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2018年1月7日

2年間の認知機能変化を追跡


A 2-year prospective follow-up study of temporal changes associated with post-stroke cognitive impairment.
2018  1月  韓国

脳卒中経験者のおよそ50%は認知障害を経験し、主に処理スピードが低下する。次いで計算力、注意力、視空間認識、言語、遂行機能、記憶力に影響する、という報告もある。

しかしこれら認知機能への影響が時間とともにどのように変わるのか よくわかっていないので調べてみたそうな。


52人の脳卒中患者について、入院直後、3、6、12、24ヶ月後の認知機能をフォローしたところ、


次のことがわかった。
・認知機能のもっとも大きな変化は3-6ヶ月の間におきた。

・認知障害者の割合は23.1%から42.3%の幅があり、3ヶ月後がもっとも多く、6ヶ月後がもっとも少なかった。

・性別(女性)、教育レベル、病変サイズなどが関連要因だった。

脳卒中後の認知機能は3-6ヶ月間にダイナミックな変化を示した。そういうものと理解したうえでのサポートが必要だろう、


というおはなし。

図:脳卒中後2年間の認知障害

感想:

3ヶ月後にボケててもすぐに治るから悲観しなくてもいいよ ってことなのかな。

上図右下は遂行機能。1年以降の低下っぷりに共感できる。

2018年1月6日

Stroke誌:TIAを経験するとかならず脳が萎縮する


Transient Ischemic Attack Results in Delayed Brain Atrophy and Cognitive Decline
2018  1月  スイス

脳の虚血がながびくと梗塞が起きる。さらに2次的な神経変性の影響も考えられ 動物実験の結果はあるが人ではよくわかっていない。

そこで一過性脳虚血発作(TIA)の患者についてその影響をフォローしてみたそうな。


TIA患者50人について造影剤をつかったCT検査で脳の還流状態を測定した。さらにMRIで直後と90日後の脳の解剖情報を取得し、脳の各部位の体積変化をソフトウェアで自動計測した。

認知症検査を並行してこれらの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・全患者で脳全域の灰白質の減少があった。

・前頭葉虚血の患者では橋および虚血脳半球側でのあきらかな体積減少があった。

・前頭葉虚血だった患者は認知症検査スコアがあきらかに低く、視床の萎縮との関連も示唆された。

TIA患者すべてに虚血から離れた部位での脳萎縮が広く確認され、認知機能低下への影響も示された、


というおはなし。
図:TIAと脳萎縮

感想:

TIAには神経保護作用があるっていわれてるわりにはヒドイ結果だ。

[TIA 神経保護]の関連記事

2018年1月5日

血糖値たかめの脳卒中患者は認知障害に


Prediabetes is associated with post-stroke cognitive impairment in ischaemic stroke patients.
2017  12月  中国

糖尿病は脳卒中のリスク要因の1つで、脳卒中後の認知障害との関連もあきらかになっている。

そこで糖尿病前症(正常と糖尿病の中間)と脳卒中後の認知障害との関連についてしらべてみたそうな。


急性脳梗塞患者201人について食後2時間後の血糖値とヘモグロビンA1cの値をもとに糖尿病、糖尿病前症、非糖尿病の3グループにわけた。

1ヶ月後の認知機能検査との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・糖尿病前症グループは 35.7 vs. 18.1% で非糖尿病グループよりも認知障害が多く、

・そのオッズ比は関連要因を考慮にいれてなお3.062倍だった。

脳卒中患者で糖尿病の前段階にある者は血糖値が正常な者にくらべあきらかに認知障害になりやすかった、


というおはなし。

図:糖尿病前症と脳卒中後の認知障害

感想:

やはり糖分は控えないといかんな。
脳卒中やるひとがアルツハイマー病にもなりやすい理由

糖尿病だと脳卒中の回復が遅い理由

やがて認知症になる脳卒中患者の特徴

2018年1月4日

テロメアは長いほうが脳梗塞になりやすいという結論


Telomere length associated with the risks of high-risk and ischemic stroke in southern Chinese Han population.
2017  12月  中国

テロメアは染色体の末端にあるDNA構造で、染色体同士の融合を防ぎ安定化させる役割をもっている。

テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、細胞の老化と細胞死に関連している。このプロセスは慢性的な炎症や活性酸素によって加速され、血管のアテローム性動脈硬化や心血管疾患と関連するとも考えられている。

これまでの研究でテロメア長が短いと冠動脈疾患になりやすいことがわかっている。しかし脳梗塞との関連については結論がでていないので、脳梗塞の高リスク群もふくめきっちりとしらべてみたそうな。


脳梗塞患者400人と高血圧や糖尿病 肥満などの高リスクの409人および健康な399人について白血球のテロメア長を測定し、関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・脳梗塞患者のテロメア長は健康な人よりも明らかに長かった。

