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2017年3月11日

遠隔虚血コンディショニングの脳卒中治療効果


RECAST (Remote Ischemic Conditioning After Stroke Trial)
A Pilot Randomized Placebo Controlled Phase II Trial in Acute Ischemic Stroke
2017  3月  イギリス

脳から離れた位置を繰り返し虚血状態にすると(遠隔虚血コンディショニング) 神経保護効果がえられるとする報告がある。しかしそのメカニズムはわかっていない。

そこで実際の脳卒中患者で実験してみたそうな。


発症後24時間以内の脳卒中患者26人を遠隔虚血コンディショニングと比較グループに分けた。

遠隔虚血コンディショニングは、入院後すぐに腕に血圧測定用の腕帯を巻き、締め付け5分間+開放5分間を計4サイクルおこなった。

この直前 直後、4日後の血液サンプルを採取した。
また、90日後の神経症状、生活自立度を比較した。


次のようになった。

・遠隔虚血グループに有害事象はなかった。

・90日後の神経症状NIHSSスコアは 1 vs. 3 で遠隔虚血グループが明らかに低かった。

・生活自立度に有意な差はなかった。

・遠隔虚血グループで熱ショックタンパク質HSP27の増加が確認できた。

急性期脳卒中への遠隔虚血コンディショニングは安全で、神経症状を改善した。神経保護メカニズムにはHSP27が関わっているかも、


というおはなし。
図:遠隔虚血コンディショニングとHSP27

感想:

これら↓も同じ背景だろうね。
ハンドグリップで脳梗塞が治るというエビデンス

脳梗塞が簡単に治る 下肢遠隔虚血コンディショニングとは

TIAは幸運の兆し、脳梗塞が軽い

TIAが脳を護る. はたして病気と呼べるのだろうか…
あと[喫煙パラドック]もなかまかな、、

2017年3月10日

出血と反対側の脳が縮む ダイアスキシスとは


Contralateral Hemispheric Brain Atrophy After Primary Intracerebral Hemorrhage.
2017  3月  韓国

脳内出血のあと血腫と同側の脳半球が萎縮するという報告はよくある。

そこで反対側の脳半球についてはどうか 体積を測定してみたそうな。


脳内出血で手術対応になった患者44人について、
入院時と3ヶ月後のCT画像から血腫と反対側の脳半球体積を測定し減少率を求め、
他の特徴との関連を解析したところ、


次のことがわかった。
・3ヶ月間で反対側脳半球の体積が統計学的有意に減少していた。

・もっともおおきな関連要因は脳室内出血だった。

・次いで、入院時の意識障害、喫煙が関連していた。

脳内出血と反対側の脳半球体積が3ヶ月後 あきらかに減少していた。出血部位からの遠隔領域での損傷影響 いわゆるダイアスキシス(diaschisis)が原因かも、


というおはなし。
図:原発性脳内出血 対側脳半球の体積減少

感想:

出血のひどい患者限定なんだろうな。








2017年3月9日

脳卒中後の肩の痛みと機能的自立度


Upper limb function and functional independence in patients with shoulder pain after stroke.
2017  2月  ブラジル

肩の痛みは片麻痺患者によく起きる。脳卒中後の肩の痛みが患者の機能的自立度にあたえる影響をしらべてみたそうな。


平均年齢49、発症後3ヶ月半の脳卒中患者58人を調査したところ、


次のことがわかった。

・肩の痛みのある者は27.6%いた。

・機能的自立度FIMスコアは肩の痛みがあると91、痛みがないと114で明らかに低かった。

・上肢機能の別の指標SULFSでも 2 vs. 5で肩の痛みグループのスコアがはっきりと低かった。

脳卒中後に肩の痛みのある患者は珍しくなく、上肢機能と機能的自立度におおきく影響していた、



というおはなし。
図:脳卒中 肩の痛みとFIM


感想:

で、腕を吊ったりするとよけいにわるくなっちゃうんだよね。
片麻痺のアームスリングは"害" 使わないほうがいい

2017年3月8日

眠っている間にリハビリがすすむオフライン運動学習とは


Executive Function Is Associated With Off-Line Motor Learning in People With Chronic Stroke.
2017  3月  アメリカ

リハビリ訓練と訓練の合間に技能学習が進むことを "オフライン運動学習"といい、とくに睡眠でそのプロセスが促されることがわかっている。

どんな人でこの効果がでやすいのか実験してみたそうな。


慢性期脳卒中患者17人と健常者9人について、連続追跡課題を与え ポリグラフを着けてひと晩眠ったあとに再びその課題を行いオフライン運動学習効果を測定した。

さらに遂行機能を測る複数のテストをおこなった。


次のようになった。

・脳卒中グループで 遂行機能テスト(Trail-Making Test)スコアとオフライン運動学習効果との明らかな正の相関が見られた。

・健常者にはこの関連は見られなかった。

・注意力(attention)と状況変化への柔軟さ(set-shifting)についてのTrail-Making Testの結果をみるとオフライン運動学習効果が予測できた。

慢性期の脳卒中で遂行機能がすぐれている患者ほど オフライン運動学習の高い効果が期待できた、


というおはなし。

図:オフライン運動学習と遂行機能

感想:

眠っている間にリハビリがはかどる。なんて素敵なはなしだろうか。

5年前のこれ↓のつづきだね。
リハビリの合間のお昼寝は大切 → 訓練がはかどるゾ

2017年3月7日

脳卒中上肢への機能的電気刺激 FESの効果は


Effectiveness of upper limb functional electrical stimulation after stroke for the improvement of activities of daily living and motor function: a systematic review and meta-analysis.
2017  2月  イギリス
脳卒中で上肢が麻痺すると日常生活動作におおきな影響がでる。機能的電気刺激(FES)は 運動神経を刺激して関節周りの動きを強化する働きが期待できる。
下肢のFESはリハビリシーンで用いられるようになったが上肢のFESはその効果がはっきりしない。
そこでこれまでの研究をまとめてみたそうな。


関連する研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。
・20の研究がみつかった。

・6つの研究でFESの日常生活動作上のあきらかな改善は確認できなかった。

・発症後2ヶ月以内の3つの研究で FESで日常生活動作に有意な改善がみとめられた。

・発症後1年以上の3つの研究では FESで日常生活動作に影響はなかった。

・いずれの研究もサンプル数が少なく 盲検化が不十分でエビデンスとしての質はひじょうに低かった。

上肢麻痺の脳卒中患者へのFESはしょうらい有望な治療法ではある。発症後2ヶ月以内での効果がわずかに認められたが、どれも研究の質が低いため結論にはまだ遠い、


というおはなし。

図:上肢の機能的電気刺激装置

感想:

ようするに上肢FESを成功させるのは 足で食器を持つくらいにむつかしいことなんだろな。

2017年3月6日

ランセット誌:慢性の失語症でも3週間の集中訓練で治る


Intensive speech and language therapy in patients with chronic aphasia after stroke: a randomised, open-label, blinded-endpoint, controlled trial in a health-care setting.
2017  2月  ドイツ

脳卒中で失語症になり 6ヶ月以上つづいている慢性期失語の患者は脳卒中全体の20%ほどいる。彼らへの集中的な言語聴覚療法は効果的であるとされながらもサンプル数が少なくエビデンスの質は低かった。

