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2017年8月2日

リハビリにクロスエデュケーションを使うべき理由


Clinician perspectives on cross-education in stroke rehabilitation.
2017  7月  カナダ

脳卒中患者のおおくが上肢に麻痺をのこして生活の質の低下に悩んでいる。

これにたいして CI療法や電気刺激、メンタルイメージ、バーチャルリアリティー、ミラーセラピー、ロボティクスなどの治療法が提唱されてはいるが、どれも制限がおおく適応になる者はわずかである。

たとえば CI療法では手首が20度 指が10度以上開くことのできる患者以外は相手にされない。

さいきん、片方の手で訓練した成果がもういっぽうの手に移る「クロスエデュケーション」が重度の上肢麻痺患者にも耐えうる治療法として注目されている。いくつかの研究では健常者よりも脳卒中患者でよりおおきなクロスエデュケーション効果を得られることもわかってきた。

そこでクロスエデュケーションをリハビリ現場にもちこむにあたって何が問題になりそうかをセラピストたちに議論させてみたそうな。


救急病院やリハビリ病院から経験年数0-30年の作業療法士23人、理学療法士2人をあつめて、

*従来の上肢麻痺患者のリハビリ訓練法
*クロスエデュケーションの理解
*クロスエデュケーションの可能性と問題点
について議論させ、その内容を定性的に分析した。


次のようになった。

・全体をとおして浮かび上がったテーマは「受け入れがたいけど有望」である。

・これには3つの段階があって、
(1)従来のリハビリは麻痺手を強制使用させる考え方にもとづいている。
(2)麻痺が重度で強制しようのない患者には従来法は無力である。
(3)クロスエデュケーションは従来法に簡単に追加できる。
・健常な手を訓練するクロスエデュケーションについて患者や家族、医療関係者に理解を得るための資料が必要と考えられた。

麻痺手のために健常手を訓練するクロスエデュケーションは重症麻痺の患者に適している。従来法を置き換えるものではなく補助的な治療法である。一見して従来法とは矛盾した考え方がもとになっているため関係者の理解を促す資料が必要だろう、


というおはなし。

図:クロスエデュケーションをリハビリで使うには

感想:

クロスエデュケーション研究には120年の歴史がある。その効果はたぶん本物なんだろう。

ならば、健常な手に袋をかぶせて2週間使えない状態にするCI療法はクロスエデュケーション的には最凶最悪の治療法といえるだろう。共存はむりだな。

[クロスエデュケーション OR 両側性転移]の関連記事

2017年8月1日

脳動脈瘤があるのに酒をやめなかった人の末路


Alcohol Consumption and Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
2017  7月  アメリカ

飲酒はくも膜下出血のリスク要因の1つと言われているが大規模な調査はまだない。

そこで飲酒量と脳動脈瘤の破裂リスク、禁酒の効果を大規模にしらべてみたそうな。


1990-2016の患者記録から脳動脈瘤を持つ患者4701人を抽出してアルコールの摂取頻度と脳動脈瘤の破裂との関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・酒を飲まない者に比べ現在飲酒者はあきらかに脳動脈瘤破裂リスクが高かった。

・かつては飲酒していたが現在やめている者には有意なリスク上昇はなかった。

・現在飲酒者は飲む量が増えるほど破裂リスクが高まり、禁酒した者は過去の飲酒量との関連はなかった。

現時点での飲酒習慣とその量が脳動脈瘤の破裂に強く関連していた。飲酒をやめた者についてはこの限りではなかった。脳動脈瘤のある患者は飲酒をすぐにやめるべきである、


というおはなし。
図:飲酒量と脳動脈瘤破裂

感想:

あれいらい 酒は料理にしかつかわない。舐めることすらしない。

2017年7月31日

失語症と構音障害 3ヶ月後に治ってる割合


Aphasia and Dysarthria in Acute Stroke: Recovery and Functional Outcome.
2017  7月  イギリス

