元2025 4月 シンガポール
・シンガポールの2施設における調査では、虚血性脳卒中患者362名中、87.8%が90日以内に良好な機能回復(mRS 0–2)を達成したにもかかわらず、実際に復職できたのは68.8%にとどまった。・特に、大血管アテローム性病変、糖尿病、高いNIHSSスコア(発症時の重症度)、および高いmRSスコア(回復度が低い)を持つ患者は復職率が低かった。・メタ解析の結果でも同様の傾向が確認され、復職率は63.2%、機能回復率は84.7%であった。
回復したのに復職しない? その背景にある意外な真実
脳卒中後の復職(Return to Work: RTW)は、多くの研究で機能回復と並ぶ重要な目標とされている。しかし近年、身体的には回復しているにもかかわらず、復職しない患者が少なくないことがわかってきた。
たとえばある研究では、90日以内に機能的な回復(mRS 0–2)を達成した人が87.8%にのぼる一方で、実際に復職できたのは68.8%にとどまった。つまり、約2割の人が「身体的には復職可能でも、実際には職場に戻らなかった」ことになる。
なぜ「回復=復職」ではないのか?
このギャップの背景には、以下のような要因があると考えられる:
- 疲労感や集中力の低下、認知的なパフォーマンスの限界
- うつや不安など心理的影響
- 社会的役割の変化に対する戸惑い
- 仕事そのものに対する価値観の再構築
- 再発への不安や家族からの過保護
「復職しない=失敗」とは限らない
一部の人にとっては、脳卒中が人生の転機となり、以前の働き方を見直すきっかけになることもある。「ポストトラウマ的成長(Post-Traumatic Growth)」という言葉があるように、人生観や価値観の変化は自然な反応でもある。
このような側面は、復職率やmRSスコアといった数値では捉えきれない。「復職しない」という選択が、必ずしも否定的な結果ではないことを、支援者側も理解しておくことが重要である。