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2019年1月31日

脳卒中の体重減少 悪液質とは


Body weight changes and incidence of cachexia after stroke
2019  1月  ドイツ

脳卒中患者の体重や栄養状態と その後の回復や死亡率との関連をしめす報告がいくつもある。

脳卒中患者の体重減少はめずらしくない。がんや腎臓病などの慢性疾患では悪液質(Cachexia)とよばれる代謝異常をともなう体重減少が観察されている。

脳卒中患者についての悪液質の研究はほとんどないのでくわしくしらべてみたそうな。


平均年齢69、軽中程度の脳梗塞患者67人について、
急性期と12ヶ月後の体重および体組成を二重X線吸収法で測定した。

悪液質の条件として1年間に5%以上の体重減少とした。


次のことがわかった。

・12ヶ月後、63%は体重が増加または変わらずで、16%がやや減少、21%が悪液質と分類できた。

・悪液質グループでは、麻痺の有無によらず脂肪組織の19%と除脂肪組織の6.5%の減少が見られた。他のグループには除脂肪組織の減少は見られなかった。

・悪液質グループのバーセルインデックスおよび握力は低く、

・関連要因を調整すると、除脂肪組織の消耗がみられる患者の身体パフォーマンスはあきらかに低かった。

・悪液質グループでは12ヶ月後にもC反応性蛋白による全身性の炎症との関連がみられた。

脳梗塞患者の5人に1人が悪液質をしめしていた。彼らの身体能力はよくなかった、


というおはなし。

図:脳梗塞の悪液質率


感想:

脳卒中を経験すると塩分へらせ、油へらせ、糖質減らせ、と極端な節制をもとめられる空気に包まれる。このあたりにも一因があるとおもう。

2019年1月30日

Neurology誌:若くても血圧がちょっと高いと脳が減る


Association of peripheral blood pressure with gray matter volume in 19- to 40-year-old adults
2019  1月  ドイツ

高血圧は認知機能の低下リスクのひとつであり、のちの認知症やアルツハイマー病にも関連してくる。

高血圧の高齢者では、とくに症状がなくても海馬や前頭葉の灰白質体積が減少しているとする報告がいくつかある。

あきらかな高血圧でない40歳未満の若年者についても同様な灰白質の体積減少がみられるものかはわかっていないので、大規模にしらべてみたそうな。


未発表の3つの研究で得られた19-40歳で健康な423人のMRIの全脳画像データについて、
メタアナリシス(image-based meta-analyses)を行い、
血圧と脳の各領域の灰白質体積との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・灰白質体積と血圧に関連があった。

・正常血圧域(120/80未満)にくらべ、境界域(120-139/80-89)にある者の灰白質体積はあきらかに少なかった。

・特に、海馬、扁桃体、視床、前頭葉、頭頂葉で体積低下がおおきかった。

高血圧(140/90以上)でなくても、たとえ若くても、正常域よりもやや血圧が高いだけで脳の灰白質の体積が減少しはじめていた、


というおはなし。

図:高血圧と灰白質体積


感想:

中学生のころから血圧高いと言われていた身としては認めたくない事実。

30年ほどまえ、仕事でけっこうな人数の脳のMRIを撮った。血圧はともかく 酒やたばこが好きな人の灰白質はとても色がうすく、不健康ぶりが素人目にもわかった。
だから見かけの体積減少はありそうなはなしとはおもう。

2019年1月29日

脳梗塞の頭痛の特徴


Headaches Attributed to Ischemic Stroke and Transient Ischemic Attack
2019  1月  ブラジル

脳梗塞の発生と時をほぼおなじくする頭痛については、これまで見過ごされ 過小評価されることがおおかった。

そこで、これまでの関連論文から総説をこころみたそうな。


次のことがわかった。

・脳梗塞に伴う頭痛は7.4-34%にみられた。TIAでは26-36%にみられた。

・頭痛は若年脳梗塞患者におおく、

・片頭痛経験者、後部循環梗塞、皮質梗塞の患者におおくみられ、

・ラクナ梗塞ではその頻度は少なかった。

・脳梗塞の頭痛のよくあるパターンは、軽中程度の両側の痛みで、吐き気や嘔吐はともなわず、

・局所神経症状があるものの、おおくは時間とともに消失する。

・頭痛があると予後が良いとする報告があるいっぽう、それを否定する報告もある。

・これら頭痛対策を目的とした臨床試験はおこなわれていない。

脳梗塞にともなう頭痛はよくあることで、おおくは両側の緊張性の頭痛だった。その頻度は脳梗塞の種類により異なった、


というおはなし。

図:脳梗塞の頭痛


感想:

