元2025 4月 アメリカ
・調査対象の2180万人のうち、36,989人が初めて脳梗塞を起こしていた。このうち5.1%の人が、脳梗塞の前1年以内にIDAと診断されていた。・一方、脳梗塞を起こしていない人たちでは、IDAの割合は1.1%だった。・解析の結果、IDAがあると脳梗塞を起こすリスクが39%高まることがわかった(オッズ比1.389、p<0.001)。この結果は、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった他のリスク要素を考慮に入れても変わらなかった。
🧠【鉄欠乏性貧血(IDA)が脳梗塞を引き起こす仕組み】
鉄が体の中で足りなくなると、血液や血管にいろいろな「悪い変化」が起こる。
その結果、血の流れが悪くなったり、血のかたまり(血栓)ができやすくなったりして、脳梗塞を引き起こすリスクが高まると考えられている。
具体的には、こんな流れだ。
① 血液の流れが悪くなる 🚰
鉄が足りないと、赤血球(酸素を運ぶ細胞)がうまく作れなくなる。
しかも、できた赤血球は形がいびつで、固くなりやすい。
→ このため、細い血管の中をスムーズに流れにくくなる。
水の中をビー玉が流れるようなイメージ。つっかえてしまいやすい。
② 血管にくっつきやすくなる 🧲
鉄が足りない状態だと、血管の内側(内皮細胞)が「SOS信号」を出す。
この信号が出ると、白血球や血小板(血を固める細胞)が、血管の壁にくっつきやすくなる。
→ 結果として、血管の中に小さな血のかたまり(血栓)ができやすくなる。
③ 血をサラサラに保つ仕組みが弱くなる 💧
体にはもともと「血を固まりにくくする仕組み(血液のバランス)」がある。
だけど、鉄欠乏になると、それを支えている大事な遺伝子(KLF2など)が弱ってしまう。
→ つまり、血がドロドロになりやすい体質になってしまう。
④ 血の中のタンパク質も影響を受ける ⚙️
鉄を運ぶためのたんぱく質(トランスフェリン)が増えるのだけれど、
これも場合によっては血液のかたまりやすさに影響してしまう可能性がある。
(ここはまだ完全にはわかっていない部分もあるが、リスク要素のひとつと考えられている。)
📝【まとめ】
鉄が足りないと、
- 血液が流れにくくなり
- 血管が傷つきやすくなり
- 血が固まりやすくなって
それが重なると、ある日突然、脳の血管が詰まって脳梗塞になる。
つまり、鉄不足は「静かな血管病」を引き起こす見えない原因なのである。