脳卒中のあとの失語症や構音障害は患者の社会参加や生活の質、復職をむつかしくする原因でもある。

とくに構音障害についてはその回復過程の研究はおおくない。

失語症と構音障害の3ヶ月後の回復スピードと生活自立度への影響をしらべてみたそうな。


脳卒中患者データベースから8904人を抽出して NIHSSの失語症と構音障害スコアが1以上の者の3ヶ月後の回復状況をしらべたところ、


次のことがわかった。

・入院時、45.4%が失語症、69.5%が構音障害で、29.6%が両方だった。

・3ヶ月時点で脳卒中患者の17.9%で失語症が、40.1%で構音障害が治り、

・23.7%で失語症が、27%で構音障害がつづいていた。

・失語症が3ヶ月時点でも続いていると生活自立度も低かった。

失語症と構音障害は3ヶ月時点でも脳卒中患者の4分の1で続いていて、生活自立度の低下につながっていた、


というおはなし。
図:構音障害の回復

感想:

右脳の出血だけど ことばが出にくいことが いまだにある。だからゆっくりとはなすようにしている。

2017年7月30日

くも膜下出血の頭痛は最短何時間で消えるのか?


The initial time-course of headache in patients with spontaneous subarachnoid hemorrhage.
2017  7月  オランダ

激しい頭痛で入院してきた患者にはくも膜下出血の可能性が考えられる。しかしこの頭痛がすぐに消えてしまった場合、くも膜下出血ではなかった、、と言ってよいのだろうか?

くも膜下出血患者の頭痛が最短何時間で消えることがあるのか確かめてみたそうな。


激しい頭痛の発症から48時間以内に入院して、
CTや髄液検査でくも膜下出血とわかった患者のうち、
意識清明で神経症状のない患者106人について
頭痛の強さスケール"Numerical Rating Scale "が0または3を下回るに要した時間を確認したところ、


次のようになった。

・すべての患者に鎮痛剤が与えられていた。

・発症から48時間以内に頭痛スケールがゼロになった患者が9人、3を下回った患者は22人いた。

・頭痛スケールゼロまでの最短時間は10時間で、その患者は発症2時間半で鎮痛剤をとっていた。

鎮痛剤をとったくも膜下出血患者は、48時間以内におよそ10%で頭痛が消えた。すぐに頭痛が消えたからといってくも膜下出血の可能性が消えるわけでもないことがわかった、



というおはなし。
図:くも膜下出血の頭痛スケールと発症からの時間

感想:

そして、
頭痛も消えて何の神経症状もない患者に「このままにしておくと再出血で死にますよ」と脅して必要性の明らかでないクリッピング手術を受けさせるところまでがデフォ。

2017年7月29日

脳卒中が軽かったとしても安心できない理由


Long-term morbidity and mortality in patients without early complications after stroke or transient ischemic attack
2017  7月  カナダ

脳卒中の死亡や再発は90日内の短期に起こることがおおいため、長期の影響をじゅうぶんなサンプル数でしらべた研究がすくない。

そこで発症後 順調に回復して退院できた患者の長期的な経過を大規模にしらべてみたそうな。


脳梗塞またはTIAで入院して90日間 再発もなく退院できた26366人の患者記録を抽出し、年齢 性別 収入 居住地のいっちする一般人263660人と比較 解析したところ、


次のことがわかった。

・死亡率は 1年後2.4倍、3年後2.2倍、5年後2.1倍で、

・再発率は 順に 6.8倍→5.6倍→5.1倍 だった。

・5年間で35.7%の患者が死亡、再発、施設への再入院を経験した。

脳卒中のあと何事もなく順調に回復 退院できたとしても 再発や死亡の可能性が高い状態が長く続く、


というおはなし。
図:脳卒中の長期予後

感想:

だから生活習慣をかえて病院にあししげく通い薬をもらいましょう、ってことなんだけど 、、
それでいいのか?

