元2025 3月 イギリス
・単純な解析では、子どもの頃の身長が高いほど、将来的な脳卒中と冠動脈疾患のリスクが下がるという保護効果が示された(脳卒中に対するオッズ比 0.93)。・しかし、大人の身長を同時に解析に加えたところ、この保護効果は消失した。つまり、脳卒中リスクの低下は、子どもの頃の身長そのものによるのではなく、大人になっても背が高いことが主要因であることが示唆された。・一方で、心房細動(AF)および胸部大動脈瘤(TAA)については、子どもの頃の身長が高いことが大人の身長とは独立してリスクを高めるという、直接効果が確認された。
🔍 この矛盾を分解して整理すると:
因子 | 高身長がもたらす影響 | 結果への影響 |
---|---|---|
脳血管の構造 | 血管が太く、詰まりにくい | 虚血性脳卒中のリスク低下 |
血圧 | 相対的に低めの傾向 | 高血圧関連の脳卒中が減る |
代謝・栄養状態 | 幼少期の良好な栄養・発育の指標 | 動脈硬化リスクが低下 |
心房構造 | 左心房が大きくなる傾向 | 心房細動のリスク増加 |
AF → 脳卒中 | 本来は血栓をつくるが | 他要因でリスクが相殺・抑制 |
✳️ つまりこういうこと:
高身長の人は、AFというリスクを一部背負いながらも、全体的には他の多数の保護因子によって脳卒中リスクが低く抑えられているという、多層的な健康構造を持っている。
🧠 もう少し踏み込むと:
- AFだけが脳卒中の原因ではない: 高身長による他の要因(血圧、代謝、血管径)が強く保護に働いている。
- AFの“絶対リスク”は意外と小さい: 多くのAFは治療で発症を防げる。高身長の人は医療アクセスも良好な傾向あり。
- 高身長のAFは「良性」な可能性: 組織変化によるものの、血栓生成につながりにくい形態もあり得る。
🧩 結論:
高身長が脳卒中から守るのは事実。しかしその構造的代償としてAFが起きやすくなるという「表と裏」がある。
そしてそのAFさえも、他の因子によってリスクとして現れにくくなっているという複雑なバランスが存在する。