元
急性脳梗塞(AIS)は脳の血管が詰まる疾患であるが、回復には脳以外の全身的な要因も大きく関与する。
近年、腸内細菌が健康全体に及ぼす影響が注目されており、特に腸内細菌の異常(ディスバイオシス)が全身炎症を引き起こし、予後を悪化させる可能性が示唆されている。
そこで、腸内細菌と口腔内細菌の関係が、脳梗塞後の機能的回復にどのような影響を及ぼすかをくわしくしらべてみたそうな。
急性脳梗塞患者を対象に、口腔スワブおよび直腸スワブを採取し、16S rRNAシーケンシングを用いて細菌叢を解析した。
特に、腸内で口腔由来の細菌が増加しているかを評価し、その増加と機能的予後(運動能力や日常生活動作の回復度)の関係を調査した。また、腸内細菌の代謝物が全身に与える影響も考察した。
つぎのことがわかった。
予後不良の患者では、腸内に口腔由来の細菌(ネイセリア属やロチア属)が有意に増加していた。この現象は腸管バリア機能の低下が原因と考えられ、腸内のディスバイオシス(細菌叢の乱れ)を助長していた。
腸内環境が悪化することで、リポ多糖(LPS)や短鎖脂肪酸などの細菌代謝物が血流に乗り、全身炎症を引き起こすメカニズムが示唆された。これにより脳卒中後の回復が遅れる可能性が高いことが分かった。
腸内細菌が血流を介して口腔内に影響を及ぼしている可能性が示唆された。これにより、口腔内で炎症が起こり、細菌バランスがさらに乱れる悪循環が形成されることが考えられる。
口腔細菌が腸内に侵入する「トランスロケーション」と腸内細菌が逆に口腔内環境を悪化させる可能性を初めて示した。これらの相互作用が急性脳梗塞患者の予後に大きく関与している可能性があり、腸内細菌の管理が回復戦略の新たな柱となるかもしれない、
というおはなし。
うごくよ
感想:
口腔内<--->直腸内の細菌に通常はない相互作用が見られたってことは、「口がうんこ臭い」とも解釈できる。
これは単なる口腔ケア不足ではなく、腸内環境や全身の健康状態が関与している可能性が高い。特に、腸内細菌叢が乱れていることは、脳梗塞患者の全身炎症や免疫低下を反映しているかもしれない。