頻度から、

「社会的孤立」は 世帯人数 友人や家族との交流頻度と社会参加の頻度から評価した。


次のことがわかった。

・平均7.1年間のフォロー中に5731件の急性心筋梗塞と3471件の脳卒中があった。

・社会的孤立は急性心筋梗塞と脳卒中のリスクと相関していたが、他のリスク要因を考慮にいれるとこの相関はほとんど消えた。

・孤独感も急性心筋梗塞と脳卒中のリスクと相関していたが、他のリスク要因を考慮にいれるとこの相関はほとんんど消えた。

・しかし孤独感ではなく社会的孤立だけは他の要因をすべて考慮にいれても死亡リスクとあきらかな相関があり、急性心筋梗塞死亡リスクが1.25倍、脳卒中死亡リスクは1.32倍だった。

孤独感と社会的孤立は急性心筋梗塞や脳卒中リスクと相関をしめしたが、大部分が他の心血管リスクで説明がついた。しかし社会的孤立だけはそれ自体が急性心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクと相関があった、


というおはなし。

図:社会的孤立と脳卒中死亡リスク



感想:

他人と心からわかりあえるはずなどないから 人生に孤独感はつきもの。

社会生活を営むのはそのフィールドで生き残るためだから 孤立したら死はとうぜん。

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2018年3月31日

脳梗塞で影響をうける健康関連領域トップ3


The most affected health domains after ischemic stroke
2018  3月  アメリカ

脳卒中が軽くすんで日常生活動作が自立できていたとしても、目につかない隠れた障害を抱えて生活の質が低下している患者はすくなくない。

これら健康に関係する複数の領域(身体機能、社会参加、遂行機能、疼痛、疲労、不安、うつ、睡眠 の8領域)が一般人とくらべてどのていど影響をうけているものなのか調べてみたそうな。


脳梗塞患者1195人(平均年齢62、白人81%)について、被験者の主観的な健康度をPROMIS (Patient-Reported Outcomes Measurement Information Syste)という指標を用いて評価したところ、


次のことがわかった。

・一般人にくらべあきらかなスコア低下の患者の割合は、睡眠の28%から身体機能63%におよんだ。

・もっとも影響をうけた領域は、身体機能>社会参加>遂行機能の順だった。

・身体障害、低収入、女性、が低スコアの関連要因だった。

・年齢は身体機能の低下と関連していたが、不安 うつ 睡眠障害との関連は低かった。

脳梗塞患者は複数の領域におよぶ健康問題をうったえていた。身体機能、社会参加、遂行機能がもっとも影響をうけた、


というおはなし。
図:脳梗塞で影響を受けるヘルスドメイン

感想:

うつや疲労 疼痛よりも遂行機能への影響がおおきいところが新鮮だ。

[遂行機能]の関連記事

2018年3月30日

病院のリハビリで患者の訓練時間がとても短いわけ


Why do stroke survivors not receive recommended amounts of active therapy? Findings from the ReAcT study, a mixed-methods case-study evaluation in eight stroke units.
2018  3月  イギリス

脳卒中の上肢リハビリ訓練量と回復度には用量関係がないことがさいきん次々とあきらかになってきてはいるが、 a b

イギリスの脳卒中リハビリ・ガイドラインでは 1日あたり少なくとも通算45分間の実訓練が必要である とされている。

しかし患者のおおくが必要な訓練量に達しておらず問題となっている。

その原因をくわしくしらべてみたそうな。


異なる地域のリハビリ関連病院 8施設での脳卒中患者77人、介護者53人、医療スタッフ197人の活動内容を第三者視点で詳細に観察し、その多くに面談も行ったところ、


次のことがわかった。

・433回のセッションを含む計1000時間あまりの観察をおこなった。

・セラピーで患者の実動時間に影響するもっともおおきな要因は、療法士の患者以外の関係者との情報交換に要する時間だった。

・疲労や遅刻などの患者要因も訓練量に影響していた。

・患者ごとに作成した予定表が院内でうまく機能していなかった。

・療法士の専門資格や経験レベルのちがいがセラピー内容に反映していなかった。

・適切な訓練強度や頻度についてエビデンスを理解できている療法士がほとんどいなかった。

セラピーの時間が療法士自身の情報交換作業に使われていた。準備の効率化や他部署との連携および療法士の再教育が必要だろう、

というおはなし。
図:リハビリ訓練量に与える要因

感想:

日本とおなじなんだな、、、

これ↓思い出したよ。
日本の理学療法士はどういう根拠に基づいて仕事をしているのか?

2018年3月29日

脳卒中患者のアルツハイマー病率 さいきんの傾向


Time Trends and Characteristics of Prevalent Dementia among Patients Hospitalized for Stroke in the United States.
2018  3月  アメリカ

脳卒中患者が認知障害を示すことはよく知られている。

また 血管性認知症とアルツハイマー型認知症には共通したリスク要因がおおい。

そこで、脳卒中で入院時に認知症とされた患者の割合と その種類について最近のトレンドを大規模に調べてみたそうな。


1999-2012のアメリカ人脳卒中患者117万人あまりの記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中で入院時、5.7%が認知症と診断された。

・女性はアルツハイマー病と関連がつよく、血管性認知症やその他認知症とは関連しなかった。

・アルツハイマー病および血管性認知症は白人よりも黒人でおおかった。

・同様に、ヒスパニックはアルツハイマー病がおおかった。

最近の10年あまりで脳卒中患者の認知症率はあがった。その有病率は性別や人種 民族で異なった、


というおはなし。
図:アルツハイマー病の脳卒中患者10年間

感想:

脳卒中やるような人はてっきり血管性認知症だとおもってたけど上のグラフみるとアルツハイマー病が倍。

アメリカはBSE検査がずさんだから、、かもしれんね。

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2018年3月28日

脳卒中の種類別10年トレンド in 中国


Trends in stroke subtypes and vascular risk factors in a stroke center in China over 10 years.
2018  3月  中国

中国ではこの10年間に急激な経済成長を遂げ、人々のライフスタイルや医療技術もおおきく変化した。

そこで、この間に脳卒中の種類とリスク要因がどのように変化してきたかを詳しくしらべてみたそうな。



2006-2015に北京大学病院に入院した脳卒中患者5521人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者の内訳は脳梗塞82.1%、脳内出血14.7%、くも膜下出血3.2% だった。

・脳梗塞の比率は増加傾向にあり、脳内出血とくも膜下出血は低下傾向にあった。

・発症時の年齢と血圧におおきな変化はなかった。

・脳梗塞ではアテローム血栓性が17.0→30.8%に増加した後24.1%まで低下し、

・ラクナ梗塞は15.5%→39.6%に増加した。

・原因未定の脳梗塞は52.7%→26.0%に減少した。

・これらの傾向は頭蓋内血管検査数の増加を調整しても変わらなかった。

・LDLコレステロール値はあきらかに減少した。

・心原性脳梗塞の比率に有意な変化はなかった。

中国ではこの10年間で脳卒中の種類の比率があきらかに変わった。高血圧治療で脳内出血やくも膜下出血、ラクナ梗塞の予防が期待できる。脳梗塞の原因を特定する能力は高くなった。脂質降下薬治療は有効だった、



というおはなし。
図:中国の脳梗塞の内訳トレンド

感想:

MRI普及のおかげでラクナ梗塞が量産されて、脳内出血とくも膜下出血の比率を押し下げているってことはないかな。

2018年3月27日

脳卒中のあとの中枢性疼痛の仕組みがわかった


How central is central post-stroke pain? The role of afferent input in post-stroke neuropathic pain: a prospective open-label pilot study.
2018  3月  アメリカ

脳卒中患者の39-55%は頭痛や肩の痛み、痙縮、中枢性疼痛などのなんらかの痛みを経験する。

しかしこれら痛みケースの4分の1を占める中枢性疼痛のメカニズムはよくわかっていない。

中枢性疼痛は損傷脳と反対側におき、特に上肢や下肢で痛むことがおおい。

通常 慢性的な痛みで、感覚過敏、痛覚や温覚の異常を伴うこともおおく有効な治療法がない。

これまで 中枢神経にある痛みを受容する部分とくに視床のニューロンが脳損傷により過活動になり抑制が効かなくなってしまうことが痛みの原因であると考えられてきた。

今回、中枢性疼痛の原因が「末梢から中枢へ向かう神経シグナルが中枢で誤解釈されるため」という仮説を立てた。そこで途中の神経をブロックすることでこの痛みが消えるものか検証してみたそうな。


脳卒中で中枢性疼痛のある8人の患者について、

疼痛のある部位から中枢へ向かう神経の正確な途上位置に局所麻酔薬リドカインを打ち神経をブロックした。


次のようになった。

・8人中7人で30分以内に痛みが完全に消失した。残りの1人も痛みが50%以上緩和した。

・このとき痛みスケールの中央値は 6.5→0に下がった。

・他の感覚異常も神経ブロックにより消えた。

中枢性疼痛は中枢神経システムの中で自律的に発生するというよりも、末梢からの求心性の感覚刺激に依存し おそらくはその誤解釈によるものと考えられる、


というおはなし。

図:中枢性疼痛

感想:

比較対照群のない実験だけど、この説は支持したい。

でも誤解釈は痛みについてだけなんだろうか? じぶんの世界認識も誤ってはいないだろうか、、、って心配になるよ。

2018年3月26日

nature.com : 脳萎縮があると脳内出血が軽い


Impact of brain atrophy on 90-day functional outcome after moderate-volume basal ganglia hemorrhage.
2018  3月  韓国

脳内出血は脳卒中の10-15%を占め、大脳基底核の出血がもっともおおく死亡率や障害が残る率も高い。

さいきん脳萎縮への関心が高まっていて、おおきな脳梗塞の患者では頭蓋内に空間的余裕があるおかげで内圧の上昇が起こりにくいという報告がいくつかでてきている。

そこで、脳内出血について脳萎縮が機能回復に与える影響をしらべてみたそうな。


特発性脳内出血患者1003人から中レベルの出血(20-50cc)のケース124人を選び脳萎縮の程度を調べた。

90日後の機能回復度を Glasgow Outcome Scaleで評価して回復良好と不良グループにわけた。

脳萎縮の程度は intercaudate distance (尾状核間距離:ICD) と sylvian fissure ratio (脳の幅対シルビウス裂間の比:SFR)で評価した。

機能回復度と脳萎縮度との関連を解析したところ、


次のようになった。

・中レベルの出血患者のうち59.7%が回復良好だった。

・回復良好グループの脳萎縮度ICDとSFRは回復不良グループに比べ明らかに高かった。

大脳基底核に中程度の出血をした患者にとって、脳萎縮が保護効果を示した。脳萎縮は機能回復予測の重要な因子である、


というおはなし。
図:脳萎縮で基底核出血患者の正中線シフト

感想:

そういえば自分はあたまの鉢がでかくて中のスペースがけっこうあるので 「出血」と知ったとき その点でのアドバンテージを直感した。
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