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2017年9月8日

短下肢装具はやっぱり特注品がいいの?


Bespoke versus off-the-shelf ankle-foot orthosis for people with stroke: randomized controlled trial.
2017  8月  イギリス

脳卒中経験者が使う「短下肢装具」について、個人にあわせてあつらえた特注品(ビスポーク)と既製品のどちらが快適かつ安全で効果的なのかについての研究はほとんどないのでしらべてみたそうな。


脳卒中経験者139人について特注品グループ69人と既製品グループ70人にわけて
6週間後、12週間後の満足度、有害事象、移動能力、転倒恐怖心、歩行スピード、歩幅などを評価し 比較したところ、


次のことがわかった。

・長期的満足度は 72% vs. 64%で特注品グループが高かったが統計的有意な違いではなかった。

・短期的な転倒恐怖心が既製品グループで低かったことを除くと、

・両グループで各評価項目の明らかな差はなかった。

短下肢装具を選ぶに際し、まずは既製品をつかってみてどうしても合わない場合にのみ特注品をつかうべきだろう、


というおはなし。

図:短下肢装具は既製品か特注品か?

感想:

「できるやつはオーダースーツ、吊るしはダメ」って はなしをよく聞くけど、がんばるとこそこじゃないよねと思う。

2017年9月7日

脳卒中後のがんは6ヶ月以内にみつかりすでに手遅れ


ESMO 2017 Press Release: Some Stroke Survivors May Have Underlying Cancer
2017  9月  スペイン

脳卒中患者の検死解剖からがんがみつかることがあり その関連が指摘されている。

そこで 脳卒中とがんの関連をしらべてみたそうな。
今週の欧州臨床腫瘍学会でのプレスリリースから。


脳卒中患者381人についてがんの発生を18ヶ月間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・脳卒中患者の7.6%が がんと診断され そのおおくが大腸がん、肺がん、前立腺がんで、一般人のがん発生率4.5%よりも高かった。

・がんが見つかるまでの平均期間は6ヶ月で、がんがみつかったうちの62%の患者は転移もしくは進行した状態だった。

・76歳より高齢、フィブリノゲンが高い、ヘモグロビンが低い、が がんと関連していた。

脳卒中経験者のがん発生率は一般人のおよそ2倍で、6ヶ月以内に進行した状態で発見されることがおおかった。脳卒中がおきた時点で無症候性のがんがすでに存在していたのかも、



というおはなし。
図:がんの告知

感想:

おもに脳梗塞のばあいなんだよね。
がんの宣告を受けると脳梗塞になる

軽い脳梗塞とホッとしていたのも束の間 実はガンでしたと告げられる患者の割合と見分け方

若い脳梗塞患者でガンで亡くなってしまう人の特徴

なぜ脳梗塞患者はガンになりやすいのか

2017年9月6日

禁煙で脳動脈瘤の破裂を防げるのか?


Association of intracranial aneurysm rupture with smoking duration, intensity, and cessation
2017  8月  アメリカ

脳動脈瘤破裂のくも膜下出血は死亡率が45%にものぼる。

脳動脈瘤が破裂するもっともおおきな要因の1つとして喫煙が考えられており、実際 くも膜下出血患者の喫煙率は一般人の2倍以上という報告もある。

そこで脳動脈瘤の破裂と喫煙習慣との関連について大規模にしらべてみたそうな。


1990-2016の脳動脈瘤を計6411個もつ4701人の患者の記録を解析したところ、


次のことがわかった。
・現在喫煙者>喫煙経験者>非喫煙者の順に脳動脈瘤が破裂しやすかった。

・喫煙年数が長く1日の喫煙量がおおいほど破裂しやすかった。

・しかし禁煙期間との関連は確認できなかった。

たばこの喫煙習慣と量、期間が脳動脈瘤の破裂とあきらかに関連していた。しかも禁煙したからといってそのリスクが低下するわけでもなかった、


というおはなし。
図:1日のたばこ量と脳動脈瘤破裂率

感想:

半端な禁煙は効果ないみたいだから、最後まで吸い続けてもらいたい。

[くも膜下出血 喫煙]の関連記事

2017年9月5日

トイレで起きやすい脳卒中の種類と頻度


Clinical characteristics of stroke occurring in the toilet: Are older adults more vulnerable?
2017  8月  日本

排便や排尿は 交感神経と副交感神経の通常とは異なるバランスのうえで行われるため血流動態におおきな変化をもたらし肺塞栓症などの血管イベントのきっかけになると言われている。

いっぽう脳卒中との関連はよくわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2011-2015の脳卒中患者1939人ぶんの記録から、発症時にトイレ中だったものを抽出し、入院に至った経緯を調査したところ、


次のことがわかった。
・108人(脳梗塞41、脳内出血37、くも膜下出血30)が脳卒中発症時にトイレ中だった。

・発症時のトイレ中率は、くも膜下出血が14.3%で最も高く、次いで脳内出血が7.3%だった。

・トイレ中脳梗塞は夜間に多かった。

・トイレ中脳梗塞の種類では 心原性タイプがあきらかに多かった。

・発症時、トイレから助けを呼ぶことができたのは40%未満だった。

・高齢者のトイレ中では 脳出血よりも脳梗塞があきらかに多かった。

トイレ中に脳卒中をおこす患者の割合は全体の5.6%で、特にくも膜下出血がおきやすかった。心房細動がある高齢者はトイレ中の心原性脳梗塞にも注意が必要だろう、


というおはなし。
図:トイレ中の脳卒中で助けを呼べた割合

感想:

他人がとなりに立つとおしっこが出なくなる。これも交感神経がどうのこうのなのかな。

2017年9月4日

アスピリンの重大出血リスクはワルファリンと同じ


Bleeding risk of antiplatelet drugs compared with oral anticoagulants in older patients with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis.
2017  7月  フランス

一般に抗血小板薬の出血リスクは抗凝固薬よりも低いと考えられている。

そのため心房細動の高齢者や抗凝固薬の禁忌になる患者への代替薬として抗血小板薬が長期に使用されることがよくある。

ところが命にかかわるような重大出血事象の頻度は抗血小板薬と抗凝固薬とで同じであるとする報告がいくつか現れてきている。

そこで、これまでの研究をまとめて65歳以上の高齢者についてこのあたりを確かめてみたそうな。


関係する過去の研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・ランダム化比較試験7件を含む11の研究が見つかった。

・アスピリンやクロピドグレルの重大出血のリスクはワルファリンのそれと明らかな差がなかった、

・ただし頭蓋内出血の頻度は低かった。

・総死亡率も差がなかった。

アスピリンやクロピドグレルを飲んでいる高齢者の 命にかかわるような重大出血のリスクはワルファリンと同程度だった、


というおはなし。
図:アスピリン、クロピドグレル vs ワルファリン

感想:

なるほど↓、、
アスピリンを長く使うとワルファリンよりも出血する

抗血小板薬を複数使っていると脳内出血で死ぬ

2017年9月3日

運転中に脳卒中になり事故に至る頻度


Stroke while driving: Frequency and association with automobile accidents.
2017  8月  日本

自動車の運転中に脳卒中を起こす頻度と、それに関連した事故をくわしくしらべてみたそうな。


2011-2016の脳卒中患者2145人(脳梗塞1301、脳内出血585、くも膜下出血259)について発症時の自動車運転状況と その後の対応について調査したところ、


次のことがわかった。

・85人(脳梗塞63、脳内出血20、くも膜下出血2)が運転中に脳卒中をおこした。

・運転中に脳卒中を起こす率は、脳梗塞4.8%、脳内出血3.4%、くも膜下出血0.8%だった。

・運転者のおおくはそのまま運転を続けるか路肩に停車した。

・しかし14人(16%)は自動車事故に至った。

・彼らのおおくは重度の脳卒中により精神状態に変調をきたしていたと考えられた。

脳卒中患者の4.0%は自動車運転中に脳卒中を経験しており、そのうち16%が交通事故に至っていた、


というおはなし。
図:自動車運転中の脳卒中と事故

感想:

退院から1年後、十分に回復したとおもっていたがクラッチ操作ができなかった。しかたなく愛車を手放した。

マニュアル車はいまでも運転できる気がしない。

2017年9月2日

クルクミンが虚血から脳をまもるメカニズム


Curcumin prevents reperfusion injury following ischemic stroke in rats via inhibition of NF‑κB, ICAM-1, MMP-9 and caspase-3 expression.
2017  8月  タイ

脳梗塞の治療で詰まった血液を再還流すると炎症反応が生じて脳のダメージがおおきくなるといわれている。

ウコン(ターメリック)に含まれる黄色の成分クルクミンには抗炎症、抗酸化作用があり 脳卒中の梗塞体積や浮腫、血液脳関門の損傷を減少させるという報告がある。

このメカニズムをしらべてみたそうな。


人為的に脳虚血状態にしたネズミに1時間後、腹腔内にクルクミンを注射して血液を再還流した。

クルクミンの比較にコーン油のグループをつくり、脳組織の炎症関連、細胞死関連たんぱく質の発現を測定したところ、


次のようになった。

・クルクミングループで、炎症関連たんぱく質の NF‑κB, ICAM‑1,MMP‑9 が減少し、

・細胞死関連たんぱく質の caspase‑3 も減少していた。

・さらに梗塞のサイズ、浮腫、神経症状も小さかった。

クルクミンには脳を虚血→再還流時の損傷からまもるはたらきがある、


というおはなし。
図:クルクミンの脳梗塞治療効果

感想:

カレーがたべたくなってきたぞ。
クルクミンのクモ膜下出血治療効果について

2017年9月1日

アスピリンを長く使うとワルファリンよりも出血する


Long-term aspirin does not lower risk of stroke and increases bleeding risk in low risk atrial fibrillation ablation patients.
2017  8月  アメリカ

心房細動があると脳梗塞をおこしやすくなる。

カテーテルアブレーションで心房細動治療をすると脳梗塞を起こすリスクが大いにさがるため、血栓予防のためのワルファリンをやめて代わりにアスピリンを長期にわたり使用する習慣がある。
しかしこれにはあまり根拠がない。