自分は脳卒中で死にやすいという特性が明らかになっただけで、これは取り繕えるものなのかね。

2017年7月28日

亜急性期患者へのトレッドミル訓練の効果


Treadmill training to improve mobility for people with sub-acute stroke: a phase II feasibility randomized controlled trial.
2017  7月  イギリス

脳卒中患者へのトレッドミル訓練は自立歩行の可能な者については歩行速度と持久力の向上が確認されている。

歩行に補助が必要な患者でのトレッドミル訓練の効果についてしらべてみたそうな。


発症から3ヶ月以内で歩行補助の要る脳卒中患者77人を2グループにわけ、いっぽうにはトレッドミル訓練を週2x8週間ほどこした。

もういっぽうには通常の歩行訓練を施し、両グループで総訓練時間が等しくなるよう調整した。

歩行能力 生活自立度を6ヶ月後までフォローした。


次のようになった。
・有害事象は2例のみでほとんどが訓練を完遂した。

・両グループ間で歩行能力の成果に明らかな差は生じなかった。

・たとえば移動能力を評価する "Rivermead Mobility Index"スコアの中央値は、8週間後 5 vs. 6、6ヶ月後 8.5 vs. 8 だった。

・トレッドミル訓練の強度は弱かった。

脳卒中急性期で歩行に補助の要る患者へのトレッドミル訓練は、可能ではあったが通常訓練にくらべ優れた成果はなかった、


というおはなし。
図:トレッドミル訓練の効果

感想:

トレッドミルには 施設の専門性と設備投資を象徴する意義がある。高い料金を患者に納得させるためのツールであり効果は二の次と考える。

代替手段はいくらでもあるし、じっさい入院中に誰かが使っているシーンを一度もみなかった。

2017年7月27日

脳卒中がらみの認知症が減ってる理由


Decreasing prevalence of dementia in 85-year olds examined 22 years apart: the influence of education and stroke
2017  7月  スウェーデン

認知症のおおくは80歳以降におきる。認知症の発生率は過去40年間 低下傾向にあるというが有病率についてはさだかでない。

そこで20年前と現在とで認知症の有病率の変化、および認知症の原因となる脳血管障害 そして教育との関連を比べてみたそうな。


1986年と2008年の各時点で85歳だった計1065人について 同じ方法で認知症検査を行い 脳卒中や教育歴との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・認知症の有病率は 29.8%→21.7%になり、おもに血管性認知症が減少していた。

・基礎教育以上の割合は 25.2%→57.7% に増加。

・脳卒中経験は 20%→30%に増えたが、脳卒中による認知症の割合は低下した。

・教育歴や脳卒中、出生時期との交互作用が 認知症の有病率につよく関連していた。

認知症有病率の低下は教育の高度化による認知予備能の強化と 脳卒中治療レベルの向上で説明ができる、

というおはなし。
図:

感想:

脳も筋肉みたいなもので鍛えて備えることができるのかもな。

2017年7月26日

くも膜下出血で突然死する人の特徴


Risk Factors of Sudden Death From Subarachnoid Hemorrhage
2017  7月  フィンランド

くも膜下出血患者の4人に1人は入院することなく突然に死亡するといわれている。
ところがくも膜下出血についての研究のおおくは入院患者について行われているため患者選択のかたよりが避けられない。

フィンランドでは突然死にはすべて検死解剖が義務付けられている。そこで くも膜下出血が原因で突然死した者と入院した患者とのリスク要因の違いをしらべてみたそうな。


フィンランド人65521人を20年ほどフォローした研究記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・くも膜下出血で98人が突然死して445人が入院した。

・喫煙量が増えるにしたがい入院よりも突然死するリスクのほうが高くなった。

・同様に収縮期血圧が高くなるほど突然死リスクが上がった。

・一人暮らしは突然死リスクが高く、入院のリスクは上がらなかった。

・50歳未満で標準血圧 非喫煙者のくも膜下出血での突然死例はなかった。

くも膜下出血の突然死リスクは喫煙や高血圧、一人暮らしの者で高かった。50歳未満 標準血圧 非喫煙者での突然死は極めて稀といえる


というおはなし。
図:くも膜下出血で突然死 血圧と喫煙
右:突然死、実線:喫煙、黒:高血圧


感想:

病院へ間に合わなくて死亡するのではなくて、それまで動脈瘤はおろか何の心血管症状もなかった元気なひとがいきなりくも膜下出血で死ぬんだって。

ポックリ逝きたければ ひとり暮らしで高血圧は放置、たばこを吸いながらその時を待て ということ。
脳卒中で突然死 若年者のばあい

2017年7月25日

脳卒中で身の回りのことができないと不幸なの?


