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2017年12月16日

腕をぐるぐるさせると歩行が改善するしくみ


Rhythmic arm cycling training improves walking and neurophysiological integrity in chronic stroke-the arms can give legs a helping hand in rehabilitation.
2017  12月  カナダ

人の脊髄には四足歩行時のなごりから手足を周期的に連動させる仕組み "Central Pattern Generator" (CPG) がある。

そこで脳卒中患者の腕を周期的に運動させることでCPGネットワークを活性化させ歩行能力を改善できるものか実験してみたそうな。


慢性期脳卒中患者19人について、ハンドエルゴメータで上肢回転運動を1秒1回転ペースで30分間おこなった。

これを週3回x5週間おこない、前後での歩行 バランス能力を比較した。

また各筋力、橈骨神経の皮膚反射や両ヒラメ筋のストレッチ反射もしらべた。


次のようになった。

・麻痺脚の足底筋、背屈筋の活動が強化され、

・ヒラメ筋ストレッチ反射の増強から四肢間カップリングの増強が考えられた。

・歩行、バランス能力も改善を示した。

アームサイクリングによってCPGネットワークに変化が起き、四肢間の結合が強まり歩行能力の改善につながったと考えられる、


というおはなし。

図:アームサイクリングセラピー

感想:

だから歩行には腕の振りが重要で、たとえばトレッドミル訓練で体重支持機能がない装置だと 両腕は手すりを掴んでいることになり、腕振りができず訓練効果があがらないんだって。

2017年12月15日

血糖値と脳内出血の関係


Prospective Study of Fasting Blood Glucose and Intracerebral Hemorrhagic Risk
2017  12月  中国

糖尿病はあきらかに脳梗塞のリスク要因の1つであるが、血糖値と脳内出血との関連については未だ結論がでていない。

これを大規模に調査してみたそうな。


中国 唐山市の健康な住民96110人について、
2006-2015に2年毎の空腹時血糖値を測定しながら 脳内出血の発生をフォローして関連を解析したところ、


次のようになった。
・この間に755件の脳内出血があり、脳内出血リスクのもっとも低い血糖値は5.3mmol/l(=95.4mg/dl) だった。

・血糖値が4.0mmol/l(=72mg/dl)よりも低い場合や、6.1mmol/l(=110mg/dl)よりも高い場合に脳内出血リスクがあきらかに高かった。

・この関連はなんらかの薬剤使用者を除いても変わらなかった。

空腹時血糖値と脳内出血の関連を大規模に調査した結果、標準的な範囲4.00-6.09mmol/l より高くても低くても脳内出血リスクは高くなった、


というおはなし。
図:空腹時血糖値と脳内出血リスク

感想:

グラフみると低いときヤバイね。

血糖高いと動脈硬化がすすんで微小動脈瘤ができる。血糖低いのは身体が弱いか高ストレス下にある、ってこと。

2017年12月14日

血糖値が高いから代わりに肉をたくさん食べると脳卒中?


Meat intake and incidence of cardiovascular disease in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis of the Japan Diabetes Complications Study (JDCS).
2017  12月  日本

脳卒中などの心血管疾患は糖尿病の合併症の1つでもあり、肉の過剰摂取が原因になりうる と考えられている。

これら研究のおおくはアメリカのもので、肉の摂取カロリーが欧米の1/4程度のアジア人についてはほとんどわかっていない。

そこで、日本人の糖尿病患者について肉の摂取量との冠動脈疾患や脳卒中との関連をしらべてみたそうな。


40-70歳の糖尿病(HbA1c ≥ 6.5%)の患者1353人について、食事調査をおこない心血管疾患の発生を8年間フォローしたところ、


次のようになった。

・肉の1日の摂取量は9.9-97.7gの幅があり、

・肉を多く摂ると冠動脈疾患のリスクは高くなった。

・特に 1日に20g以上摂ると冠動脈疾患リスクは2.94倍になった。

・肉の摂取量と脳卒中とのあきらかな関連は確認できなかった。

日本人の糖尿病患者が肉を多く摂ると冠動脈疾患リスクが上昇した。いっぽう脳卒中リスクとの関連はなかった、


というおはなし。
図:肉の摂取量と冠動脈疾患

感想:

脳卒中は必ずしもアテローム性動脈硬化がだけが原因ではないからこういう結果になったんだろう、とのこと。

糖尿病治すには糖質を制限して代わりに肉を食べればよいから、脳卒中的にもんだい無いならどんどん肉食べるべき。

2017年12月13日

ARASダメージによるせん妄と空間無視


Disruption of the ascending arousal system and cortical attention networks in post-stroke delirium and spatial neglect.
2017  12月  アメリカ

