元
一過性脳虚血発作(TIA)は「ミニ脳卒中」とも呼ばれ、一時的に脳の血流が低下するが、短時間で症状が消失する。一般的にTIAは脳梗塞を伴わないため、長期的な影響は少ないと考えられてきた。
しかし、近年、TIAが脳に与える影響について再評価する動きが出てきている。そこで、TIA後の認知機能の変化についてくわしくしらべてみたそうな。
この研究は、アメリカの「Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke(REGARDS)」という大規模コホート研究のデータを用いた。研究対象は以下の3つのグループに分けられた。
TIAを初めて経験した人(356名)
脳卒中を初めて経験した人(965名)
症状のない健康な人(14,882名)
すべての参加者は定期的に言語流暢性や記憶力などの認知機能テストを受け、TIAや脳卒中発症前後の認知機能の変化が分析された。
また、年齢、性別、高血圧、糖尿病などの血管リスク因子を調整した上で、TIAが独立して認知機能低下と関連しているかを評価した。
次のことがわかった。
-TIA群の認知機能は、発症前の時点では健康な対照群とほぼ同じだった。
-一方、脳卒中群は発症前からやや認知機能が低下していた。
-TIA群の認知機能は発症後に低下し、その速度は脳卒中群とほぼ同じだった。
-TIA群の年間の認知機能低下率は -0.05、脳卒中群は -0.04、健康な対照群は -0.02であり、TIAでも脳卒中と同等の低下がみられた。
・TIAは血管リスク因子とは独立して認知機能を低下させる
-高血圧や糖尿病などのリスク因子を統計的に調整した後でも、TIA群の認知機能低下は有意であった。
-さらに、DWI陰性(TIA発症時に明らかな脳梗塞がない)患者のみを対象とした研究で認知機能低下が確認された。
TIAが一過性の症状で終わるわけではなく、長期的に脳に影響を与えうることがわかった。特に、TIAであっても脳卒中と同程度の速度で認知機能が低下することが明らかになった、、
というおはなし。
感想:
TIAがあったという事実それだけで、認知機能の急な低下が起きうるってこと。