まちかどの証明写真機なみの気軽さで、医師を介することなくMRIを撮れるようになると素敵だなぁ。

2019年1月28日

ケトン食が脳梗塞にタフな身体をつくる


Early Motor-Behavioral Outcome of Ischemic Stroke with Ketogenic Diet Preconditioning- Interventional Animal Study
2019  1月  イラン

脳卒中による虚血から脳をまもる方法が必要とされている。

平時の脳の主要エネルギー源はブドウ糖であるが、高血糖状態にあると脳梗塞がかえってひどくなることがわかっている。

いっぽうブドウ糖が欠乏状態のときにはケトン体(おもにβ-ヒドロキシ酪酸)が脳のエネルギー源となる。

ケトン食(高脂肪かつ低炭水化物の食事)はケトン体をふやすことができ、古来よりてんかん発作を防ぐとされ さいきんではパーキンソン病やアルツハイマー病にも応用されている。

さらにケトン食に中鎖脂肪酸(MCT : ココナッツオイルやパーム油)を加えることでケトン食による弊害(微量栄養素の不足、酸性血症、便秘、腎臓結石、低血糖、成長遅延)を最小限にすることができる。

そこで、ケトン食をあたえたネズミへの脳梗塞の影響を実験してみたそうな。


ネズミ24匹を人為的に梗塞にする3日まえに次の3グループにわけた。

Main:ケトン食 その後脳梗塞
Control:通常食 その後脳梗塞
Sham:通常食 その後手術のみで脳梗塞なし

ケトン食として、脂肪:タンパク質+炭水化物=4:1の食事 さらにMCTオイル を与えた。

その後、3種類の運動行動テストでフォローしたところ、


次のようになった。

・麻痺脚の歩数、棒渡りタイム、両手使用の対称性のいずれもがケトン食グループで Control よりも優れていた。

ケトン食をあたえたネズミでは脳梗塞後の運動行動がよりはやく回復した、


というおはなし。

図:ケトン食と脳梗塞

感想:

糖質制限ブームもあって、「MCTオイル」で検索すると通販サイトがいっぱいでてくる。
糖質制限ダイエットで脳梗塞に強くなる理由

2019年1月27日

日本だけ くも膜下出血が激増中! JAMA Neurol.


Worldwide Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage According to Region, Time Period, Blood Pressure, and Smoking Prevalence in the Population: A Systematic Review and Meta-analysis
2019  1月  ドイツ

くも膜下出血は脳卒中の5%を占め、半数は55歳未満、3分の1は数週間以内に死亡する。

くも膜下出血の発生率は年間10万人あたりおよそ9人で、これは地域や性別、年齢によっておおきくことなる。その理由がわかれば予防にも活かせる。

そこで、世界のくも膜下出血発生率のこれまでの推移をくわしくしらべてみたそうな。


関連する研究論文を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のことがわかった。

・32カ国の患者8176人を含む75の研究がみつかった。

・45-54歳の男性にくらべ、75歳以上の女性の相対リスクは日本人で2.5倍、ヨーロッパ人1.5倍だった。

・世界全体での発生率は1980年に10.2人(10万人年あたり)、2010年には6.1人であり、年間1.7%ペースで低下している。

・同じ期間の地域別での発生率の「低下ぶん」は、ヨーロッパ40.6%、アジア46.2%、北アメリカ14.0%に対し、

・日本だけ 発生率が59.1%「上昇」していた。

・全体的に、収縮期血圧が1mmHg低下すると発生率が7.1%低下し、喫煙率が1%低下すると発生率が2.4%低下した。

くも膜下出血の発生率は全体の血圧や喫煙率の低下に伴ってさがっている傾向にあり、その程度は地域によりおおきく異なった。日本だけ発生率が激しく上昇している理由は不明、


というおはなし。

図:収縮期血圧とくも膜下出血


感想:

日本だけ増えている理由は、たぶんこう↓。

脳卒中の早期受診をうながすキャンペーンと、日本の突出したCT設置数、および皆保険制度によって、見逃されていた軽度のくも膜下出血が容易に見つかり治療(手術)対象とされるようになったってこと。

Stroke誌:くも膜下出血発生率 じつは10倍以上?


