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2018年1月22日

動作観察訓練の効果


Action observation training to improve motor function recovery: a systematic review.
2018  1月  イタリア

ミラーニューロンシステムには他者の動作を見て それを自分のことのように脳内を活性化するはたらきがあり 90年代に発見された。

動作観察訓練(Action observation training)もミラーニューロンシステムで説明ができる。脳卒中などの中枢神経の損傷により手足が動かない患者に他人の動作をビデオ等で観察させることで脳の関連ネットワークを刺激し劣化を防ぎ、その後のリハビリを円滑にできると考えられている。

そこで動作観察訓練についてのこれまでの研究をまとめてみたそうな。


神経科や整形での動作観察訓練について、信頼性の高い研究を厳選してコクランツールでバイアスリスクを評価したところ、


次のことがわかった。

・20件のランダム化比較試験がみつかった。

・4つの研究で慢性期脳卒中の上肢機能の改善があり、亜急性期と急性期脳卒中の研究も1つずつあった。

・6つの研究で慢性期脳卒中の歩行改善効果があり そのうち3つでバランス能力の改善があった。

・パーキンソン病での日常生活動作および上下肢の自発的運動の改善効果もあった。

・脳性小児麻痺の子どもや術後の整形外科患者での改善効果も示されていた。

動作観察訓練は通常リハビリへのおまけとしては概ね効果的だった。さらにくわしい研究が期待される、


というおはなし。

図:動作観察訓練のランダム化比較試験

感想:

重症でなくても入院してしばらくのあいだは手足が絶望的にうごかない。そんなときにリハビリがんばっても自信をなくして落ち込むだけ。

そこでNetflixのアクション映画で動作観察をおすすめしたい。

2018年1月21日

サポートつき立ちっぱなし訓練の効果


Passive standing as an adjunct rehabilitation intervention after stroke: a randomized controlled trial.
2015  7月  イタリア

脳卒中患者をサポートしながら立位を維持させる訓練は麻痺脚や体幹の筋肉を刺激し のちの歩行訓練にそなえさせる効果が期待できる。

これまでの研究ではサポート付き立位維持訓練の有用性について結論がでていない。

そこで よりくわしくしらべてみたそうな。


発症から4週間以内で歩行機能に重い障害のある脳卒中患者75人について、つぎの3グループに分けた。

*手すりサポート付き立位維持訓練を1日に40分間、
*朝晩20分ずつ、
*通常の理学療法のみ、

3ヶ月後の運動機能、自立度、歩行能力を評価 比較したところ、


次のようになった。

・有害事象はなかった。

・全グループで改善がすすんだが、

・すべての指標でグループ間のあきらかな差はなかった。

サポート付き立位維持訓練には特別な効果を確認できなかった、


というおはなし。
図:サポート付き立位維持訓練の効果

感想:

入院中暇すぎて、病室のベッドの柵に手をそえてひたすら立ち続ける修行をしていた。

けど突っ立っているだけだと骨密度低下の予防にもならない。
骨密度の低下をふせぐ立ち上がり動作とは
もしいま入院中なら、Netflixでアクション映画を観てるとおもう。
動作観察療法というのがあって、、、

2018年1月20日

骨密度の低下をふせぐ立ち上がり動作とは


Upright activity and higher motor function may preserve bone mineral density within 6 months of stroke: a longitudinal study.
2018  1月  オーストラリア

