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心房細動(AF)は脳卒中の大きなリスク要因であり、その予防には抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)が推奨される。しかし、どの薬が本当に効果的で安全なのかは重要な問題である。
そこで、アジア人のAF患者を対象に、ワルファリンと新規経口抗凝固薬(NOAC)の臨床的な有益性を比較し、どちらが脳卒中予防に適しているかをくわしくしらべてみたそうな。
タイ国内27の病院で行われた大規模な前向きコホート研究「COOL-AFレジストリ」のデータを用いた。対象となる患者は、非弁膜症性心房細動を持つ3,405人であり、約3年間の追跡調査が行われた。主要な評価項目は、虚血性脳卒中・全身性塞栓症(SSE)、大出血、頭蓋内出血(ICH)である。
治療群は以下の3つに分類された。
1.抗凝固薬を使用しない群(No Anticoagulation, No AC)
2.ワルファリン(TTRが65%以上と未満でさらに分類)
3.NOAC(新規経口抗凝固薬, Novel Oral Anticoagulants)
この研究では、「治療必要数(NNT: Number Needed to Treat)」という指標を用いて、どの治療が最も有益であるかを評価した。NNTは、1人の患者に望ましい結果をもたらすために治療しなければならない人数を示す。
NNTが低いほど効率の良い治療であり、逆にNNTが大きいほど、多くの人に治療を行っても効果を得るのが難しいことを意味する。
また、ワルファリンの管理指標として「治療域時間(TTR)」を使用した。TTRは血液凝固能の指標である国際標準化比(INR: International Normalized Ratio)が適正範囲内にある時間の割合を示し、65%以上が良好とされる。
次のようになった。
・TTRが65%未満のワルファリン群では、脳卒中の予防効果よりも出血リスクの増加が上回り、臨床的な利益がマイナス(NNTnetが-37.33と負)となった。
・一方、TTRが65%以上のワルファリン群では、脳卒中予防の効果が出血リスクを上回り、抗凝固療法の有益性が確認された。
・NOACはワルファリンよりも頭蓋内出血のリスクが低いが、全体的にNNTが101.29であり、効果の程度は限定的である。
・NOACは抗凝固薬を使用しない場合と比べても、脳卒中のリスクを効果的に低減し、安全性の面でも優れていた。
ワルファリンはTTRを適切に管理できない場合、脳卒中予防よりも出血リスクが上回るため、十分な効果が期待できない。一方で、TTRが65%以上を維持できる場合は有益である。しかし、現実的にはTTRを高く維持するのは難しく、多くの患者にとってはNOACの方が安全かつ有効な選択肢となる。特に、脳卒中経験者にとっては、出血リスクを抑えながら脳卒中予防ができるNOACが推奨される、
というおはなし。
感想:
大した効果もないのに、NOAC(DOACともいう)は安全、という言葉がひとりあるきして、だれかれかまわず適用した結果、現場での脳内出血率がワルファリンの5倍に増えてしまった。↓