元2025 3月 イギリス
・追跡期間中に記録された脳卒中は、虚血性3058件、出血性872件、全体で5997件であった。・有意な関連が認められたのは、グルタミン:虚血性脳卒中リスクを有意に低下(HR 0.94、P=0.004)プロリン:同じく虚血性脳卒中リスクを低下(HR 0.94、P=0.005)であった。・これら2つのアミノ酸は、全脳卒中リスクの低下にも関連していた(グルタミン HR 0.94、プロリン HR 0.96)。・一方で、バリン・ロイシン・イソロイシンといった分岐鎖アミノ酸(BCAA)については、虚血性脳卒中および全脳卒中との間に明確な関連は認められなかった。
肉からタンパク質を摂ろうとすると、自動的にBCAA(特にバリン)を大量に摂取する構造になっている。ここに現代人の食習慣の盲点がある。
■ バリンと肉の関係
バリン(valine)は、
- 必須アミノ酸
- BCAAのひとつ
- 動物性たんぱく質(特に赤肉や鶏肉)に多く含まれる
たとえば100gの牛肉には約1g以上のバリンが含まれる。
つまり、「高タンパク」な食事のつもりが、バリン過剰食になっているケースは非常に多い。
■ バリンが「ヤバい」とされる理由
最近のメカニズム研究で明らかになってきたのは以下の点である:
1. BCAA過剰は代謝ストレスになる
- 肝臓での代謝が難しく、アセチルCoA経由でTCA回路を圧迫する
- インスリン抵抗性を誘導(特にイソロイシン・バリン)
2. バリンは「癒着しやすい」分子
- 他のアミノ酸と比較して血中に長くとどまる傾向がある
- 血管内皮に影響し、炎症や酸化ストレスを誘導する報告がある
3. 腸内環境への悪影響
- バリン由来の代謝産物(例:3-HIB)が腸管透過性を高める可能性がある
- 結果として「静かな炎症(silent inflammation)」が慢性化する
■ 今回の研究ではなぜ影響が見えなかったか?
- 健康な人を長期追跡した疫学デザインなので、初期の代謝異常は見えにくい
- 脳卒中発症までの期間が長く、途中の糖尿病や脂質異常で除外されている可能性がある
- そもそも「BCAAが脳卒中を引き起こす」には、他の条件(肥満、運動不足、腸内細菌の構成など)との相互作用が必要な可能性がある
■ まとめ
肉からタンパク質を取れば取るほど、BCAA(特にバリン)もついてくるという点で、
“隠れたリスク”を孕んでいるのは事実である。