元
地磁気嵐(GS)が人体、とくに心血管系に与える影響については、これまで多くの研究がなされてきた。しかしながら、その結果は一貫せず、解析手法の不備や指標のばらつきが原因とされていた。
そこで、特に脳卒中(stroke)、心筋梗塞(MI)、急性冠症候群(ACS)との関連性に焦点をあて、信頼性の高い研究結果のみを用いて体系的レビューを試みたそうな。
PubMedデータベースを用いて文献検索を行い、地磁気嵐と心血管イベントとの関連を扱った論文644本のうち、条件を満たす6本を最終的に選定した。PRISMA基準に基づいたレビューと、必要に応じて統計の再解析(OpenEpiによるRR推定)を行い、系統的に相対リスク(RR)を評価した。
次のことがわかった。
・6つの研究のメタ解析の結果、磁気嵐が脳卒中に与える影響は統計的に有意であり、平均RRは1.25〜1.6と示された。
・特に65歳未満の若年層や既往疾患のある患者ではリスクがより高くなっていた。たとえば、Feiginの研究ではAp指数60以上で全体の脳卒中リスクが19%上昇し、重度のGSでは若年者の出血性脳卒中リスクが2.76倍に達した。
・ここでいうAp指数とは、地球全体の地磁気の乱れの度合いを表す数値指標であり、日単位で算出される。値が高いほど磁場の乱れが強いことを意味し、一般的にAp60以上は「磁気嵐」と見なされる。心筋梗塞やACSもまたRRが1.3〜1.5に上昇しており、地磁気嵐が発作のトリガーとなりうる可能性が示唆された。
地磁気嵐が脳卒中、心筋梗塞、急性冠症候群のリスクを有意に高めることがわかった。リスク上昇の主因は、概日リズムの乱れ、心拍変動への対応力低下、血圧および微小循環への影響であると考えられる。今後の研究では、地域別または個人別の感受性や磁気嵐指標の最適な選択が求められると同時に、医療現場での予防的活用が期待される、
というおはなし。
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