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脳卒中後のリハビリや治療といえば、歩行や手のリハビリなどの「運動機能」の回復が重視されがちである。しかし、脳卒中の影響は身体の動きだけでなく、「非運動性」と呼ばれるメンタルや日常生活のさまざまな側面にも現れる。
非運動性の問題には、疲労や睡眠障害、社会参加の低下など多岐にわたり、これが生活の質を大きく左右する。
そこで、脳卒中後の非運動性問題がどの程度に及び、どのような要因が影響しているのかをくわしくしらべてみたそうな。
ロンドンの大規模な脳卒中登録データベース「SIGNAL」から、2017年から2020年の間に脳梗塞または脳内出血(ICH)を発症した3080人を対象に、脳卒中発症から6ヶ月後の非運動性問題を調査した。
この研究では13の非運動性ドメインを用意し、患者が報告する問題を測定した。
具体的には、疲労、不安、うつ、睡眠障害、社会参加の低下、便秘、排尿障害、気分の問題、コミュニケーションの問題、日常生活活動(ADL)、記憶や思考の問題、痛み、社会関係の問題、が含まれる。
これらの症状が複数同時に発生する「共起」にも注目し、脳卒中の種類や重症度、既往歴などが非運動性問題に与える影響を統計的に解析した。
次のようになった。
・6ヶ月後に患者が報告した非運動性の問題は、驚くほど多岐にわたっていた。特に多くの患者が経験したのは「疲労(57%)」「社会参加の低下(55%)」「睡眠障害(54%)」「便秘(44%)」で、
・全体の75%の患者が少なくとも1つの非運動性問題を抱えており、5つ以上の問題を経験している患者も26%に上った。
・また、脳梗塞に比べて脳内出血(ICH)の患者は非運動性問題を経験するリスクが高く、特に疲労、睡眠障害、便秘、社会参加の低下などが顕著であった。
・さらに、共起分析により、「疲労と睡眠障害」「記憶と思考の問題と日常生活活動(ADL)の困難」「コミュニケーションの問題とADLの困難」が同時に発生しやすいことが分かり、これらの症状が重なり合って生活の質を低下させていることが示された。
脳卒中後の非運動性問題が極めて高い頻度で発生していることがわかった。特に脳内出血(ICH)患者ではリスクが高いため、運動機能のリハビリだけでなく、非運動性の症状も含めた包括的なケアが必要である。また、疲労や睡眠障害、便秘、社会参加など複数の問題が同時に現れることが多い、
というおはなし。
感想:
ぎゃくに、この種の問題をまったく経験しない患者が25%もいるってことにおどろき。