元
脳卒中によって小脳や基底核が損傷すると、時間知覚にどのような影響が出るのかは十分に解明されていない。
そこで、小脳または基底核に脳卒中を発症した患者を対象に、時間知覚の変化をくわしくしらべてみたそうな。
小脳または基底核に脳卒中を発症した患者と健康な高齢者を対象に、時間知覚を評価する4つの課題を実施した。
① 指タッピング課題(明示的タイミング)
参加者は、自由にタッピングする「自由タッピング」と、1秒ごとに一定の間隔でタッピングする「1秒タッピング」の2種類の課題を行った。これにより、意識的な時間の制御能力を評価した。
② 時間二分課題(明示的タイミング)
480ミリ秒(短い)と1920ミリ秒(長い)の時間を学習し、それらの間の時間を「短い」か「長い」か判断する課題を実施。時間の長さを記憶し、比較する能力を測定した。
③ リズム課題(暗黙的タイミング)
規則的または不規則な間隔で提示される視覚的刺激(赤い円)を観察し、その後に現れるターゲット(緑の円)に素早く反応することで、リズムに基づいた時間予測能力を評価した。
④ 時間指向課題(暗黙的タイミング)
事前に提示される赤いバーが、次に現れるターゲットの時間(350ミリ秒後または1350ミリ秒後)を予告する。このキューを利用してターゲットに素早く反応できるかを評価し、時間の予測能力を測定した。
次のようになった。
- 明示的タイミング(意識的な時間判断)では、1秒タッピング課題で健常者に比べてリズムのばらつきが大きかった。
- 時間二分課題では、健常者と比べて「時間の長さを正確に判断する能力」が低下していた。
- 暗黙的タイミング(無意識のリズム感覚)が特に低下していた。
- リズム課題では、規則的なリズムが提示されても、それを利用してターゲットの出現を予測することができず、反応時間が長くなった。
- 時間指向課題でも、予告された時間情報を活用できず、特に短い間隔での反応が遅れた。
- 基底核は「意識的な時間の測定」に関与し、その障害は時間間隔の認識やリズムの一定性に影響を与える。
- 小脳は「無意識のリズム調整」に関与し、その障害は外部のリズムに適応する能力を低下させる。
この研究から、基底核と小脳の脳卒中は、異なるタイプの時間知覚に影響を及ぼすことが明らかになった。基底核が損傷すると、意識的な時間の計測が不安定になり、一定のリズムを刻むことが難しくなる。一方、小脳が損傷すると、外部のリズムに適応する能力が低下し、無意識の時間調整が困難になる。これは、日常生活において「時間を測って行動すること」と「周囲のリズムに合わせて行動すること」が異なる脳の仕組みによって制御されていることを示唆する。たとえば、基底核に障害がある人は、料理のタイミングを見誤ったり、会話のテンポを維持するのが難しくなったりする可能性がある。一方、小脳に障害がある人は、歩行のリズムが乱れたり、音楽に合わせた動作がうまくできなくなったりする可能性がある、
というおはなし。
感想:
基底核が出血したその日のうちから「時間がヤバい」「時間について勉強しなきゃ」、、
そんなおもいにとらわれて 気がついたら15年以上経ってた。いまではドラえもん研究家。