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2019年5月31日

ほぼまちがいなく復職できる条件


Impact of Upper Limb Function and Employment Status on Return to Work of Blue-Collar Workers after Stroke
2019  5月  日本

日本の脳卒中患者にしめる65歳未満の労働者割合は14%である。彼らにとってもとの仕事に復帰することは切実な願いでもある。

これまでの研究からブルーカラーよりもホワイトカラー労働者のほうが復職しやすいことがわかっている。

そこで、ブルーカラー労働者の復職に関連する身体的、認知的、社会的要因をくわしくしらべてみたそうな。



15-64歳で脳卒中発症時ブルーカラー(一次産業、製造、サービス、運輸、建築など)労働者だった71人について、6ヶ月後の就労状況をききとりした。
ただし、あらたに事務仕事に就いた場合は「復職」とはみなさなかった。

退院時の上下肢の運動機能および認知機能との関連を解析したところ、



次のことがわかった。

・38人(53.6%)が復職し、そのうち21人は自営業者だった。

・上肢運動機能のSTEFスコアが復職と関連していて そのオッズ比は1.08だった。

・「自営業者」であることと復職との関連は著しく、オッズ比は185だった。

脳卒中を経験したブルーカラー労働者の復職には上肢運動機能と自営業ステータスがつよく関わっていた、


というおはなし。

図:自営業者の復職可能性



感想:

ブルー ホワイトにかぎらず雇われ人には「体力バカ」であることが要求される。だから脳卒中後の疲れやすさは復職にとても不利。

みずからの労働を100%裁量できる自営業者が最強なのは自明。

サンプル71人にしめる自営業者が26人。比率が高すぎ、けつろんありきか。

2019年5月30日

禁煙は余命を○年のばし 再発を○○年遅らせる


Smoking cessation and risk of recurrent cardiovascular events and mortality after a first manifestation of arterial disease
2019  4月  オランダ

脳卒中患者の30-50%は喫煙者で、その中毒性ゆえに脳卒中のあともかれらの1/4-1/3は喫煙をやめることができないという。

そこで禁煙することの効果をあきらかにするべく、動脈イベントのあった患者の喫煙ステータスとその後の再発および死亡との関連をくわしくしらべてみたそうな。



平均年齢61、脳卒中や冠動脈 末梢動脈疾患などを経験して1年以内の患者4673人について喫煙状況をしらべ(Second Manifestations of ARTerial diseas: SMARTスタディ)、
7年前後フォローした。




次のことがわかった。

・心血管イベントのあと1/3の患者が喫煙をやめていた。フォロー期間中に794人が死亡し、692人に主要血管イベントの再発があった。

・喫煙をやめなかった患者とくらべて、禁煙した患者の再発リスクは0.66倍、死亡リスクは0.63倍だった。

・禁煙した患者は平均で5年間ながく生存し、再発が10年間おそくなった。

・特に70歳をこえて心血管イベントがおきて禁煙をはじめた患者は 非喫煙者に匹敵する生存率の改善をしめした。

脳卒中などの血管イベントのあと禁煙を実行した患者は余命が5年伸び、再発を10年遅らせることができた、


というおはなし。

図:禁煙と脳卒中の再発



感想:

たばこをやめると「5年ながいきして再発が10年ずれる」
これはわかりやすい。

2019年5月29日

超早期リハビリの費用対効果


Economic evaluation of a phase III international randomised controlled trial of very early mobilisation after stroke (AVERT)
2019  5月  オーストラリア

脳卒中経験者の65%にはなんらかの障害がのこり日常生活に介助がひつようになるという。

脳卒中の回復をうながす方法として早期リハビリテーションが有効であるとながらく信じられてきた。

これをたしかめるべくおこなわれた臨床試験AVERTにはオーストラリア、イギリス、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアの58の病院が参加し、2104人の患者についてフェイズⅢまで調査がなされた。

その結果、24時間以内に開始する超早期リハビリテーションは3ヶ月後の回復度が通常ケアよりも悪化することがあきらかになった。

しかし12ヶ月後の効果とコストとの関係についてはまだわかっていなかったので、くわしく解析してみたそうな。



AVERTのデータから、急性期病院やリハビリ病院でかかったコスト、自宅やコミュニティでのコストを推定し、
回復度mRSスコアを0-2と3-6にわけて、
質調整生存年(QALYs:Quality Adjusted Life Years)を算出し超早期リハビリと通常ケアとを比較した。



