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2017年7月6日

水素ガス療法の脳梗塞への効果


Hydrogen Gas Inhalation Treatment in Acute Cerebral Infarction: A Randomized Controlled Clinical Study on Safety and Neuroprotection.
2017  6月  日本

水素ガスの吸引による脳梗塞の治療効果は動物実験や臨床実験でいくつも報告されている。

ランダム化比較試験はまだなのでやってみたそうな。


急性脳梗塞患者50人を2グループにわけて一方には水素ガス(3%)の吸引を1回1時間x日に2回x7日間行い比較したところ、


次のようになった。
・酸素飽和度以外の点でバイタルサインに差はなかった。

・神経症状の重症度を示すNIHSSスコアは水素ガスグループであきらかに改善した。

・生活自立度のスコアも水素ガスグループがすぐれていた。

・MRIの相対信号強度にも改善傾向がみられた。

急性脳梗塞患者への水素ガス療法は安全で効果的だった、


というおはなし。
図:脳卒中の水素ガス療法の効果

感想:

水素○○療法をバカにする風潮を感じているのは自分だけだろうか、、?

[水素]の関連記事

2017年7月5日

脳神経の病気への音楽療法のはたらき


Music-based interventions in neurological rehabilitation.
2017  6月  フィンランド

The Lancet neurologyの脳神経疾患への音楽療法のレビューから。
図:脳卒中患者への音楽療法の脳内機序
・音楽刺激で脳血流が増加し 活動レベルに応じた可塑的変化が生じる。

・これは動物実験の刺激豊富な環境での回復過程に似ている。

・音楽が中脳辺縁系を刺激してドーパミンを介して報酬、覚醒、感情反応をもたらす。

・なかでも 側坐核がその中心としてはたらき 認知機能の改善にいたる。

・また  副交感神経が活発になりカテコラミンやサイトカインを介し交感神経は抑制されリラックス効果がもたらされる。

・その結果 ストレスホルモンのコルチゾールは減少し、心血管系への負担が低下する。

・リズムへの同期反応(Rhythmic Entrainment)は聴覚系と運動系の結合の強さを示す生まれ持った仕組みである。

・好きな音楽への特別な反応には 音楽記憶に関係の深い前帯状皮質、前頭前皮質の関与がかんがえられる、


というおはなし。

感想:

上の図がとても綺麗に見えたので関心をもった。

2017年7月4日

ランセット誌:脳卒中リハビリは家族にまかせて問題ない


Family-led rehabilitation after stroke in India (ATTEND): a randomised controlled trial.
2017  6月  インド

インドではリハビリを専門とする施設が非常にすくないためほとんどの脳卒中患者は利用する機会がない。

専門性の高いリハビリ資格をもったスタッフから患者家族にその職能権限を移譲する「タスクシフティング(Task Shifting)」には関心が寄せられているがその安全性は定かでない。

そこで大規模に実験してみたそうな。


14の病院に入院した脳卒中患者1250人を2グループに分け、いっぽうのグループの家族にリハビリトレーナーとしての訓練をほどこし 早期に退院させて自宅で患者のリハビリを行わせた。

患者家族への訓練は病院にて1日1時間x3日間で 障害の評価、目標の建て方、トレーニング方法、励まし方などを学ばせた。

6ヶ月後の患者状況を病院での通常リハビリグループと比較したところ、


次のようになった。

・1日あたりのリハビリの時間、総リハビリ時間は両グループでほぼおなじに設定できた。

・6ヶ月後、死亡または要介護状態にある患者の割合は両グループともに47%だった。

・死亡者や再入院の率もグループ間でほとんど差がなかった。

・非致死性のイベント率もほとんど差がなかった。

脳卒中患者へのリハビリ業務を患者家族に移譲(タスクシフティング)したところ、通常のリハビリにくらべ有害な点はまったくなかった


というおはなし。
図:家族まかせの脳卒中リハビリの6ヶ月後のmRS

感想:

脳卒中リハビリの成果は訓練の量や質によらないことがわかってるから、有害でないならタスクシフティングしない理由がないね。
JAMA誌:課題指向型訓練 やる意味ない

Stroke誌:下肢運動機能の比例回復則からわかること

2017年7月3日

身体を動かすだけでほんとうに認知機能がよくなるのか?