2019年1月26日

磁気刺激治療 30年間の論文傾向


Publication trends in transcranial magnetic stimulation- a 30-year panorama
2019  1月  ドイツ

TMS(経頭蓋磁気刺激)は非侵襲的に脳を刺激できる方法として1985年に考案された。当初は脳の運動野から末梢神経への皮質脊髄路の健全性を調べるための診断機器として使用された。

のちに疼痛や痙縮、脳卒中、パーキンソン病の治療に用いられるようになり、さらに最近ではうつやPTSDといった精神疾患にも応用されている。

TMSが世にでてからおよそ30年間の論文を書誌計量学的に解析してみたそうな。


引用文献データベースをつかって1988-2017までのTMS関連論文を抽出し、

もっとも論文数のおおい研究者、研究所、国、掲載誌、そして対象になる病気名、について調べたところ、


次のことがわかった。

・17492件の研究論文がみつかった。

・年間出版数の傾向は、他のテーマが横ばいなのに対し、TMSは劇的に増加していた。

・研究がもっともかっぱつな国はイギリス、アメリカ、カナダで、

・脳卒中、うつ、パーキンソン病についての研究がおおかった。

TMSの研究論文はこの30年間で激増しており、脳卒中、うつ、パーキンソン病への応用がおおい、


というおはなし。

図:TMS研究でおおい病気テーマ

感想:

論文の数ばかりおおくてあまり成果がでない分野でもある印象。
[結論] rTMSの上肢リハビリ効果について

その他 [磁気刺激]の関連記事

2019年1月25日

食塩代替塩味料の効果


Effect of low-sodium salt substitutes on blood pressure, detected hypertension, stroke and mortality
2019  1月  アメリカ

減塩には血圧を改善し脳卒中を防ぐ効果があるとされている。しかしWHOが推奨する基準は最適な量よりもかなり下回っているのではないか、という考え方もある。

減塩方法の1つとして食塩のナトリウムをカリウムなどに置き換えた「食塩代替塩味料」の使用が挙げられるが、効果はいまだあきらかになっていない。

そこでこれまでの研究成果についてメタアナリシスをこころみたそうな。


食塩代替塩味料と血圧、死亡率についての研究を厳選してデータを統合 再解析したところ、


次のようになった。

・被験者7400人を含む21の研究成果がみつかった。

・食塩代替塩味料の成分にはいろいろ種類があった。

・食塩代替塩味料で収縮期および拡張期血圧があきらかに低下した。

・その効果は高血圧や正常血圧の者に同様にあらわれた。

・尿中のナトリウムは減少し、カリウムやカルシウムが増加した。

・高血圧と診断される者の数や死亡率 等にあきらかな変化はなかった。

・エビデンスの質としては低レベルの結果だった。

食塩代替塩味料の使用によって収縮期と拡張期血圧が低下した。しかし高血圧患者を減少させたり死亡率を低下させるほどの効果はなかった、


というおはなし。

図:食塩代替物


感想:

長年のくせで ついつい塩分を控えてしまうけど、いまや減塩は時代遅れだから。気をつけてな。↓
ランセット誌:食塩は13gまでオッケー 脳卒中的に

ランセット誌:塩分減らすとかえって脳卒中になる

JAMA誌:減塩に真面目な人ほど脳卒中で死亡する

JAMA誌:塩分を控えさせるほど脳卒中死亡者が増える

2019年1月24日

手段的日常生活動作と睡眠時間


The impact of short and long sleep duration on instrumental activities of daily living among stroke survivors
2019  1月  アメリカ