次のようになった。

・超早期リハビリと通常ケアとではリソース利用とコストの量は等しかった。

・12ヶ月後の回復良好者の割合やQALYsにも差はなかった。

超早期リハビリは通常ケアにくらべて12ヶ月後の回復度、コスト、質調整生存年に違いはなかった。しかし3ヶ月後の回復度はあきらかに悪いので、費用対効果が良いとはいえず とても勧められない、


というおはなし。

図:超早期リハビリ



感想:

AVERT関連↓記事。
Stroke誌:超早期リハビリと認知機能

超早期リハビリで死亡者続出 AVERT続報

ランセット誌:超早期リハビリぜんぜん効果ない

2019年5月28日

JAMA誌:若年脳卒中 15年後の死亡率


Association of Stroke Among Adults Aged 18 to 49 Years With Long-term Mortality
2019  5月  オランダ

脳卒中の10-15%は18-49歳の若年患者がしめている。彼らの死亡リスクについての前の研究のおおくは病院ベースのもので すでに古くサンプル数もフォロー年数もすくない。

そこでこれを大規模かつ長期に脳卒中の種類別にくわしくしらべてみたそうな。



1998-2010に18-49歳で脳卒中になったオランダの15323人について、2017までフォローした。

30日以上生存した者の15年後までの総死亡リスクを推定し、一般人とくらべたところ、



次のようになった。

・トータルで3540人が死亡した。このうち1776人は30日以内に死亡した。

・30日生存者の15年死亡率は17.0%だった。

・一般人にたいする脳梗塞患者の死亡率比は、5.1だった。(年間1000人あたりの死亡率は 12.0 vs. 2.4)

・一般人にたいする脳内出血患者の死亡率比は、8.4だった。(年間1000人あたりの死亡率は 18.7 vs. 2.2)

18-49歳で脳卒中を経験した者の死亡リスクは15年後も一般人にくらべかなり高い状態が続いていた、


というおはなし。

図:脳卒中後15年までの年間死亡率



感想:

脳内出血から10年経つ。一般人死亡率の8.4倍とはいうものの まったく死ぬ気がしない。

2019年5月27日

【結論】片手訓練と両手訓練


Comparison of bilateral and unilateral upper limb training in people with stroke- A systematic review and meta-analysis
2019  5月  中国

脳卒中の上肢麻痺のリハビリテーション方法として片手訓練(unilateral upper limb training)と両手訓練(bilateral upper limb training)がある。

片手訓練は麻痺側の手の課題指向型訓練が相当し、それをさらに集中的におこなうCI療法を含む。

いっぽう両手訓練は健常手とのカップリング効果を期待して麻痺手の改善をはかる方法である。

これまで片手訓練と両手訓練の効果をくらべたメタアナリシスがいくつかなされたが そのいずれもが片手訓練にCI療法を含んでいた。

CI療法は訓練量のおおさとスケジュールの緻密さにより患者の68%が訓練を完遂できず、恩恵をうけるのはわずか20-25%のみという。

さらにその適応基準は非常にきびしく、患者は手首を10度以上伸ばせて親指と他の指が開くことを事前要求される。

結果的にCI療法は軽度の麻痺患者のみが対象になってしまうことから、これをメタアナリシスに含むことはまったく適切ではないと考えられる。

そこでCI療法を除いて、片手訓練と両手訓練についてメタアナリシスをやりなおしてみたそうな。



CI療法をふくまない片手訓練および両手訓練のこれまでの研究を厳選し、データを統合 再解析して、

評価基準
Fugl-Meyer Assessment of Upper Extremity (FMA-UE),
Wolf Motor Function Test (WMFT),
Action Research Arm Test (ARAT)
Box and Block Test (BBT)

について効果を比較したところ、



次のようになった。

・被験者842人を含む21のランダム化比較試験がみつかった。

・片手訓練にくらべて両手訓練はFMA-UEスコアがあきらかに優れていた。

・しかしWMFTの完遂率および WMFT,ARAT,BBTの機能パフォーマンスの点では有意な差は確認できなかった。

両手訓練は運動機能FMA-UEの改善にあきらかに優れていた。しかし巧緻性をしめすWMFT,ARAT,BBTの点で片手訓練と有意な差はなかった、



というおはなし。
図:片手訓練と両手訓練のメタアナリシス



感想:

「CI療法は はじめからなかったことにしましょう」←著者が言いたいこと。

2019年5月26日

じつは治っていない空間無視を見つける方法


Increased Cognitive Load Reveals Unilateral Neglect and Altitudinal Extinction in Chronic Stroke
2019  5月  ベルギー