脳卒中後のせん妄と半側空間無視についてのレビュー。

せん妄は注意力や認知力の錯乱した状態で、脳卒中急性期の右脳損傷患者の半数ちかくに認められることがある。

いっぽう半側空間無視も右脳損傷患者の50%が経験するという。

中脳の核と背側および腹側の皮質-辺縁系の上行性投射
(上行性網様体賦活系:Ascending Reticular Activating System)からなる空間的注意と覚醒のネットワークが せん妄と半側空間無視に共通していて、

右脳損傷によりこれら皮質-辺縁系ネットワークが障害をうけ空間無視が起こり、つづいてせん妄に至る と考える、


というおはなし。
図:上行性覚醒経路

感想:

ようするに半側空間無視は意識のもんだいであると同時に 意識を司るハードウェアのもんだいでもあるってことなんだろね。

2017年12月12日

発症前のタンパク質と 重症度 回復度


Premorbid dietary intake of protein is associated with early outcomes but not with severity of ischemic stroke.
2017  12月  中国

タンパク質をおおく摂ると脳卒中予防になることはいくつもの研究であきらかになっている。さらに脳卒中後のプロテインサプリメントが神経症状の回復を促すとする報告もある。

発症するまえに摂っていたタンパク質の量が 脳卒中の回復に与える影響についての研究はほとんどないので しらべてみたそうな。


脳卒中患者202人に食事習慣を面談調査し、食事から摂るタンパク質の量と神経症状の重さ(NIHSS)や90日後の回復度(mRS)との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・患者の54.7%はNIHSS 5以下の軽症、45.3%がNIHSS 5以上で、

・総タンパク質量は動物性や植物性とわず重症度とあきらかな関連はなかった。

・90日後の回復良好(mRS 2以下)63.2%、回復不良(mRS 3-6)は36.8%で、

・発症前のタンパク質の総摂取量と回復度には正の相関があった。

脳卒中になる前にタンパク質をおおく摂っていた患者の回復は概ね良かったが 重症度とは関連がなかった、



というおはなし。
図:食事のタンパク質

感想:

あんまり関連つよくない。
そりゃ足りないよりはいいわな、、、くらいの話。

[タンパク質]の関連記事

2017年12月11日

ヒ素と脳梗塞


Arsenic Exposure in Relation to Ischemic Stroke: The Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke Study.
2017  12月  アメリカ

ヒ素(無機ヒ素)と血管疾患との関連については 台湾、バングラデシュ、チリ、中国、内モンゴルといった地域の地下水暴露についての研究がおおい。

アメリカの脳卒中ベルトの原因についてもヒ素の関与が疑われている。そこでアメリカのREGARDS研究をつかってこの関連をしらべてみたそうな。


被験者2486人を6.7年間フォローした671件の脳梗塞事例について、尿中のヒ素化合物の濃度との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・総ヒ素および無機ヒ素と脳梗塞との関連は確認できなかったが、

・尿中のヒ素化合物モノメチルアルソン酸を考慮に入れると脳梗塞リスクは2倍になった。

・年齢、人種、性別、地域との関連は確認できなかった。

ヒ素の低中暴露地域でのヒ素代謝化合物と脳梗塞には正の相関があった。ヒ素のメチル化が脳卒中の発生に関係しているのではないか、


というおはなし。


感想:

ヒ素は 食品だとひじきにダントツで多い。ゆで汁を捨てるとよい。
図:ひじきのヒ素を減らす方法農林水産省ページから

2017年12月10日

脳内出血の肥満パラドックスがあきらかに


Does the obesity paradox predict functional outcome in intracerebral hemorrhage?
2017  12月  アメリカ

脳卒中など心血管疾患で太っている患者の死亡率が低いとする報告があり「肥満パラドックス」と呼ばれている。さいきんでは肺炎でも報告されている。

脳内出血の肥満パラドックスについては短期的には関連がないとする韓国の調査があるのみなので、確認してみたそうな。


救急搬送されてきた平均年齢61の脳内出血患者202人について、
BMIが25以上と25未満のグループにわけ、
3ヶ月時点での生存率および回復状況との関連を解析したところ、


次のようになった。
・90日時点での死亡率は41%で、

・回復良好(mRS:1-3)患者は、BMI25未満では24%、BMI25以上だと39%だった。

・重症度、性別、高血圧等を考慮にいれると、BMI25以上の回復良好のオッズ比は2倍だった。

脳内出血で入院した患者のうちBMIが25以上の太った患者はあきらかに回復がよかった、


というおはなし。
図:脳内出血の肥満度とmRS

感想:

上の図わかりやすい。mRS 6は死亡。

[肥満パラドックス]の関連記事

2017年12月9日

身体意識をたかめて半側空間無視をなおす


Kinaesthetic ability training improves unilateral neglect and functional outcome in patients with stroke: A randomized control trial.
2017  12月  トルコ

