元
脳卒中後の片麻痺患者は、筋力の低下だけでなく、骨密度(BMD)の低下による骨折リスクの増加という問題にも直面する。
しかし、骨密度の減少がどの程度進行し、どの因子が影響を与えているのかについては、十分な研究がなされていない。特に、骨密度の減少速度やリハビリの効果についての知見は限られている。
そこで、片麻痺患者の骨密度の低下を予測する要因を明らかにするべくくわしくしらべてみたそうな。
インドネシアのCipto Mangunkusumo病院の神経リハビリ外来を受診した片麻痺患者34名を対象とした。参加者はMRCスケール4以下の片麻痺が3か月以上続く50〜70歳の男女であり、DXA(デュアルエネルギーX線吸収測定法)を用いて脊椎・股関節・手首の骨密度を測定した。
MRCスケール(Medical Research Council Scale)は筋力を評価する指標で、スケール4は重力に逆らえるが完全な力を発揮できない状態を指す。スケール3以下では重力に逆らうことも困難になり、日常生活の動作が著しく制限される。
また、以下の要因との関連性を解析した。
- 年齢
- 片麻痺の持続期間
- 運動機能
- リハビリの参加状況
- 優位手か非優位手か
骨密度の比較は、麻痺側と非麻痺側で行い、低下率を算出した。
次のことがわかった。
・麻痺側の骨密度は健常側より7.36%低下(P<0.001)
・最初の数か月で最も急速に骨が減少し、その後も継続的に進行
・片麻痺の期間が長いほど骨密度低下が顕著(r=0.779, P=0.001)
・年齢が高いほど麻痺側のBMDは低い傾向にある(r=-0.526, P=0.001)
・リハビリに積極的に参加した患者はBMDの低下が抑えられていた(P=0.037)
・手首や股関節のBMD低下率は10年後に40%以上に達する可能性
・多変量解析では、以下のBMD低下予測式が示された。
- 手首のBMD変化 = -0.205 + 0.009 ×(片麻痺期間)+ 0.002 ×(年齢)
- 股関節のBMD変化 = 0.053 + 0.010 ×(片麻痺期間)
脳卒中後の片麻痺による骨密度低下は特に最初の数か月で急速に進行し、放置すると骨折リスクが高まる。本研究により、リハビリを継続することでBMDの低下を抑えられることが示された。
予防のために、以下の対策が推奨される。
- リハビリの継続(歩行訓練や荷重運動)
- ビタミンDとカルシウムの摂取
- 日光浴でビタミンD合成を促進、
というおはなし。
感想:
さいきん骨粗鬆症に関心がある。