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2018年1月18日

毎日の運動で血行動態が改善するしくみ


Higher Daily Physical Activity Level Is Associated with Lower RBC Aggregation in Carotid Artery Disease Patients at High Risk of Stroke.
2017  12月  フランス

アテローム性動脈硬化がすすむと頸動脈にプラークが形成され血行動態が変化して脳梗塞の原因になる。

いっぽう身体活動レベルがあがると血中の脂肪やコレステロールが低下し血行動態を改善すると考えられている。
そこで頸動脈疾患患者について身体活動レベルと血行動態との関連をしらべてみたそうな。


頸動脈内膜切除術を受けた80人の患者(症候性15人と無症候性65人)および健常者14人について、血液粘度、赤血球凝集能および赤血球変形能を測定し、

アンケート調査した日々の身体活動レベルとの関連を解析したところ、


次のようになった。

・症候性の頸動脈疾患患者は血液粘度と赤血球凝集能が健常者よりも高かった。

・身体活動が活発な者は ほとんど動かない者にくらべ赤血球凝集能があきらかに低かった。

・血液粘度と赤血球変形能は身体活動レベルで変わらなかった。

症状の重い頸動脈疾患では血行動態上の異常(血液粘度と赤血球凝集能の上昇)が見られた。身体活動レベルの高い患者は赤血球凝集能が低かった、


というおはなし。
図:赤血球凝集と身体活動レベル

感想:

日々の運動で血液粘度がさがるわけではなくて、しかも血小板ではなくて赤血球の凝集能が低くなる。

赤血球の凝集ときたら抗原抗体反応がどうのこうのなんだよな。

2018年1月17日

下肢で比例回復則Fitterなら上肢でもFitter?


Is the proportional recovery rule applicable to the lower limb after a first-ever ischemic stroke?
2018  1月  オランダ

脳卒中のあと6ヶ月間の神経障害からの回復は単に時間の問題であり、回復はほとんどすべて自然に起こるという報告がいくつもある。しかしこのしくみについてはよくわかっていない。

その回復ぶんは上肢、半側空間無視、失語で共通していて、脳卒中で低下した機能スコアの60-97%の回復が期待でき、"proportional recovery rule"(比例回復則)とよばれる。

この比例回復則が上肢機能に適合しない患者は、半側空間無視にも適合しないことから神経障害に共通した自発的回復メカニズムがあることをうかがわせる。

そこでほとんど検証されていない下肢機能の比例回復則の有無と適合者(Fitter)および非適合者(non-Fitter)を見分ける特徴とその条件が上肢機能にもあてはまるものか確かめてみたそうな。


脳梗塞患者202人について、発症後72時間以内と6ヶ月後に下肢機能(FMA-LE)および上肢機能(FMA-UE)を評価した。

発症直後の下肢機能から比例回復則で予測される機能回復を果たした適合者と予測から外れた非適合者の特徴をしらべた。


次のようになった。

・87%の患者の下肢機能が比例回復則にしたがっていた。

・その回復は機能低下ぶんの64%だった。

・発症直後のFMA-LEスコアが14ポイント以上のすべての患者は比例回復則に適合していた。

・しかし14ポイント未満であっても78人のうち51人が比例回復則に適合していた。

・非適合者は適合者よりも初期の神経症状が重かった。

・下肢機能の比例回復則に適合しなかったすべての患者は上肢機能の比例回復則にも適合しなかった。

比例回復則への適合度は患者ごとに下肢と上肢で一貫しているようにみえた。適合者を見分ける方法が確立すればリハビリ計画におおきく役立つだろう、


というおはなし。
図:下肢の比例回復則 Fitter non-Fitter

感想:

昨年の報告でも下肢のFitter率は非常に高い。
Stroke誌:下肢運動機能の比例回復則からわかること
つまり重症患者を除くと、歩行訓練はやってもやらなくても ほとんど全員が自然と歩けるようになるということ。

[比例回復則 "proportional recovery rule"]の関連記事

2018年1月16日

Stroke誌:歯周病のグレードと脳梗塞リスク


Periodontal Disease, Regular Dental Care Use, and Incident Ischemic Stroke
2018  1月  アメリカ

これまで歯周病と脳梗塞リスクとの関連をしめす報告がいくつかなされているが歯周病の定義にあいまいなところがあり因果関係を結論づけるには至っていない。

そこで、歯周病のグレードを細かく分類して脳梗塞との関連を大規模に調査してみたそうな。

歯科患者6736人について歯周病グレード(PPC)を A:健康、B:軽症、C:高度歯肉炎、、→G:重症、の7段階に分類した。

15年間に発生した脳梗塞患者299人との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・歯周病グレードがあがるにつれ脳卒中リスクは増加し、

・脳梗塞発生率は年間1000人あたり、PPC-A:1.29人、PPC-B:2.82人、、、→PPC-G:5.03人となった。

・歯周病は心原性と血栓性の脳梗塞とあきらかな関連をしめした。

・定期的な歯科通院によって脳卒中リスクが0.77倍になった。

歯周病と脳卒中リスクのあきらかな関連を確認できた。特に心原性と血栓性の脳梗塞で顕著だった。定期的な歯科通院が脳卒中予防になるかも、


というおはなし。
図:歯周病グレードと脳梗塞発生率

感想:

軽い歯周病でも脳梗塞発生率が倍以上になるんだな。

2018年1月15日

脳卒中の比例回復則 リハビリはほんとうに必要か?