そこで慢性期失語症への集中的な言語聴覚療法の効果を大規模にしらべてみたそうな。


19のリハビリ施設から脳卒中で慢性失語の患者158人をえらび2グループに分けた。

言語聴覚療法は週10時間x3週間の訓練をおこなった。

いっぽうのグループへは訓練の開始を3週間遅らせた。

訓練直後、さらに6ヶ月後もフォローして比べたところ、



次のようになった。

・訓練直後、言語コミュニケーション能力が著しく改善した。まだ訓練を受けていないグループでは変化はなかった。

・6ヶ月後、両グループで同様の改善効果が持続していた。

・この効果は 脳卒中の種類や失語の種類、重症度に依らなかった。

脳卒中で慢性期失語症の患者への3週間の集中的な言語聴覚療法は、言語コミュニケーション能力を明らかに向上させる効果がある、


というおはなし。
図:言語聴覚療法の集中訓練効果

感想:

STはできる子。なのにPTOTは、、、
JAMA誌:課題指向型訓練 やる意味ない

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない

2017年3月5日

脳卒中患者のながら歩きのスピード


Effects of cognitive and motor tasks on the walking speed of individuals with chronic stroke.
2017  3月  中国

脳卒中患者が地域社会で必要とされる歩行能力は歩行速度に反映されると考えられる。いっぽうで歩行中の課題が歩行速度を低下させるという報告がおおくある。

そこで、脳卒中患者に認知課題と運動課題を与えたときの歩行速度の低下をくらべてみたそうな。


慢性期脳卒中患者30人について10m歩行中の課題の有無による快適歩行速度と最大歩行速度の変化 および課題の正確さを調べた。

課題は2種類あり、1つは認知課題で3の連続引き算を声に出しながらあるく。
もう1つは運動課題で水のいっぱい入ったカップをこぼさずに運ぶ。


次のようになった。
・両課題で快適歩行速度と最大歩行速度が低下した。

・認知課題は運動課題よりも 最大歩行速度におおきく影響した。

・脳卒中歴が長いほど歩行速度の維持よりも課題の正確さを優先した。

・この傾向は運動課題よりも認知課題の最大歩行速度で顕著だった。

認知課題および運動課題で脳卒中患者の歩行速度は低下した。とくに認知課題での最大歩行速度の低下が大きかった、


というおはなし。
図:課題中の脳卒中患者の歩行速度

感想:

「注意リソース」の不足が原因って書いてある。まったく同感。

自動車運転中に会話したりするのがとてもむつかしいんよ。

2017年3月4日

Stroke誌:クモ膜下出血で手術をしなかったときの死亡率


Natural History of Ruptured but Untreated Intracranial Aneurysms
2017  3月  フィンランド

げんざいクモ膜下出血にはガイドラインで手術が強く勧められているため、手術をしない保存処置を選んだばあいの1年間死亡率=63%という数値は1960年台の調査結果を用いざるをえない。

そこで、さいきん40年間のデータを用いて、クモ膜下出血を手術せず保存処置したばあいの病状経過をしらべてみたそうな。


1968-2007 クモ膜下出血で手術をしなかった患者で、発症時期と入院 死亡までをフォローできた事例510件を解析したところ、


次のことがわかった。

・発症から死亡までの日数の中央値は20日間だった。

・全体的に1年間死亡率は65%だったが、これは入院までの日数でおおきく変化した。

・たとえば、発症から入院に1ヶ月以上間があった患者の1年間死亡率は13%だった。

・重症でなく 発症から1週間以内に入院した患者の1年間死亡率は75%だった。

手術しなかったばあいのクモ膜下出血の死亡率はこれまで考えられていたものよりも悪かった、


というおはなし。
図:クモ膜下出血 入院の遅れと死亡率


感想:

ここに結論ありきのトリックがあって、
「保存処置の対象者は手術拒否(3%)以外に、重症(40%)、手術困難(19%)、超高齢(2%)、瘤が小さすぎ(1%)、そして手術前に死亡した患者(16%)を含む」って書いてある。死亡率が高いのはとうぜんだわな。
図:くも膜下出血の保存処置の条件

これら為すすべがなく早期に死亡した患者が淘汰されたあとに入院すると死亡率が "劇的に低下"(86→13%)する。
これこそが手術をしなかった場合でのほんとうの死亡率に近いのではないか?


