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近年、栄養素が脳卒中や心血管疾患に及ぼす影響が注目されている。しかし、従来の研究では因果関係を正確に証明することが難しく、特にタンパク質や脂肪、糖質が脳卒中にどう影響するかは明らかでなかった。
そこで、観察研究と遺伝情報を使ったメンデルランダム化解析(MR解析)を組み合わせることで、栄養素の本当の影響をくわしくしらべてみたそうな。
アメリカの大規模な健康調査データ(NHANES)を使用し、主要な栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質、糖質)の摂取量と、心血管疾患(脳卒中、心不全、高血圧)リスクの関連を分析した。
まず観察研究を行い、次にMR解析を用いて栄養素と疾患リスクの因果関係を検証した。
MR解析の仕組み
MR解析は、遺伝的な多型(例:ある栄養素の代謝に関連する遺伝子変異)を用いることで、因果関係を推測する手法である。この手法により、健康意識や生活習慣などの交絡因子を排除し、純粋な栄養素の影響を評価することができる。
次のようになった。
タンパク質の摂取量が増えると、脳卒中や高血圧のリスクが低下することが確認された。観察研究だけでなくMR解析でも、タンパク質の摂取がこれらの疾患に保護的な影響を持つことが示された。
脂肪摂取は心不全や冠動脈疾患に保護的な効果を示したが、脳卒中リスクについては脂肪の種類や摂取量が影響する可能性があるため、結論には慎重さが必要である。
糖質の摂取は脳卒中や心血管疾患のリスクと強い関連は示されなかったが、過剰摂取が一部のリスク要因に悪影響を及ぼす可能性が指摘された。
炭水化物全体としての摂取量と疾患リスクには、明確な関連が認められなかった。ただし、食物繊維を多く含む炭水化物の摂取は健康に寄与する可能性がある。
この研究は、栄養素の摂取が脳卒中や心血管疾患に与える影響を因果関係の視点から明らかにした。特にタンパク質摂取は脳卒中や高血圧リスクを低下させる可能性があった。また、脂肪の種類や質を見直すことも重要である、
というおはなし。
感想:
脂肪を摂るほど心不全や冠動脈疾患が減るってことのほうが反直感的で興味深い。