半側空間無視は脳卒中で右脳を損傷した患者の13-82%にみられる。かれらの60-90%は3-12ヶ月のうちに回復するという。

急性期では頭部と両目の向きが脳の損傷側へ偏っているので半側空間無視に気づきやすい。

つうじょう診断には紙と鉛筆をつかったテストが用いられるが その感度の低さとテストへの慣れが問題視されている。

そしてじゅうぶんに時間が経ち無視症状がなおったようにみえる患者でも、左右同時に視覚刺激をあたえたときに対側のターゲットを消失(extinction)することがよくある。

これら隠れた注意障害をあぶりだすために認知負荷のかかる二重課題下におく方法がいくつか報告されている。

そこで かつて半側空間無視があった2人の患者についてこれを確かめてみたそうな。




右脳の脳卒中で3年以上経ち、当初あった半側空間無視の症状が通常のテストではすでにみられない患者2人について、

視野の中心部に現れるターゲットの形状 および
視野周辺部(左右、上下)のターゲットを認識させるテストを、
個別または同時に(二重課題)おこなった。




次のようになった。

・患者#1について、二重課題時に左方の無視と上方の消失があきらかになった。

・患者#2は左右方向の無視症状は示さなかったが、二重課題時にターゲットを上下同時表示した際に 下方ターゲットを試行回数の半数以上で見落とした。

・このとき上下ターゲットを別個に表示した場合には 見落としはなかったことから、水平性消失(altitudinal extinction)と考えられた。

通常の検査ではもはや半側空間無視がみとめられない慢性期の脳卒中経験者にたいして、二重課題を与えることで空間的注意障害をあらたに確認することができた、


というおはなし。

図:水平性消失



感想:

刺激が1つずつ提示されているのに見落としてしまうことを無視(neglect)、2つ同時提示したときにいっぽうを見落としてしまうことを消失(extinction)という。

ようするに注意がいっぱいいっぱいなときには思わぬ見落としがおきる。左方にかぎらず。
同側への無視が起きる条件

刺激密度が高いときの半側空間無視

2019年5月25日

玉子とコレステロールとapoE4と脳卒中


Egg consumption, cholesterol intake, and risk of incident stroke in men- the Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study
2019  5月  フィンランド

玉子は黄身にコレステロールがおおくふくまれることからながらく摂り過ぎないように とされてきた。

玉子と脳卒中リスクについての研究は比較的すくないものの、最近のいくつかのメタアナリシスでは脳卒中リスクが上がる、下がる、変わらないとする相反した結論が得られている。

玉子と血圧についても同様で調査により結論がことなる。

いっぱんに食事から摂るコレステロールは血中コレステロールにほとんど影響しない。しかしアポリポタンパク質E (apoE)の遺伝子の特定の型を持つ者は食事コレステロールにおうじて血中のLDLコレステロールが増える可能性があることが知られている。

apoEのうち4型遺伝子が表現型にある者は脳卒中など心血管疾患になりやすいという。またフィンランド人の3分の1は apoE4表現型を持つ。

そこで、玉子と食事コレステロールと脳卒中との関連をapoE4表現型のキャリアーもふくめてくわしくしらべてみたそうな。

2019年5月24日

ランセット誌:ロボット上肢リハビリ まったく効果ない


Robot assisted training for the upper limb after stroke (RATULS): a multicentre randomised controlled trial
2019  5月  イギリス

ロボット支援の上肢トレーニングは麻痺が比較的重い患者であっても多くの繰り返し動作をおこなうことができるため期待されている。

しかしこれまでの研究のおおくは手法や訓練量、評価方法に偏りがつよくいっちした見解がえられていない。

そこでマルチセンターの大規模ランダム化比較試験(RATULSトライアル)をやってみたそうな。



脳卒中から5年以内で中レベル以上の上肢麻痺の患者770人について、
つぎの3グループにわけた。

ロボット支援(RT:robot-assisted training MIT-Manus robotic gym)
上肢集中訓練(EULT:enhanced upper limb therapy)
通常ケア(UC:usual care)

各訓練は、45分間x週3回x12週間 おこない、

ARATスコアで改善度を評価した。



次のようになった。

・ARATスコアであきらかな改善をしめした患者の割合は、RT44%、EULT50%、UC42%だった。

・通常ケアUCにくらべロボット支援RTと上肢集中訓練EULTはすぐれているとは言えず、

・RTとEULTにあきらかな効果の違いはみられなかった。

・深刻な有害事象は、RT15%、EULT13%、であり、UC8%よりもおおかった。

中レベル以上に重い上肢麻痺の脳卒中患者へのロボット支援リハビリテーションは通常ケアをうわまわる効果はなかった。日常のリハビリテーションに取り入れるべき根拠はまったくないと考えられる、