脳卒中患者が発症後1年間に大腿部を骨折をするリスクは健常者の2-4倍という。骨折した患者の1ヶ月後の死亡率は高く ふたたび歩けるようになる可能性も小さい。

骨密度の低下は脳卒中患者でおおきく骨折要因の1つと考えられている。

そこで脳卒中発症後6ヶ月までの骨密度変化と関連要因をしらべてみたそうな。


平均年齢70の脳卒中患者37人の腓骨について、入院から2週間と3,6ヶ月後に二重エネルギーX線吸収法をもちいた骨密度測定を行った。

加速度計を着けて1日の運動状況もしらべた。
さらに骨代謝に関連するタンパク質も定量したところ、


次のことがわかった。

・6ヶ月間で麻痺脚での骨密度が健常脚にくらべ1.5%低下した。

・自立歩行ができるようになった患者は骨密度の低下傾向がちいさかった。

・入院初期に 1日の立っている時間ではなく 立ち上がり回数の多かった患者ほど骨代謝回転が低く骨密度が減少しにくかった。

運動 歩行能力の回復のよい患者ほど骨密度の低下は少なかった、



というおはなし。
図:立ち上がり動作

感想:

立ってる時間よりも立ったり座ったりする「回数」が骨密度にはいいみたい。

2018年1月19日

TIA後の再入院回数と5年間死亡リスク


Five-Year Mortality After Transient Ischemic Attack
2018  1月  アメリカ

心血管代謝性併存症(糖尿病、冠動脈疾患、心不全、心房細動 のこと)はおおくの人に見られるがTIA(一過性脳虚血発作)患者での割合はよくわかっていない。

そこで、TIA患者の再入院と死亡率、心血管代謝性併存症との関連をしらべてみたそうな。


初回TIA患者251人について5年間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・TIA患者の53%が心血管代謝性併存症のうち1つを、22%が2つを持っていた。

・5年間に491回(うち27%が心血管代謝性併存症 )の再入院があり、75人(心血管代謝性併存症は36%)が死亡した。

・心血管代謝性併存症の数が増えるほど死亡率は上昇し、冠動脈疾患と心不全の組み合わせで最大化した。

・再入院回数が1回増える毎に死亡リスクが1.5倍になった。


TIA患者の5年間の死亡率は心血管代謝性併存症および入院回数と関連していた、


というおはなし。


図:TIA後の再入院回数と死亡率

感想:

TIAのあと入院繰り返すごとに死亡率があがってゆくようすが上のグラフ。これに冠動脈疾患とかが絡むとさらにアブナイってことか。

2018年1月18日

毎日の運動で血行動態が改善するしくみ


Higher Daily Physical Activity Level Is Associated with Lower RBC Aggregation in Carotid Artery Disease Patients at High Risk of Stroke.
2017  12月  フランス

アテローム性動脈硬化がすすむと頸動脈にプラークが形成され血行動態が変化して脳梗塞の原因になる。

いっぽう身体活動レベルがあがると血中の脂肪やコレステロールが低下し血行動態を改善すると考えられている。
そこで頸動脈疾患患者について身体活動レベルと血行動態との関連をしらべてみたそうな。


頸動脈内膜切除術を受けた80人の患者(症候性15人と無症候性65人)および健常者14人について、血液粘度、赤血球凝集能および赤血球変形能を測定し、

アンケート調査した日々の身体活動レベルとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・症候性の頸動脈疾患患者は血液粘度と赤血球凝集能が健常者よりも高かった。

・身体活動が活発な者は ほとんど動かない者にくらべ赤血球凝集能があきらかに低かった。

・血液粘度と赤血球変形能は身体活動レベルで変わらなかった。

症状の重い頸動脈疾患では血行動態上の異常(血液粘度と赤血球凝集能の上昇)が見られた。身体活動レベルの高い患者は赤血球凝集能が低かった、


というおはなし。
図:赤血球凝集と身体活動レベル

感想:

日々の運動で血液粘度がさがるわけではなくて、しかも血小板ではなくて赤血球の凝集能が低くなる。

赤血球の凝集ときたら抗原抗体反応がどうのこうのなんだよな。

2018年1月17日

下肢で比例回復則Fitterなら上肢でもFitter?


