元
脳小血管疾患(CSVD)は、ラクナ梗塞や脳内出血などを引き起こす疾患でもある。
また、CSVDは認知機能低下や歩行障害といった生活の質に直接影響する症状を引き起こすため、早期発見と予防が極めて重要である。
CSVDの発症リスクを高める要因として、「心理的特性」、特に神経症傾向(不安やストレスに敏感な性質)に注目し、それらがCSVDにどのように関与しているのか、またその逆の因果関係が存在するのかをくわしくしらべてみたそうな。
遺伝的なデータを用いて因果関係を推測する「メンデルランダム化(MR)解析」を実施した。この方法は、出生前に遺伝子によって自然に振り分けられる仕組みを利用し、交絡因子の影響を排除しやすいため、因果関係の推論に適している。
ここでは、神経症傾向(うつ、心配、SESA)とCSVDの指標(白質病変[WMH]、白質の異方性[FA]、平均拡散係数[MD]、小血管梗塞[SVS])との関連を、双方向のMR解析で評価した。
SESA(Sensitivity to Environmental Stress and Adversity)とは:環境的なストレスや困難な状況に対する敏感性を指す。
FA(Fractional Anisotropy)とは:脳の白質構造の健全性を示す指標であり、水分子の動きの方向性を表す。FAの低下は白質の損傷や神経繊維の劣化を示唆する。
次のことがわかった。
環境ストレスへの敏感性(SESA)が高い人ほど、FA(白質の構造的健全性)が低下することが確認された。SESAがFAに与える影響のオッズ比(OR)は0.186(p = 5.50 × 10⁻⁴)と、統計的に非常に有意であった。
FAの低下は、うつ的感情を悪化させることも明らかになった(OR = 0.992, p = 0.001)。
抑うつ的感情とうつ病の遺伝的関連が脳梗塞(IS)と正の相関を示した(rg = 0.111, p = 0.001)。
心配(Worry)と小血管梗塞(SVS)は負の相関を示した(rg = -0.111, p = 0.032)。
・これらの結果は、神経症傾向がCSVDの進行に寄与し、その逆もまた真であることを示唆している。
この研究は、神経症傾向、特に「環境ストレスへの敏感性(SESA)」が、脳の小血管疾患(CSVD)の進行に寄与する重要な因子であることを示している。また、CSVDの進行が逆に神経症傾向を悪化させる「悪循環」の存在も示唆されている、
というおはなし。
感想:
自分に照らし合わせて、すごい説得力を感じた。