・テロメア長と脳梗塞リスクの関連はU字カーブを描き、テロメアが長くても短くても脳梗塞リスクが高かった。

・高リスク群についても同様だった。

テロメアが長いと脳梗塞のリスクおよび脳梗塞リスクを持つリスク が高かった、


というおはなし。
図:テロメア長と脳卒中リスク

感想:

これまででてきたテロメア研究のそれとは真逆の結論。
ながければ良いってわけでもないんだね。

[テロメア]の関連記事

2018年1月3日

くも膜下出血で回復良好だった患者の性機能について


Sexual Dysfunction after Good-Grade Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
2017  12月  スイス

回復が良かったくも膜下出血患者の性的機能についてしらべてみたそうな。


くも膜下出血でグラスゴーアウトカムスケールが4-5で回復が良かった女性19人と男性14人について匿名アンケート調査したところ、


次のことがわかった。
・31.3%の患者がくも膜下出血後にセックスの楽しみが低下したと報告していた。

・女性性機能インデックス(FSFI:female sexual function index)によると女性の47.4%が性機能不全に該当した。

・そして女性19人全員が不感症を訴えていた。

・国際勃起機能スコア(IIEF:International Index of Erectile Function)によると男性の50%が勃起不全に該当した。

・くも膜下出血の重症度でWFNSグレード2の患者は1にくらべあきらかに性機能低下の報告が多かった。

くも膜下出血で回復良好だった患者でも性機能不全はありふれたことだった、


というおはなし。

図:性別

感想:

くも膜下出血患者は若くて元気なひとおおいから深刻だな。

2018年1月2日

夜間に心拍数がふえる脳血管病は


Association Between Heart Rate and Subclinical Cerebrovascular Disease in the Elderly.
2017  12月  アメリカ

心拍数の増加は心血管死亡率と相関することがわかっている。自律神経の緊張による心拍数の増加が血管抵抗と高血圧を反映する。

とくに最近の研究では安静時や日中の心拍数よりも夜間心拍数が重要であると考えられている。

しかし脳卒中と心拍数との関連はいまだあきらかでない。そこで患者数がおおい無症候性の脳梗塞と白質病変について心拍数との関連をくわしくしらべてみたそうな。


平均年齢74の高齢者680人に24時間の心拍数モニター行い、MRIでの無症候性脳梗塞と白質病変体積との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・無症候性脳梗塞は13.7%に見られた。

・白質病変体積が特に大きいグループでは夜間心拍数とのみ あきらかな相関があり、収縮期血圧や他の心血管リスク要因に依らなかった。

・日中の心拍数や心拍変動との同様な関連は確認できなかった。

・心拍数と無症候性脳梗塞との関連も確認できなかった。

高齢者の調査では夜間心拍数の増加が無症候性の脳血管病である白質病変体積と相関していた、


というおはなし。
図:心拍数と無症候性の脳梗塞と白質病変体積

感想:

自慢じゃないけど心拍数は高い。

2018年1月1日

心房細動患者の11年間 脳卒中, 心不全, 突然死亡率


The Cumulative Incidence of Stroke, Myocardial infarction, Heart Failure and Sudden Cardiac Death in Patients with Atrial Fibrillation.
2017  12月  ボスニア・ヘルツェゴビナ

心房細動は不整脈のおもな原因であり、脳卒中や心不全、突然死の原因の1つである。

そこで心房細動患者の心臓および脳血管発作の発生率をしらべてみたそうな。


2352人の心房細動患者を11年間フォローして、心筋梗塞、心不全、脳卒中、心臓突然死の累積発生率を調査したところ、


次のようになった。
・心臓突然死の累積発生率は1.71%、脳卒中は2.56%、心筋梗塞1.20%、心不全5.73%だった。

・心房細動と死亡リスクは女性で高かった。

心房細動管理の進歩にもかかわらずいまだ不整脈は脳卒中、心不全、突然死のおもな原因の1つである、


というおはなし。
図:心房細動と11年間の脳卒中発生率

感想:

全部足すと11年間で11.2%。1年1%ペースで上のなにかが起こる。

意外と大したことない印象。

2017年12月31日

Stroke誌:PTの運動指導 まったく効果なかった


Efficacy and Safety of Individualized Coaching After Stroke: the LAST Study (Life After Stroke)
2017  12月  ノルウェー

脳卒中後の身体機能は最初の6月間にいちじるしく改善する。この期間にしっかりと身体を動かしておくとその後の回復もよい。さらに慢性期であっても機能維持と再発予防の観点から積極的な運動が必要である、と固く信じられている。

退院した患者は動かなくなりがちなので、「定期的な指導をおこなうことで運動が促され機能回復が進むはずである」、という仮説を検証してみたそうな。


発症後10-16週のすでに退院している脳卒中患者380名について、定期指導グループと通常ケアグループにわけた。

定期指導は、月に1回面談または電話にて理学療法士が 患者本人に適した運動メニューを個別に作成して指導を行う。患者には毎日の運動内容の日記もつけさせた。

これを18ヶ月間つづけて以下の複数の指標で比較したところ、
Motor Assessment Scale、
Barthel index、
modified Rankin Scale、
Berg Balance Scale、
Timed Up and Go test、
gait speed、
6-minute walk test、
Stroke Impact Scale