Does Stroke Rehabilitation Really Matter? Part A: Proportional Stroke Recovery in the Rat.
2018  1月  カナダ

脳卒中で失われた患者の機能が、障害の程度に比例してその70%くらいまで自発的に回復する現象を "proportional recovery rule"(比例回復則)と呼ぶ。

これまで比例回復則は上下肢の運動機能および半側空間無視、失語症でも報告されていて、脳卒中患者のおよそ80%がこの現象をしめす。

皮質脊髄路や運動誘発電位の健全性が比例回復則と関連するとの見方もある。

回復が自発的にすすみリハビリの有無によらないことから生物の持つ本質的な治癒メカニズムと考えられ、脳卒中リハビリの存在意義が問われている。

ところが人で実験する場合、いかなるリハビリ行為もまったく行わない群を設けるのはほとんど不可能に近い。

そこで完全管理の動物をつかって比例回復則を確認できるものか 実験してみたそうな。

2018年1月14日

脳卒中の5年再発率 イランでは


Five-Year Recurrence Rate and the Predictors Following Stroke in the Mashhad Stroke Incidence Study: A Population-Based Cohort Study of Stroke in the Middle East.
2018  1月  イラン

脳卒中の再発率は国ごとに異なるとかんがえられるが、低中所得国での調査はおおくない。

そこでイラン第二の都市マシュハド周辺住民を対象にくわしくしらべてみたそうな。


2006年の初回脳卒中患者624人について再発の有無を5年間フォローしたところ、


次のようになった。
・最初の1年間の再発率は5.6%で、5年間では14.5%だった。

・高齢と重度の神経症状が再発の主なリスク要因だった。

・30日死亡率は初回脳卒中患者の24.7%にたいし、再発患者では43.2%だった。

イランでの脳卒中再発率は高所得国の10年前の状況に相当していた。再発時の致命率はとても高く高所得国の20年前相当だった、


というおはなし。
図:脳卒中累積再発率の5年間推移

感想:

自動車の代わりにラクダが走っていて 半世紀くらい遅れている印象があった。けどあまり違わないんだね。

2018年1月13日

働いていた軽症脳卒中患者は回復に不満が少ない


Pre-stroke employment results in better patient-reported outcomes after minor stroke: Short title: Functional outcomes after minor stroke.
2017  1月  アメリカ

神経症状の重さをしめすNIHSSスコアが低い軽度の脳卒中で、片麻痺や失語などの客観的な障害が残らなかったとしても 手や脚の動かしづらさや注意力不足などを訴える脳卒中患者はすくなくない。

そこで軽症脳卒中患者の主観的回復度と関連要因についてくわしくしらべてみたそうな。


発症から3ヶ月前後で、NIHSSスコア4以下の軽症脳卒中患者151人
およびTIAまたは脳卒中類似症状の患者40人について、

身体機能の主観的な問題の数(1-50)およびその深刻さを3段階評価してかけ合わせた負担度(1-150)、
そしてうつ 疲労の程度を測定し 比較した。


次のことがわかった。
・患者の主観的問題数は 11.7 vs. 6.9、負担度は 26.5 vs.12.3 でいずれも軽症脳卒中グループが高く、

・うつ、疲労の程度も高かった。

・これらは脳卒中患者の重症度や教育歴、収入、結婚歴と関連は無かったが、

・発症前に現役労働者だった場合には全カテゴリについて良好な回復を報告していた。

・この関連は他の要因を考慮にいれても変わらなかった。
軽症脳卒中患者の発症直前の就労状況が予後に反映していた。現役労働者だった患者は年齢や重症度によらず主観的な回復が良かった、


というおはなし。
図:雇用ステータスと脳卒中転帰

感想:

労働者にもとめられるもっとも重要な特性は、

「自分の体調もふくめ日々変化する状況に適応できる能力である」、と考えれば納得がゆく。

2018年1月12日

JAHA誌:脳卒中経験者に特におおい自殺方法とは


Risk of Suicide Attempt in Poststroke Patients: A Population‐Based Cohort Study
2018  1月  台湾

脳卒中は身体障害のおもな原因の1つである。欧米にくらべアジア地域は文化的に身体障害に対して寛容であるとする見方があり、脳卒中患者の自殺率も低いと予想される。

これをたしかめるべく台湾の住民について大規模にしらべてみたそうな。

2018年1月11日

ボツリヌス療法の歩行改善エビデンス


A systematic review: efficacy of botulinum toxin in walking and quality of life in post-stroke lower limb spasticity.
2018  1月  オーストラリア