Activity limitations and subjective well-being after stroke
2017  7月  アメリカ

脳卒中患者の回復度の研究のおおくは機能障害に着目したもので 主観的な幸福にかんするものは少ない。

日常生活動作上の制限と主観的幸福、および影響する要因についてしらべてみたそうな。


65歳以上の脳卒中経験者738人について、

主観的幸福度を 感情(愉快、退屈、元気、心配)と自己実現(人生の目的、自己受容、環境コントロール)の7項目で評価した。

介助の必要な日常生活動作を11項目(食事、入浴、トイレ、着替え、外出、ベッドからの移動、洗濯、買い物、料理、支払い)から選び関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・日常生活動作上の制限や身体能力と主観的幸福度との相関は弱く、関連要因を考慮に入れるともはや有意な相関ではなくなった。

・疼痛、うつ、社会参加に問題があると主観的幸福度が低かった。

日常生活動作上の制限は脳卒中経験者の主観的幸福に影響しなかった、


というおはなし。
図:日常生活動作11項目

感想:

"幸せ" はまったくの個人的体験であって、他人にはうかがい知れないんだな。

全身がうごかなくてもQoLは高いってはなしを思い出した。↓
閉じ込め症候群の患者にあえて生活の質を問うてみた結果、、

2017年7月24日

脳卒中経験者が活動している時間と死亡率


Accelerometer-Determined Physical Activity and All-Cause Mortality in a National Prospective Cohort Study of Adults Post-Acute Stroke.
2017  7月  アメリカ

脳卒中は虚血性心疾患に次ぐ世界第2位の死亡原因である。また 50歳以前に脳卒中になった男女の半数以上がその後8年間に死亡している。

運動不足が脳卒中の主な要因でもあることから、脳卒中経験者の日々の身体を動かしている時間を加速度計で客観的に測定し、死亡率との関連をしらべてみたそうな。


脳卒中経験者184人について加速度計を4日間装着させて1日あたりの身体を動かしている時間(分)を推定した。

そして6年前後フォローしたところ、


次のようになった。

・この間に53人が死亡した。

・身体を動かしている時間が1日あたり60分間増えると総死亡率が28%低下した。

脳卒中経験者は身体を動かしている時間が長いほど死亡する可能性が低下した、



というおはなし。
図:

感想:

「運動不足」ってあまりにもシンプルすぎて見過ごされてしまうけど、じつはいちばんの問題なんだな。

[運動不足]の関連記事

2017年7月23日

脳卒中の高齢女性に夜這いをかけて逮捕された男のはなし


Cleveland man accused of sexually assaulting stroke victim
2017  7月  アメリカ

脳卒中で介助がひつような69歳の女性が 58歳男性に性的暴行を加えられたというニュース。

・ダーウィン・マッキニー(58)は、性行為強要の罪でクリーブランド刑務所で裁判を待っている。

・事件は木曜日の午前0時頃。

・女性は13年前に脳卒中を患い自身の世話ができず、知能レベルもやや退行していた。

・家族の友人でもあるマッキニーは彼女の部屋に忍び込み、眠りから起こすと「静かにするように」といった。

・そして彼女のおむつを下ろし、性的暴行を加えた。

・これに気づいた家族が911に連絡して彼は逮捕された。

・家族が報復を恐れているため 検察は彼をしばらく釈放しないよう要求している。

・彼に犯罪歴はなかった。


というおはなし。
図:クリーブランド警察

感想:

前科はなく、深夜の犯行、周囲への気遣いもあることから彼は単なる基地外ではないだろう。フケ専の純愛だったのかもしれない。

一歩間違えばレイプ犯として人生を棒に振るリスクを負いながら 彼は夜這いにおよんだ。

人生をかける相手を選ぶに際して、この女性の「脳卒中経験」はネガティブ要素にならなかった。
この点にオレはおどろいた。

脳卒中やると人としてのパフォーマンスがいろいろと低下するものだから おのずと劣等感を抱くようになる。

ところが他人からみると たとえおむつをしていたとしてもどうでもいいことなのかも、、、
と気づかされた。
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