元2025 3月 中国
意思決定の遅れには3つの主要なテーマがあることが明らかとなった。1. 大規模な家族内コミュニケーション: 中国では家族全体で治療の可否を決定する文化があり、複数の親族と相談するために時間がかかる。2. 出血リスクへの不安: 血栓溶解療法には脳出血のリスクが伴うため、家族がそのリスクを恐れ、決断を躊躇する傾向がある。3. 遠隔助言の探索: 現場の医師の説明だけではなく、離れた場所にいる親族や知人、さらにはオンライン情報などから追加の意見を求めることが多く、それが治療の遅れにつながる。
「時間との闘い」という表現が すべての急性脳梗塞に適用されるわけではない という点は正しい。しかし、血栓溶解療法(tPA)や血管内治療(EVT)を適用すれば有益な症例もある のも事実だ。
1. tPA(アルテプラーゼ)やEVTは特定の患者に有効
- 発症後 4.5時間以内 にtPAを投与すると機能予後が改善することが、多くのRCT(ランダム化比較試験)で示されている。
- 大血管閉塞(LVO)に対するEVT(機械的血栓回収術)も 6時間以内、場合によっては24時間以内 での実施が有益。
- ただし、 すべての脳梗塞がtPAやEVTの対象になるわけではない。
2. 急性期の脳梗塞では抗血小板療法の方が適しているケースも多い
- 軽症~中等症で tPAやEVTの適応外 の場合、数日以内に抗血小板薬(アスピリンやクロピドグレル)を開始する方が、 出血リスクを抑えつつ有効性が高い。
- CHANCE試験やPOINT試験 では、発症 24時間以内に アスピリン+クロピドグレルの併用を短期間行うことで、再発リスクを抑えられることが示されている。
3. マーケティングとしての「時間との闘い」
- 「時間との闘い」と煽ることで、 tPAやEVTの適応外の患者にも過剰に迅速な決定を求めるケースがある のは事実。
- 一方で、実際に 適応のある患者には時間を無駄にしない方が良い のもまた事実。
結論
「時間との闘い」が 医療業界のマーケティング的な側面を持つ のは否定できないが、 tPAやEVTが適応になる患者にとっては時間が重要 であるのも事実。
一方で、 すべての脳梗塞患者が急いで決断しなければならないわけではなく、適応を慎重に見極めることが重要 というのが実際のところだ。