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脳卒中後に嚥下障害が残ることは珍しくない。この障害は、経口摂取の制限や栄養不足、誤嚥性肺炎のリスクを高め、生活の質(QOL)を著しく低下させる要因である。
特に、退院後も経口摂取ができるかどうかを早期に予測することは、リハビリや治療計画を立てるうえで重要である。
しかし、どの患者が自立した経口摂取を達成できるかを正確に見極める指標は十分に確立されていないので、嚥下障害における予後因子としてのHyodoスコアや下腿周囲径(CC)をくわしくしらべてみたそうな。
2019年3月から2022年8月までに嚥下治療チームが管理した128人の患者を対象とし、脳卒中を含むさまざまな原因で嚥下障害を抱える患者が含まれた。
Hyodoスコア(内視鏡による嚥下評価法): 唾液の貯留や嚥下反射の状態をスコア化する簡便な評価法。
DSS(Dysphasia Severity Scale): 経口摂取の可否を簡易的に評価するスコア。
FILS(Food Intake Level Scale): 経口摂取能力を10段階で評価するスケール。
下腿周囲径(CC): 筋肉量や栄養状態を反映する指標。
患者は、退院時の経口摂取能力に基づき、「経口摂取が可能な独立群(FILSスコア7以上)」と「経口摂取が制限された非独立群(FILSスコア6以下)」の2つのグループに分けられた。
次のことがわかった。
・経口摂取が可能であった独立群は32人(全体の25%)、非独立群は96人(75%)であった。
・独立群では、Hyodoスコアが低く(良好な嚥下機能)、下腿周囲径(CC)が大きかった。DSSスコアも高く(正常に近い)、BMI(体格指数)も非独立群より高かった。
・脳卒中が原因の患者は、独立群と非独立群の両方で観察されたが、独立群でリハビリによる嚥下機能改善の可能性が高いことが示唆された。
・また、HyodoスコアとCCを組み合わせた自立予測モデルは、感度42.9%、特異度94.0%、全体的な予測精度81.3%を示し、高い正確性が確認された。
脳卒中を含む嚥下障害患者の経口摂取自立を予測するうえで、Hyodoスコアと下腿周囲径(CC)が重要な指標であることがわかった。特に、下腿周囲径は全身の筋肉量や栄養状態を反映する簡便な測定法として有用である。また、脳卒中が原因の患者は、適切なリハビリによって経口摂取能力が回復する可能性が高い、
というおはなし。
感想:
ふくらはぎが細くなっちゃっている状態は、日本人研究者がだいすきな「サルコペニア」そのもの。
嚥下障害はサルコペニア問題の別側面かもってこと。