次のことがわかった。

・"Motor Assessment Scale" では通常ケアグループがスコアが良かった。

・"Barthel index", "modified Rankin Scale", "Berg Balance Scale" にグループ間の明らかな差はなかった。

・再発などの有害事象はいずれも少なく、日記によると運動強度は低かった。

脳卒中患者への個別定期指導による運動機能の改善と維持の試みはまったく効果がみられなかった、


というおはなし。
図:

感想:

自然に回復できた患者が活発に運動しているだけであって、運動したから症状が改善するわけでないことは患者のおおくがなんとなく気づいている。

だから仕事のための運動指導を作業的におこなわれても患者のこころには響かない。
そういうことだとおもうよ。
作業療法士さんに来てもらったけど効果が無いばかりか気晴らしにもならなかった
追記:
理学療法士さんのコーチング 役に立たなかった

2017年12月30日

慢性期の失語症リハビリに適した訓練時間は


Efficacy of intensive aphasia therapy in patients with chronic stroke: a randomised controlled trial.
2017  12月  ドイツ

慢性期脳卒中の失語症リハビリは、短期の集中訓練が効果的であることが最近あきらかになってきた。

しかしどのくらい集中すればよいのかはわかっていない。

これを探るべく実験してみたそうな。


脳卒中の発症後1年以上経つ失語症患者30人を2グループにわけた。
いっぽうには1回2時間、もういっぽうには4時間の失語症リハビリ訓練を4週間継続した。

その後の改善度を複数の指標で評価 比較したところ、


次のようになった。
・"Aachen Aphasia Test" では訓練時間によらず両グループで言語パフォーマンスに同程度の明らかな改善が見られた。

・"Action Communication Test" では後半の2週間に4時間訓練グループの改善が見られなかった。

4週間の失語症リハビリでは1回2時間を超える訓練をおこなってもさらなる効果は確認できなかった。むしろ集中度はそのままに期間をすこし延長するとよいだろう、


というおはなし。

図:失語訓練に適した時間

感想:

これ。↓
ランセット誌:慢性の失語症でも3週間の集中訓練で治る

2017年12月29日

過労で血栓ができやすくなるしくみ


Overwork accelerates thrombotic reaction: implications for the pathogenesis of Karoshi.
2017  12月  日本

労働時間が長くなると脳卒中リスクが高くなることがさいきんの研究であきらかになった。
しかしそのメカニズムはよくわかっていない。

ストレスからの血栓形成のプロセスが考えられるので、血液の凝固 溶解にかかる時間の変化を測定して検証してみたそうな。


健康な研修医46人について、

休日の早朝と 救命室での夜勤明けの血液サンプルをとり、"global thrombosis test"(GTT)をおこない血栓形成までの時間 occlusion time (OT)と、血栓溶解までの時間 lysis time (LT)を測定した。


次のようになった。
・休日にくらべ夜勤日の睡眠時間は 2.3 vs. 6.0h で明らかに短かった。

・夜勤明けのOTは休日にくらべ明らかに短くなり(310→284s)、LTは延長した(1470→1547s)。

過労により血栓形成反応が促された。これが過労死メカニズムの1つではないか、、、


というおはなし。
図:過労と血栓形成

感想:

出血はどういうメカニズムなのかね。
長時間労働と脳卒中との関係

脳卒中になりやすい労働時間がわかった ランセット誌

2017年12月28日

「糖尿病がくも膜下出血を予防する」の真相


Antihyperglycemic Agents Are Inversely Associated With Intracranial Aneurysm Rupture
2017  12月  アメリカ

診断や治療技術の進歩にもかかわらず いまだくも膜下出血の死亡率は50%と高く 50歳未満が患者の半数を占める。

その原因は不明で 喫煙や高血圧がリスクらしいことがわかっている程度である。

さいきん糖尿病が脳動脈瘤の破裂を防いでいるのではないか、、といった報告が続いているものの サンプルサイズや血糖値の評価方法で信頼性に疑問がある。

そこで高血糖とくも膜下出血との関連を探るべく、過去12週間の血糖変動を反映するヘモグロビンA1cおよび血糖降下薬の使用もふくめきっちりとしらべてみたそうな。


計6411個の脳動脈瘤のある患者4701人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・血糖降下薬の使用は脳動脈瘤の破裂と逆相関にあった。

・いっぽう、ヘモグロビンA1cレベルと脳動脈瘤の破裂にはあきらかな関連を確認できなかった。

高血糖よりむしろ血糖降下薬の使用が脳動脈瘤の破裂リスクを低下させていた、


というおはなし。
図:

感想:

これ↓。
糖尿病がクモ膜下出血の予防になる理由

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