脳卒中による身体的 認知的 精神的障害はIADL(手段的日常生活動作)に影響する。

IADLは 食事の準備、雑用、入浴、お金の管理などの自立生活を送るうえで必要な能力を指す。

いっぽう脳卒中患者には睡眠障害がおおくみられ、これもまたIADLに影響すると考えられる。

そこで、脳卒中経験者の睡眠時間とIADLとの関連をくわしくしらべてみたそうな。


2000-2015に行われた健康調査のうち脳卒中歴のわかる486619人の記録を解析したところ、


次のことがわかった。

・被験者全体の平均年齢は46、87%の健康状態は良く、30%は睡眠6時間以下だった。

・全体の3%が脳卒中経験者だった。

・脳卒中経験者の30%にIADLの問題があった。

・IADLに問題のあったすべての被験者の34.4%は睡眠が6時間以下だった。

・脳卒中経験者のうち睡眠時間が9時間以上ある場合、平均的な7-8時間睡眠の者にくらべIADLに問題のある率が1.97倍だった。

・短時間睡眠の脳卒中経験者のIADL問題のリスクは平均睡眠と同レベルだった。

睡眠時間が平均よりも長い脳卒中経験者は、手段的日常生活動作(IADL)に問題を抱えていることがあきらかにおおい、


というおはなし。

図:睡眠

感想:

なぜ、7-8時間が正しいのかね? 短いのもいけないみたいだし。
脳卒中で眠れないと死ぬの?

2019年1月23日

便秘すると脳卒中で死ぬの?


Constipation and risk of death and cardiovascular events
2019  1月  アメリカ

近年、腸内環境の急激な変化が免疫機能をつうじて動脈硬化を引き起こすとする考えかたが注目されている。

そこで便秘によって脳卒中など心血管疾患および死亡率に影響があるものか大規模にしらべてみたそうな。

2019年1月22日

復職率が倍になる従業員規模


Work-related predictors for return to work after stroke
2019  1月  スウェーデン

脳卒中患者の20%は労働可能年齢といわれている。彼らがふたたび職に就くことのできる率は国によってもおおきくことなる。

これまでの調査から復職に影響する要因として、要介助度、社会経済的地位、移民、合併症、高齢、女性、専門資格、組織規模、などがあげられている。

そこでスウェーデンでの脳卒中患者の復職状況と関連要因をしらべてみたそうな。


2009-2010の脳卒中患者で発症前に職に就いていた204人について6年間フォローしたところ、


次のことがわかった。

・早くに復職できる要因として、専門資格を持っている、組織の従業員規模がおおきい、ことがあげられた。

・専門資格で復職が早くなるのは男性だけであって女性には影響はなかった。

・女性の復職には退院時の要介助度のみが影響していた。

脳卒中患者の復職には組織の従業員規模と仕事の専門性が影響していた。男女での差がなぜ生じるのかは不明、


というおはなし。

図:脳卒中後の復職可能性と従業員規模

感想:

上の表みると従業員規模が2000人を超えると復職率が倍になる。さらに増えても大きくはかわらない。

それだけ人員空間があると障害があってもできるニッチな仕事を創り出しやすいってことなんだろか。

2019年1月21日

2週間の加圧トレーニングで歩行速度up


Two Weeks of Ischemic Conditioning Improves Walking Speed and Reduces Neuromuscular Fatigability in Chronic Stroke Survivors
2019  1月  アメリカ

脳卒中患者の20-25%は介助なしには歩くことができない。リハビリをおこなっても歩行速度がほんの少しあがる程度である。

この状況を改善する方法として「虚血コンディショニング」が話題にのぼるようになった。

虚血コンディショニングは1986年に虚血臓器の保護目的で考え出されたもので、のちに心血管保護効果があきらかになり、さらに手脚の筋肉パフォーマンスを改善する効果が「加圧トレーニング」として注目された。

そのメカニズムはよくわかっておらず、脳卒中の手脚の麻痺への応用はまだほとんどない。

また心血管への虚血コンディショニングの経験から、有効なタイムウィンドウに短期(-12時間)と長期(24-72時間)があることがわかっている。

そこで脳卒中の麻痺脚への虚血コンディショニングを、短期効果はすでに確認済みなので、長期におこなったときに歩行能力が改善するものか実験してみたそうな。

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