元
脳卒中後の上肢痙縮に対するボトックス治療は広く行われているが、慢性期脳卒中患者における効果は明確でない。
特に、重度の上肢障害を抱える患者に対する有効性については不明な点が多いのでくわしくしらべてみたそうな。
InTENSE試験のデータを用いたもので、重度の上肢活動制限を抱える慢性期脳卒中患者71名を対象とした。患者は、発症から3年以上が経過し、ボトックスの注射を受けた後にリハビリを行わない状況で観察された。以下の評価指標を用いて、治療前と3か月後の変化を比較した:
上肢活動(Box and Block Test)
痙縮の程度(Tardieu Scale)
関節可動域(ゴニオメトリー)
握力(ダイナモメトリー)
痛み(視覚アナログスケール)
生活の質(EuroQoL-5D)
介護負担(Carer Burden Scale)
これらの多様な指標を用いて、ボトックス治療が慢性期脳卒中患者にどのような影響を与えるかが評価された。
次のようになった。
・ボトックスはほとんどの評価項目で有意な改善をもたらさなかった。
・上肢活動:Box and Block Testでのブロック移動速度に変化はなかった(中央値0.0ブロック/秒)。
・痙縮:Tardieu Scaleでの改善はわずかであった(中央値0/4)。
・可動域:手首の可動域がわずかに改善したが(中央値4度)、臨床的に意味のあるレベルではなかった。
・握力、痛み、生活の質、介護負担:いずれも変化はみられなかった。
・さらに、治療のコスト(1回あたり約1600豪ドル)を考慮すると、この患者群での使用は経済的にも正当化されないと結論付けられた。
慢性期脳卒中患者において、ボトックス単独での治療は、上肢機能の改善や生活の質の向上に効果がないことが明らかになった、
というおはなし。
感想:
ボトックスは高価な薬であり、病院にとって一定の収益性があり、リピーター化につながる可能性がある。
これまでの研究では、慢性期脳卒中患者の機能向上効果がないことが明らかにされている。
拘縮予防については、まともなエビデンスは存在しない。