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脳卒中後のリハビリでは、上肢機能の回復が重要な課題となる。特に、片麻痺の患者は実際に体を動かすことが難しい場合が多い。そのため、運動イメージ療法(Motor Imagery Therapy, MI)が注目されている。
MIとは、実際に運動をせずに頭の中で動作をイメージすることで、脳の運動ネットワークを活性化し、回復を促す方法である。
そこで、MIの基本概念と、リハビリでの適用方法を整理し、その効果を最新の研究に基づいてまとめてみたそうな。
・MIには内部MI(Kinesthetic Imagery)と外部MI(Visual Imagery)の2種類がある。
- 内部MI:自分の体の動きを感じるようにイメージする。
- 外部MI:第三者視点で自分の動作を観察するようにイメージする。
・さらに、MIをリハビリにどう適用するかによってEMI(Embedded MI)とAMI(Added MI)に分類される。
- EMI(埋め込み型MI):リハビリの一部として運動と並行してMIを行う。
- AMI(追加型MI):リハビリとは別に、単独でMIを実施する。
・また、MIの実施方法として、PRACTICEモデルとPETTLEPモデルがある。
- PRACTICEモデル:リハビリ向けに設計された段階的なMIトレーニング。
- PETTLEPモデル:実際の運動にできるだけ近い条件でMIを行う。
- 環境や感情、視点なども重視し、スポーツパフォーマンス向上に活用される。
・中国国内外の23本の論文をレビューし、MIが脳卒中後のリハビリに与える影響を分析した。
次のことがわかった。
・研究によると、MIは上肢機能の回復に有効であることが示された。特に、内部MIが脳卒中患者の回復に最も効果的であり、運動学習を促進することが分かった。また、EMI(埋め込み型MI)の方が、実際のリハビリと併用できるため効果が高いとされている。
・実施モデルでは、PRACTICEモデルがリハビリに適しており、PETTLEPモデルはより高度な運動学習やスポーツ向けであることが確認された。特に、MIをロボット補助リハビリ、経頭蓋磁気刺激(rTMS)、電気刺激(tDCS)と組み合わせることで、より高い効果が得られることが示されている。
・また、MIとミラーセラピー(鏡を使ったリハビリ)を組み合わせることで、外部MIを利用した効果的な運動学習が可能となることも報告されている。
脳卒中後のリハビリにおいて、MIは有効な治療法である。特に、内部MIを活用し、リハビリの一部としてEMI(埋め込み型MI)を取り入れることが、上肢機能回復に最も効果的である。
また、リハビリの設計においては、PRACTICEモデルを活用することで、より体系的で効果的なMIトレーニングが可能となる。PETTLEPモデルは、より運動の実践に近い形でMIを行うため、特定のケースでは有効だが、一般的なリハビリではPRACTICEモデルの方が適している。
今後の課題として、MIの標準化されたプロトコルの確立、個別最適化の手法、長期的な効果の検証が求められる。MIは、運動機能回復の新たな可能性を開く治療法として、さらなる研究と実践の拡大が期待される、
というおはなし。
感想:
PRACTICEやPETTLEPはきいたこともなかった。