元
脳卒中は命に関わるだけでなく、多くの人々に後遺症をもたらす重大な疾患である。その予防や治療を進めるためには、リスク因子と因果関係を明確にすることが欠かせない。
しかし、従来の観察研究では、交絡因子や逆因果の影響を排除することが難しく、因果関係の確立が不十分であった。この課題を解決するために注目されているのが、メンデルランダム化(MR)解析である。
MR解析は遺伝的データを用いて因果関係を推論する手法であり、交絡因子の影響を最小限に抑えることが可能である。
このMR解析の複数の研究を統合したメタアナリシスにより脳卒中リスクに関連する因子を総合的に評価してみたそうな。
2023年8月までに発表されたMR解析に基づく脳卒中関連研究を包括的に収集し、系統的レビューとメタアナリシスを実施した。データベースとしてPubMedやEmbaseなどを用い、キーワード「メンデルランダム化解析」「脳卒中」に関連する論文を検索した。選定基準には、遺伝的変数を用いて因果関係を評価していることや、信頼性の高い統計手法を採用していることが含まれる。
統計解析には、異質性を考慮して固定効果モデルとランダム効果モデルを使い分けた。また、リスク因子ごとの詳細な傾向を把握するために、サブグループ解析を行い、因果関係の強さや異なる集団間での影響の違いを評価した。
次のことがわかった。
肥満(BMI):肥満は脳卒中リスクを有意に高めることが確認された。
拡張期血圧(DBP):虚血性脳卒中において特に強い関連が認められた。
2型糖尿病(T2DM):脳卒中リスクを顕著に増加させる因子である。
慢性腎疾患(CKD):腎機能低下が脳卒中発症率の増加に寄与する。
喫煙:脳卒中の重要なリスク因子であり、特に出血性脳卒中との関連が指摘された。
ウエスト・ヒップ比(WHR):観察研究ではリスク因子とされてきたが、MR解析では脳卒中リスクとの因果的関連が否定された。
中性脂肪(TGs):脳卒中リスクに直接的な影響は認められなかった。
高密度リポタンパクコレステロール(HDL-C):脳卒中リスクを低下させる。
推定糸球体濾過量(eGFR):腎機能が保たれることで脳卒中リスクが軽減される。
教育水準:高い教育水準が脳卒中予防に寄与することが示された。
これらの結果は、従来の観察研究では曖昧だった因果関係を遺伝的根拠をもって明確にした。
MR解析を用いて脳卒中リスク因子の因果関係を統合的に評価し、これまでの知見を更新した。その結果、肥満や拡張期血圧、2型糖尿病といった重要なリスク因子が再確認される一方で、WHRや中性脂肪は因果関係を持たないことが明らかになった。また、HDL-Cや教育水準といった保護因子の重要性も示された、
というおはなし。
うごくよ
感想:
拡張期血圧に要注意ってところが新鮮かな。でもね↓
ウエストヒップ比は関係ないとは言うけれど、機能回復の妨げにはなるみたい。↓