2017年3月3日

再発予防のおくすりをやめてしまう人の特徴


Associations between Ischemic Stroke Follow-Up, Socioeconomic Status, and Adherence to Secondary Preventive Drugs in Southern Sweden: Observations from the Swedish Stroke Register (Riksstroke).
2017  2月  スウェーデン

脳卒中の再発予防のための投薬と医師のフォロー、そして服薬遵守率との関連をしらべてみたそうな。


2008-2010脳梗塞患者5602人ぶんの医療記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・退院後90日以内に医師の訪問フォローを受けた患者は75%だった。

・医師のフォローのなかった患者の14ヶ月後の降圧薬、抗血小板薬の服薬遵守率は明らかに低かった。

・14ヶ月後の服薬遵守率はそれぞれ、抗血小板薬85%、ワルファリン69%、降圧薬88%、スタチン76%だった。

・14ヶ月以内に3人に1人は1種類以上の薬をやめていた。

・3ヶ月時点で日常生活動作が要介助の患者ほど服薬遵守率がひくく、年齢、性別、教育歴によらなかった。

脳卒中の再発予防のための薬を続けている率は、およそ1年後間ではっきりと低下していた、


というおはなし。
図:脳卒中患者の服薬遵守率

感想:

じぶんじしん降圧薬を2年以上まえにやめた。

再発予防の服薬指導は、檀家制度に似ている気がしてならない。『お布施しないとご先祖様が浮かばれず良くないことがおきますよ、、、』

2017年3月2日

脳内出血 ここをやられると予後不良


Intracerebral hemorrhage location and outcome among INTERACT2 participants
2017  2月  オーストラリア

脳内出血の予後には血腫の大きさ 脳室内への出血が影響するが、出血位置との関係はよくわかっていない。
しらべてみたそうな。


脳内出血患者2066人について 90日時点での状態を評価し出血位置との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・出血位置に内包後脚が含まれると死亡または身体障害リスクが高かった。

・出血位置に視床が重なっていても同様だった。

・内包後脚、視床、テント下の出血はQoLの低下と関連があった。

予後不良の脳内出血は その位置が内包後脚や視床にかさなっている場合におおかった、


というおはなし。
図:内包後脚


感想:

内包の名前と位置は知ってたけど 脳卒中やるまでは「だからなに」って感じだったよ。

2017年3月1日

迷走神経で慢性期の上肢機能が驚くほど改善


Vagal Nerve Stimulation Improves Arm Function After Stroke
2017  2月  イギリス

脳卒中患者への迷走神経刺激による上肢機能の改善効果は動物実験でいくつか結果がでている。

人間でしっかりと実験してみたそうな。

先週の国際脳卒中会議での発表。


平均年齢60、発症から1年半の慢性期脳卒中患者17人について、迷走神経に電気パルスを送る装置を鎖骨下に埋め込む手術をおこなった。

患者を本物刺激8人と偽刺激9人にわけた。本物刺激グループでは理学療法訓練の際に動作に同期して電気パルスを送った。

1回2時間x週3回x6週間の訓練をおこなった。

そして30日間のブランクのあと、自宅にて迷走神経刺激+訓練を再開し 60日間続けた。


次のようになった。
・6週間の訓練直後はグループ間で上肢機能に有意な差はなかったが、

・さらに90日後、迷走神経刺激グループで上肢Fugl-Meyerスコアが9.5ポイント向上した。偽刺激グループは3.8ポイントの向上だった。

・これは劇的といっていいほどの改善度だった。

・迷走神経刺激により脳幹から分泌されるノルエピネフリン、アセチルコリンが訓練動作と相まってうまく働いていると考えられた。

・手術にともなういくつかの有害事象(感染症、麻痺など)があった。

・こんご 患者120人での臨床試験を計画中である。


というおはなし。
図:迷走神経刺激の脳卒中治療効果

感想:

迷走神経刺激はなんどもでてきたので やっと人で成果でたか、、って感じ。
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