脳卒中経験者にとって歩行の改善はもっとも関心のたかいテーマである。下肢痙縮へのボツリヌス療法の歩行とQoL改善効果についてはいまだあきらかでない。

そこでこれまでの研究についてシステマチックレビューをおこなってみたそうな。

2018年1月10日

脳卒中経験者の方向転換 二重課題のとき


The performance of stroke survivors in turning-while-walking while carrying out a concurrent cognitive task compared with controls.
2017  12月  香港

歩行中の方向転換動作には視覚、前庭感覚、体性感覚を統合する高度な認知機能が要求される。

じっさい高齢の脳卒中患者の転倒のおおくは方向転換中におきる。
方向転換中の転倒はまっすぐ歩行時の転倒にくらべ大腿部骨折が7.9倍起きやすいという報告もある。

そこで脳卒中患者に認知課題を与えたときの歩行中の方向転換動作の変化を、健常者とくらべてみたそうな。


脳卒中経験者59人と健常者45人について
聴覚ストロープテストの反応時間と精度 および
歩行中の方向転換動作に要する時間とステップ数を測定し、
さらに両者を組み合わせたとき(二重課題)の結果も比較した。


次のようになった。
・脳卒中経験者は二重課題時に正答精度があきらかに低下したが、反応速度に変化はなかった。

・方向転換動作については単一課題時と二重課題時でほぼおなじだった。

・健常者とくらべ脳卒中経験者はいずれの課題でも反応時間が長く精度は低かった。

・おなじく脳卒中経験者の方向転換にかかる時間とステップ数は健常者よりも大きかったが、

・二重課題にしたときの変化割合(dual-task cost)は健常者とあきらかな差がなかった。

脳卒中経験者では方向転換動作を優先するために認知課題を犠牲にしているようにみえた、


というおはなし。
図:

感想:

注意リソースの競合理論というのがあって、1)注意リソース自体の減少、2)注意リソース分配能力の低下、3)要求される注意リソース量の増加、
二重課題もんだいは これらの組み合わせで説明がつくらしいんだけど、

じぶんにあてはめると 注意リソースの総量は変わらないけれど 麻痺した手足を操るためにあらたにおおくの注意を要するため 結果として足らなくなる、
そういう印象がある。

[二重課題 歩行]の関連記事

2018年1月9日

関節の柔軟性から動脈硬化を知る方法


Association of body flexibility and carotid atherosclerosis in Japanese middle-aged men: a cross-sectional study.
2018  1月  日本

心肺能力や筋力が低いひとは糖尿病や脳卒中になりやすい。同様に関節をフルに動かすことのできる「柔軟性」の高さもこれらの慢性病に影響すると考えられる。

そこで腕と体幹の柔軟性と頸動脈の動脈硬化度(内膜厚とプラーク形成)との関連をしらべてみたそうな。


35-59歳の健康な男性1354人について腕伸展性テストと座位リーチテストをおこなった。

(腕伸展性テストは下の写真を見ればわかる)
図:arm extensibility test


さらに超音波検査で頸動脈の内膜中膜肥厚およびプラーク形成を測定し、関連を解析したところ、


次のようになった。

・腕伸展性テストで腕を伸ばしきれた者は55.0%で、37.8%にプラーク形成が確認できた。

・腕の完全伸展ができた者の内膜厚とプラークはあきらかに小さく、座位リーチ距離は大きかった。

・プラーク形成があった者の完全伸展者割合と座位リーチ距離はあきらかに小さく、内膜厚は有意に大きかった。

腕の伸展性と体幹の柔軟性が動脈硬化と関連していた。さらにこれらの関連は年齢 血圧 血糖 肥満 ライフスタイルに依らなかった、


というおはなし。


感想:

120度くらいが限界で 腕伸ばしきれなかったよ。ショックだ。

2018年1月8日

抜歯まえはワルファリンとめるべき→いまや迷信


The mythology of anticoagulation therapy interruption for dental surgery.
2018  1月  アメリカ

脳卒中予防の目的でワルファリン等の抗凝固療法をうけている者が歯科で抜歯やインプラントなどの手術を受ける場合、一時的に服薬をとめるべきであると信じられていた時代があったそうな。


抗凝固薬を継続すると出血のリスクがあり、服薬をとめると血栓が生じて塞栓症を起こすリスクがある。

どちらのリスクをとるべきか60年以上にわたり議論が続けられてきた。

そしてこれまでの研究から服薬を続けてもおおきな出血はまれで ましてや致命的なものは無かった一方、服薬を停止することで致命的な塞栓症を起こすことがありうる とわかってきた。

ようやく
「歯科手術に際して抗凝固薬を停止するべきでない」という考えでほとんどの研究グループ間で意見の一致をみるようになった、


というおはなし。
図:歯科手術まえの抗凝固療法 継続か?停止か?

感想:

小学2年以来 歯科にかかったことのないじぶんにいわせると、脳卒中予防と歯科治療をおなじ天秤にかけることじたいがナンセンス。

歯科治療なんか命にかかわるものじゃぁないんだから我慢すればいいだけ。
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