Physical Exercise Improves Cognitive Outcomes in 2 Models of Transient Cerebral Ischemia.
2017  6月  アメリカ

脳卒中経験者は認知機能の衰えがはやいことがわかっている。

認知機能の改善には運動がよいとする研究がいくつかあるが、どれも長期にわたる運動による健康増進効果や運動直後の興奮効果との区別がついていない。

そこで、短期の運動から少し間を置いたときの認知能力を測定し、さらに適した運動強度もしらべてみたそうな。


脳の左右一方もしくは全体を虚血にしたネズミ2グループを使って、3-4日後からトレッドミルで歩行運動させた。

歩行速度は 0,6,10,18m/分の4グループ設け 30分間x5日間継続した。

その1週間後、事前に電気ショックで条件づけ学習させておいたケージにネズミを入れ、怯えて固まっている時間を記憶能力として測定した。


次のようになった。

・虚血範囲の異なる両グループのネズミいずれも、中強度運動(10m/分)のとき約1週間後の認知機能がもっとも向上していた。

脳卒中後の運動そのものによる認知機能の強化を確認することができた。人で実験してみたい、


というおはなし。
図:運動強度と脳卒中後の記憶能力

感想:

考えがまとまらなくてブログ更新ができないとき、部屋のなかをぐるぐる歩き回るだけで解決するんだ。

そういうことかな?

2017年7月2日

出産経験があると脳卒中になっても軽くて済む理由


Multiparity improves outcomes after cerebral ischemia in female mice despite features of increased metabovascular risk
2017  6月  アメリカ

妊娠や出産を繰り返すと脳卒中になりやすくなることがわかっている。

いっぽうで出産経験が神経保護効果をしめすという報告があるので実験してみたそうな。


出産経験のあるねずみと無いねずみについて、人為的に脳虚血状態にして梗塞の体積、行動、脳組織の状態をしらべたところ、


次のことがわかった。

・虚血のまえ出産経験の複数あるネズミは動きが活発でなく、体重や脂質 コレステロールが高く、免疫細胞の活動レベルも低かった。

・妊娠出産経験のないネズミにくらべ、複数の出産経験のあるネズミの梗塞体積はあきらかに小さく、運動機能の回復もめざましかった。

・多産ネズミの梗塞周辺で胎児の細胞が確認され(マイクロキメリズム)、血管増殖因子の上昇も確認できた。

出産経験のあるネズミでは脳卒中リスクが高かったが、脳虚血への神経保護作用が確認できた。女性の脳卒中回復過程への理解が深まった、


というおはなし。
図:多産経験者の梗塞体積はバージンよりも小さい

感想:

産んだこどものDNAをもつ細胞が母体に何十年も残ってるんだって。それが悪さをすることもあるし 助けになることも ある。

2017年7月1日

脳卒中患者の便秘率


Incidence of constipation in stroke patients: A systematic review and meta-analysis.
2017  6月  中国

腸と脳の活動が互いに関連しあっていることが最近の研究でわかってきた。

脳卒中患者には便秘がおおいことが報告されているがシステマティック・レビューはまだないので まとめてみたそうな。

2017年6月30日

離婚で脳卒中リスクアップ!


Divorce Linked to Increased Stroke Risk
2017  6月  デンマーク

結婚は独身でいるよりも脳卒中リスクをさげると考えられている。

そこで離婚や死別もふくめた結婚状況と脳卒中との関連をしらべてみたそうな。
先月の欧州脳卒中会議での発表。


デンマークの脳卒中患者データベースから58807人ぶんを抽出して、発症1年前の結婚状況との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・52%は結婚していて、9%が独身、13%が離婚、26%が配偶者と死別していた。

・結婚している場合にくらべ、独身、死別での脳卒中リスクにはほとんど差はなく、

・離婚した場合でのみあきらかなリスク上昇があった。

・このとき男性が脳卒中リスク1.23倍、女性は1.11倍だった。

結婚している者にくらべ離婚を経験すると独身や死別よりも脳卒中リスクが とくに男性で高くなった、


というおはなし。
図:妻に離婚された

感想:

離婚に至るまでにドロドロとしたストレスフルな生活が何年間か続いているに違いなく、さらに酒やたばこに逃げ続けてきた結果の脳卒中、ってことのようだ。

2017年6月29日

ビデオを観て昼寝するだけのリハビリとは


Action Observation of Motor Skills Followed by Immediate Sleep Enhances the Motor Rehabilitation of Older Adults With Stroke.
2017  6月  イスラエル

運動動作の観察が脳卒中のリハビリに効果があるといわれている。

いっぽうでリハビリ訓練のあとに睡眠をはさむと運動学習が強化されることがわかっている。

この2つを組み合わせて実験してみたそうな。


脳卒中で利き手が麻痺した患者20人を2グループに分け、

電話操作を映した5分間のビデオを見せた直後に いっぽうのグループには90-120分間の睡眠をとってもらった。
これを4週間くりかえしたあと 上肢機能を評価して比較したところ、


次のようになった。

・両グループともに上肢機能が改善したが

・睡眠をとらせたグループの上肢機能スコアは明らかにすぐれていた。

脳卒中患者へ 動作観察の直後に睡眠の時間を追加したところ上肢機能の改善度がよりおおきくなった、


というおはなし。
図:リハビリのあとの睡眠

感想:

「指が動かないのは努力不足のせい。もっと頑張れ!」という暗黙のプレッシャーのなか なんと魅力的なエビデンスか、、
眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは

2017年6月28日

低コレステロールの東アジア人におきやすい脳出血の種類


Cholesterol Levels and Hemorrhagic Stroke Risk in East Asian Versus Non-East Asian Populations: A Systematic Review and Meta-Analysis.
2017  6月  中国

コレステロール降下薬を使った大規模な研究から、総コレステロールが160mg/dlを下回ると脳出血で死亡するリスクが3倍になることがわかっている。

そこで低コレステロールでおきやすい脳出血の種類について 特に東アジア人での特徴をしらべてみたそうな。


コレステロールが低いときの脳出血(脳内出血、くも膜下出血)リスクに関する過去の研究を厳選し データを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・東アジア人についての研究が9件、非東アジア人についてが12件見つかった。

・脳出血全体では 東アジア人であるか否かでリスクにおおきな差はなかった。

・脳内出血に限定すると、東アジア人ではコレステロールの高低でリスクに差がなかったが 非東アジア人では明らかにリスクが高かった。

・くも膜下出血では、東アジア人で明らかなリスク上昇があり、非東アジア人では差がなかった。

コレステロールが低いと東アジア人は脳内出血よりも くも膜下出血になりやすいことがわかった、


というおはなし。
図:コレステロールのもと

感想:

薬で下げすぎは論外として、食事からのぶんはしっかり確保しとかないとな。

[コレステロール 脳出血]の関連記事

2017年6月27日

二重課題で歩行能力アップ


Cognitive and motor dual task gait training improve dual task gait performance after stroke - A randomized controlled pilot trial.
2017  6月  台湾

歩きながらの、会話や 傘をさす スマホをいじるなど 二重課題動作は日常生活にあふれている。

しかし脳卒中患者は二重課題をこなす能力が非常にかぎられていることがわかっている。

脳卒中患者に対し あえて二重課題の歩行訓練をほどこすことでより改善効果を得られるとする報告があるが研究例がひじょうに少ない。

そこで歩行訓練に認知課題または運動課題を重ねたときのそれぞれの歩行改善度をしらべてみたそうな。


脳卒中で片麻痺の患者28人を、次の3グループに分け歩行訓練を施した。

*認知課題+歩行訓練
*運動課題+歩行訓練
*ただの歩行訓練のみ

認知課題グループでは、歩きながらフレーズを繰り返す、数を数える、しりとり、詩を読むなどおこない、

運動課題グループでは、歩きながら複数のボールを抱える、両手で傘をさす、楽器を鳴らす、ドリブルするなど、
の訓練を1回30分x週3回x4週間おこなった。

そのご、各グループについて、 1)ただ歩く、 2)歩きながら連続引き算、3)歩きながら水を載せたトレイを運ぶ、
の動作中の歩行パラメータ(速度、歩調、歩幅、効率)を評価 比較したところ、


次のようになった。

・連続引き算中の歩幅と歩行効率が 認知課題+歩行訓練グループで改善した。

・トレイ運び中の歩行速度、歩幅と歩行効率が運動課題+歩行訓練グループで改善した。

認知課題および運動課題を脳卒中患者の歩行訓練に重ねることにより、それぞれの状況に応じた改善が見られた。こういった訓練は簡単にリハビリに取り入れることができるのでどんどんやったらいい、


というおはなし。
図:歩きスマホ

感想:

野生のポケモンが現れると いつもは立ち止まっていたんだけど、さいきんは歩きながらモンスターボール投げられるようになった、、これも二重課題訓練の成果だと思う。

2017年6月26日

脳卒中患者が転んで再入院しやすい時期とは


Hospital readmission within 10 years post stroke: frequency, type and timing.
2017  6月  ノルウェー

脳卒中患者が再入院する頻度と理由を長期的にしらべてみたそうな。


2002-2003に脳卒中になった患者243人のその後10年間の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・10年間で68.9%の患者が死亡した。

・72.4%の患者は平均3.4回再入院していた。

・再入院の理由は、20%が心血管疾患の再発、17.3%が感染症、9.3%が転倒、5.7%は出血だった。

・再入院率は最初の6ヶ月間がもっとも高かった。

・転倒による再入院は3-5年後にもっとも起きやすかった。

発症後10年間の再入院理由は、心血管疾患の再発、感染症、転倒、出血の順で多く、転倒入院は3-5年後にピークを迎えた、


というおはなし。
図:転倒原因の再入院率

感想:

そういえば半年後と5年後に自転車で派手にころんで 血でた思い出がある。
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