Is the proportional recovery rule applicable to the lower limb after a first-ever ischemic stroke?
2018  1月  オランダ

脳卒中のあと6ヶ月間の神経障害からの回復は単に時間の問題であり、回復はほとんどすべて自然に起こるという報告がいくつもある。しかしこのしくみについてはよくわかっていない。

その回復ぶんは上肢、半側空間無視、失語で共通していて、脳卒中で低下した機能スコアの60-97%の回復が期待でき、"proportional recovery rule"(比例回復則)とよばれる。

この比例回復則が上肢機能に適合しない患者は、半側空間無視にも適合しないことから神経障害に共通した自発的回復メカニズムがあることをうかがわせる。

そこでほとんど検証されていない下肢機能の比例回復則の有無と適合者(Fitter)および非適合者(non-Fitter)を見分ける特徴とその条件が上肢機能にもあてはまるものか確かめてみたそうな。


脳梗塞患者202人について、発症後72時間以内と6ヶ月後に下肢機能(FMA-LE)および上肢機能(FMA-UE)を評価した。

発症直後の下肢機能から比例回復則で予測される機能回復を果たした適合者と予測から外れた非適合者の特徴をしらべた。


次のようになった。

・87%の患者の下肢機能が比例回復則にしたがっていた。

・その回復は機能低下ぶんの64%だった。

・発症直後のFMA-LEスコアが14ポイント以上のすべての患者は比例回復則に適合していた。

・しかし14ポイント未満であっても78人のうち51人が比例回復則に適合していた。

・非適合者は適合者よりも初期の神経症状が重かった。

・下肢機能の比例回復則に適合しなかったすべての患者は上肢機能の比例回復則にも適合しなかった。

比例回復則への適合度は患者ごとに下肢と上肢で一貫しているようにみえた。適合者を見分ける方法が確立すればリハビリ計画におおきく役立つだろう、


というおはなし。
図:下肢の比例回復則 Fitter non-Fitter

感想:

昨年の報告でも下肢のFitter率は非常に高い。
Stroke誌:下肢運動機能の比例回復則からわかること
つまり重症患者を除くと、歩行訓練はやってもやらなくても ほとんど全員が自然と歩けるようになるということ。

[比例回復則 "proportional recovery rule"]の関連記事

2018年1月16日

Stroke誌:歯周病のグレードと脳梗塞リスク


Periodontal Disease, Regular Dental Care Use, and Incident Ischemic Stroke
2018  1月  アメリカ

これまで歯周病と脳梗塞リスクとの関連をしめす報告がいくつかなされているが歯周病の定義にあいまいなところがあり因果関係を結論づけるには至っていない。

そこで、歯周病のグレードを細かく分類して脳梗塞との関連を大規模に調査してみたそうな。

歯科患者6736人について歯周病グレード(PPC)を A:健康、B:軽症、C:高度歯肉炎、、→G:重症、の7段階に分類した。

15年間に発生した脳梗塞患者299人との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・歯周病グレードがあがるにつれ脳卒中リスクは増加し、

・脳梗塞発生率は年間1000人あたり、PPC-A:1.29人、PPC-B:2.82人、、、→PPC-G:5.03人となった。

・歯周病は心原性と血栓性の脳梗塞とあきらかな関連をしめした。

・定期的な歯科通院によって脳卒中リスクが0.77倍になった。

歯周病と脳卒中リスクのあきらかな関連を確認できた。特に心原性と血栓性の脳梗塞で顕著だった。定期的な歯科通院が脳卒中予防になるかも、


というおはなし。
図:歯周病グレードと脳梗塞発生率

感想:

軽い歯周病でも脳梗塞発生率が倍以上になるんだな。

2018年1月15日

脳卒中の比例回復則 リハビリはほんとうに必要か?