というおはなし。

図:脳卒中のロボット上肢リハ



感想:

繰り返し訓練自体に効果がないのだからロボットつかったところで改善しないのは自明。
課題指向型訓練 いくらやっても役には立たない

コクランレビュー:反復課題訓練 エビデンスない

訓練繰り返すほど良くなると思ってたら そうでもなかった

JAMA誌:課題指向型訓練 やる意味ない

2019年5月23日

NEJM誌:血栓溶解治療が9時間までOKな理由


Thrombolysis Guided by Perfusion Imaging up to 9 Hours after Onset of Stroke
2019  5月  オーストラリア

血栓溶解治療は脳梗塞の発症から4.5時間以内と決められている。このガイドラインは非造影のCTをつかった初期の調査結果にもとずいている。

しかしさいきんでは造影剤をつかったCTパーフュージョンとMRIディフュージョン検査を組み合わせることで、再灌流が可能な脳組織が4.5時間を超えて存在しうることがわかってきた。

そこで再灌流域がおおきく残っている患者への4.5-9時間での血栓溶解治療を実験してみたそうな。

2019年5月22日

抗凝固薬が認知症をふせぐ?


Less dementia and stroke in low-risk patients with atrial fibrillation taking oral anticoagulation
2019  5月  スウェーデン

心房細動があると認知症のリスクが高まるとする報告がいくつかある。

おおきな血栓が脳卒中を起こすように微小な血栓が脳組織への血流を阻み認知機能を低下させると考えられている。

じっさい、抗凝固薬を使用することで認知症リスクが半分になったという報告もある。

しかし因果関係はわかっておらず、ランダム化比較試験を行おうにも脳卒中リスクのある心房細動患者に抗凝固薬を与えないわけにもいかない。

そこで、心房細動だけで脳卒中リスクのない患者について抗凝固薬と認知症との関連をしらべ、因果関係を推定してみたそうな。



スウェーデンの患者データベースから2006-2014に心房細動と診断された456960人について、

脳梗塞リスクを評価する CHA2DS2-VASc(心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞歴、冠動脈疾患、女性)スコア が2点以上の者を除いた。

残りの患者91254人を凝固薬の使用の有無(43%が使用)で2グループに分け、他の条件の一致する23746人ずつにしぼり 認知症の発生を5年ほどフォローしたところ、



次のようになった。

・抗凝固薬グループの認知症リスクはあきらかに低く、非使用者の0.62倍だった。

・脳梗塞や脳出血のリスクは65歳以上では12%低かったが、

・60歳未満では有害事象のほうがおおかった。
心房細動で抗凝固薬を使用している者の認知証リスクは非使用者よりも低かった。65歳以上であれば脳梗塞リスクによらず抗凝固薬のベネフィットがおおきいと考えられた、


というおはなし。

図:抗凝固薬と認知症リスク


感想:

抗凝固薬みなおした。でもこわいのでおれは納豆とたまねぎを食べる。
血液サラサラの薬で認知症予防

2019年5月21日

若年脳梗塞患者はt-PA率が低いはず?


Thrombolysis in young adults with stroke:Findings from Get With The Guidelines-Stroke
2019  5月  アメリカ

t-PAによる血栓溶解治療の患者のほとんどは高齢者である。

若年者は脳卒中に関心がひくいため病院に遅れがちで、病院に着いてもまず別の病気を疑われることから診断がでるまで時間を要しt-PA治療が間に合わなくなることがおおいと考えられる。
また出血の副作用のおおきさも高齢者とはことなるはずである。

そこで若年者にたいするt-PA治療の実際をアメリカの全国規模のデータベースをつかってくわしくしらべてみたそうな。



2009-2015の1983病院の脳梗塞患者1320965人の記録を解析したところ、



次のことがわかった。

・2.3%が18-40歳の若年患者だった。

・このうち 12.5%がt-PA治療を受けた。40歳以上のt-PA率は8.8%だった。

・しかし病院到着から25分以内に脳の画像検査を受ける率は若年患者が低く、

・60分以内にt-PA治療を受ける率も若年患者で低かった。

・頭蓋内出血をおこす率は1.7% vs 4.5%で若年患者が低く、院内死亡率も2.0% vs 4.3%で若年患者が低かった。

予想に反してt-PA治療は高齢患者よりも若年患者に適用されやすかった。診断から治療までの時間はおおくかかっていたが、回復はよく頭蓋内出血も少なかった、


というおはなし。

図:t-PA若年vs高齢



感想:

若い患者は血管が丈夫だから診断にまよったらとりあえずt-PA打っちゃえってことなんだろな。
病院へ急がなくてもよいことになった
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