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脳卒中後の転倒リスクは、回復過程で避けられない重要な問題だ。リハビリチームは、患者のバランスや運動機能を回復させる一方で、転倒のリスクを最小限に抑えるための慎重な管理が求められる。
しかし、転倒リスクに影響を与える要因には、身体的な問題だけでなく、認知機能障害が大きく関わっていることがわかってきた。
そこで、リハビリ専門家が考える転倒リスクと、実際の患者データで明らかになったリスク要因の違いをくわしくしらべてみたそうな。
リハビリや神経学の専門家74名にアンケートを実施し、脳卒中後の転倒リスクに関与する認知機能障害についての意見を集めた。
同時に、実際の脳卒中患者108名のデータを基に、転倒リスクと認知機能障害の関連を分析した。
この調査では、専門家がリスク要因として挙げた症状が実際の転倒にどう関与しているかを明らかにするため、回帰分析を行い、統計的に有意な要因を特定した。
次のことがわかった。
・専門家たちのアンケートでは、アノソグノシア(病態失認)、半側空間無視、不注意、軽率な行動(Precipitation)などが転倒リスクを高めると広く認識されていた。
・しかし、実際の患者データに基づく結果では、アノソグノシア、軽率な行動、不注意、保続行動(Perseveration)が転倒リスクと強く関連していることが確認された。
・一方、専門家がリスク要因として挙げた半側空間無視は、独立したリスク要因としての影響が確認されなかった。
・また、失語症はリスク要因として重要視されていないことが両者で一致していた。
専門家が考える転倒リスクと、実際の患者で確認されたリスクには明確な違いが存在することが示された。特に、アノソグノシアや軽率な行動といった認知障害は、転倒リスクに大きく影響を与えるが、従来からリスクと考えられてきた半側空間無視は必ずしも転倒リスクに直接結びつかないことがわかった、
というおはなし。
感想:
「保続」はじめて知った。
「固執または反復する行動」であり、脳の損傷などによって引き起こされる。具体的には、一度開始した行動や考えに固執してしまい、適切なタイミングでそれを止められない状態を指す。