Does Stroke Rehabilitation Really Matter? Part A: Proportional Stroke Recovery in the Rat.
2018  1月  カナダ

脳卒中で失われた患者の機能が、障害の程度に比例してその70%くらいまで自発的に回復する現象を "proportional recovery rule"(比例回復則)と呼ぶ。

これまで比例回復則は上下肢の運動機能および半側空間無視、失語症でも報告されていて、脳卒中患者のおよそ80%がこの現象をしめす。

皮質脊髄路や運動誘発電位の健全性が比例回復則と関連するとの見方もある。

回復が自発的にすすみリハビリの有無によらないことから生物の持つ本質的な治癒メカニズムと考えられ、脳卒中リハビリの存在意義が問われている。

ところが人で実験する場合、いかなるリハビリ行為もまったく行わない群を設けるのはほとんど不可能に近い。

そこで完全管理の動物をつかって比例回復則を確認できるものか 実験してみたそうな。

2018年1月14日

脳卒中の5年再発率 イランでは


Five-Year Recurrence Rate and the Predictors Following Stroke in the Mashhad Stroke Incidence Study: A Population-Based Cohort Study of Stroke in the Middle East.
2018  1月  イラン

脳卒中の再発率は国ごとに異なるとかんがえられるが、低中所得国での調査はおおくない。

そこでイラン第二の都市マシュハド周辺住民を対象にくわしくしらべてみたそうな。


2006年の初回脳卒中患者624人について再発の有無を5年間フォローしたところ、


次のようになった。
・最初の1年間の再発率は5.6%で、5年間では14.5%だった。

・高齢と重度の神経症状が再発の主なリスク要因だった。

・30日死亡率は初回脳卒中患者の24.7%にたいし、再発患者では43.2%だった。

イランでの脳卒中再発率は高所得国の10年前の状況に相当していた。再発時の致命率はとても高く高所得国の20年前相当だった、


というおはなし。
図:脳卒中累積再発率の5年間推移

感想:

自動車の代わりにラクダが走っていて 半世紀くらい遅れている印象があった。けどあまり違わないんだね。

2018年1月13日

働いていた軽症脳卒中患者は回復に不満が少ない


Pre-stroke employment results in better patient-reported outcomes after minor stroke: Short title: Functional outcomes after minor stroke.
2017  1月  アメリカ

神経症状の重さをしめすNIHSSスコアが低い軽度の脳卒中で、片麻痺や失語などの客観的な障害が残らなかったとしても 手や脚の動かしづらさや注意力不足などを訴える脳卒中患者はすくなくない。

そこで軽症脳卒中患者の主観的回復度と関連要因についてくわしくしらべてみたそうな。


発症から3ヶ月前後で、NIHSSスコア4以下の軽症脳卒中患者151人
およびTIAまたは脳卒中類似症状の患者40人について、

身体機能の主観的な問題の数(1-50)およびその深刻さを3段階評価してかけ合わせた負担度(1-150)、
そしてうつ 疲労の程度を測定し 比較した。


次のことがわかった。
・患者の主観的問題数は 11.7 vs. 6.9、負担度は 26.5 vs.12.3 でいずれも軽症脳卒中グループが高く、

・うつ、疲労の程度も高かった。

・これらは脳卒中患者の重症度や教育歴、収入、結婚歴と関連は無かったが、

・発症前に現役労働者だった場合には全カテゴリについて良好な回復を報告していた。

・この関連は他の要因を考慮にいれても変わらなかった。
軽症脳卒中患者の発症直前の就労状況が予後に反映していた。現役労働者だった患者は年齢や重症度によらず主観的な回復が良かった、


というおはなし。
図:雇用ステータスと脳卒中転帰

感想:

労働者にもとめられるもっとも重要な特性は、

「自分の体調もふくめ日々変化する状況に適応できる能力である」、と考えれば納得がゆく。

2018年1月12日

JAHA誌:脳卒中経験者に特におおい自殺方法とは


Risk of Suicide Attempt in Poststroke Patients: A Population‐Based Cohort Study
2018  1月  台湾

脳卒中は身体障害のおもな原因の1つである。欧米にくらべアジア地域は文化的に身体障害に対して寛容であるとする見方があり、脳卒中患者の自殺率も低いと予想される。

これをたしかめるべく台湾の住民について大規模にしらべてみたそうな。

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