そこでカテーテルアブレーションで心房細動を治療した患者へのアスピリン長期使用の影響をしらべてみたそうな。


心房細動でカテーテルアブレーション治療を行った患者4124人の記録から、
1年後、3年後の脳卒中、腸管出血、泌尿器出血とアスピリンやワルファリン使用との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・3年後、全体の5.9%はワルファリンを、18.6%がアスピリンを使用し、75.5%はどの薬も使用していなかった。

・脳卒中発生率は、ワルファリン 1.4%、アスピリン 3.0%、薬なし3.9%だった。

・腸管出血発生率は順に、0.8%、1.9%、1.1% だった。

・泌尿器出血は順に、1.7%、2.8%、2.1% だった。

・アスピリン使用グループではワルファリンや薬なしグループにくらべ明らかに脳卒中リスクが高かった。

カテーテルアブレーションで心房細動を治療した患者の長期アスピリン使用は、脳卒中予防になんの役にも立たないばかりかワルファリンよりも出血のリスクが高かった、


というおはなし。
図:AF治療患者へのアスピリンと腸管出血

感想:

ワルファリンは殺鼠剤にも使われるから出血力はアスピリンの比ではないとおもっていた。でも 何年も使うとアスピリンのほうが効いてくるんだな、、

2017年8月31日

アテロームや心原性の脳梗塞を予防するあぶらの種類とは


Omega-3 Fatty Acids and Incident Ischemic Stroke and Its Atherothrombotic and Cardioembolic Subtypes in 3 US Cohorts
2017  8月  アメリカ

オメガ3多価不飽和脂肪酸は高血圧や高脂血症をおさえる効果がしられている。

脳梗塞との関連について、くわしくしらべてみたそうな。


脳梗塞の発生を8-11年フォローする複数の研究データを使用して、

エイコサペンタエン酸(EPA)
ドコサペンタエン酸(DPA)
ドコサヘキサエン酸(DHA)
の血中レベルと脳梗塞(アテローム性、心原性)との関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・953件の脳梗塞(アテローム性408、心原性256 他)があった。

・DPAやDHAレベルが高いと脳梗塞リスクは低かった。

・EPAとの関連はなかった。

・とくに DHAはアテローム性脳梗塞リスクの低下に、

・DPAは心原性脳梗塞リスクの低下に関連していた。

血中DHAが高いとアテローム性の脳梗塞が、DPAが高いと心原性の脳梗塞の発生率が下がった、


というおはなし。
図:DHAとアテローム血栓性脳梗塞

感想:

EPAやDPA,DHAはαリノレン酸から体内で合成される。

やはりαリノレン酸をたっぷり含む エゴマ油、亜麻仁油かね。

2017年8月30日

nature.com:大麻は脳卒中予防になる?


Residual Effects of THC via Novel Measures of Brain Perfusion and Metabolism in a Large Group of Chronic Cannabis Users
2017  8月  アメリカ

大麻にはTHCという成分により「ハイ」な気分になる向精神薬としての作用がある。

また大麻の使用により脳血流量が増加することが報告されている。そこで常用者についてはどうか、その脳活動をMRIでしらべてみたそうな。


大麻常用者74人と非使用者101人についてMRIを使って脳血流量、脳酸素摂取率と消費量を推定した。

大麻の急性効果を除くために実験の72時間まえから大麻の使用を断たせた。


次のことがわかった。

・大麻常用者の脳酸素摂取率と消費量は非使用者よりも高く、

・脳血流量が右脳の淡蒼球と被殻で多かった。

・脳全体の血流量と右脳の上前頭回の脳血流量が 血中THCレベルと相関していた。

大麻を常用的に摂ることで脳の全体的 局所的血流状態が向上していた、


というおはなし。
図:THCと脳血流

感想:

なぜか右脳の被殻に影響するんだな。まさにそこをやられた者としては興味深い。

[大麻]の関連記事

2017年8月29日

運命論的考えをもつ脳卒中患者の障害は


The Impact of Pre-Stroke Depressive Symptoms, Fatalism, and Social Support on Disability after Stroke.
2017  8月  アメリカ

脳卒中の発生や死亡には社会心理的な影響があると考えられているが、障害程度との関連はよくわかっていない。

病気の予後はすでに決まっていて自分の意志ではどうにもできないと考える「運命論」や うつ症状、社会サポートが脳卒中後の障害と どのように関連するものかしらべてみたそうな。


脳梗塞患者364人についてうつ症状、運命論的考えの程度、社会サポートレベルをしらべ、90日後の障害程度との関連を解析したところ、


次のようになった。

・運命論的考えが強いほど機能的、認知的回復が悪かった。

・うつ症状についても同様で、

・社会サポートは高レベルよりも中レベルのときに認知能力の回復がよかった。

運命論的考えやうつ症状が強いと、脳卒中患者の障害も重かった、


というおはなし。
図:運命論者の脳卒中予後

感想:

ようするに運命論者は早々にあきらめてしまってリハビリをがんばらないから って言いたいみたいなんだけど、おなじ運命論者でも「わたしはハッピーになるさだめにある!」と信じている人はどうなのかね?
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