脳卒中後の半側空間無視はリハビリシーンでのおよそ半数の患者に見られる。数週間のうちに自然になおってしまうものも少なくないが、特別な治療 たとえば 視覚走査訓練、プリズム順応療法、頸部筋肉振動刺激、前庭感覚刺激 等を必要とする場合がある。

半側空間無視では損傷脳半球と反対側の視覚のみならず 触覚や聴覚、運動感覚刺激に反応しないことがある。

そこで ダイナミックな運動感覚訓練により半側空間無視が改善できるものか実験してみたそうな。


平均年齢61、発症後6ヶ月ほどの脳卒中患者64人について、運動感覚訓練の有無で2グループにわけ、4週間訓練を続けた。通常のリハビリも併行した。

運動感覚訓練(Kinaesthetic ability training)では 可動台の上に立ってバランスを取る。このときの身体状況が目の前のモニターにリアルタイムフィードバックされる。SportKAT 2000という装置を使用した。


次のようになった。
・行動性無視検査BITおよび機能的自立度検査FIMが両グループで改善した。

・BITのペーパーテストの改善度は、運動感覚訓練グループ 40%、比較グループ 17.9%だった。

・BITの実技テストの改善度は順に 16%、10.7% だった。

運動感覚訓練により半側空間無視の症状があきらかに改善した。訓練により身体意識が高まったことが理由ではないか、、


というおはなし。
図:SportKAT 2000 身体感覚訓練マシーン

感想:

これ↓思い出した。
プリズム順応療法で半側空間無視のADLは改善しない

2017年12月8日

脳梗塞やTIAに心房細動がからむ頻度


Atrial fibrillation is not uncommon among patients with ischemic stroke and transient ischemic stroke in China.
2017  12月  中国

中国での脳卒中に占める心房細動患者の割合は欧米にくらべ低いとされてきた。これが本当かどうか確かめるべくきっちりと調査してみたそうな。


中国の20の病院で脳梗塞やTIAの患者1511人について、発作性の心房細動も検出できるホルター心電計を6日間装着させた。


次のようになった。

・20.2%に心房細動があった。

・内訳は、もともとわかっていた13.0%、通常の心電図検査で新たに発見3.5%、ホルター心電計で発見4.4% だった。

・新たに心房細動が見つかった患者には、*心不全歴、*高齢、*入院時の重度の神経症状、*高HDL、の特徴があった。

中国での脳卒中に占める心房細動の割合は20%で、これまで考えられてきたよりも高かった、


というおはなし。
図:ホルター心電計と心房細動

感想:

「20%」おぼえとこ。

2017年12月7日

たばこや酒やってた人の脳内出血予後は


Influence of Prior Nicotine and Alcohol Use on Functional Outcome in Patients after Intracerebral Hemorrhage.
2017  11月  ドイツ

ニコチンやアルコールといったいわゆる合法薬物の脳内出血予後への影響は未だよくわかっていない。

これを長期に詳しくしらべてみたそうな。


脳内出血患者554人について、ニコチン、アルコールの各使用経験別にグループわけして5年間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・合法薬物経験者は35.6% で、内訳は ニコチンのみ17.0%、アルコールのみ6.0%、両方あり12.6% だった。

・彼らは非経験者より若く (65 vs. 75歳)、女性が少なかった。

・また、心筋梗塞歴と合併症が多かった。

・肺炎リスクが高いことを除くと、ニコチンやアルコール経験者と非経験者の予後にあきらかな差はなかった。

脳内出血以前のニコチンやアルコール経験の有無は、脳内出血後の状態に長期的にも影響しなかった、


というおはなし。
図:酒とタバコ

感想:

でも脳内出血にはなりやすいわけで、、、

脳細胞が死んでしまったあとは たばこ酒歴なんて些細なことなんだろうね。

2017年12月6日

復職率の時間推移と条件


Return to work after young stroke: A systematic review.
2017  11月  カナダ

若年脳卒中患者のおおくは症状は軽く回復も良い。ほとんど障害も残らない。それにもかかわらず彼らの復職率は必ずしも高くない。

そこでこれまでの研究から若年脳卒中患者の復職率の時間経過とその関連要因をしらべてみたそうな。


18-64歳の脳卒中患者の復職に関係する研究論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・29の研究がみつかった。

・復職率は時間経過とともに上昇し、

・0-6ヶ月後 41%、1年後 53%、1.5年後56%、2-4年後 66%だった。

・*日常生活動作の自立度が高い、*神経症状が少ない、*認知機能が良好、がもっとも復職を可能にする要因だった。

若年脳卒中患者の復職には日常生活動作と神経症状の改善が大切で、さらに認知機能の評価も重要である、


というおはなし。
図:復職

感想:

経験的に、仕事の慣性に抗うのは凄まじくエネルギーの要ること。病気でもしないとなかなか立ち止まれない。

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